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2013年3月 2日 (土)

雇用慣行の「合理性」

野川忍さんの久しぶりの連続ツイートですが、

https://twitter.com/theophil21/status/307316551810420736

有期労働者として5年を超えて終了していた場合は、無期転換権を行使できる、という趣旨の労働契約法の改正と、60歳以上の労働者が望む場合は雇用を維持しなければならない、という高年齢者雇用安定法の改正について、実際に対応が必要なのは5年以上先であるにも関わらず、企業社会は混迷している。

https://twitter.com/theophil21/status/307317082192752641

仕事自体が有期で終了する場合を除き、原則として労働者を有期雇用することは許されない、という大陸ヨーロッパ諸国の法制度と異なり、日本は今回の法改正においても、どのような仕事についても有期で人を雇う事を規制していないし、無期転換も5年を超えた場合であって、国際的には緩い規制である。

https://twitter.com/theophil21/status/307317893295636480

また、60歳以上の高齢者の雇用維持義務も、解雇条件に該当する場合に解雇という形で労働契約を打ち切ることは妨げられないことが明示されているにも関わらず、企業は大きな社内人事制度の改正を急がされている。このような状況を見ると、いかに今まで、雇用形態や年齢が雇用の壁であったかがわかる。

https://twitter.com/theophil21/status/307319174173167616

今回の法改正で明らかにされたのは、企業社会が、年齢や雇用形態による労働者の雇用の制約を無反省に続けてきたということである。たとえば、5年もの長期間を超えて、労働者の意に反してもなお延々と有期雇用を続けなければならない合理的理由を、企業社会は結局提示しえなかったということである。

https://twitter.com/theophil21/status/307319936773144576

繰り返し指摘してきたことであるが、企業社会は、従来からの企業に都合の良い慣行について、いったん正面から見直し、その合理的根拠をきちんと発信できるのかどうかを検証すべきである。その場合の「合理的」という趣旨は当然、国際社会における理念的正当性を確保できるという内容も含まれている。

感覚的にはほぼ共感する話ではあるのですが、あえて理屈を立て、ちょっと異なる観点から批判的でありうるコメントをするとすると、「企業に都合の良い慣行」が「合理的」であるか否かは、必ずしも「国際社会における理念的正当性を確保できる」かどうかによって【のみ】判断されるべきであるとは言えません。

実際、20年前までの日本では、まさに欧米とは異なる慣行が、欧米よりもパフォ-マンスがよいということを根拠として、欧米よりも「合理的」であるという言説が山のように積み上げられていたわけで、そのこと自体は必ずしも否定されるべきとばかりは言えません。

問題は、ここからが重要ですが、その「慣行」は、ある側面においては「企業に都合の良い慣行」であるとともに、同時に他の側面においては「労働者に都合の良い慣行」でもあったわけであり、それなるがゆえに、欧米型とは異なる均衡点における一個の労使妥協として、それはそれなりに安定的な「慣行」であり得ていたわけです。

問題は、そう、問われるべき問題は、同じ「慣行セット」の表と裏であり、一方だけ利用して一方を放擲することなどあり得ないはずのものでありながら、「企業に都合の良い慣行」の方は何らの変更も認めたくないという姿勢を堅持していながら、「労働者に都合の良い慣行」の方は、それがあるが故に日本はグローバル競争に負けるのだなんだという議論を繰り出して、否定したがるダブルスタンダードにあるわけです。

日本型であろうが欧米型であろうが、それぞれにその「合理性」を主張することはできますが、企業が労働者を好きなように使えるという点は日本型システムを堅持するけれども、仕事がなくなっても企業が労働者の雇用を維持するという点は日本型システムを止めるというのは、いかなる意味でも「合理的」ではあり得ない、ということが、最も重要な点だと思われます。

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