それが普通のレギュラーワーカー、日本の「正社員」は疑似エリート
読売の記事で、
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130227-OYT1T01749.htm(「准正規労働」で待遇改善、無期雇用で賃上げ)
厚生労働省は来年度から、正社員と非正規労働者の中間に位置する新たな雇用形態の創出に乗り出す。
働く期間に定めがない無期雇用にして賃金を上げ、正社員に近づける一方、昇進などは制限する「准正規労働者」ともいえる形態で、増え続ける非正規労働者の労働条件の改善につなげる狙いがある。非正規労働者を准正規労働者に引き上げるなどした企業に対し、総額54億円を助成する方針だ。
「正社員を増やすことにこだわっていても、不安定な非正規労働者が増えるだけだ」。厚労省幹部は危機感をあらわにし、今回の対策を打ち出した背景を語る。
同省では、これまで非正規労働者を正社員にした企業に助成金を出すなど様々な対策を講じてきた。だが、非正規労働者はこの10年間に年平均約30万人のペースで増え続け、昨年は約1813万人と労働者全体の35・2%を占めるまでになった。このうち約400万人は正社員を希望しながらかなわずにいる非正規労働者だ。
本ブログで何回も繰り返してきたことですが、こういう雇用形態を「中間」とか「准正規」とか言うこと自体が、特殊日本型「正社員」という世界的にはかなり特殊な形態をデフォルトだと思っている特異な発想に基づくものなんですね。
日本以外の普通の感覚からすれば、ここで「中間」とか「准正規」と呼ばれている在り方こそ、ごくごく普通の労働者(レギュラーワーカー)の姿であり、適度に安定していてそこそこの賃金を得られる普通のノンエリート労働者の働き方。
その上に、少数派としてエリート労働者が乗っているというのが普通の姿なんですが、日本ではその外国では少数派のはずのエリート仕様の働き方が、「正社員」として普通の在り方になっていたわけです。もちろん労働者の大部分がほんとにエリートなんてことはあり得ないのですが、疑似エリートとして無制約的に働く代償として、疑似エリート的な処遇が(あくまで擬似的ですが)一定程度確保されていたわけですね、かつては。
その「正社員」をかつてのように大量に維持することがもはやできないからといって、それを縮小する一方で、過度に不安定な非正規雇用にする必要の本来ない仕事自体はずっとあるような人々が、二者択一的に非正規労働者化されてきたことが、今日の問題の原因となってきたわけですから、こういう方向性はあまりにも当たり前のことなんですが、世界的に特異な「正社員」こそが本来の姿と思っている人には、そうは見えないというのが問題の根源なわけです。
というようなことは、分かっている人には分かっているのですが、分かってない人にはなかなか分からないし、こういう記事の書き方をすれば、ますます本来あるべき「正社員」を「准正規」におとしめるように勘違いする人が出てきて、ますます話がこんがらがるのであろうなあ、と正直気が重くなります。
(追記)
https://twitter.com/mnaoto/status/307345160730193920
今までの「正社員」を「モーレツ社員」に呼びかえる法改正をしてはどうだろうか。そうすると記事の内容も、“厚生労働省は来年度から、モーレツ社員と非正規労働者の中間に位置する新たな雇用形態として正社員の創出に乗り出す”となってなかなかいい感じである。
https://twitter.com/mnaoto/status/307345929512558592
「疑似エリート」じゃなくて「モーレツさん」でええやん。ほんならなんか特殊な物好きしか選ばん雇用形態なふうな感じもでん?
そやな。「モーレツさん」と「非正規さん」の間に、「ぼちぼちさん」をつくりまひょ、といえば、エリートやらノンエリートやらいう言い方とちごて、身分制やなんやという反発も和らぐかもしれへん。
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