ジョブ型契約を前提にした解雇規制緩和
大内伸哉さんが、新年早々、「解雇規制の緩和」についてブログで論じておられます。
http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-374f.html(解雇規制の緩和)
昨年12月31日の日経新聞の社説の,若者の「中小企業への就職を促そう」は,私が年来書いてきた解雇規制の緩和による若年雇用の促進ということについて書かれています・・・
入社後の一定期間の解雇規制の適用除外とする発想は,私の前掲書でも書いていますし,さらには昨年,2012年の経済図書の1位に選んでいただいた『法と経済で読みとく雇用の世界』(川口大司さんと共著。有斐閣)の第5章「勝ち残るのは誰だ?ー採用とマッチングー」でも書いています。ドイツやイタリアでは,まさにそういう法制度が導入されています。
これを読んだだけでむかっとする人がいるかもしれませんが、もちろんこれはこれで極めてまっとうな議論です。現に、一般的に解雇規制のあるヨーロッパでもそういう例外があるわけです。
ただし、この議論が通用するためには、そもそも雇用契約が「こういう仕事(ジョブ)があるけど、これがきちんとやれる人はいるかな?そういう人を募集するよ」「はい、私はその仕事がきちんとできますから、採用してください」という約束であるという前提が必要です。
そういうジョブ型社会では、確かに、当該ジョブとのミスマッチが発生しうるので、
採用時に不可避的に一定割合起こるミスマッチの解消手段を従業員だけでなく・・・企業にも与えようとする発想
にも合理性があります。
ところが、そういうジョブ契約ではなく、「どんな仕事をやらせるかわからないけれど、いいな?」「はい、なんでもやります。その代わり、ちゃんと教えてください」という約束であれば、特定のあるジョブとのミスマッチが直ちにその解除を正当化するというわけにはいきません。
拙著の表現を使えば、メンバーシップ型社会では
労働者にジョブ維持の権利を認めない(使用者にジョブ変更の権利を認める)代わりに、ジョブ変更によるメンバーシップ維持の権利を認める(使用者にジョブ変更によるメンバーシップ維持の義務を課す)この考え方は、現在に至るまで全く変わっていません。
そして、そういう「人間力」を判断して採用するために、欧米では考えられないような広範な採用の自由を企業に認めている訳です。
逆に言えば、こういうまっとうな解雇規制の緩和論が通用するようにしたいのであれば、契約のあり方もその前提となるようなものとなる必要があるということでしょう。
そもそも、社会のあり方としてどちらが望ましいかについては、人によってさまざまな意見のあるところだと思いますが、ジョブ型契約にはジョブ型解雇規制、メンバーシップ型契約にはメンバーシップ型解雇規制が対応するのであって、それをごっちゃにするのはよろしくないと思われます。
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