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2013年2月 4日 (月)

デンマークの解雇規制(これまた再三再論)

スウェーデンの再三再論に、デンマークはどうなの?というコメントがつきましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-823f.html#comment-95324602

デンマークの労働市場の柔軟性について、
会社はアメリカと同じ容易さで従業員を解雇できる、と書いていますが、
同じ北欧でもデンマークとスウェーデンでは法規制が異なるのでしょうか?

デンマークについても、本ブログで結構再三書いてきておりますが、Dursanさんから

しかしながらこの問題を取り上げる度に初見の方もおられるでしょうし、
ため息も出てしまうでしょうが、気落ちせずお続けいただけますよう、
切にお願いする次第でございます。

といわれていることもあり、煩をいとわず、再三紹介いたしましょう。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-9ff0.html(北欧諸国は解雇自由ではない)

一知半解氏が北欧は解雇自由だなどとまたぞろ虚偽を唱えているらしいので、拙稿より北欧諸国の解雇規制の記述を引いておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roubenflexicurity.html『季刊労働者の権利』2007年夏号原稿 「解雇規制とフレクシキュリティ」

(4) デンマーク
 法律上原則として使用者は労働者を自由に解雇できる。ただし中央労使協約により、解雇は公平で予告が必要である(勤続に応じて3ヶ月~6ヶ月)。著しい非行の場合は即時解雇が可能である。使用者は解雇の正当理由を示さなければならず、これに不服な労働者は解雇委員会に申し立てることができる。解雇委員会は、労使間の協調が不可能ではないと認めるときは復職を命じることができる。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-c511.html(デンマークの解雇規制はこうなっています)

誹謗中傷の後始末もしないまま、平然とフレクシキュリティとか知ったかぶったかしているようですが、念のためデンマークの解雇規制についてもEUの資料を引用しておきます。

何回も書いてきたことですが、デンマークという国は労働組合の力が大変強く、全国労使協約でもって、他国であれば労働法で規定するようなことも規定してしまうので、六法全書に労働法がほとんどないという変わった国ですが、そこの所を念頭に置いた上で、読んでください。欧州委員会が2006年にまとめた加盟各国の解雇規制の報告書です。これくらいざっと目を通した上で何事か語るのが最低限の学問的良心だと、わたくしは思うのですがね。

デンマークには不公正解雇に対する一般的な法的な禁止はない。原則として使用者は被用者を自由に解雇できる。デンマーク労働組合総連合会とデンマーク経営者連盟の間の主要協約に、保護がある。解雇は公正で予告が必要である。重大な非行の場合、使用者は予告なしに解雇できる。使用者は被用者の前で解雇を正当化するよう義務づけられる。しかしながら、これは解雇の効力の条件ではない。解雇に対する主たる治癒は斡旋手続きである。労働協約の適用を受ける被用者は解雇委員会に申し立てることができる。同委員会は当該解雇を違法と宣言し、被用者の復職を命じることができる。これは、被用者が組合員であるか否かを問わず、使用者が協約の適用を受ける限り適用される。

解雇により雇用関係は終了する。しかしながら、解雇委員会または産業裁判所は、彼・彼女が公式の訴えを提起したことを条件として被用者が復職されるべしと判決することができる。さもなければ、解雇は当該委員会または裁判所の定める額の補償金に帰結する。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-15b9.html(デンマーク型フレクシキュリティの落とし穴)

ネオリベ系の論者がデンマークモデルを持ち上げるときに、必ずねぐって知らんぷりするのが、デンマークが労働関係のほとんどすべての規制を国会制定法ではなく中央労使団体間の労働協約で決めて実施しているウルトラ・コーポラティズム国家であるという点ですが、そして、本ブログでも何回か取り上げてきたように、そのことが個別企業レベルにおける解雇規制の緩やかさを担保しているわけですが、その「組合員であることがすべて!」という超労働組合万能国家であるがゆえに、自分から労働組合に入ろうとしない人間は、セーフティネットから自動的に排除されてしまうわけですね。

このあたりのパラドックスを真剣に考えるとなかなか難しくて、やっぱりデンマークみたいに労働組合に入らなくちゃ何も守られない社会じゃなくて、国家がちゃんとセーフティネットをかけてあげる社会でなくてはいけないと考える人もいるでしょうし、日本の非正規労働者みたいに入りたくても入れないのではなく、自分で勝手に入らなかった連中なんだから、どうなっても自分の責任じゃないか、という考え方もあるでしょう。

いずれにしても、地球上のどこかに完全無欠な理想郷が存在するなどということはありうるはずもないわけです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-1678.html(デンマークの労組の解雇規制要求)

経済危機で失業率が高まり、賃上げも期待できない中で、雇用保障をもう少し強めろという要求が労働者側に出つつあるようです。

といっても、現在ブルーカラー労働者の場合たった4か月である解雇予告期間をもっと延ばせという話なんですけどね。

公務員とホワイトカラーは解雇予告期間が6か月と格差があるので、それも原因のようです。

人によっては、デンマークは首斬り自由の国だと誤解する向きもあるようですが、もちろんこれだけの規制はあるのです。国会制定法ではなく中央労使協約による定めですけど。

ちなみに、人によっては絶対に解雇不可能だと思いこんでいる向きもあるらしい我が日本国においては、法律上の解雇予告期間はなんと1か月の長きに及んでいますが、そこはそれ、現場の労働相談に押し寄せてくる事案では、態度が悪いから即日解雇なんてのが山のようにあり、あっせんでようやく数万円支払わせても、1か月分の解雇予告手当にも及んでいないんじゃないかというのがかなりありますから、まあ、実態からいえば日本の方がずっと随意雇用に近いという気もしないではありません。

労働組合の組織率が全然違いますし、セーフティネットや職業訓練システムの完備の度合いも違うので、そもそも労働者保護水準はまったく違うわけですが、「お前はクビだ!」といわれてからほんとに会社を辞めるまでの期間の規制も、これだけ違います。多くの中小零細企業の労働者にとっては、これこそが実質的な解雇規制なので、日本はほとんど大企業からなっているかのように思いこんだ議論はいささか空中を浮遊している感があります。

そして決定版。日本弁護士連合会のデンマーク調査団の浩瀚な報告書について

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-5f50.html(日弁連デンマーク調査報告書)

フレクシキュリティといえば、一部インチキ経済学者による首斬り自由自在の経営者天国という粗雑な議論が横行する一方、それを真に受けたモリタク氏が「財界の罠」だと叫んでみたり、なかなかまっとうな認識が浸透しませんが、こういう現地の労使を始めとする関係者のナマの声をきちんと発信することが、インチキな議論の横行を防ぐ最良の手段なのでしょうね。

解雇はけっして自由ではない 」けれども、経済的理由による「整理解雇の「合理性」判断は緩やか」。それを支える「手厚い失業給付」と、なによりも重要な「職業教育を重視した教育制度」と「離職者向け就労支援」。

そして、それらをマクロ社会的に支える根本的なインフラとして、法律すらもほとんどなく大部分を労働協約で決めてしまうほどの「労使の社会的な役割」があるわけです。

こういうきちんとした認識を踏まえて、例えばこれら社会的機構を整備することを前提に、整理解雇4要件の緩和を主張するのであればまことにまっとうなのですが、それと「社長の云うことを聞かないような奴はクビだクビだ!」という解雇自由化との区別がつかないような人がまだまだ多いのが悲しいところでしょう。

ちなみに、わたくしも雑誌『エコノミスト』の次号に、「「フレクシキュリティ」の真実 日本にはハードルが高すぎる北欧型雇用モデル」というのを書いております。来週初めの発売です。

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コメント

こうなると「アメリカは解雇も自由だぜ」というのも
ちょっと怪しいと思うわけです。

人種、年齢、性別などで判断することに厳しい規制
(疑われただけでダメージが及ぶくらいの)
があることは承知してますが、
もっと他の知られてない「フェアネス」の部分もあるのかと

正確に言うと、女性ではなく、40歳以上の中高齢者でもなく、障害者でもなく、黒人その他の少数人種・民族でもなく、その他法律上の差別禁止規定に引っかからない人で、労働組合に入っていない人の場合、不公正解雇されたときに使える一般規程というのがないという意味で、解雇自由と言われているようです。

そうするとこの事例
「僧侶を次々解雇、人手不足に 見習いに通夜任せていた寺」
http://www.asahi.com/national/update/0206/NGY201302060001.html
についてはアメリカでもアウトの可能性が高いのかと

まぁ、アメリカだとアウトになった場合の賠償がものすごい額ですし

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