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2013年2月23日 (土)

『赤旗』の解雇規制論について

『赤旗』2月19日号の「主張」が、規制改革会議の解雇規制改革論に反発していますが、それ自体がいささか粗雑というか、そこらの解雇といえば整理解雇しか目に入らない解雇自由化論者ととほとんど変わらないおおざっぱな認識枠組みで議論しようとしているため、逆のイデオロギーからは全く同じロジックで自由化論になってしまうような議論になっています。

私が一生懸命説いているのは、こういう解雇規制堅持論ではいけない、ということなんですが。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-19/2013021901_05_1.html(主張 雇用の規制緩和 過酷な職場づくり許されない)

日本には、解雇を規制する厳格な法律はありません。しかし「整理解雇4要件」という判例法理があり、解雇の必要性があるか、解雇を回避する努力をしたかなどの要件を満たさないと「解雇権の乱用」として無効とされます。このため企業は裁判で勝ち目がないので、いま電機大手がすすめているような希望退職募集、退職勧奨などのやり方をとっています。

まずこれが、ほとんどかつての池田信夫氏なみの粗雑な認識。

日本には「解雇を規制する(厳格かどうかはともかく)法律」がちゃんとあります。

労働契約法第16条。

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

不公正な解雇は違法であるというのは、ヨーロッパ諸国ではほぼ共通の法原則であり、その点では日本も変わりません。

そして、真に経営上の理由による職務の喪失に伴う解雇は、原則としては正当な解雇になります。この点でも、大原則としては日本と西欧で変わりがあるわけではありません。

違ってくるのは、雇用契約の性質がジョブ型かメンバーシップ型かによって、ある事業場である職務が喪失されることが(一定の労使協議等の手続を経て)解雇を正当とするのか、他の職務や他の事業場に配転する義務が課されるかの違いです。

そしてそれは、労働者の側に他の職務や他の事業場に配転されることを受け入れる義務があるかどうかと裏腹です。

配転拒否した労働者をクビにしても構わないと最高裁がお墨付きを出している日本では、それだけの権限を持っている会社側が、いざというときにはその配転する権限を行使して雇用を守るのは当然だろう、という当然の理屈で、整理解雇4要件(ないし4要素)が存在しているのです。

逆に言えば、配転しようにもそもそも会社の中にそんな他に回すような仕事なんかない中小零細企業では、整理解雇法理を形式的に当てはめてみたところで、仕事がなくなればやはり解雇は正当になるでしょう。

上の赤旗の議論自体、大企業正社員しか目に入っていない議論のように思われます。

「このため企業は裁判で勝ち目がないので、いま電機大手がすすめているような希望退職募集、退職勧奨などのやり方をとっています」なんてのは、まさに、だから解雇を自由化しろ!という最近の議論で強調されている全く同じロジックではないですか。

真に重要なのは、そして、本来『赤旗』がきちんとその立場を主張しなければならないのは、どのみち経営が傾いたら解雇せざるを得ない中小企業においても、そう簡単に許してはいけない「貴様ぁ解雇」をきちんと規制することであるはずなのではないかと思うのですが。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-4415.html(日航2労組は「整理解雇は条約違反」とILOに申し立て・・・てはいない)

確かに日航の労組が整理解雇に絡んでILOに申し立てたのでしょうが、少なくとも「整理解雇することはILO条約違反」だなんて馬鹿なことは主張していないはずです。

http://www.asahi.com/job/news/TKY201102040388.html日航2労組「整理解雇は条約違反」 ILOに申し立て

いや、見出しはまことにミスリーディングですが、記事自体はまちがってはいない。

会社更生手続き中の日本航空のパイロットでつくる日本航空乗員組合と、客室乗務員でつくる日本航空キャビンクルーユニオンは4日までに、昨年末に同社が実施した整理解雇の撤回を訴え、日本政府に対して是正勧告を出すよう国際労働機関(ILO)に申し立てた。

2労組は、整理解雇の際に「組合所属による差別待遇」「労組との真摯(しんし)な協議の欠如」「管財人の企業再生支援機構による不当労働行為」があったと指摘。これらは日本が批准する結社の自由と団結権保護や、団体交渉権の原則適用などに関する条約に違反すると主張している。

整理解雇された165人のうち、パイロットと客室乗務員の計146人は先月、解雇は違法で無効として、会社側を相手取り、労働契約上の地位確認と賃金支払いを求める集団訴訟を東京地裁に起こしている

要は、組合差別だからILO条約違反だと訴えているわけであって、そうでなければ通用するはずがありません。だって、差別のような不公正さがない限り、整理解雇それ自体は正当な理由のある解雇ですから。

ところが、朝日新聞の記者は、ILOに通用する組合差別という点ではなく、通用しない整理解雇という点を見出しにしたわけです。

ここが、差別問題にはきわめて鈍感なわりに、仕事自体が縮小したことに伴う整理解雇に対してはとんでもない悪事であるかのように考える日本型メンバーシップ感覚と国際的な労働問題のスタンダードのずれがよく出ています。

このJALの問題については、電話取材も受けましたが、肝心のここがなかなか理解されないのですね。

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コメント

確かに「日本には、解雇を規制する厳格な法律はありません」という認識はおかしいですね。あの労働契約法16条の表現をめぐる大論争は何だったのかと思います。それと希望退職募集と退職勧奨(や追い出し部屋?)を同列に論じるのもかなり乱暴でしょう。解雇権を行使する前に一定の条件と引き替えに自発的な退職者を募るというのは、ぎりぎりの局面では労組もの呑まざるをえない場合もあり得ます。勿論その一方で退職勧奨に寛大すぎる司法判断も大いに問題ではあります。
未組織中小における「貴様ぁ解雇」はいくら法整備を積み重ねても未然に防止するのは実際問題として困難です。以前、相談を受けた事例(解雇事案ではありませんでしたが)で「うちは労働基準法に加入してないよ」と嘯くオヤジもおりました。そういう手合いが相手ですから、泣き寝入りせず、しっかりお灸をすえて事後的に権利を回復するというイタチごっこが続きます。
そう言えば規制改革会議ではまたぞろ解雇の金銭解決を容易にする議論が蒸し返されています。労働審判制度が広まり、ここに持ち込まれた解雇事件は大方金銭解決に誘導されるという下地もできつつあるようで、労働組合としては警戒を強めています。

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