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2013年3月 1日 (金)

労働法に「当直」の言葉はない

医療介護関係のネットニュース「キャリアブレイン」のインタビュー記事です。

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39334.html

夜間当直、休日当直の実態は断続的とは言えず、「労働時間」に当たる-。奈良県立奈良病院産婦人科の医師2人が、県に時間外手当などを求めて提訴した裁判は今年2月、最高裁で県側の上告が不受理とされ、一、二審の判決が確定した。「今まで医師自身が労働者だと思っておらず、提訴する人間がいなかったから問題にならなかったが、当然の結論が出た」。労働法に詳しい労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎・統括研究員は、医療現場だからといって特別扱いのない労働法規について説明する。「まず出発点は、労働法上に『当直』という言葉はないということ」。今回の判決が確認した宿日直の概念と、新しい問題としての「宅直」を解説する。

■宿日直はもともと、学校の宿直のような労働の中身のないものを想定
 
-医療機関は「当直」に対して、当時の県立奈良病院のように当直手当のみを出していたり、これに加えて実質稼働した時間分について時間外割増賃金を払っていたりと、とらえ方は一様ではありません。労働基準法(労基法)上はどうなっているのでしょうか。
 
 医療関係者に理解してもらいたいのは、そもそも、労働法上に当直という言葉はないということ。医療法で当直が義務付けられていても、それは労働法上で何の評価もされるものではない。これがまず出発点です。
 
 労働基準法に何があるかというと、「監視・断続労働」というものがあります。41条で「監視・断続労働」(監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの)については、労働時間に関する規定を適用しないと。(時間外労働の割増賃金などを定める)労働時間規制を適用しないことができるのは、監視・断続的労働であることが条件です。医師の宿日直の場合、厚生労働省局長通達で例示されているのは、病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈、検温などで、睡眠が十分取り得るものとしています。
 
 そして、厚労省令である労基法施行規則で、宿日直について、この監視・断続的労働に当たるなら、(適用除外の)許可をすることができるという規定があります。宿日直の典型は、昔学校の先生が学校に宿直していた、ああいうほとんど労働の中身がないものを想定しています。
 宿日直というのは、大臣が出したこの省令で初めて出てくる概念。つまり、「当直」という言葉で呼ばれているからといって、自動的に適用除外になるわけではない。宿日直が労基法上、監視・断続労働に当たって初めて、宿日直が適用除外になる。イコールでつないではいけないんです。中身自体が監視・断続労働であること、それと、行政官庁の許可を得なければいけないという二重になっているんです。
 
-監視・断続労働となるかどうか、判断基準は何ですか。また、監視・断続労働でなくなればどうなりますか。
 
 宿日直という名でやられているものが、本当に41条の監視・断続労働に当たるかどうかを判断しなくてはいけない。局長通達がありますが=表、クリックで拡大=、裁判ではそれが参考資料として使われる形です。
 ある意味、非常にシンプルな話。法律は、何もなければ適用するんです。医師だろうが、何だろうが。監視・断続労働に当たらなければ一般の労基法、1日8時間週40時間で、それを超えたら時間外ですね、という原則に戻ってくる。日本の法体系からして、判決は当たり前の結論なんですよ。
 
 日本では、最高裁の判例上、労働時間の定義というのは、作業しているかしていないかは関係ない。いつでも作業できるようにスタンバイしていることが労働時間であるという、これは確立されている判断なんです。だから、今回の宿日直で、監視・断続労働でなくなれば、それは作業している、していないにかかわらず、全部労働時間になります。
 
-今回の裁判は公立病院であったものですが、公立と民間で違いはありますか。
 
 公立だろうが私立だろうが全く同じです。ただ、今回奈良県が、地方公務員だから、人事委員会規則で定めていると主張していました。これは民間企業が、うちは就業規則で定めているから、労基法にとらわれないというのと同じくらいナンセンスです。地方自治体は確かに、条例や規則で物事のルールを決めることができる。だが、自分が雇っている人たちの働くルールは、労基法およびそれを受けた政省令の範囲内で規則を作れるだけ。これは、民間企業が法に反した就業規則を作れないのと同じです。
 
■時間外割増賃金で解決できてしまうのが日本の特徴
 
-判決は、原告の勤務実態を通達の基準に照らして、基準を満たしていないと判断しています。もし、この通達の基準を満たせば、今回の判決を踏まえても宿日直となり、労働時間規制の適用除外になるのでしょうか。
 
 少なくとも行政上はなるということですね。労働基準監督署が是正勧告書を出さないということですが。ただ、裁判になった場合、裁判所は国会の法律には拘束されますが、通達には左右されないので、分かりません。とはいえ、裁判所は多くの場合、行政基準をそのまま使うことが多いので、だいたい(適用除外となる)可能性が高いでしょうね。
 
-当直も労働時間ということになれば、一人の医師の労働時間が非常に長くなります。医療機関には今後、どのような対応が必要になりますか。
 
 ここが、日本の労働時間法制を欧州諸国と比べたときの最大の特徴です。日本では、労働基準法それ自体には上限の規定はありません。(労使間で結ぶ)三六協定には上限時間を定めなければなりませんが、あくまで法律上からは、協定で上限が1日総計23時間とかになるようなものであっても、直ちに法違反になるわけではありません。
 
 「直ちに」と言ったのは、厚労相が定めるその上限の基準告示というのがあるからで、それは1週間に(時間外労働が)15時間などと定めています。ただし、これは行政指導の基準であって、それを超えても直ちに労基法違反になるわけではないのです。
 ですので、もし医療機関の労使が、とても長い勤務時間の三六協定を結ぶことになれば、時間外の割増賃金を払うことで違反の状態は回避できます。もし、労働時間の上限が厳格な欧州であれば、交代制にするなど、人を増やさなければ対応できないでしょうね。
 
■宅直の問題は難しい
 
-今回、宿日直医をフォローするための「宅直」は、医師の自主的な取り組みで「使用者の指揮命令下には置かれていなかった」として労働時間となりませんでした。
 
 この問題は難しい。今回の判決にあるような、「(使用者である病院に)命令されていないから、勝手にやっているから労働時間に当たらない」というロジックは、かなり危ういと思っています。先程言ったような最高裁による労働時間の定義があるので、もし、院長が宅直を認めているような文書が出てきたり、「おまえ、きょう宅直だから、何かあったら来いよ」と副院長あたりが声を掛けていたら、実際に病院で医療行為をした時間だけでなく、家にいる時間も全部労働になってしまう。
 
 わたしの考えとしては、宅直は、呼び出しがあって来たら、そこから労働時間になるというロジックをつくらなくてはいけないと思いますね。つまり、実際に働いているかいないかを分ける、待機時間の概念を入れるしかないと思います。そのためには法改正が必要になります。【構成・大島迪子】

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