スウェーデンは解雇自由だって!?@『情報労連REPORT』2010年10月号
原田(Kana_1024n)さんが、ツイッター上で、
http://twitter.com/Kana_1024n/status/286800865170436096
解雇規制緩和で労働市場が流動化されて問題解決!という花畑な方は、濱口桂一郎氏の記事を読んだ方が良いですよ。特に日経の論調に煽られちゃった方は ⇒ スウェーデンは解雇自由だって!?
と、改めて推奨していただいているので、もう2年以上前の文章ですが、改めて。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1010.html
労働問題は単純にスパッと切れるようなものではない。専門家ほど発言に慎重になり、いろいろと条件をつけた上でないとなかなか断定的な言い方ができない。そこにつけこんで、一知半解で断定的な言説を振りまき、世論をあらぬ方向に誘導しようとする連中が湧いてくる。明らかな虚偽の宣伝に対してはきちんと批判を加えていかなければならない。本コラムではこれから毎月、ネットを含むメディアに流通するトンデモ労働論や一知半解の議論を取り上げ、批判を加えていく。
第1回目は意外に多くの人が受け入れている「スウェーデンは解雇自由」という言説である。たとえば上武大学教授の池田信夫氏は、2009年に桜プロジェクト「派遣切りという弱者を生んだもの」というテレビ番組の中で、「僕の言っているのに一番似ているのはスウェーデンなんですよ。スウェーデンてのは基本的に解雇自由なんです。いつでも首切れるんです、正社員が。その代わりスウェーデンはやめた労働者に対しては再訓練のシステムは非常に行き届いている訳ですよ。だからスウェーデンの労働者は全然、失業を恐れない訳ですよ。」と語っている*1。後半は正しい認識である。連合が支持する政権でありながら、「仕分け」の名の下にただでさえ乏しい職業訓練施設を削減することをばかりを追求している民主党政権は噛みしめる必要があろう。しかしながら、前半は明らかなウソである。
その証拠はスウェーデンの労働法規を読めばわかる。幸いスウェーデン政府は法律をすべて英訳してくれているので、誰でもアクセスできる。解雇法制は1982年の雇用保護法に規定されている*2。客観的な理由のある場合には1~6か月の解雇予告で解雇できるが、労働者が訴えて客観的な理由がないとされれば解雇は無効となり、雇用は維持される。ただし、使用者の申し出により金銭補償で雇用を終了することができる。また整理解雇に際しては厳格なセニョリティルールが適用される。さらに、解雇規制の潜脱を防ぐため有期契約の締結にも客観的理由が必要で、3年を超えると自動的に無期契約になる。解雇自由などといえるところはどこにもない。
このように法律上は極めて厳格な解雇規制を持つスウェーデンが、同時に極めて流動的な労働市場を持っていることは何ら矛盾ではない。手厚い職業教育訓練を受けながら新たな仕事を探すことが権利として保障されているがゆえに、解雇されることがそれほど痛くない社会が実現している。しかしそのことと、不当な解雇に対しても泣き寝入りせざるをえない解雇自由とはまったく別のことである。むしろ判例法理で解雇権の濫用が制限されているはずの日本でこそ、不当な解雇に泣き寝入りしている人々ははるかに多いのではなかろうか。日本が学ぶべきは手厚い職業訓練だけでない。
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*1スクリプトは:http://teinengurashi.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/2-ea0e.html
*2:http://www.regeringen.se/content/1/c6/07/65/36/9b9ee182.pdf
なお、文中の肩書きは発表当時のものです。
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http://matome.naver.jp/odai/2135695110056942401
年末の朝日新聞に 配属先は「追い出し部屋」〈限界にっぽん〉
という記事が載ったようです。
これを巡ってわが身にひきうつして、こんなんされたらたまらない、ひどいというものあれば、わが意を得たりとばかり「雇用の流動化が必要」と言い出すものあり。
投稿: Teik | 2013年1月 6日 (日) 10時34分
http://twitter.com/Fumitake_A/status/287640895807963138">http://twitter.com/Fumitake_A/status/287640895807963138
http://twitter.com/Fumitake_A/status/287641227522879488">http://twitter.com/Fumitake_A/status/287641227522879488
何を言うても、認知的不協和をきたす人々の耳には入らないのでしょうね。
人は自分に都合のいい言葉を選んで聞く生き物なのです。
投稿: hamachan | 2013年1月 6日 (日) 12時56分