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2013年2月 3日 (日)

労働総研提言の勘違い

全労連系の労働運動総合研究所(労働総研)が「提言・電機産業の大リストラから日本経済と国民生活を守るために」というかなり大部の提言を出しています。

http://www.yuiyuidori.net/soken/ape/2013/data/130131_01.pdf

電機産業の分析についてもいろいろ書かれていますが、ここでは第2部の「労働総研の具体的提案」について、若干の指摘をしておきたいと思います。

それは要約すれば一つのことなのですが、その最初に書かれている

日本では、従来からEU などの先進諸国では考えられないような横暴な首切り=大量解雇がまかり通ってきたが、今回の電機大リストラはそのなかでも最悪の事例となりつつある。日本では、労働者の雇用を守るルールが、労働慣行としても、法制度としても確立していないのが、その最大の要因である。解雇にかかわる現行法制には“抜け穴”があるだけでなく、EU 諸国では当たり前になっている集団解雇規制や解雇規制法などの法的ルールが確立されていない。日本でも、雇用にたいする企業の社会的責任を明確にし、リストラ・解雇をやめさせる正しい“処方箋”が必要である。

という認識の一番根っこの根本的なところに勘違いがあるということなのです。

いや、「日本では、労働者の雇用を守るルールが、労働慣行としても、法制度としても確立していない」というのは、ある側面ではまさにそうだと思うのですが、それはいかなる意味でも「EU などの先進諸国では考えられないような横暴な首切り=大量解雇がまかり通ってきた」などということではなく、その全く逆、つまり、経済的理由による整理解雇を一番悪質な解雇と見なして、ひたすらそれを制約することばかりを考えてきたが故に、EU諸国ではそれこそが大事な不公正な解雇への制約が、それよりも劣る一般的なレベルのものにとどまってきているという点にこそあるのです。

この根本的な勘違いに立脚していろいろと書かれていくと、一見EU指令を引用してもっともらしく見えながら、その根っこの認識がずれまくってしまうということになってしまいます。

EUの大量解雇指令というのは、私の解説書を読んだ方ならおわかりの通り、整理解雇自体を禁止しようなどというものではなく、それを労働者代表との労使協議(及び公的機関への通知)によって粛々と進めることを義務づける手続規制です。

そもそも始めにジョブがあり、それに人を当てるという労働社会では、ジョブがなくなること自体は正当な解雇理由です。ただし、それを経営側のいいようにさせると、「こいつは言うことを聞かないやつだから、この際経営上の理由ということでクビにしてやろうか」というようなことがまかりとおるので、そうさせないためにきちんと手続規制をかけるわけです。

それに対して、ちゃんとジョブがあり、しかもそれをちゃんとこなしているのに、いろんな理屈をつけてクビにしようというようなのが不公正解雇であって、整理解雇はきちんと行われる限りは不公正解雇ではないのです。ここのところの概念区分がきちんとできているかどうかが大事なのですが、この提言ではそこがまったくぐちゃぐちゃで、整理解雇が一番けしからんという特殊日本的感覚がそのままむき出しになっていて、それとEU指令との根本的矛盾関係が全く意識されていません。

電機職場ではいま、横暴な退職強要など違法・脱法のリストラが横行している。不当解雇の禁止などが判例や行政基準にとどまり、ルール化されていないためである。企業のこうした横暴をやめさせるためには、雇用と人権を守る解雇規制法を制定する。このなかでは、解雇禁止の原則を明確にすることはもちろん、「整理解雇の4要件」の法制化、人権無視の退職強要をやめさせる具体的手立てのルール化をはかる。

いやだから、日本の解雇規制が整理解雇規制に偏って、肝心の人権的規制が弱いことの裏返しなわけですよ、それは。なまじ整理解雇4要件を金科玉条にして、解雇回避努力義務を無条件に奉ってしまったが故に、解雇を回避するためという理由で、あるとあらゆることが正当化されてしまう人事権の異常な拡大が容認されてきてしまったのであって、問題はむしろ、整理解雇さえしなければ何をやっても許されるのか?という本来労働法が問うべき問いをきちんと問うことにあるはずなわけで。

整理解雇するなら非正規を先にクビにしろという要件も含めて、正社員の雇用の維持というセキュリティと引き替えに認められてきたさまざまなフレクシビリティをもう一度問い直すというところからしか、この問題の解決はあり得ないと思いますけどね。

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コメント

仰ることは概ね理解しますが、整理解雇を一番悪質な解雇と見なしたり、整理解雇4要件を金科玉条としするような発想はまともな労働組合や労働法曹の中には皆無ですよ。判例法理の中で要件を精査し、労働契約法の中に落とし込む取組は非難されるようなものではありません。非正規からクビにする要件というのは正確には人選の合理性の要件ですが家計補助的主婦パートや学生アルバイトが非正規の大半であった時代はそれが合理的だったのです。いま有期雇用というだけで最初に雇い止めにしたら労働契約法違反で争えるでしょう。
「解雇を回避するためという理由で、あるとあらゆることが正当化されてしまう人事権の異常な拡大が容認されてきてしまったのであって、問題はむしろ、整理解雇さえしなければ何をやっても許されるのか?」というのはそのとおりですが、これは整理解雇悪玉論や4要件崇拝の結果ではありません。一言で言えば司法判断の自己矛盾、最高裁の判例劣化です。おそらく企業擁護の観点から4要件の緩和や変更をしたいのでしょうが(実際危ない兆しはあります)そう簡単には行かないので、かなり乱暴な退職勧奨まで合法と容認してしまう判例が乱発されています。ここにこそ問題の核心があるのですからhamachanは労働界ではなく最高裁に矛先を向けるべきだと思いますが。

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