はちみつ色のユン
はちみつ色というのは、東洋人の肌の色です。主人公のユンは、韓国の孤児で、ベルギーの家族に養子に貰われてきた子どもだから。
1960年代から70年代、朝鮮戦争後の韓国では20万人を超える子どもが養子として祖国を後にした。その中の一人、ユンは5歳のとき、ベルギーのある一家に“家族”として迎えられた。髪の毛や肌の色が異なる両親と4人の兄妹、カテリーン、セドリック、コラリー、ゲールと共に暮らす中、ユンは生まれて初めて腹一杯食べ、おもちゃを持ち、路上生活や孤児院を忘れることができた。やがてフランス語を覚え、韓国語を忘れ、絵を描くことで実母の幻影と会話しながら、ユンは画才に目覚めていく。そんなある日、“家族”にもう一人、韓国からの養女・ヴァレリーがやってくる。彼女を見たとき、ユンは自分が何者なのかを意識し始めるのだった……。
本人の出てくる実写とアニメを組み合わせた映画ですが、それがとても効果的にユンの心象風景を描き出していて、感動ものです。
ストーリーの中で一番心に残ったのは、自分のアイデンティティを探しあぐねて、絵本に出てきた日本の武者の姿に自己同一化し、一生懸命サムライのまねをするところ。まだ韓流など全くない頃、ヨーロッパで東洋人の活躍する姿といえばサムライ・ジャポネくらいだったでしょうから、そうなるのだろうな、と思いつつ、この映画を韓国の韓国人が見たらまた複雑な思いをするかも知れないな、という気もしました。
ちなみに、このユンさん、監督紹介によれば、
http://hachimitsu-jung.com/kantokushoukai.html
映画に出てきた絵の才能を生かしてベルギーで結構沢山の漫画(バンド・デシネ)のシリーズを出しているようで、それもほとんどが日本の武士や遊女を舞台にしたもののようです。
この映画に出てきた彼の子どもの頃の一つ一つのエピソードが今の彼を作っているという話にもなっているんですね。
結構重いですが、見る値打ちのある映画です。今は東京でしかやっていないようですが、そのうち関西でも上映されるようなので、そちらでも是非。
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珍しい、hamachanが映画の話とは。
「韓国からの養子」という関連で私にすぐに思い浮かんだのはこの人のことでした。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Fleur_Pellerin
で、ベルギーについてもそうだろうと思いますし、フランスもそうでしょうけれど、生みの親が育てられない場合に、孤児院、というか、今は「養護施設」と言うべきでしょうが、そういう施設よりも、養子として引き取るケースのほうが多いようですね。彼我の社会観の違い、この場合は特に家族の考え方の違いについて、とても考えさせられます。
投稿: 哲学の味方 | 2013年2月12日 (火) 23時11分
まあ、彼女みたいに超エリートコースに進んだ人もいる一方で、この映画では心を病み、自殺に至った何人もの韓国からの養子たちの姿も描かれており、やはり難しいものだな、という印象を受けました。
投稿: hamachan | 2013年2月13日 (水) 23時56分