上林千恵子さんについて
ふと新聞を見ると、知った名前があったのですが、
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS28021_Y3A320C1PP8000/(人事官・検査官に民主など反対 衆院、同意人事を可決)
衆院は28日の本会議で、人事院人事官に法政大の上林千恵子教授、会計検査院検査官に立教大の角紀代恵教授を起用するなど10機関35人の国会同意人事案を自民、公明両党などの賛成多数で可決した。上林、角両氏には民主党、日本維新の会、みんなの党、共産党、生活の党が反対し、29日に予定する参院での承認は微妙な情勢だ。
どういう理由で反対したのか、これだけではよくわかりませんが、人事官候補の上林千恵子さんは労働問題の研究者として、とりわけ外国人労働者問題に真摯に関わってこられた方であるだけに、反対した党の並びをみるにつけ、なんだかよくわからない感がこみ上げます。
最近では、連合総研の「「外国人労働者問題に関する調査研究員会」でご一緒し、上林さんは中国人技能実習生の問題を四国の奥地まで現地調査に行って、そのバイタリティに感心してみていました。その成果は
http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1348044231_a.pdf
にまとめられていますが、要約は
第3章 中国人技能実習生の出身階層と技能実習の成果~母国への送金と職場規律・生活規律の習得( 上林千恵子・法政大学社会学部教授
本章では、研究委員会で実施した技能実習生に対するアンケート・ヒアリング調査の分析と今後の制度課題の検討が試みられている。
調査結果から、中国人技能実習生の多くが農民工出身であること、そして、彼・彼女らの就業行動と母国の労働市場の階層構造との関わりが明らかとなる。また、その滞日就業の目的は「母国への送金と職場規律・生活規律の習得」へと鈍化しており、技能修得や日本語習得という目的は背後に退いた感がある。多くの技能実習生が「お金を稼ぐため」と割り切っているにもかかわらず、各地で労使紛争が頻発していることは重く受け止めねばならない。筆者は、技能実習制度が今後の外国人労働者受入れ制度のための試金石とするならば、技能実習生を受入れる企業に労基法や入管法を遵守するという最低限の行為が伴うこと、そして、そうした遵守を可能とするような受入れ体制を人数の上でも予算の上でも構築することが必要だと指摘している。
なお、もう少し広く外国人単純労働者受け入れ方法としての日本の技能実習制度を西欧諸国と比較した論文が、五十嵐泰正さん編の『労働再審2 越境する労働と移民』に載っています。この問題を考える上で不可欠の論文です。
どちらにおいても、私の歴史的分析と一緒に載せられております。
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