正規・非正規格差の道徳性
慶應義塾大学法学部の紀要誌『法学研究』の85巻9号に、大澤津さんの「日本における正規・非正規雇用者格差の道徳性について」というユニークな論文が載っています。
この方は政治哲学というか政治思想がご専門のようですが、現代日本のもっともアクチュアルな問題に果敢に斬り込んでいます。
・・・具体的に本稿が考察するのは、正規雇用者が彼らの企業メンバーシップに基づいて、非正規雇用者に対して排他的に様々な利益を得るとき、このような利益は道徳的に正当化可能であるのか、、という問いである。
多分、正面から労働問題だけやっている人々には、こういう問題の立て方はなかなか思いつかないでしょうね。
でも、法の議論が何らかの規範理論を前提とする以上、こういう次元にさかのぼった議論はいずれにせよ必要なはずではあります。
・・・正規雇用者と非正規雇用者の利益保障のメンバーシップによる差異が果たして道徳的に正当化できるものか否か、という問題は、政治理論においては連帯義務と一般義務の相克の問題として扱うことができる。
へえ、そうなんですか・・・。
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コメント
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こんにちは。
またというか、まだ城氏は若者側の人間、世代間格差を
弾劾する者みたいな感じで、慶応塾長に吠えたりしていますね。
彼はいつまで富士通の元人事の肩書きで生きていくのでしょう
か。自分はいずれ、成果主義の崩壊は無かった事をちょっと
まとめてみようかと思っています。
信じられないかもしれませんが、富士通では成果主義の問題
は無かったのです。
さて、本題ですが、正規・非正規について不思議に思う事が
あります。某流通業では、正規を大幅に削減して非正規に
移行した話があり、城氏も正規を減らして雇用を守ったなど
と大絶賛したりしていますが、世の中、まともな企業では
別に正規社員を減らす事などしなくても長期間安定した
財務体質の企業もあると思います。そもそも正規を減らして
非正規に移行するような会社はビジネスモデルがおかしい
のではないかと思います。大量に雇用して、やっぱり不要
になったから人をゴミのように捨て、その代わりに非正規で
穴を埋めるのは流通業や飲食業が多いように思います。
ちょっと色々整理してまた投稿します。城しげに論破され
ないような具体例を考えてみますね。
投稿: 元F社社員 | 2013年1月23日 (水) 22時52分
>慶應義塾大学法学部の紀要誌『法学研究』の85巻9号に、大澤津さんの「日本における正規・非正規雇用者格差の道徳性について」というユニークな論文が載っています。
紀要に論文を書くのだからたぶん専任なのだろうと想像しますが、こういうことを書くご自身が、同大学法学部の非常勤(の中には、いわゆる専業非常勤もいるのではないでしょうか)との間の待遇格差についてどういう具体的なことをしておられるのでしょうか。この点こそが、知りたいところです。雇用をめぐるこの問題は誰の身近にもあり、そして身近なところでの振る舞いによってこそ、自らの道徳性の如何が問われる、そういう事柄なのですから。
投稿: vox_populi | 2013年1月24日 (木) 00時33分
一つ疑問があります。
アルジェリアのテロの邦人犠牲者の中に、派遣会社から、派遣(報道の言葉の使い方が不正確なのかもしれませんが)労働者が含まれていたよううに伝えられています。
プラント建設の現場監督のような業務と伝えられていることからすると、作業の一体性から、労働者派遣が禁止されている建設の業務であったのかどうか?。驚きと悲しみの次に、疑問が湧いてきます。
投稿: endou | 2013年1月26日 (土) 05時51分
endouさん
派遣契約書を見たわけではないので一般論ですが、派遣法で禁止されている建設業務はいわゆる現場作業で、施工管理業務は禁止されていません。
報道では、現場監督あるいはエンジニアであったというものも見受けられ、また、常識的に考えて、現場作業をメインで行うような方を海外出張させることは考えにくいため、禁止業務には該当しないのではないかな?と思います。
何はともあれ、業界関係者としては、、「自分を必要としてくれているからアルジェリアに行く」とおっしゃったという内藤さんの言葉から、「あなたを必要としている」と仕事を紹介することで人の人生を大きく変えてしまうかもしれないという大きな責任を負っているということを人材派遣だけではなく人材ビジネスに携わる人全てが真摯に受け止め、見つめなおすべきだと感じた事件でした。
投稿: kayorine | 2013年1月29日 (火) 12時48分
リコメントありがとうございます。
あぁ、なるほどそう云う理解ですと、確かに違反ではないですね。
ただ、やはり直接の雇用契約や、独立した請負契約という場合と、派遣契約とのリスクマネジメントの違い、更には海外プラントにおける政情不安定等のリスクに関するペイ、即ち対応した報酬が、派遣契約(どうしても2段階になってしまう故)の当初から、為されていたのかどうか?、と言う疑問はあります。
この辺りをクリアするためには、3者同時に成立する三角契約が良いわけなんですが、これだと、個々の労働者の一本釣りとなり、事前面接と同様の効果があることになってしまう訳ですね。ザックリいえば、こういう同時に成立する労働契約だと、派遣じゃなくて、供給じゃないか!なんて。
投稿: endou | 2013年1月30日 (水) 11時26分