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2013年1月

「ソーシャル」がかけらも出てこない・・・

読売から、

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130131-OYT1T00218.htm?from=tw(民主は中道かリベラルか…堂々巡り論争1時間)

民主党執行部がまとめた党綱領の素案に対し、党内から異論が噴出している。

 30日に国会内で開かれた党綱領検討委員会(委員長=細野幹事長)の総会も、「保守と言っていい」(細野氏)内容の素案に対し、「中道」「リベラル」などの表現を入れるべきだとの意見が相次ぎ、紛糾した。野党転落後も路線対立は相変わらずで、2月24日の党大会での正式決定に向けての議論は難航しそうだ。

 「自民党との対抗軸を打ち出すために『リベラル』という言葉を使うべきだ」「かつての『民主中道』がわかりやすい」

 2時間近く続いた30日の総会は、「保守・中道論争」に約1時間が費やされた。一般的ではない「リベラル保守」という表現まで飛び出したという。民主党は、1998年の結党時の「基本理念」を事実上の綱領と位置付け、「民主中道」という表現で党の路線を示してきた。それへのこだわりの根強さが浮き彫りになった。

 総会後、小川淳也副幹事長は記者団に「リベラル、中道、穏健な保守の範囲を行ったり来たり。路線を巡るキーワード論争は引き続きある」とぼやいた。

 民主党内には、自民党出身者から旧社会党出身者までが混在している。民主党初の綱領の策定は、先の衆院選の惨敗から党を再建させるため、党内一丸となって目指す方向性を示す狙いがあったが、「寄り合い所帯」の体質が改められそうにない現状が露呈した。

これだけ議論しながら、「ソーシャル」がかけらも出てこないってところに、現代日本における「社会的なもの」の完璧な欠落が露呈しているんでせうね。

旧「社会」党出身者にしても、旧民「社」党出身者にしても、そのアイデンティティには党名にあったはずの「ソーシャル」は爪の垢ほどもないということで・・・。

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熊沢誠『労働組合運動とはなにか』

0025960岩波書店の中山永基さんから、その編集になる熊沢誠さんの『労働組合運動とはなにか』(岩波書店)をお送りいただきました。

http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?head=y&isbn=ISBN4-00-002596

社会には競争が溢れている.勝者たり得る者はごく一握りにすぎず,多くの人は敗者になることをまぬかれえない..敗者が「敗者」の立場のままでも生きていける社会は可能なのか――.ノンエリートがノンエリートの立場のままで生きていける社会を可能にする試みこそが労働組合運動だとする著者が,その真髄を語る.

ノンエリート論というのは昨今始まった話ではありませんよ。熊沢さんが今から30年以上前に出した本が『ノンエリートの自立-労働組合とはなにか』(有斐閣)だったのですから。

本書はその熊沢さんの30年ぶりの正面からの労働組合論です。

とくに、左翼と称する人が、「組合要らぬ会社が理想」を称揚し、「定時に会社から帰るジョブ型やっていたら、50歳くらいのときにあの番組の唐沢寿明みたいにはなれないんだよ」と脅しつける言葉を目にした後には、こういう一節を読むと一服の清涼剤を呑んだ思いがしますね。

仕事に分業がある限り、たいていの仕事は「ぱっとしない」地味な労役であり、多数者ノンエリートがそれを担います。とはいえ、はっきりしていることは、そういう人々こそが、そのノンエリートの立場のままで、支配され操作されることなくやっていける社会でなければならないということです。それを可能にする自主的な営み、それは労働組合運動です。だから労働組合とは、ノンエリートが昇進しやすい制度をもたらすというよりは、昇進なんかしなくても、昇進していったエリートの思いのままにはならない-そんな地点で開き直る人々の拠るものです。労働組合運動=「ノンエリートの自立」と規定できる所以です。(p11)


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労働政策フォーラム「欧州諸国における職場のいじめ・嫌がらせの現状と取り組み」

JILPTの労働政策フォーラムのご案内です。

http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20130228/info/index.htm(欧州諸国における職場のいじめ・嫌がらせの現状と取り組み)

日本では近年、職場のいじめ・嫌がらせ問題が深刻化し、都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が急激に増加しています。諸外国においても1990年代以降、職場のいじめ問題への関心が高まり、欧州諸国を中心に職場のいじめ対策に関する先進的な取り組みが行われています。

本フォーラムでは、欧州諸国における職場のいじめ・嫌がらせ問題の現状と取り組みについて、各国研究者が報告・議論します。

日時と場所は次のとおりです

日時 2013年2月28日(木曜)14時30分~17時00分(開場14時)
会場 都市センターホテル 5階「オリオン」 (東京都千代田区平河町2-4-1)

プログラムは以下の通り

14時30分~
各国報告
Helge Hoel マンチェスター大学 ビジネススクール教授(イギリス)
Loïc Lerouge ボルドー第4大学 比較労働法・社会保障法研究所研究員(フランス)
Margaretha Strandmark カールスタッド大学教授(スウェ-デン)
Martin Wolmerath 弁護士(ドイツ)

16時10分~17時00分
パネル討議・質疑応答
パネリスト
Helge Hoel マンチェスター大学 ビジネススクール教授
Loïc Lerouge ボルドー第4大学 比較労働法・社会保障法研究所研究員
Margaretha Strandmark カールスタッド大学教授
Martin Wolmerath 弁護士

コーディネーター
内藤 忍 労働政策研究・研修機構研究員

ということですので、ご関心のある方は是非ご参加くださいますよう。

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ケインズさんの言葉

昨日の

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-00f8.html(組合要らぬ会社が理想のヨニウム氏)

で、

ここ突っ込むと、雇用第一ゆえに賃金・労働条件のフレクシビリティを大幅に受け入れるという日本型フレクシキュリティが、結果的にデフレを増幅する要因になってきたのではないか、失業者が出たら国にきっちりと面倒見させるから、賃金・労働条件は引き下げないぞ、という「物わかりの悪さ」、1980年代の日本では「だから欧米はダメなんじゃ」とどや顔でいわれていたような面が、逆にデフレに対するストップ要因になってきたのではないか、という大変深刻な問題につながっていくわけです。

日本の「リフレ派」で、ここんとこをちゃんと突っ込んでいる人はほとんど見かけませんが。

と述べたところ、なんだかケインズ先生の本にそういう一節があったような気がして、ざらっと見てたら、

http://www.genpaku.org/generaltheory/general19.html(ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』(1936)  第 V 巻 :賃金と価格 第 19 章 名目賃金の変化)

私の理解する限り、一般に認められた説明は、とても単純なものです。以下に議論するような、もってまわった影響などに依存しません。議論は単純に、名目賃金が下がれば、他の条件は一定として最終製品の価格が減るので需要が刺激され、したがって産出と雇用は増え、産出と雇用は増える、というものです。そしてその増え方は、労働が受け容れることにした名目賃金低下分が、産出増(設備一定)に伴う労働の限界効率低下で相殺されるところまで増えるのだ、というわけです。

・・・私はこの手の分析とは根本的にちがっています。あるいは、上のような主張の背後にあるとおぼしき分析とちがっていると言うべきでしょうか。というのも上は、多くの経済学者たちの主張や著作をかなりよく表していますが、その根底にある分析が詳しく記述されたことはほとんどないからです。

・・・名目賃金を引き下げると「生産費用が下がるから」雇用が増える、という粗雑な結論をまず論駁しておくとよいでしょう。

・・・ここから、現代世界の実際の慣行や制度から見て、柔軟な賃金政策でじわじわ失業に対応するよりも、硬直的な名目賃金政策を目指すほうが好都合なのだ、ということになります——少なくとも、資本の限界効率から見る限りでは。でもこの結論は、金利から見るとひっくりかえるでしょうか?

・・・したがって、柔軟な賃金政策が継続的な完全雇用を実現できるという信念には根拠がありません——公開市場金融政策が、単独でその結果を実現できるのが根拠レスなのと同様です。経済システムは、この路線で自己調整的にはなれないのです。

・・・よってここから、労働がじわじわ減る雇用に対応して、じわじわ減る名目賃金でサービスを提供するとしたら、これは実質賃金を減らす効果は持たず、むしろ産出へのマイナス効果を通じてかえってそれを高めるかもしれない、ということになります。

・・・こうした考察に照らし、私はいまや、安定した名目賃金の全体的な水準を維持するのは、いろいろ考えても閉鎖経済にとってはもっともお奨めできる政策だという意見です。同じ結論は開放経済にもあてはまりますが、それは世界の他の部分との均衡が、変動為替レートによって確保できるという条件つきです。一部の産業では、賃金がある程度柔軟だとメリットもあります。衰退しつつある産業から成長しつつある産業への移転を促進したりできるからです。でも全体としての名目賃金水準は、少なくとも短期では、できるだけ安定に保つべきです。

ある時期に褒め称えられた日本的労使関係のフレクシビリティは、「労働がじわじわ減る雇用に対応して、じわじわ減る名目賃金でサービスを提供する」ことによって、実はむしろ「実質賃金を」「高める」効果をもたらしていたのかもしれません。

経済学の素人の戯言はこれくらいにしておきますが。

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組合要らぬ会社が理想のヨニウム氏

本日の朝日の「耕論」は「春の闘い何のため?」と題して、山田久、神部紅、ビル・トッテン3氏の意見を載せています。

山田久さんの「賃上げでデフレ脱却を」は、題名通りまことにもっともながら、今の労働組合にその力量があるかという問いへの答えが一番難しいわけですが。

ここ突っ込むと、雇用第一ゆえに賃金・労働条件のフレクシビリティを大幅に受け入れるという日本型フレクシキュリティが、結果的にデフレを増幅する要因になってきたのではないか、失業者が出たら国にきっちりと面倒見させるから、賃金・労働条件は引き下げないぞ、という「物わかりの悪さ」、1980年代の日本では「だから欧米はダメなんじゃ」とどや顔でいわれていたような面が、逆にデフレに対するストップ要因になってきたのではないか、という大変深刻な問題につながっていくわけです。

日本の「リフレ派」で、ここんとこをちゃんと突っ込んでいる人はほとんど見かけませんが。

また首都圏青年ユニオンからは河添誠さんではなく神部紅さんが登場して、

ごくわずかですけど、既存の労組の中には、非正規の問題に正面から取り組もうという意識を持つ人が現れ始めています。非正規の人たちと力を合わせるならば、労働組合の存在感は高まる、そのことに気づいてほしいと思います。

と述べています。1000万人連合とかいうんだったら、まずは足下の非正規をちゃんとしろよな、そこスルーして絵空事いうなよな、という話ですね。

最後のビル・トッテン氏ですが、

「組合要らぬ会社が理想」

なんだそうです。

そして、そのビル・トッテン氏に熱烈な賛辞を送っているのがあのヨニウム氏。

http://twitter.com/yoniumuhibi/status/296426232197808129

今日の朝日の耕論(19面)いいですね。特にビル・トッテンの話が素晴らしい。「日本は終身雇用制度を中心とした家族的な雇用形態を守るべきでした。それが、日本企業の強みだったからです」。本田由紀や左派の脱構築屋連中は、濱口桂一郎ではなく、こういう声を真面目に聞いて受け止めろよ。

なるほど、私の声など聞くんじゃなく、

経営者がそこで働く人を本当に大切にしていたら、労働者は組合を作る必要はありません。理想論かもしれませんが、春闘なんて亡くなるんです。

というすばらしき福音を「真面目に聞いて受け止め」なくてはいけませんね。

さあ、今日から毎日叫びましょう、「組合要らぬ会社が理想」と。

(追記)

ちなみに、このヨニウム氏、こういうことも口走ってる。

http://twitter.com/yoniumuhibi/status/295173462341844992

本田由紀とかに言いたいが、定時に会社から帰るジョブ型やっていたら、50歳くらいのときにあの番組の唐沢寿明みたいにはなれないんだよ。メーカーというのは世界を相手にした全部の能力が要る。語学も技術も法律も。その能力のある社員たちが必死で残業して、やっと世界の市場で売れる製品が作れる。

Hyoshi17全くその通り。なれないし、なる必要もない。それをなれないゾと脅しつけて必死で残業させるロジックにもっていくブラックな手口は、『POSSE』17号で今野さんと対談した時のこれと同じ。

濱口:若者の味方と称する人たちの議論に共通なものがあって、典型的には城繁幸さんのような議論になります。彼はたとえば『7割は課長にさえなれません』という本を出しています。まったくその通りだし、もっと言うと、なる必要もない。みんなが課長になれるのだという人参を目の前にぶら下げて、本来だったらあり得ないような働き方をさせるというやり方が、ある時期まではそれなりに通用していました。それがもはや持続可能ではないと指摘するのは、確かに正しい議論なんです。

正しいにも関わらず、彼に根本的に欠落しているのは、課長になれない7割の人たちはどこに着地するのかという点です。本来はそれこそがまさにジョブ型正社員であり、普通のレギュラーワーカーの働き方であり、要するに契約に書かれたことだけきちんとやれば、それ以上の要求をされないという働き方のはずです。それ以上会社が面倒を見るわけではないけれども、その限りでは一定の雇用と生活の安定はある。それ以上のことは国がちゃんと面倒をみますというのが抜けています。

そうすると、そこで7割は課長になれませんという言説はどういう機能をもつかというと、「お前はその3割になれないぞ。さあその3割に潜り込むためにもっと頑張れ」という脅しになってしまいます。そこで持ち出されるのは、欧米のサラリーマンはこんなにすごい働き方をしているという話です。

その手の議論でイメージされているのは欧米のエリート労働者層です。確かに彼らは猛烈な働き方を自発的にしているだろうし、極めて裁量的に働いているでしょう。でも、それに対応した極めて高い処遇を受けているわけだし、当然のことながら、みんなにそんなものを要求するなんてことはしていません。その限りで、それは釣り合いが取れています。エリートというのはまさにそういうものなんですね。

釣り合いが取れている一部のエリートのあり方を、あたかも全体の姿であるかのごとく、欧米のサラリーマンはこうなんだと持ち出すと、課長になれる3割にどうやって入るんだという脅しのロジックになります。結局、いままでの日本型システムはダメなんだという議論が、一見日本型システムを否定するように見えて、実は日本型システムの根幹の部分を維持することによって、かえってブラック企業現象を増幅している。そこのところをきちんと批判しないといけないと思いますね。

一見するところ、日本的雇用システムを口を極めて罵る城繁幸氏と、日本型雇用システムを口を極めて絶賛するヨニウム氏は正反対のように見えて、実のところ、労働組合を敵視し、労働者を脅しつけてブラックに働かせたがるという点において極めて良く似ているというところに、一見パラドックスのように見えて、実は物事の本質が見事に露呈しているというべきでなのしょう。

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ジョブレス解雇と貴様ぁ解雇(再掲)

昨年12月のエントリですが、要するにこういうことですので、変な風に騒ぐのではなく、話の筋道を見失わないことが大事だと思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-ac43.html(ジョブレス解雇と貴様ぁ解雇)

いまだによく分かっていない人々がよく分かっていないことを言い続けているようなので、繰り返してきたことですが、ごく簡単に。

雇用契約はジョブに人を充てることだという社会では、そのジョブがなくなったら労働者を解雇するのは別に不思議ではない。むしろ当たり前。逆に、ジョブがちゃんとあり、労働者がそれをちゃんとやっている限り、「俺様の言うことを聞かねぇからクビだ!」というようなのは通用しない。

整理解雇は組合と協議して粛々と進めるが、貴様ぁ解雇はだめだよ、というのが、先進国ほぼ共通のルール。

ここが日本ではほとんどまったく理解されていない。というかまったく逆に理解されている。整理解雇はよほどのことでないと許されないが、「いうことを聞かねぇからクビ」はある程度当たり前だと思われている。

これは、日本がジョブに人を充てるのではなく、会社のメンバーとして採用した人にジョブを充てるという仕組みだから。だから、ジョブがなくなってもメンバーなんだからクビにできないし、逆にメンバーにふさわしくない反抗的な野郎はクビにして構わない。

この逆転現象を、まずもってきちんと頭に入れておかないと、話がことごとく狂ってくる。圧倒的に多くの経済学者や評論家は、ここが分かっていない。

大企業正社員の場合、確かに先進国標準に比べて整理解雇は難しい。整理解雇するならその前に非正規を雇い止めしろとか、希望退職を募集しろとされている。そこで、あれこれ手練手管を使って退職勧奨するわけだ。

そこで、退職勧奨をやるわけだが、逆にそのやれる範囲が大変広くなっているというのがポイント。ジョブに人を充てるのではないのだから、会社メンバーに何を命じようが、基本的には許される。他の先進国だったら許されないようなことでも、メンバーシップを守るためということでストライクゾーンが大変広くなっているからだ。

こうして、本心は会社から追い出すために、メンバーシップを守るために広げられてきた「何でもやらせられる」仕組みが活用されるという皮肉な現象が見られることとなる。

こういう逆説的な関係をほとんど理解もせずに、表層的な議論だけで分かったような顔をする手合いがあまりにも多すぎる。

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パブリックなものが提唱されているのに、政府もダメ、労働組合もダメ・・・

4779507243先日御恵投いただいた市野川容孝・宇城輝人編『社会的なもののために』(ナカニシヤ出版)から、今日の日本の精神状況をよく示しているな、と思われた対話の一節を:

宇城 日本の社会保障の制度設計は基本的にドイツ型だったわけでしょう。それを壊してきた過程がこの20年くらいだったわけじゃないですか。これはつまり、ドイツ型からアメリカ型に移行しようとしているとまとめていいのだろうか。

宇野 これはだから、エスピン・アンデルセンなんかの議論と同じで、日本はどの類型に入るのかという大論争をやって、結局例外型になってしまう。いつも日本は微妙に違うということになってしまうんだよね。

宇城 それは結局、日本における中間集団の位置づけの問題ということになるのだろうか。

小田川 『文明としてのイエ社会』とか読むと、日本の場合、中心的な役割を果たしてきた中間集団というのは、企業だったわけですよね。

宇野 日本は全体的な社会保障の不在を個別企業が代替するという非常に特殊な形態をとった。コーポラティズムほど業界団体がしっかりできているわけじゃなくて、基本的には個別企業でやるという。

市野川 そこは重要な違いだと思います。労働組合もドイツは産業別であって、日本のような企業別ではない。日本に「社会」主義はなく、あるのは「会社」主義だという主張にも、かなりの説得力がある。

宇城 そのあたりが、アメリカ型になろうとしているといわれるけれども、ねじ曲がった形でもともとアメリカ型だったのではないかとも思える。

宇野 アメリカ的な競争性というのは担保されていなくて、にもかかわらず、ドイツ型と言っていいのかわからないけど、ある種の保守的な構造、中間集団を積み上げていく構造があったのに対する破壊衝動としてアメリカ・イメージが使われているという感じはある。これはこれでアメリカともちょっと違うよね。

宇城 しかもアメリカ型に行くのであれば、プライベートなものとかパティキュラーなもの、中間的なものが大事ですという話になっていくはずなのに、どうしてもその破壊衝動としてのパブリックなもので行きましょうという話に収斂していくわけです。

小田川 そこがよくわからないとこなんです。パブリックなものが提唱されているのに、中央政府への憎悪と中間集団への憎悪が両方ある。政府もダメ、労働組合もダメといいながら、具体的にどこが担うのかわからないパブリックなものに訴えかける言説というのがあって、しかも結構支持されている

宇城 その場合、掲げられる「旗」は何なんだろうか。そして掲げる主体は誰なんだろうか。

小田川 わかんないんですけど、国民一人一人の汚れなき自発的な心情が醸し出す「美しい国」とか、あるいは全員野球という無限包摂的な「新しい公共」とか・・・・・・いや、やっぱりよくわからない。

よくわからないわりに、政治の世界でもマスコミの世界でも、そういう得体の知れない政府と中間集団を憎悪する奇怪なパブリック志向がやたらに氾濫しているというのが、いかにも現代日本の姿をよく描き出しているように思われます。

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2013年労働関係法制の展望@『電機連合NAVI』

『電機連合NAVI』2013年冬号に掲載した「2013年労働関係法制の展望」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/navi1301.html

1 労働者派遣法の抜本見直しに向けた検討

2 パートタイム労働法の見直し

3 障害者雇用-精神障害者雇用義務化と障害者差別禁止

4 労働安全衛生法改正案-メンタルヘルスとたばこのけむり

5 より中長期の労働法政策課題-集団的労使関係システムの見直し

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震災、CFW、そしてかーちゃんの力

JILPTの労働政策フォーラムの宣伝ですが、東日本大震災からほぼ2年の3月13日に、「震災から2年、復興を支える被災者の雇用を考える」というテーマで行われます。

http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20130313/info/index.htm

パネリストのメンツは以下の通りですが、

基調報告
被災地の雇用対策について
本多 則惠 厚生労働省職業安定局雇用政策課長

研究報告
被災者雇用が復興と自立に果たす役割~被災地調査からの示唆~
小野 晶子 労働政策研究・研修機構副主任研究員

キャッシュ・フォー・ワーク:東日本大震災での成果と課題
永松 伸吾 関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科准教授

事例報告
かーちゃんの力・プロジェクト協議会の取り組み
渡邊 とみ子 かーちゃんの力・プロジェクト協議会会長/イータテベイクじゃがいも研究会会長

NPO法人@リアスNPOサポートセンターの取り組み
鹿野 順一 NPO法人@リアスNPOサポートセンター代表理事

パネルディスカッション

パネリスト
本多 則惠 厚生労働省職業安定局雇用政策課長
永松 伸吾 関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科准教授
渡邊 とみ子 かーちゃんの力・プロジェクト協議会会長/イータテベイクじゃがいも研究会会長
鹿野 順一 NPO法人@リアスNPOサポートセンター代表理事
小野 晶子 労働政策研究・研修機構副主任研究員

コーディネーター
玄田 有史 東京大学社会科学研究所教授

JILPTの小野晶子さんとCFWの永松伸吾さんが研究報告、事例報告が二つという構成ですが、「かーちゃんの力・プロジェクト」ってすごい名前ですね。

司会は玄田有史さんですが、「創造的安息」というキーワードは出るでしょうか?

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JKリフレは労働基準法違反

なんだかデジャビュな記事ですが、やってる中身は微妙に異なるようです。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130127/crm13012721200007-n1.htm(女子高生「個室マッサージ」初摘発 警視庁)

18歳未満の女子高校生らに個室マッサージをさせたとして、警視庁少年育成課は27日、労働基準法違反(危険有害業務への就業)容疑で、東京・秋葉原や池袋などの通称「JK(女子高生)リフレ」のマッサージ店計17店舗を一斉に捜索した。同種店舗の摘発は全国で初めて。同課は経営者らを同法違反容疑で立件する方針だ。

「JKリフレ」は、女子高校生が個室で男性客に「肩もみ」や「添い寝」などのサービスをする店舗で、数年前から秋葉原や池袋を中心に拡大していた。

店舗の形態は風営法の適用外だが、同課は提供しているサービスが年少者労働基準規則で未成年の就業を禁止した「特殊の遊興的接客業」にあたると判断し、強制捜査に踏み切った。

一昨年の記事は、確か「女子高生クラブ」でしたな。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-b2de.html(女子高生クラブは労働基準法違反)

女子高生を雇って下着姿を客にのぞき見させたとして、神奈川県警は18日、労働基準法違反(年少者の危険有害業務の就業制限)の疑いで、横浜市の「横浜マンボー」を経営する会社員丹能貴光容疑者(37)を逮捕、同市中区の店舗を家宅捜索した。

同店は、HPで店の少女は全員が女子高生と宣伝しており、雑誌やインターネット上などで「女子高生見学クラブ」と呼ばれていた。

県警によると、同店は少女を従業員として雇い、マジックミラー越しに客に下着姿を見せた疑いがある。県警は4月25日にも家宅捜索していた。

県警は、風営法や児童福祉法違反容疑での立件も検討したが、営業内容が風営法違反などに当たらないとして、労基法を適用した。

改めて、労働基準法及び年少者労働基準規則の該当部分を。

労働基準法

(危険有害業務の就業制限)
第六十二条  使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
○2  使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
○3  前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。

 

年少者労働基準規則

 

(年少者の就業制限の業務の範囲)
第八条  法第六十二条第一項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第二項の規定により満十八歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし、第四十一号に掲げる業務は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)により免許を受けた者及び同法 による保健師、助産師、看護師又は准看護師の養成中の者については、この限りでない。
四十四  酒席に侍する業務
四十五
 特殊の遊興的接客業における業務

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石橋洋『判例の中の労働時間法』

130952石橋洋『判例の中の労働時間法』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/812

長引く不況のなか時間外労働が増え、残業代を巡る問題が多発・・・
いまこそ どんな職業でも「労働時間とは何か」の正しい理解が求められています。
複雑な労働時間の法的ルールを裁判例・判例から読み解き、
弁護士・社会保険労務士など実際の業務に役立つ入門書。

ということで、労働時間法にかかる判例の解説書です。収録されている判例は斯くの通り。

第1章 労働時間の概念
1 労働時間規制の仕組み
2 労働時間の概念を明確にする必要性
3 最高裁判例の検討
(1) 作業服への更衣等の労働時間性
CASE1:三菱重工業長崎造船所事件・最一小判平成12.3.9
(2)仮眠時間の労働時間性
CASE2:大星ビル管理事件・最一判平成14.2.28
(3)マンション住み込み管理員の労働時間
CASE3:大林ファシリティーズ(オークビルサービス)事件・最二小判平成19.10.19
第2章 時間外労働・休日労働の労働時間性
1 残業命令と残業禁止命令
2 裁判例の検討
(1)黙示の残業命令
CASE4:デンタルリサーチ事件・東京地判平成22.9.7
CASE5:ピーエムコンサルタント(契約社員年俸制)事件・大阪地判平成17.10.6
(2)残業禁止命令
CASE6:神代学園ミューズ音楽院事件・東京高判平成17.3.30
第3章 労働時間の把握・管理義務と算定
1 労働時間の適正な把握・管理の意義
2 裁判例の検討
(1)タイムカード等により時間管理がなされている場合
(ⅰ)労働時間管理義務とタイムカードによる実労働時間の事実上の推定
CASE7:京電工事件・仙台地判平成21.4.23
(ⅱ)信義則上の労働時間管理義務・タイムカード開示義務違反と不法行為責任
CASE8:医療法人大生会事件・大阪地判平成22.7.15
(2)時間管理がなされていない場合の労働時間の算定
(ⅰ)合理的推計方法による残業時間の算定(タイムカードに打刻がない部分)
CASE9:スタジオツインク事件・東京地判平成23.10.31
(ⅱ)残業時間の概括的認定・推認(タイムカードによる時間管理なし)
CASE10:ゴムノイナキ事件・大阪高判平成17.12.1
(ⅲ)割増賃金の割合的認定(タイムカードによる時間管理なし)
CASE11:フォーシーズンズプレス事件・東京地判平成20.5.27
第4章 時間外・休日労働義務の法的根拠
1 時間外・休日労働のルール
2 裁判例の検討
(1)過半数代表者
CASE12:トーコロ事件・最二小判平成13.6.22
(2)時間外労働義務の発生要件と法的根拠
(ⅰ)包括的同意説(命令説)
CASE13:日立製作所武蔵工場事件・最一小判平成3.11.28
(ⅱ)個別的同意説
CASE14:明治乳業事件・東京地判昭和44.5.31
第5章 時間外割増賃金などの基本給組入れや定額払いの適法性
1 割増賃金の意義と支払方法
2 裁判例の検討
(1)時間外割増賃金を基本給などに組み入れている場合
(ⅰ)基本給組み入れ
CASE15:小里機材事件・最一小判昭和63.7.14
(ⅱ)歩合給組み入れ
CASE16: 高知県観光事件・最二小判平成6.6.13
(ⅲ)年俸制への組み入れ
CASE17:モルガン・スタンレー証券事件・東京地判平成17.10.19
(2)定額の手当として支給
CASE18:関西ソニー事件・大阪地判昭和63.10.26
(3)管理職手当として支給
CASE19:関西事務センター事件・大阪地判平成11.6.25
第6章 管理監督者と労働時間
1 管理監督者とはだれか
(1)管理監督者性と深夜割増賃金
(ⅰ)管理監督者性の肯定例
CASE20:姪浜タクシー事件・福岡地判平成19.4.26
(ⅱ)管理監督者と深夜業
CASE21:ことぶき事件・最二小判平成21.12.28
(2)管理官監督者性の判断枠組み
(ⅰ)管理監督者性の否定例
CASE22:日本マクドナルド事件・東京地判平成20.1.28
(ⅱ)「経営者との一体性」の判断レベル
CASE23:東和システム事件・東京高判平成21.12.25
第7章 事業場外労働のみなし労働時間制
1 みなし労働時間制の仕組み
2 裁判例の検討
(1)「労働時間を算定し難いとき」(その1)
CASE24:株式会社ホルプ事件・東京地判平成9.8.1
(2)「労働時間を算定し難いとき」(その2)
CASE25:阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件・東京高判平成24.3.7

参考資料 労働時間に関する条文・行政解釈等
判例一覧

個人的には、監視断続労働についての判例として、例の奈良県立病院事件なども収録されると良かったように思います。

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市野川容孝・宇城輝人編『社会的なもののために』ナカニシヤ出版

4779507243市野川容孝・宇城輝人編『社会的なもののために』ナカニシヤ出版を、編者の宇城さん、共著者の宇野重規さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。大部でしかも中身の詰まった本です。

http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=918

平等と連帯を志向する
理念としての〈社会的なもの〉。
暗闇の時代に、その潜勢力を
来るべき政治にむけて
徹底的に討議する。

本書が一貫して問題にするものの一つは、政治的な理念としての社会的なものである。しかし、本書は政治的なマニフェストではない。社会的なものが何であったか、何でありうるかを正負両面で批判的に問いなおすことが、本書の目的である。その意味で私たちは、社会的なものを学問的に問いなおしたつもりである。本書は政治的マニフェストのはるか手前、あるいはその後ろに位置するものでしかない。各章は、基調報告とそれをふまえた討論からなる。各章の討論を通じて、私たちは見解の一致を見るよりは、その相違や対立に数多く直面することになった。このようなせめぎ合いは、社会的なものがこれからしばらく経験しなければならない闇夜の深さを告知している。しかし、このようなせめぎ合いなしには、その再生も決してありえないだろう。少なくとも私はそう考えている。

登場するのは

市野川容孝(いちのかわ・やすたか)
宇城輝人(うしろ・てるひと)
宇野重規(うの・しげき)
小田川大典(おだがわ・だいすけ)
川越 修(かわごえ・おさむ)
北垣 徹(きたがき・とおる)
斎藤 光(さいとう・ひかる)
酒井隆史(さかい・たかし)
中野耕太郎(なかの・こうたろう)
前川真行(まえがわ・まさゆき)
道場親信(みちば・ちかのぶ)
山森 亮(やまもり・とおる)

という錚々たるメンツです。

このタイトルにいう「社会的」の意味については、かつて本ブログでも市野川さんの本に寄せて書いたことがありますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_5a72.html(ザ・ソーシャル)

本書のうち、私にとって特に興味深かったのは、宇城輝人さんの基調報告をもとに討議されている第2章の「労働はまだ社会的なものの基礎たり得るか」というところです。

第二章 労働はまだ社会的なものの基盤たりうるか

基調報告(宇城輝人)

討議
一、「賃労働社会」の再検討
物であり、人格である労働/賃労働の外延――「家事労働に賃金を」が含意するもの

二、労働社会のディストピア
「低‐雇用」の広がり/雇用以外の道はあるのか?/日本的雇用/「新しい労働社会」の行く末

三、労働の排他性と必要に応じた分配
分配の三つの原理と社会的なもの/雇用という規範の脆弱化/雇用と労働の排他性と自由

四、ディストピアをどう回避するか
他者への気遣いをどう組み立てなおすか/社会保険に連帯はあるのか/労働社会のディストピアと賃労働からの解放

ここから、拙著をネタに宇城さん、宇野さん、前川さんらが論じているあたりから少々:

宇城 日本で労働が社会的なもの-共同体ではなく-の基礎だったことがあるのか、といわれると手に余って答えにくいですね。確かに、社会的なものといいながら共同体だったという面はあるように思う。親方子方関係のようなスタイルでやってきた部分があるし、労働組合も特に第二次大戦後は企業別の労働組合になってしまった。いろいろな要因が働いているだろうけど、連帯の基盤が仕切られていて、十分に一般的にならなかったということができるかもしれない。濱口さんの本は、ウェットで人格的であるがゆえのデメリットを、もう少しドライで物的なやり方でバランスをとろうという提案だと受け取った。

宇野 いやむしろ、これだけ人格的にやってきたんだから急にそれを変えようとしても難しいというニュアンスじゃないですか。

宇城 仕切られた社会性を拡張する構想といえばいいのかな。

前川 ただね、ヨーロッパでも、例えばフランスだって、期限の定めのない雇用契約というのが圧倒的だった時代には、程度の差こそあれ、賃金は必ずしも単なる限定された業務に対する対価ではなかったわけですよ。ただ、早くに不況を経験してリストラがあったために、単なる労働契約以上のもの、つまりメンバーシップだと思われていたのがそれは所詮景気の良かったときの幻想に過ぎないということになり、そのメンバーシップを今度は企業ではなく、社会に対するメンバーシップとしてとらえ直さざるを得なくなった。だから、濱口さんも、企業のメンバーシップから社会のメンバーシップへという切り替えをしましょうということでしょう。

宇城 そう言ってもいいと思う。そこで、小田川さんが繰り返しこだわっている問いを私も繰り返すけど、そのときに社会へのパスポートは雇用でしかないのか。

前川 そもそも雇用によるメンバーシップだけで社会の凝集性を維持することがもはや限界なのかもしれないという問題意識ですから、そうではないはずですね。

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集団的労使関係システムの見直しに向けて

『労基旬報』1月25日号に掲載した「集団的労使関係システムの見直しに向けて」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo130125.html

最近、非正規労働問題の解決の道筋として集団的労使関係システムに着目する議論がいくつかなされています。たとえば厚生労働省の「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」が2012年3月にとりまとめた報告書は、「職務の内容や責任の度合い等に応じた公正な処遇」を求めた上で、「・・・労働契約の締結等に当たって、個々の企業で、労働者と使用者が、自主的な交渉の下で、対等の立場での合意に基づき、それぞれの実情を踏まえて適切に労働条件を決定できるよう、集団的労使関係システムが企業内の全ての労働者に効果的に機能する仕組みの整備が必要である。」と、やや踏み込んだ提起をしています。

ここで、「集団的労使関係システム」に注がつけられ、「集団的労使関係システムにおける労働者の代表として、ここでは、労働組合のほか、民主的に選出された従業員代表等を想定している」と書かれています。ここには、これまでほとんど議論の対象になってこなかった集団的労使関係システムを通じた非正規労働問題の解決という道筋が垣間見えているともいえます。

こうした問題意識は、たとえば2011年2月の「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」報告書でも、待遇に関する納得性の向上に関わって「このため、ドイツの事業所委員会やフランスの従業員代表制度を参考に、事業主、通常の労働者及びパートタイム労働者を構成員とし、パートタイム労働者の待遇等について協議することを目的とする労使委員会を設置することが適当ではないかとの考え方がある」と、かなり積極的姿勢に踏み込んでいます。もっとも、その直後に「ただし、日本では、一般的には労使委員会の枠組みは構築されていないことから、パートタイム労働者についてのみ同制度を構築することに関して検討が必要となろう」とあるところからすると、この問題は集団的労使関係システム全体の再検討の中で検討されるべきという姿勢のようにも見えます。

私も2009年に刊行した『新しい労働社会』(岩波新書)の中で「非正規労働者も含めた企業レベルの労働者組織の必要性」を述べていたところですが、最近遂に労働法の標準的テキストである菅野和夫『労働法第十版』(弘文堂)においても、「特に、正規雇用者と非正規雇用者間の公平な処遇体系を実現するためには、非正規雇用者をも包含した企業や職場の集団的話し合いの場をどのように構築するかを、従業員代表法制と労働組合法制の双方にわたって検討すべきと思われる。」と書かれるに至りました。

今後、様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制の在り方に関して、法政策的な検討が積極的に進められていくことが期待されます。

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正規・非正規格差の道徳性

慶應義塾大学法学部の紀要誌『法学研究』の85巻9号に、大澤津さんの「日本における正規・非正規雇用者格差の道徳性について」というユニークな論文が載っています。

この方は政治哲学というか政治思想がご専門のようですが、現代日本のもっともアクチュアルな問題に果敢に斬り込んでいます。

・・・具体的に本稿が考察するのは、正規雇用者が彼らの企業メンバーシップに基づいて、非正規雇用者に対して排他的に様々な利益を得るとき、このような利益は道徳的に正当化可能であるのか、、という問いである。

多分、正面から労働問題だけやっている人々には、こういう問題の立て方はなかなか思いつかないでしょうね。

でも、法の議論が何らかの規範理論を前提とする以上、こういう次元にさかのぼった議論はいずれにせよ必要なはずではあります。

・・・正規雇用者と非正規雇用者の利益保障のメンバーシップによる差異が果たして道徳的に正当化できるものか否か、という問題は、政治理論においては連帯義務と一般義務の相克の問題として扱うことができる。

へえ、そうなんですか・・・。

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『労働判例』1月1・15日号のコラム「遊筆」に「日本のフォーク・レイバーロー」」

1281680141_p労働法に関わりのある人必携の判例誌『労働判例』1月1・15日号の巻頭コラム「遊筆」で、わたくしが「日本のフォーク・レイバー・ロー」を書いております。

http://www.fujisan.co.jp/product/1281680141/


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山口一男「女性活躍の推進と日本企業の機能不全脱却について」@RIETI

経済産業研究所のHPに山口一男さんの「女性活躍の推進と日本企業の機能不全脱却について」という論文がアップされています。

山口一男さんと言えば、そう、日本的雇用慣行に「見返りのある滅私奉公」という絶妙の表現をされた方で、それをもじってわたくしがブラック企業を「見返りのない滅私奉公」と呼んだことはご承知の通りです。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/pdp/13p002.pdf

男女格差に関する基本的事実を摘示した後、「日本的雇用慣行と制度の分析」を踏まえて、いくつかの政策提言をされているのですが、そのうちまず日本的雇用慣行と制度の分析のところで、いくつか注目される指摘をしています。やや専門的ですが、玄人的にはここが結構重要なのは、

・・・隅谷は日本の終身雇用や年功賃金を中心とする内部昇進制度は、このような内部労働市場と見た。一方舟橋の主な反論は、米国で内部労働市場を持つ企業は、年功に基づく自動的昇給があるわけでもなく、また企業内異動については雇用者のイニシアティブや意志を尊重しておこなうが、日本的雇用慣行では異動について雇用者のイニシアティブや意志は全く尊重されず、 経営者の意を汲んで主に人事部により決定される点が全く異なるという点であった。

日本の仕組みはアメリカで言われている内部労働市場とは違い、「異動について雇用者のイニシアティブや意志は全く尊重されず、 経営者の意を汲んで主に人事部により決定される」点に最大の特徴があるという指摘を、70年代という時点で舟橋尚道がしていたという点が重要です。山口さんも、

筆者も始めのころは、隅谷-舟橋論争は、基本的に隅谷が正しく、舟橋の批判は、コールの機能的代替物理論を併用すれば、本質的ではないと考えていた。しかし、次第に舟橋の指摘した日本企業が雇用者のイニシアティブや意志を考慮しないという点は、実はかなり本質的な違いであると思えてきた。誰が最初に言い出したのかは定かでないが正規雇用は「保障と拘束の交換」といわれる。日本的雇用制度の機能は、単に「企業特殊な人的資本の流出を防ぎ、採用・訓練コストを抑えること」だけでなく、無限定な職務内容や不規則な残業要求への従属を課すことによる拘束と高い雇用保障をすることの交換という機能をも持つという論である。もしそうであるならばそれは欧米の内部労働市場の機能と同じではない。また、その様な機能を持つならば、その合理性はどこにあるのかが問題になる。

と述べています。

このあと、村上・公文・佐藤の『文明としてのイエ社会』を論じて、

・・・村上・佐藤・公文の「系譜性」対「利潤最大化」の対比、そして筆者のいう「報酬の連帯性」対「報酬の個別性」の対比は、ともに機能の違いを意味し、これらの違いはわが国企業の雇用制度・慣行が単に欧米の内部労働市場の機能的代替物とみなすことは出来ないことを意味していると考えられる。そして「報酬の連帯性」は報酬が個人の業績・成果にたいして与えられるべきという規範が存在しないわが国の文化的初期条件の下で可能であった。また村上・佐藤・公文のいう「縁約」が日本企業の特性となったことは、「契約」の内容である「労働と賃金の交換」に加え、「会社という疑似家族のメンバーになること」と「会社への忠誠心」の交換という側面を正規雇用に付与したと思われる。またこのためわが国企業が正規雇用に新卒者を重視し、転職者・離職者を「忠誠心に欠ける者」として軽視する慣行が生まれたと考えられる。

と論じた後、拙著を引いて、こう論じています。

第2点目は労働法学者の浜口桂一郎氏の(2011)が『日本の雇用と労働法』で展開した「メンバーシップ型(典型的日本企業)」と「ジョブ型(典型的欧米企業)」の対比は構造面(縁約 対 契約、無限定の職務 対 役割分業の明確な職務)での村上・佐藤・公文の日本企業と欧米企業の対比とほとんど変わらないという点である。ただ浜口はわが国の労働関係法が成立時の概念において西洋の法に基づきながら、その適用において日本的雇用(メンバーシップ型)の雇用慣行実態に合うよう解釈されてきたという実例の記述を多数提示しており、そこは浜口独自の貢献で、わが国の労働関係法の適用の曖昧さを理解する点でも参考になる。

こう指摘されると、全くその通りだと思わずにはいられません。

ちょっと飛ばして、政策提言のところでは、

具体的原則1.最大就業時間は雇用者の基本的人権であり、また雇用者個人の就業時間についての選好も尊重されるべきである。

具体的原則2. 女性差別の意思の有無にかかわらず、特定の制度が原因で男女間の賃金や昇格・昇給機会の格差を生むなら、その制度は女性に対する間接差別であり、男女の機会の平等を阻むものとして法的に禁止されるべきである。

具体的原則3. 多様な人々の様々な「個人的制約」による社会的機会の不平等を政府は取り除く責任があり、またこれに関する企業努力も企業の社会的責任(CSR)である。

といった原則を提示していますが、ここでは最初の労働時間について、山口さんの説明を見ておきましょう。

・・・背景として最大就業時間の決定について、わが国で未だそれが雇用者の人権問題とされていないことが、過労死が発生したり、いわゆるブラック企業(浜口桂一郎氏の定義では「保障と拘束の交換」が日本的雇用慣行の特質で有るとした場合、「保障がないのに拘束する企業」あるいは「保障するふりをして拘束する企業」をいう)が横行することの一因となっているという著者の認識がある。また雇用者に長時間労働を企業が課することが出来るわが国の状況が、時間当たりでなく、一日当たりの労働生産性を重視する企業戦略に結びつき、それがワーク・ライフ・バランスの欠如、過労死、非自発的の超過勤務者の割合の多さ、などに結びついているとの認識も背景にある。

・・・ではわが国の場合はどうか、わが国の場合、労働基準法の第36条規定に従えば、超過勤務が可能となり、その場合同法は最大超過勤務時間について週15時間、月45時間などと限度時間を定めている。しかし、実際にこの限度時間は全く守られていない。

・・・しかし、このような第36条規定の基での労使の特別条項の合意が個々の雇用者について全く自発的なものであるのかは極めて疑わしい。・・・わが国雇用者の大部分はそのような「退出オプション」はなく、その結果過剰就業が蔓延し、過労死なども起こる状況があると考えられる。従って労働基準法における第36条規定における特別条項規定を廃止して限度時間を越える残業を原則として違法とし、週最大就業時間55時間と定めることが望ましい。・・・いずれにせよ現行の労働基準法36条の特別条項による限定時間の免除は労働者の人権を守るという労働基準法の精神をいわば「骨抜き」にしている。

極めて重要な指摘であると思います。

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規制改革で「国際先端テスト」労働基準もね

日経の記事で、

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2102K_R20C13A1EE8000/規制改革で「国際先端テスト」導入 経産相

茂木敏充経済産業相は21日、日本記者クラブで講演し、「日本の制度を(国際基準からかけ離れた)ガラパゴスにしない」と述べ、国際比較を取り入れた新手法で規制改革に取り組む考えを示した。「国際先端テスト」という手法で、日本独自の規制に合理的な説明ができない場合、「3年以内に国際標準にあわせる」方針だ。

文字通りの意味においてでは全く賛成ですね。

当然のことながら、労働基準についても、まさにILO条約という形で確立した「国際標準」にあわせていくということだという理解の上ですが。

まさか、労働基準に関してだけは、「国際先端テスト」を放棄して、中国や韓国と競争できない云々という話になったりしないと思いますが。

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本日の読売で「大卒雇用ミスマッチ」について一言

本日の読売新聞の23面、「社会保障 安心」の欄に、大津和夫記者による「大卒雇用ミスマッチ」という記事が載っています。

その最後のところに、常見陽平さんに続いて、私の発言が引用されております。

・・・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は、「学生個人が自力で就職先を見つけることには限界がある。大学は、職業教育の役割を強化するとともに、ハローワークと連携して地域の求人を掘り起こすなど、マッチング機能を高めることも求められる」と話している。

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65歳定年の衝撃@『』東洋経済

20120627000143301本日発売の『東洋経済』1月26日号は、「65歳定年の衝撃」という大特集ですが、

http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/

COVER STORY
人事・給与・採用が変わる!
「65歳定年」の衝撃

[Part1] 65歳のリアル 人事・給与が激変

|図解| 制度&市場編 4月から「65歳まで全員雇用」が義務化!

|図解| 企業編 経営者を悩ますコストと人材

シミュレーション 高齢者全員雇用でコスト増「1.9兆円」

<人事部長>覆面座談会
こんなシニアはいらない、次の重荷はバブル世代

欧州は定年・年金めぐり右往左往/シニア専門派遣の「高齢社」

INTERVIEW| 宮原耕治/日本郵船 会長
「日本の給与は見直しの時期を迎えた」

【1000人ネット調査】 60代からの仕事とおカネ、安心ですか?

INTERVIEW| 清家 篤/慶応義塾 塾長

[Part2] 企業の格闘、個人の奮闘

【NTT】中高年にメス、賃金は実質“切り下げ”

【トヨタ自動車】ハーフタイムで給料圧縮 高齢化で問うものづくり

経団連がもくろむ「賃金カーブ」見直し

【大和ハウス工業】定年延長でボーナス奮発の絶好調企業

【YKKグループ】65歳へ定年延長、いずれ廃止も

人事・総務関係者は必見!
主要63社 独自アンケート「高齢法にこう対応する」

【ナガホリ/テンポスバスターズ】最高齢は81歳! 中小企業のシニア活用術

国家公務員は定年後も安泰? 希望者の9割が「再任用」

[Part3] いくら必要? おカネと仕事

【年金編】支給年齢引き上げで年金額はこう変わる

【雇用保険編】退職後にもらう失業給付 年金との関係はどうなる

シニアのためのハローワーク活用術

これが実態! 高齢者求人ガイド

INTERVIEW|
城 繁幸/Joe's Labo 代表取締役
「財政のツケを若者に背負わせるな」
南雲弘行/連合 事務局長

ルポ| 警備に喫煙・駐輪対策 高齢労働者の厳しい現実

例によって、おなじみのメンツがお約束の発言をしているのは当然として、この中に私もちょびっと顔を出しています。

真ん中あたりの「欧州は定年・年金めぐり右往左往」というコラムで、アメリカの年齢差別禁止法の話に続いて、

・・・欧州でも定年は引き上げられつつある。英国が従来65歳だった定年を2011年に廃止。選択定年制のスウェーデンも、法定定年年齢は最長67歳だ。ただ欧州の場合、実力重視の米国とは、定年廃止・延長の意味は異なる。「年金の支給開始年齢を引き上げるため、高齢者に長く働いてもらおうという趣旨」(労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員)だ。

と引用され、その後かつての早期引退促進政策の失敗が書かれています。

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労働政策フォーラム 「職場のメンタルヘルス対策を考える」は明日です

そういえば、明日1月21日(月)の午後から、JILPT主催の労働政策フォーラム「職場のメンタルヘルス対策を考える」が開催されます。すでに一度御案内していますが、リマインド。

http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20130121/info/index.htm

 

近年、我が国では、増大し複雑化する業務、長時間労働、成果主義等を背景に、メンタル疾患になる労働者が増加しています。このことは、労働者個人の問題にとどまらず、職場全体の生産性に悪影響を及ぼしかねません。そのため、職場ごとにメンタルヘルス対策を行うことが求められています。

本フォーラムでは、労働者のメンタル疾患の罹患状況等を明らかにするとともに、職場のメンタルヘルス対策をどう行うか、行政、研究者、現場の視点から報告・議論します。

場所は例によって朝日新聞社の奥の浜離宮ホールです。

報告者(パネリスト)は次の通りですが、

13時30分~
基調報告 我が国のメンタルヘルス対策の現状と課題
椎葉 茂樹 厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長

研究報告 こころのケア:職場は何をしたらよいか
原谷 隆史 労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ部長

調査報告 職場のメンタルヘルス対策の実態~アンケート調査から~
郡司 正人 労働政策研究・研修機構主任調査員

事例報告 Hondaのメンタルヘルス対策
小林 由佳 本田技研工業株式会社人事部安全衛生管理センター全社メンタルヘルス推進チーム

15時30分~
パネルディスカッション

パネリスト
椎葉 茂樹 厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長
原谷 隆史 労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ部長
小林 由佳 本田技研工業株式会社人事部安全衛生管理センター全社メンタルヘルス推進チーム
郡司 正人 労働政策研究・研修機構主任調査員

コーディネーター
濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構統括研究員

ということで、今回は労働関係の研究機関として、労働安全衛生総合研究所と労働政策研究・研修機構がそれぞれの研究と調査の成果を示すとともに、企業の事例報告もあるという盛りだくさんになっています。

私はもっぱら司会役です。

私はもちろん精神医学面には本質的に素人なので、司会という立場で勉強させていただこうと思っています。

参考までに、JILPTの調査部門がこれまでビジネス・レーバー・トレンドなどに載せてきたメンタルヘルス関係の記事をいくつか挙げておきます。

2011年6月24日 職場のメンタルヘルス対策―その最新動向と取り組み―

現状と課題をどうみるか

JILPT「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」―約5000事業所の回答を集計

メンタルヘルス不調にどう対応すべきか―産業医や企業の先進的な取り組み事例―業務遂行レベルに着目した対応

<企業事例>アイエスエフネット キリンビール 東レ ソフトバンクアットワーク 千代田化工建設

うつ増加の背景はなにか

2010年7月26日 

職場のメンタルヘルスをめぐる最近の傾向と課題(1)

職場のメンタルヘルスをめぐる最近の傾向と課題(2)

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『POSSE』次号はおもしろそう

POSSE坂倉さんのつぶやきから:

http://twitter.com/magazine_posse/status/292285765856145411

3月発売の雑誌『POSSE』18号では、保守派からリベラル左派、経営者から人事の専門家まで、いろんな立場の人にブラック企業対策についてインタビューしております。イデオロギーや立場を超えてブラック企業に対する包囲網をつくっていけるような特集を企画しています。乞うご期待!

だそうです。

どういう方々が出てくるのか、興味深いですね。

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むかしむかしのエントリをめぐって

本ブログのむかしむかしのエントリが、思いがけずradiomikanさんとsumiyoshi_49さんの対話に出てきて、改めて自分でも読み直してしまいました。

http://twitter.com/radiomikan/status/292660509457674242

す:だから40年前に学生運動でマルクス主義にかぶれた人は、自ずと現在は「市場競争の最前線で戦っている経営者をまず優遇すべきだ」「競争のない公務員の待遇は高すぎるのではないか」という考え方になる。今の構造改革派は昔の社会主義者。構造改革という言葉自体が元々左翼系の用語だけど。

ら:江田三郎でしたよね「構造改革」という言葉を使っていたのは。彼は社会党にいたものの、後に党を割ってしまいましたが…

す:昔hamachan氏がネットリフレ派と激しく喧嘩しているときに詳細に解説されてましたね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_b2d6.html(構造改革ってなあに?)

ら:濱口桂一郎先生のブログはいつも参考にさせてもらっていますね。このエントリーも今でも読まれるべき内容だと思います。

す:自分も不勉強なもので構造改革が左翼用語だったというのはこのエントリで知りました。何か妙な人間の好き嫌いや視野の狭い政策論で濱口氏に謙虚に学ぼうとしない経済系の人たちは、実にもったいないことをしていると思います。

ら:僕はいわゆるリフレ派に属するスタンスではあるんですが、濱口桂一郎先生のブログは時折耳が痛くなりながらも、それでも耳を傾けるべき提言があると思いますね。仰る通り、ちょっとした好き嫌いでシャットアウトしてしまうのは勿体無いことだと思います。

些末な立場の違いを超えて、広く学ぼうとする心を持った、こういう方々の存在が、日本の知的世界を少しずつでも良くしていくことを信じたいと思います。

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唐津博・和田肇・矢野昌浩編『新版 労働法重要判例を読む』Ⅰ・Ⅱ

唐津博・和田肇・矢野昌浩編『新版 労働法重要判例を読む』Ⅰ・Ⅱ(日本評論社)をお送りいただきました。有り難うございます。

これは数ある労働判例本の中で、数少ない重要判例に絞って詳細に検討を加えるというタイプの本です。どなたがどの判例を担当しているかというと、

06133労働判例をどう読むか……和田 肇

第1章 労働法の当事者
1 労基法上の労働者──横浜南労基署長(旭紙業)事件……岩永昌晃
2 労組法上の労働者
    ──国・中労委(ビクターサービスエンジニアリング)事件……野田 進
3 労組法7条の使用者──朝日放送事件……米津孝司
4 偽装請負における注文者・請負労働者間の雇用契約の成立
    ──松下PDS事件……鎌田耕一

第2章 労働関係の形成
5 採用の自由、試用期間の法的性格──三菱樹脂事件……浜村 彰
6 採用内定の法的性格──大日本印刷事件……川田知子
7 試用を目的とする有期労働契約の期間の性質──神戸弘陵学園事件……緒方桂子

第3章 就業規則と労働協約
8 就業規則の規範的効力──電電公社帯広局事件、フジ興産事件……武井 寛
9 就業規則の不利益変更の効力──第四銀行事件……根本 到
10 労働協約の要式性と効力──都南自動車教習所事件……鎌田耕一
11 労働協約による労働条件の不利益変更
    ──朝日火災海上保険(石堂)事件……名古道功
12 労働協約の拡張適用──朝日火災海上保険事件……大内伸哉

第4章 労働組合と団体交渉
13 ユニオン・ショップ協定の有効性と適用範囲──三井倉庫港運事件……奥田香子
14 管理職と労働組合──中労委(セメダイン)事件……和田 肇
15 チェック・オフの法的性格──エッソ石油事件……米津孝司
16 団体交渉拒否と司法救済──国鉄事件……小西康之

第5章 組合活動・争議行為と不当労働行為
17 就業時間中の組合活動の正当性──大成観光事件……中窪裕也
18 企業施設の利用と組合活動の正当性──国鉄札幌駅事件……矢野昌浩
19 ピケッティングの正当性──御國ハイヤー事件……柳屋孝安
20 ロックアウトの正当性と賃金請求権
    ──安威川生コンクリート工業事件……根本 到
21 不当労働行為の主体──東海旅客鉄道事件……有田謙司
22 複数組合の併存と使用者の中立義務──日本メールオーダー事件……名古道功
23 使用者の言論の自由と不当労働行為──プリマハム事件……矢野昌浩
24 不当労働行為救済における労働委員会の裁量権
    ──第二鳩タクシー事件……盛 誠吾
25 大量観察方式──紅屋商事事件……三井正信

06134第6章 賃金
26 債務の本旨に従った労務提供──片山組事件……山下 昇
27 賃金全額払いの原則の例外
    ──シンガー・ソーイング・メシーン事件……國武英生
28 パートタイム労働者の賃金差別──丸子警報器事件……川田知子
29 退職金の法的性格と競業避止義務──三晃社事件……山下 昇
30 争議不参加者の賃金請求権──ノースウエスト航空事件……盛 誠吾
 

第7章 労働時間
31 労働時間の概念──大星ビル管理事件……橋本陽子
32 時間外労働命令権の根拠と限界──日立製作所武蔵工場事件……有田謙司
33 年休の利用目的と時季変更権行使における配慮
    ──横手統制電話中継所事件……長谷川 聡
34 産前産後休業等と賞与の支給要件──東朋学園事件……菅野淑子

第8章 人事異動
35 出向命令権の法的根拠と労働者の同意
    ──新日本製鐵(日鐵運輸第二)事件……唐津 博
36 配転命令権の根拠と限界──東亜ペイント事件……中内 哲
37 会社分割における事前協議の意義と手続違反の法的効果
    ──日本IBM事件……緒方桂子

第9章 プライバシー・懲戒
38 労働者の人格的利益の保護──関西電力事件……山川和義
39 企業秩序違反事件の調査義務と懲戒処分──富士重工業事件……池田 悠
40 事件発生から長時間経過した後の懲戒処分の効力
    ──ネスレ日本(懲戒解雇)事件……奥田香子

第10章 労働災害
41 業務上の負荷と脳・心臓疾患の発症との因果関係
    ──地公災基金鹿児島支部事件……小畑史子
42 過労自殺と使用者の安全配慮義務──電通事件……本久洋一

第11章 労働契約の終了
43 予告義務違反の解雇の効力と付加金請求──細谷服装事件……水島郁子
44 解雇権濫用法理──学校法人敬愛学園(国学館高校)事件……古川陽二
45 整理解雇の効力──大村野上事件……唐津 博
46 退職強要──下関商業高校事件……石田信平
47 辞職願の撤回──大隅鐵工所事件……中内 哲
48 有期契約と雇止め──日立メディコ事件……水島郁子
49 非常勤公務員の再任用拒否──大阪大学事件……武井 寛
50 解雇期間中の賃金と中間収入の控除──あけぼのタクシー事件……中窪裕也

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日本の派遣法に対するILO勧告は何を求めているのか?

2013_01『情報労連REPORT』1/2月号の「労働問題ここがツボ!」は「日本の派遣法に対するILO勧告は何を求めているのか?」 です。

http://www.joho.or.jp/doc/report/

日本のうち向けのロジックとそと向けのロジックがとんでもなくかけ離れていることは、労働問題では実はよく見られることですが、派遣労働をめぐる国内向けのロジックと国際向けのロジックの乖離ぶりもすさまじいものがあります。

こういうあたりにマスコミもきちんと目を向けていただけると良いのですが・・・。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1301.html

2012年3月、国際労働機構(ILO)はILO181号条約違反申立に関して日本政府に勧告を行いました。これは、全国コミュニティユニオン連合会の申立に基づくもので、昨年末に刊行された『労働法律旬報』1780号にその邦訳とともに、これに関わるシンポジウムの記録や諸論文も掲載されています。その一つ、同連合会会長の鴨桃代さんの「何としてもILOの日本政府に対する勧告を活かし、『登録型派遣』の禁止を実現したい」というタイトルからは、あたかもILOが日本政府に対し登録型派遣の禁止を要求しているように読めます。実際、同誌の特集はそういう認識を前提にして編集されているようです。

しかし、ある程度先進諸国の労働事情に通じた人ならば、こういう疑問を抱くはずです。ILO181号条約は登録型派遣を禁止していないし、同条約を批准している欧州諸国も登録型派遣を禁止していないのではないか。ドイツはかつて常用型派遣に限定して登録型を禁止していたが、ハルツ改革でそれを撤廃したのではないか。もしILOが「登録型派遣を認めているから」という理由で日本政府に勧告を行ったというなら、これら欧州諸国にも行うべきではないか。もし勧告していないとしたら、それは人種差別ではないのか?と。

幸いにして、ILOはそういう人種差別的な勧告を行ったわけではありません。ILOは登録型派遣を禁止せよなどと求めていないからです。つまり、上記タイトルはミスリーディングなのです。ILOに申し立てられたのは伊予銀行(いよぎんスタッフサービス)事件で、13年間継続雇用されてきた派遣労働者が、上司のハラスメントに対して謝罪を求めたところ雇止めされたという事件です。勧告の文章は入り組んでいて大変わかりにくいのですが、要するに同事件の最高裁判決が「雇用の継続を期待する派遣労働者の権利を否定」していることが、同条約1条1項の「雇用」の概念や5条1項の差別禁止規定との関係で問題とされているようです。

その理由は、原審の高裁判決が極めてあからさまに語っています。「同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは、常用代替防止の観点から同法の予定するところではない」、「Xの雇用継続に対する期待は、派遣法の趣旨に照らして、合理性を有さず、保護すべきものとはいえない」。つまり、日本の労働者派遣法の金科玉条とされている常用代替防止原則こそが、直接雇用の有期労働者であれば認められうる雇用継続期待による雇止めからの保護を派遣労働者から奪っているわけです。とすれば、解決策はただ一つ、派遣労働者を直用有期労働者に比べて差別せよと命じている常用代替防止原則の撤廃でなければなりません。ところが上記シンポジウムの最後に、派遣労働ネットワーク理事長の中野麻美さんは常用代替防止原則を改めて確認すべきだと主張しているのです。

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なりすましアカウント削除の連絡

ようやく、去る1月16日に、twitter serviceより、私の名前と写真と用いた悪質ななりすましアカウントを削除したという連絡を受けました。

この間の経緯は、特に個人のなりすまし事案についてきちんと最後まで報告されたものは少ないようなので、これからもこういう悪質な行為は後を絶たないであろうことを考えると、広く皆様に共有していただく値打ちがあるかと思います。

既に本ブログでも述べたように、私のなりすましアカウントが現れ、あちこちに誹謗的な言辞をまき散らしはじめたのは昨年12月29日です。私は直ちに本ブログで警告を発し、なお脊髄反射する人が絶えないのを見て警告を繰り返しましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-d4af.html(私の偽者がツイートしているようですので、ご注意下さい)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/hamachan-0582.html(再度警告:ツイッター上でhamachanの偽者が横行しております。)

このエントリへのコメントで、ikeさんが、

なりすましは規約違反だそうですからアカウントを削除するよう要請できるかもしれません。

と教えていただいたので、年が明けて1月7日になってtwitter service に要請しました。このように初動が若干遅れたのは私の側の準備不足の故ですが、ここまでは

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-4806.html(悪質なツイッターなりすましについて)

に述べたとおりですが、実はこのあとまだ問題があったのです。

要請後、twitterからこのようなメールが来ます。

Hello,

This email is to confirm that we have received your report regarding an account impersonating you on the Twitter platform. In order to process your report, we first must confirm your identity.

To confirm your identity, fax a copy of your valid government-issued photo ID (e.g., driver’s license, passport) to Twitter at 415-222-9958. Please write “Attention: User Safety, Twitter Inc.” at the top and include your ticket number (#).

Once we have received your fax, we will review and process your report. We will not process your report until we receive your faxed ID.

つまり、免許証かパスポートの写しをアメリカまでFAXしろ、と。

何?と一瞬思いましたが、その後ろに

• If a fax machine is unavailable, you can send a fax from your computer for free through third-party services such as FaxZero (http://faxzero.com/), Popfax (http://www.popfax.com/), or efax (http://www.efax.com/). Please do not reply to this email with a copy of your ID.

とあったので、これは便利だ、と、このFaxZeroで送ってしまったのです。いや、それでどこが悪かったのは未だによく分からない。なぜなら、その後、このFaxZeroから、確かにおまえのFAXをtwitterに送ったよ、というメールを貰っているからです。

Dear Keiichiro Hamaguchi,

Your fax to Twitter at 4152229958 has been sent successfully!
Your fax included 1 page of coversheet with your text and 1 page of attached documents.

The fax was sent from 1-800-980-6858.

Thank you,
FaxZero.com

ところが、それで事態が進んでいると思っていたら・・・1月13日になって、twitterからこんなメールが届きました。

You have a pending impersonation report and it's been awhile since we've heard from you. This is a friendly reminder, that in order to move forward with your impersonation report, we need to confirm your identity.

To confirm your identity, please fax the identification information outlined in our previous email. For security reasons, we are only able to accept this information via fax; our systems strip incoming email attachments. We understand that this can be inconvenient; please note that this policy is in place to prevent against false and/or unauthorized reports. Rest assured that this faxed information will be shredded as soon as it has been used to confirm your report. Additionally, we will be able to bypass this step for any future reports.

Please fax the information to Twitter at 415-222-9958. Include your ticket number (#) and write “Attention: Twitter User Safety.” This is a United States number, so be sure to include the appropriate international dialing code if you're sending from outside the United States.

Your ticket will be closed, however, you can reopen it by sending in the requested identification or by responding to this email.

Thank you,

Twitter Trust & Safety

おいおい、ちゃんとFAXしたはずじゃないか・・・と思いましたが、こう言われては仕方がなく、FaxZeroで送ったはずだがというメールを返すとともに、もういっぺん今度は物理的なFAX機で送りました。日本からアメリカへは。コンビニのFAX機では1通100円になります。

そしてようやく1月16日になって、

Hello,

Thank you for providing this information. We have removed the reported profile from circulation due to violation of the Twitter Rules (https://twitter.com/rules) regarding impersonation. Your faxed ID has been shredded.

Thanks,

と、なりすましアカウントを駆除した旨の報告があったというわけです。

こうして、結果的にかなりの時間がかかってしまいました。これは、今後似たようななりすましに悩まされる方々へのご参考になるのではないかと思います。

そして、改めて思うのは、なりすましを駆除するのにこれだけ手間がかかり、時間がかかるということを考えると、それこそ楠正憲さんがつぶやいておられたように、短期決戦型の選挙でネット選挙活動がうかつに解禁されると、候補者のなりすましアカウントによるとんでもない言動で炎上してしまうと、事態が沈静化する前に大勢が決してしまいかねないという、おそろしい危険性があることが分かります。

(閑話休題)

Image侍戦隊シンケンジャーに出てくる外道衆に「ナリスマシ」というのがいるそうです(右の写真)。

http://www.tv-asahi.co.jp/shinken/contents/gedoushu/0013/

説明によると、

向かい合った二人の顔のような、二つの瓜のような、アヤカシである。
自分の顔は持たないくせに、他人の顔や姿形を完璧に真似て、誰にでも変身することができるという。その能力で様々な人間にまんまとなりすまし、周囲を混乱させては、その様子を陰で見て高笑いしながら楽しむ悪党である。武器の瓜実複相刀は瓜二つの2本の刀で、必殺暗黒斬りが巻き起こす爆発にも注意すべし。
現代の伝承で『のっぺらぼう』という妖怪がいるとされている。のっぺらぼうは、目鼻や口、何もないつるんとした顔の化け物らしい。おそらくは、ナリスマシが本当の顔を持たないことが、『のっぺらぼう』伝承のルーツであろう。

ネット上のなりすまし外道にもそのまま使える説明になっているところがなんとも・・・。

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大内伸哉『経営者のための労働組合法教室』経団連出版

Bk00000256大内伸哉さんの新著『経営者のための労働組合法教室』(経団連出版)をお送り頂きました。有り難うございます。

こういうタイトルを表層的、扇情的に受け取ると、最近ネット上にも良く広告を出している「経営者向け労働組合対策セミナー」みたいな本か、と勘違いされるかも知れませんが、もちろん大内先生がそんな低俗な本を出すわけはないのでして、

http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=256&fl=

労働組合法を遵守することは、経営者にとっての最低限の責務であるだけでなく、よい経営のための要諦であって、経営者には労働組合法の基礎的な知識が欠かせません。本書は「経営者のための~」という書名ですが、書かれている内容は労働組合問題に悩む経営者のためのマニュアルではなく、法によって大きなパワーが与えられている労働組合と良好な関係を保ち、よい経営をしていくための一書です。労働委員会の公益委員として数々の事件を担当した著者が、労働組合と上手につき合っていくための基礎的知識、労働組合をめぐる法的ルールをわかりやすく解説。経営者のみならず、実務担当者にもおすすめします。

大内さんご本人も、ブログで、

http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-590d.html

こういうタイトルにすると,労働組合関係者の方は読んでくれないのではないか,内容が偏っていると誤解されないか,という気もしたのですが,でも経団連出版から出すものですし,もともとの動機は,はしがきにも書いているのですが,労働組合法をどうしても軽視しがちな経営者に読んでもらいたいという気持ちがあったので,まあこのタイトルで行こうということになりました。

と述べています。

逆に、ある程度労働法を勉強した人にとっては物足りない感を抱かせるかもしれませんね。

最後の第20講「労働組合とどうつきあうべきか」には、一歩踏み込んだ大内さんの考え方が若干にじみ出ています。

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『日本の雇用終了』を読む気が起きない理由

112050118特定社労士の「しのづか」さんが、『日本の雇用終了』を読む気が起きない理由を書かれています。

http://sr-partners.net/archives/51877589.html(田舎の企業ほど能力不足ですぐにクビにする)

日本の雇用終了―労働局あっせん事例から」 (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ) が人気のようですが、私はまだ購入していません。実はこの本が発刊された直後に私はJILPTのサイトから購入を申し込もうとしてうまくいかず、結局購入できませんでした。その後、あまり読みたいという気が起きずに現在に至っています。

あらら、それは申し訳ありません。でも、「その後、あまり読みたいという気が起きずに現在に至ってい」る理由は、もう少し別の所にあるようです。

なぜなら、ほぼ毎日中小零細企業の労働者から解雇や退職勧奨の相談を受けているからです。本で得る情報より、生の声を聞くほうがはるかに心に響きます。

これは全くおっしゃるとおり。この本はあっせんの事例集なので、それと同じような事案を毎日見ておられる篠塚さんには、全然目新しくないことはある意味で当然だと思います。

ただ、これを逆に言うと、篠塚さんのように現場の実情を毎日目のあたりにしているのではない人々、とりわけ経済学の教科書だけを頭に詰め込んで、もっともらしく日本の解雇法制がどうこうと論じているような人々にとっては、逆に極めて目新しい、「えっそんなことが起こっているの?」という世界でもあるわけで、だからこそ、こんな事例がひたすら載っているだけの本が、それなりに評判になったりするのでしょう。

もう一つの理由は、労働局のあっせん事例集ということですが、その解決金のレベルの低さに怒りしか湧き起こらないからです。10万円ぽっちの解決金で和解させられるなど、あってはならない。悪徳企業に対し、不当な解雇で訴えられても10万円を払えばけりがつくという先入観を与えてしまっています。

これも、篠塚さんのような立場からはそういう感想も出てくるのでしょうけど、それこそ、大まじめな顔をして、「日本ではほとんど絶対的に解雇なんてできない」とか、世界中で日本が一番解雇が難しい国だなどと論じる人々が後を絶たない論壇の現況を考えれば、こういう現実が現に存在するということを世に伝えることの意義は大きいと思っているのです。

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社労士会労使問題研究会でお話

本日、東京社会保険労務士会労使問題研究会に呼ばれて、「日本の雇用終了」についてお話しさせていただきました。

中身は本の通りですが、そこでの会話の中で、今野さんの『ブラック企業』で、ブラック士業として一部の社労士のことが書かれていることが話題になりました。

社労士だけじゃなく、弁護士も挙げられているわけですが、まあ、確かにそういう人々がいるのは事実であるとと同時に、まっとうにやってる士業の方々がいっぱいいるわけで、なかなか難しいなあ、と思いました。

この辺、つまみ食い的に取り上げられるとまずい面があるのは確かなんですね。とはいえ、指弾すべきはきちんと指弾しなければならないわけで、ほんと難しい。多分、今野さんもいろいろ悩んでいるんじゃないかな、と思います。

講演後の懇親会で、例のなりすまし事件について結構ご心配いただきました。有り難うございます。

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濱ちゃん先生がどう暴れるかが期待でしたが、想像以上に大暴れ(笑)

というわけで、本日、東大社会科学研究所のシンポジウムで、格調高い玄田さんの報告に対し、まことに格調低いコメントをさせていただきました。

あまりの格調低さに愕然とした皆様には改めてお詫び申し上げます。とともに、これもパブリック・リレーションの一環ということで、お許しいただければ、と。

(追記)

シンポに参加された山内栄人さんが、「現場改善コンサルブログ」でシンポの様子を書かれていますが、わたくしのこめんとについては、

http://ameblo.jp/kaizen-yamanouchi/

濱ちゃん先生がどう暴れるかが期待でしたが、想像以上に大暴れ(笑)

だそうで・・・・・(笑)。

その他の評:

http://twitter.com/proton21/status/289610749372952576

玄田有史先生の研究報告を聞きにきた。ここのコメンテーターに濱口桂一郎先生を連れてきた玄田先生のセンスがいい。

http://twitter.com/100lines/status/289613304425496576

東大社研のシンポ「危機に克つための雇用システム」きてます。今日の主役、玄田先生の発表を受けての濱口さんのコメントが最高だった。曰く「人はそんなにクリエイティブじゃない。というか、クリエイティブであれという上からの圧力は人をクリエイティブにしない」

http://twitter.com/100lines/status/289658626845593600

今日の午後は一日これに「危機に克つための雇用システム」。金曜の午後ぜんぶ使うシンポにいったい誰が来れるんだよという感じで、やっぱり研究者とマスコミ以外には大企業人事の偉い人とか、労組関係のおっさんたちばかりだったのではと思う

http://twitter.com/100lines/status/289660147930918912

でも今日のシンポは面白くて、刺激を受けた。6人のパネリストが好き勝手なことを話していたのと、それを司会で回す玄田さんのファシリテーション力が優れていたからだと思う。あと濱口さんと水町さんを生で見られたのも楽しかった、最後に質問もした。非常に重要な論点がたくさんあったと思う

http://twitter.com/100lines/status/289661252454727682

玄田さんの研究発表の結論は、何が起こるか分からない危機の時代にあっては労働/余暇の二分法ではなく、3つめの項として個人に「創造的安息」(クリエイティブ・レスト)の時間を保障することが重要だ。何も考えず安穏としていてはいけない、という話。要約するとどうしてもこうなってしまう

http://twitter.com/100lines/status/289662311273218049

それに対する濱口さんのコメントは、結局こういう話は、どんなに調査のプロセスや中身が優れたものであろうとも、マスコミが報道すると翌日の小さな新聞記事を見たどこかの社長が「そうか、これから社員は休息の時間もクリエイティブでないといけないのだ!」(机をバンッ!)とかいって勘違いする、と

http://twitter.com/100lines/status/289663323245518849

ほんとそうで、俺がまっさきに思い浮かんだのが、ユニクロが社員の「労働時間外」に英会話教室に通わせて(もちろんグロ人=ユニクロから見れば「危機に克つ人材」育成のため)、その英会話教室の成績が悪いと給料を下げる、というな話。これは別に英会話教室じゃなくても同じことだと思う

http://twitter.com/100lines/status/289664191000875008

何が「創造的」であるのか、誰にとって「創造的」であるのか、「創造的」であることと将来利益を生むことはどれくらい相関するのか、こうしたことが曖昧なまま(社会的合意形成が無いまま)言葉だけ流通すると、今の雇用システムではユニクロみたいなことが起こりがちで、そのデメリットは非常に大きい

http://twitter.com/100lines/status/289664671806533633

…というようなことをパネリストの人も口々に突っ込んでいたし、個々の方々の短い口頭発表などもそれぞれ面白そうで、もうちょっと資料も読んで整理してみたい

http://twitter.com/100lines/status/289665881942929408

「安心して家で休める」ということの価値をちゃんと主張した人のほうが多くて、それはまともで本当に安心した

http://twitter.com/kubotch52/status/290123589645135872

金曜に拝聴した東大社研さんのシンポ「危機に克つための雇用システム」。勤務時間インターバル制度につき、濱口先生の自由がないはずなのに、自由があるとして働いていて、それに縛りをかけられるという意識がある一方、自由が認められているはずなのに、自由がない働き方をさせられている労働者の存在

http://twitter.com/kubotch52/status/290124795742396418

続)…という複層的な構造をもつという内容の指摘(だったと思います)は、その通りなんだろうなぁ。にしても、他のパネリスト方が、インターバル制度につき「一律に導入は反対」とした上で、「研究者とかは困る」と挙げていたことを思うと、そもそも経営者側と立場を同じくして働く人や裁量労働の対象

http://twitter.com/kubotch52/status/290125656363245568

続)…となる人も、同じように規制の網にかけられるかのような「誤解」を解くことが、議論の前提となるのだろうと、実感できました。とにかく、いろんな話題についていけてないのだろうなぁ、と思いながらも、掛け合いの部分も含め、楽しませていただきました。

http://twitter.com/kiryuno/status/289763137379524612

東大社研の雇用問題シンポに参加しました。久々の東大でしたが、特に感想も無し。シンポのほうも濱口先生のコメントが面白かったくらいですかね。クリエイティブ・レスト、という概念が提起されていましたが、正直この言葉を使うのはいかがなものか、と。

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「ネット上で中傷」通報最多ペース@日経

本日の日経新聞に、

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0702K_Q3A110C1CR8000/「ネット上で中傷」通報最多ペース 摘発は限定的 なりすまし 悪意の投稿

インターネット上で他人の名誉を損ねたり中傷したりする書き込みが、過去最多となるペースで増えている。

今まさに、私が悪質ななりすましツイッターの被害を受けているだけに、この深刻さが身にしみます。

・・・他人になりすました上で、見方によっては当事者の人格を疑わせる書き込みをするケースも目立つ。・・・

・・・警察庁幹部は「悪質な名誉毀損は警察でも看過できないが、撲滅するにはユーザーのモラルやサイト管理者の努力も必要だ」と話している。

いや、やっている手合いのモラルに期待できるのなら、こんなひどい目に遭っていないわけですが・・・。

むしろ、これはモラルとは言いがたいのですが、例えば私のなりすましの誹謗ツイートに対し、よく見れば怪しいことがわかるのに、あまり考えもなく脊髄反射的に反応してしまうこと・・・それ自体はもちろん、道徳的には悪ではないのですが・・・が、こういう悪質な連中をはびこらせる一つの土壌になっているという認識も必要な気がします。

オンタイムのやりとりが魅力であることの裏腹として、きちんと相手のアイデンティティを確認しないままに表層的な反応が反応を呼んで拡大してしまう恐ろしさがあるわけです。

そういうことも含めて、ネット上のルールというものを考えていく必要があるのかもしれません。

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企業別下部構造とは組合に限らない

昨日のエントリ

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-21ea.html(ポリティカル・ユニオニズムの企業別的下部構造)

に対して、金子さんがリプライされているのですが、

http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-252.html(企業別下部構造は決定的な要因ではない)

若干話がずれているような・・・。

ポリティカル・ユニオニズムに濱口さんが反応してくださって、問題提起してくださったのですが、私の率直な感想で言うと、企業別下部構造などというものはアプリオリに存在していたわけではない、ということを主張したいと思います。そもそも、企業別組合は戦後に出来たものです。

厳密に言えば、(それこそゴードンの本に書かれているように)戦前から企業別組合の萌芽はあったわけですが、ここでいっているのはそういうことではありません。

私が引用した通達はいうまでもなく戦後の状況を描写解説したものなので、戦前の話とは直接関係ないし、企業別組合がアプリオリに存在するかしないかなどという話とも何の関係もありませんが、そういう話でもありません。

そもそも「企業別組合は戦後に出来た」のはなぜか、を戦前の状況にさかのぼって考えてみても、まさに大企業部門が横断的組合を徹底的に排除しつつ企業内に(縦断組合とも呼ばれる)工場委員会体制を構築したことが、その背景にあるわけです。

そして、そのように集団的労使関係システムの中核が非組合的形態で企業レベルにあるがために、それ以外のレベルの集団的労使関係システムが実質的な労使関係主体となりにくく、そのため政治的活動に傾斜するという構造自体は、戦前戦後を通じて変わっていないという言い方もできるのではないでしょうか。

ただ、戦前の総同盟の系譜に連なる人々は、そういう姿を本来のものではないと考えていたわけです。

以前に本ブログで引用したように、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b666.html(労使関係の「近代化」の二重性)

1945年の敗戦後、日本中の企業で労働組合が雨後の筍のように結成されました。総同盟は「一般従業員が会社別従業員組合組織の希望を有することは遺憾ながら我等の当面する事実である。我等はこの迷蒙を打破しなければならない」と述べるなど企業別組合という在り方には批判的で、ブルーカラー労働者のみによる産業別単一組合の結成を進めようとしましたが、工職混合企業別組合への大勢に押し流されていきました。この時期の主流派は、一企業一組合の原則に基づき、「労働者全員を下級社員をもひっくるめて一つの工場委員会に組織」し、工場委員会の代表者会議を地域別・産業別に組織しようとした共産党の影響下の産別会議でした。

右派の総同盟の方が、欧米型のトレードユニオニズムに親和的で、左派の産別会議の方が(ある意味ではソビエト型ともいえますが)戦前日本の工場委員会型に親和的であったということを念頭に置いておく必要があります。

こういうタイプは、ある意味で自覚的に、上部団体は政治活動に傾斜するわけで、昨日の「企業別的下部構造」には、こういうソビエト型企業別組合像も流れ込んでいるわけです。この点、昨日紹介の通達を執筆した中西實氏が退官後書いた『労使関係論』にはかなりはっきりと書かれています。

金子さんがいうゼンセン同盟は強いぞ、というのは、そういう意味からいうと、日本では例外的にトレードユニオニズム的(ここはそれでも「的」が二つか三つくらい付く程度の間接的なものでしょうが)な面があるからだろうと思います。

で、重要なのは、そういう過去の経緯はほとんどみんなが忘れ去ってしまった21世紀の今になっても、上述のような構造はなお大きな影響を及ぼし続けているということではないかと思います。

ちなみに、このエントリや上で引用したエントリでちらちらと書いていることは、今某雑誌のために書いている某文章のテーマだったりするので、それが公開されたときには、またご報告させていただきますね。

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ポリティカル・ユニオニズムの企業別的下部構造

金子劇場の続き・・・かどうかはともかく、金子良事さんが「ポリティカル・ユニオニズムというもの」という新しいエントリを起こしています。

http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-250.html(ポリティカル・ユニオニズムというもの)

こんな風に書くと誤解を生むかもしれないけれども、ポリティカル・ユニオニズムという言葉がものすごくフィットするのは日本なんじゃないかなと思います。それは組合活動がやはり圧倒的に興隆した時代がまさに冷戦構造が出来上がっていった時代とパラレルであったことが大きい。19世紀から第二次大戦まで国家というものがワッと大きくなっていった。その幻想から覚めていくのがおそらく1970年代以降、戦時国家の鬼子であった福祉国家が見直されるときでした。でも、日本では55年に転機があったと考えたい。この場合、私が重視しているのは春闘です。

この認識には全く賛成ですが、なぜそうだったのか?という点について、まさにそのポリティカル・ユニオニズムがなお盛んだった1950年代半ばに当時の労働省が発出したある通達の一節が、見事に説明しています。

・・・第三に、企業別組織をとる場合には、賃金その他の労働条件等の具体的な経済問題は企業別に決定されるため、その上に位する上部組織は、あえて全産業にわたるもののみならず、個々の産業別のものでさえも、具体的な経済問題について活躍する余地は比較的狭く、統制力も弱い。そこで、上部組織が活発な活動を志し団結の強化を図ろうとすれば、得てして、具体的な経済問題とはかけ離れた分野にこれを求めがちになる。いいかえると、労働組合本来の活動が困難なのである。上部組織において、個々の労働者の現実から遊離した政治活動が大きな比重を占めていたり、あるいは、具体的な経済問題よりもむしろ観念的な政治論議をめぐる意見の対立抗争から、その離合集散が頻繁に起こるのは、かような理由に基づくことも少なくない。

これは、『団結権、団体交渉その他団体行動に関する労働教育行政の指針について』(昭和32年1月14日発労第1号)という事務次官名の通達の一節ですが、当時は左翼系の学者たちから総スカンを食らったようで、当時の雑誌には非難する記事が溢れていますが、今読み返してみると、全くすべてその通りではないかという感があります。

そして、そういう企業別的下部構造を全くそのまま残したままで、上部組織がその「ポリティカル」を「ビジネス」に変えたとしても、それはやはり欧米のビジネス・ユニオニズムとは異なるものでしかあり得ないというのが、現在の連合に連なる運動の根っこにあるように思われます。

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悪質なツイッターなりすましについて

先日来、ツイッター上でわたくしの名前と顔写真を騙って、誹謗的発言を繰り返し、わたくしの名誉を毀損している悪質な者がおりますが、現在、twitterに対して、このなりすましアカウントの削除を求めているところです。

https://support.twitter.com/forms/impersonation

ここから報告を送ると、メールが来て、免許証かパスポートのコピーをFAXしろといってきます。もっともネット上の無料FAXサービスが利用できます。

しかし、そもそもからして、悪質な加害者が平然とふんぞりかえっているのに、被害者のわたくしがこのように努力しなければならないという非対称性に許しがたいものを感じざるを得ません。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-4158.html(【これは悪質】私の偽物に高橋洋一氏が反応してしまいました。)

いろいろ検索すると、結構多くの人々がこういう悪質ななりすましで悩まされているようですね。

http://matome.naver.jp/odai/2133069385408137001(これは許せない!有名人Twitterなりすまし事件)

特に、今回の私の事件に似ているのは、有名度は全然違いますが、

http://news.livedoor.com/article/detail/7003567/(津川雅彦、自身の“なりすまし”Twitterに怒り心頭! 「名誉棄損で訴えてやる!」)

俳優の津川雅彦が、自身になりすました何者かによる偽物のTwitterアカウントに対し、自身の公式ブログ上で怒りをあらわにしている。

・・・昨今、ブログやTwitterなどで芸能人の名を騙り、あたかも本人のように振る舞って更新する“なりすまし”行為はしばしば報告されているが、今回その被害にあった津川の怒りはおさまらず、「僕の写真まで勝手に撮って! これは詐欺行為だ!」と憤慨。「誰だ!名誉棄損で訴えてやる!」と、法的措置も辞さない構えも見せて警告した。なお、現在、問題のTwitterアカウントは閉鎖されている。

こういう卑劣な連中の跋扈に対しては、誰か有名人がきちんと法的訴えをして道を作ってほしいですね。

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玄田有史さんの苦言

玄田有史さんの「ゲンダラヂオ」で、ある種の議論のあり方に苦言を呈しています。

http://www.genda-radio.com/2013/01/post_939.html(デフレと国際競争)

デフレ傾向の原因は
いろいろあるげれど
少なくとも支払われる
賃金に上昇傾向が
生まれない限り、
デフレは解消に向かわない
ことはまちがいないだろう。

ところがデフレ解消と
そのための政策を強く
主張する人たちさえ
賃金の引き上げに対しては
きまって慎重な口ぶりになる。

・・・デフレは解決しないといけない。
けれど賃金は上げられない。
どこか矛盾していないか。

そこから玄田さんは、非正規問題に論を転じるわけですが、

いわゆる非正規で働く人たちが、絶対数でも
雇用者に占める割合でも、依然として増え続けて
いることは、非正規に支払われる賃金が、その
仕事ぶりに見合っておらず、低すぎる水準に
あることを意味するのではないか。

・・・むしろ非正規であっても、一所懸命の
仕事ぶりに見合った収入が得られないために
働くこと自体に絶望し、若者などに働くことを
断念する傾向が強まっているとしたら、
それはとりかえしのつかない事態になる。

目先の賃金よりも、有為な人々が働くことから
離れていくことのほうが、長期的な国際競争に
とってみれば、より深刻な事態だと思う。

なお、この玄田さんが基調講演をされる東京大学社会科学研究所のシンポジウム「危機に克つための雇用システム」は、今週金曜日午後に迫りました。

http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/future/sympo.html

なぜか私が玄田さんの講演に対するコメンテーターをすることになっています。

http://www.genda-radio.com/2012/12/111.html

事業開始後、
リーマンショックや東日本大震災など
予想を超える事態に直面してきました。
そのなかで未来を考えるキーワードとして
「危機に克つ」雇用システムを
具体的に提案したいと思います。

成果報告と提案をさせていただくほか、
JILPTの濱口桂一郎さんにご意見を
いただく予定です。

パネル討論では、濱口さんの他、
白波瀬佐和子さん、黒田祥子さん
佐藤博樹さん、中村圭介さん、
水町勇一郎さんと
未来の雇用を語るベストの研究者
メンバーに議論いただきます。

ぜひ多くの方のご参加を
今年完成ホヤホヤの
伊藤謝恩ホールで
お待ちしています。

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【これは悪質】私の偽物に高橋洋一氏が反応してしまいました。

本ブログ上で、再三私の偽物がツイッター上で悪質な誹謗を繰り返していることを伝えてきましたが、この偽物が、私の名前と顔写真を騙って、高橋洋一氏に悪質な罵言を投げかけ、高橋氏が、それを私だと勘違いして、反応しています。

ここまで来ると、完全に犯罪の域に達しているように思われます。

このような悪質ななりすましに惑わされないよう、ネット上の皆様にはご注意をお願いします。

http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/288480452111634432

わたくしはツイッターをしておりません。ツイッター上で私を名乗る人物がいれば、それは悪質な偽物です。

なお、このなりすまし人間は、いかなる人物であるかは不明ですが、今までもネット上で悪質な嫌がらせ行為を繰り返し行ってきた人物です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/hamachan-0582.html(再度警告:ツイッター上でhamachanの偽者が横行しております。)

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『人材ビジネス』1月号にコメント

201301『月刊人材ビジネス』2013年1月号の「HEAD LINE」に、私のコメントがちょびっと載っています。この目次には出てきません。

http://www.jinzai-business.net/gjb_details201301.html

昨年の衆院選で自民党が圧勝し新政権が誕生したが、人材ビジネス業界からはおおむね歓迎する声が上がっている。

・・・一方、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は、「自民党の『総合政策集』では、“同一価値労働・同一賃金を前提に均衡待遇を”といった展望をしつつ、“労働者派遣制度の活用によるスキルアップやキャリア形成を図る”とあり、派遣事業の積極面に目を向けている点が注目される。どの程度“本気”なのか、これから問われることになるだろう」とコメントした。・・・

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ジョブ型契約を前提にした解雇規制緩和

大内伸哉さんが、新年早々、「解雇規制の緩和」についてブログで論じておられます。

http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-374f.html(解雇規制の緩和)

昨年12月31日の日経新聞の社説の,若者の「中小企業への就職を促そう」は,私が年来書いてきた解雇規制の緩和による若年雇用の促進ということについて書かれています・・・

入社後の一定期間の解雇規制の適用除外とする発想は,私の前掲書でも書いていますし,さらには昨年,2012年の経済図書の1位に選んでいただいた『法と経済で読みとく雇用の世界』(川口大司さんと共著。有斐閣)の第5章「勝ち残るのは誰だ?ー採用とマッチングー」でも書いています。ドイツやイタリアでは,まさにそういう法制度が導入されています。

これを読んだだけでむかっとする人がいるかもしれませんが、もちろんこれはこれで極めてまっとうな議論です。現に、一般的に解雇規制のあるヨーロッパでもそういう例外があるわけです。

ただし、この議論が通用するためには、そもそも雇用契約が「こういう仕事(ジョブ)があるけど、これがきちんとやれる人はいるかな?そういう人を募集するよ」「はい、私はその仕事がきちんとできますから、採用してください」という約束であるという前提が必要です。

そういうジョブ型社会では、確かに、当該ジョブとのミスマッチが発生しうるので、

採用時に不可避的に一定割合起こるミスマッチの解消手段を従業員だけでなく・・・企業にも与えようとする発想

にも合理性があります。

ところが、そういうジョブ契約ではなく、「どんな仕事をやらせるかわからないけれど、いいな?」「はい、なんでもやります。その代わり、ちゃんと教えてください」という約束であれば、特定のあるジョブとのミスマッチが直ちにその解除を正当化するというわけにはいきません。

拙著の表現を使えば、メンバーシップ型社会では

労働者にジョブ維持の権利を認めない(使用者にジョブ変更の権利を認める)代わりに、ジョブ変更によるメンバーシップ維持の権利を認める(使用者にジョブ変更によるメンバーシップ維持の義務を課す)この考え方は、現在に至るまで全く変わっていません。

そして、そういう「人間力」を判断して採用するために、欧米では考えられないような広範な採用の自由を企業に認めている訳です。

逆に言えば、こういうまっとうな解雇規制の緩和論が通用するようにしたいのであれば、契約のあり方もその前提となるようなものとなる必要があるということでしょう。

そもそも、社会のあり方としてどちらが望ましいかについては、人によってさまざまな意見のあるところだと思いますが、ジョブ型契約にはジョブ型解雇規制、メンバーシップ型契約にはメンバーシップ型解雇規制が対応するのであって、それをごっちゃにするのはよろしくないと思われます。

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配達準備中に調査しましたが、あて所に尋ねあたりません

さて、今年も大量の年賀状がやりとりされたところですが、出した年賀状が「配達準備中に調査しましたが、あて所に尋ねあたりません」というスタンプを押されて返ってきてしまった、という経験もある方が多いのではないでしょうか。

このスタンプの文句、そのまま素直に読めば、配達人が宛先の住所に行ってみたけれども、そういう人は住んでいないようですよ、という趣旨のように受け取れます。少なくとも、何らかの「調査」をしたけど、「あて所に尋ねあたりません」と。

私も今まで、てっきりそうだと思い込んでいたのですが、実はそうではないということを認識いたしました。

というのも、ある方、昨年半ばまで2年間外国に出ていた方ですが、その方が日本に戻ってきたので、その戻ってきたはずの住所に出した年賀状が、「配達準備中に調査しましたが、あて所に尋ねあたりません」というスタンプ付きで戻ってきたのですね。

ありゃ?と思っていたところ、今度はまさにその差出人住所の書かれた年賀状が私の元に届くという事態となりました。

そこで、その二枚の年賀状を持って郵便局に行き、調査を依頼したところ、こういうことがわかりました。

その方が日本を離れるときに、地元の郵便局に転送届けを出していたのですが、この効力は1年で切れます。で、切れた後は当該住所に来た郵便物は、自動的に「配達準備中に調査しましたが、あて所に尋ねあたりません」という扱いになる、と。

その方が日本に戻って、同じ住所に住むようになっても、その期限の切れた転送届けの解除届けを出さないと、その住所には届けてもらえない、ということだと説明されました。

これは正直、意表を突かれたというか、「調査」してねえじゃねえか、という気もしましたが。

こういう事態は結構起こっているのかもしれませんが、私は初めて経験しましたので、ご参考までに。新年早々の雑件でした。

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後藤和智さんのベスト、ワースト

後藤和智さんが、2012年のベストとワーストを挙げておられます。

ベターの第10位にぎりぎりわたくしの『日本の雇用終了』が滑り込んでいるようです。

http://ameblo.jp/kazutomogoto/entry-11443348898.html(【C83サークルペーパー】2012年・今年のベスト/ワースト)

まず、ベストの上から

ベスト:Huge Lauderほか(編)、広田照幸、吉田文、本田由紀[1巻]、苅谷剛彦、志水宏吉、小玉重夫[2巻](編訳)『グローバル化・社会変動と教育』1・2巻、東京大学出版会、2012年4月(1巻)・5月(2巻)

ベター1:安田浩一『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』講談社、2012年4月

ベター2:Edward F. Redish(著)、日本物理教育学会(監訳)『科学をどう教えるか――アメリカにおける新しい物理教育の実践』丸善出版、2012年6月☆

ベター3:竹信三恵子『ルポ 賃金差別』ちくま新書、2012年4月★

ベター4:浅岡隆裕『メディア表象の文化社会学――〈昭和〉イメージの生成と定着の研究』ハーベスト社、2012年3月☆

ベター5:国立教育政策研究所(編)『教育研究とエビデンス――国際的動向と日本の現状と課題』明石書店、2012年5月☆

ベター6:今野晴貴『ブラック企業――日本を食いつぶす妖怪』文春新書、2012年11月☆

ベター7:安達誠司『円高の正体』光文社新書、2012年1月★/片岡剛士『円のゆくえを問いなおす』ちくま新書、2012年5月

ベター8:田中幹人、標葉隆馬、丸山紀一朗『災害弱者と情報弱者』筑摩選書、2012年7月

ベター9:乾彰夫『若者が働きはじめるとき――仕事、仲間、そして社会』日本図書センター、2012年9月☆

ベター10:濱口桂一郎『日本の雇用終了――労働局あっせん事例から』労働政策研究・研修機構、2012年3月

ベストがあって、次にベター1から始まっているので、ベター10ってのはつまり11位で本来は次点だったわけですな。

我が国の解雇事例について述べられた、一種のデータ集です(統計とかではなく質的なデータですけど)。ただそれ故我が国における解雇(ないし退職勧奨)というものの位置づけについて冷酷に語ってくれます。労働問題の研究者や労働相談のケースワーカーなどを目指すのであれば必携と言っても過言ではないでしょう。

はい、まさしく質的データ集です。

ちなみに、後藤さんの激烈な舌鋒が冴え渡るワースト部門は以下の通り。舌鋒の程はリンク先をどうぞ。

ワースト:大堀ユリエ『昭和脳上司がゆとり世代部下を働かせる方法77』光文社、2012年4月

ワースト次点1:適菜収『日本をダメにしたB層の研究』講談社、2012年10月

ワースト次点2:東浩紀(編)『思想地図β』第3号、ゲンロン、2012年7月

ワースト次点3:pha『ニートの歩き方』技術評論社、2012年8月☆/二神能基『ニートが開く幸福社会ニッポン』明石書店、2012年8月☆/熊代亨『ロスジェネ心理学』花伝社、2012年10月☆

ワースト次点4:久徳重和『人間形成障害』祥伝社新書、2012年9月

ワースト次点5:斎藤貴男『私がケータイを持たない理由』祥伝社新書、2012年10月

ワースト特別枠:濱野智史『前田敦子はキリストを超えた――〈宗教〉としてのAKB48』ちくま新書、2012年12月

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まともな左派の悩み方

労働弁護士の水口洋介さんが、「夜明け前の独り言」で、

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/01/post-2a4e.html(”アベノミクス”とP・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」)

安倍晋三総理の経済政策は、デフレ不況脱却のための金融大幅緩和とインフレターゲット2パーセント、そして、国土強靭化と銘打った公共事業の拡大です。これってまさに、ケインズ政策であり、左派の経済政策ですよね。

・・・アメリカ民主党左派の論客であり、ノーベル賞経済学者のP・クルーグマン氏の政策と安倍晋三総理の経済政策が一緒なんでね。

・・・失業問題や不景気を克服するには、安倍内閣の経済政策の成功を願いたいところですが、右派政権の下での「憲法改正」と「国防軍」化は願い下げな私としては、悩ましいところです。

と、悩んでいます。

まともな左派は、つまりリベサヨでなく、労働者の雇用と生活の向上を何より大事に考える左派は、こういう風に悩まなければなりません。

左派の代表格のような顔をしてしゃしゃり出たがる人々に限って、こういう悩みをほとんど持っていなさそうに見えるところが今日の日本の大きな問題なのでしょうけど。

ちなみに、

ちなみに、当時のドイツでは、ヒルファルディング大蔵大臣(ドイツ社会民主党員で「金融資本論」を書いたた著名なマルクス主義者)が均衡財政を行っていたのです。

74578というあたりについては、本ブログでさりげなく(ウソつけ)岩波書店に復刊を慫慂したこの本の記述がとてもためになります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-7008.html(『ヨーロッパ労働運動の悲劇』を復刊して欲しい)

岩波書店の中の人が見てたら、是非一度書庫から取り出して、半世紀以上前に出版された本書を読んでみて、今の時代に何らかの示唆を与えるものであるかどうか検討してみて欲しいと思います。

・・・経済学の専門家であるヒルファーディングは、高度に発展した資本主義経済の複雑なメカニズムに強い印象を受けたので、彼はそれに対するほとんど全ての干渉を危険なものと考えるに至った。すなわち彼は、マンチェスター派の自由主義者に接近していった。彼は、イギリスでスノーデンが演じたと同じ役割を演じ、恐慌中に提案された繁栄の回復を早めるための多くの計画を拒絶した。そのような努力は、よくいってさらに悪い経済的破局の道を用意するに過ぎないと確信してであった。・・・

(追記)

ちなみに、全く逆の立ち位置から、しかしながら同じような認識枠組みに立って、ものを語るとこういう風になるという一つの実例。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51832307.html(暗愚の保守主義)

安倍氏は「保守主義」を自称しているが、日銀にインフレ目標を強要し、財政政策を拡大しようとしている。海外では、こういう介入政策を主張するのはクルーグマンのようなケインジアンで、保守派はFRBの過激な緩和政策に反対している。安倍氏が内閣府参与に迎えるといわれる浜田宏一氏のようなオールド・リベラリストがケインズ的な介入主義を主張するのはわかるが、安倍氏が大きな政府を主張するのは、保守主義を根本的に取り違えているからだ。

こういうのを逆裏対偶っていうんだっけ?

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中国「南方周末」記者がスト突入?

NHKニュースから、

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130107/k10014618221000.html記事書き換え 中国の新聞記者らが異例のスト表明

中国で、政治の民主化などを求めた新聞記事が地元当局によって書き換えられたとされる問題で、新聞社側が6日夜、記事の書き換えはなかったとする声明を出しました。

ところが、この声明に反発した記者たちがストライキを表明し、事態は異例の展開を見せています。

この問題は、中国南部・広東省の新聞、「南方週末」が、今月3日づけの新年号で「中国の夢、立憲政治の夢」と題し、政治の民主化や言論の自由などを求める記事を予定していたところ、地元当局の指示で「自由」や「民主」という言葉をすべて削除され、現状を肯定する内容に大幅に書き換えられたとインターネット上などで指摘されているものです。

これについて、「南方週末」は6日夜、「記事は編集者が共同で執筆したもので噂は事実ではない」と当局による書き換えを否定する声明をインターネット上で出しました。

ところが「南方週末」の記者や編集者およそ20人がこの声明に反発し、「声明は当局からの圧力によるものだ」として、問題の徹底調査を求めてストライキを表明し、事態は異例の展開をみせています。

「南方週末」は官僚の汚職や社会の不正を独自に取材した報道に定評があり、中国国内で最も影響力のある新聞のひとつですが関係者によりますと、ここ数年、当局による締め付けが強まってきていたということです。

そもそも、法制度上スト権の規定がなく、ストライキが合法か非合法かも不明な中国で、これが政治ストかそうでないかなどという議論をすること自体あまり意味がないのかもしれませんが、こういう時期には否応なしに、政治的課題を担わざるを得ないのかしれません。

参考までに、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo120925.html(中華人民共和国憲法にストライキ権があった時代)

今回は雑学ネタです。
 ご承知の通り、中華人民共和国憲法には労働基本権は規定されておらず、現実に多発しているストライキの法的根拠もないわけですが、その中国に、かつて憲法上スト権が明記されていた時代があったということをご存知でしょうか。
 なんと無産階級文化大革命の真っ最中であった1975年に制定された中華人民共和国憲法の第28条にはストライキ権が明記されていたのです。
 ただし、それは労働市場で労働力を販売する労働者たちが団結し、団体交渉して自分たちの労働条件を引き上げるための手段たるストライキ権という、労働基本権の文脈ではありませんでした。
 「第28条 公民は言論、通信、出版、集会、結社、デモ、ストライキの権利を有する。」
というもっぱら政治活動の文脈だったのです。
 そして、毛沢東主席の下でいわゆる四人組が権力を握っていた時代であることを考えれば、ここに挙げられた諸行動が、どういう立場からどういうことをする「権利」であったのかは自ずから窺われるところで、つまるところ、「革命委員会」が企業管理者や技術者を「社会主義の敵」として「階級闘争」をふっかける「権利」のことであったわけです。
 そして、毛沢東が死んで、鄧小平が権力を握って、1982年に制定された憲法では、こんな「極左思想の産物」は削除されてしまいました。
 やがて改革開放が進み、社会主義市場経済という名の資本主義化が進み、労働者はもはや国家公務員ではなくいつ首を切られるか分からない契約労働者となり、共産党自身がもはや労働者農民の党ではなく、資本家も大歓迎というふうになっても、かつて極左思想として捨てられたストライキ権というのは未だ法律上は認められた存在ではないのです。

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ならぬものはならぬ・・・

いや、「ならぬものはならぬ」(@会津藩)、といえばいかにもいいことみたいに聞こえるけど、

現代語に訳すと「ダメなものはダメ」(@土井たか子)になっちゃうんですけど・・・。

そういう原理主義で国を滅ぼす美学の危険性を冷ややかに諭すのが保守派ってものの役割だったような気がするけど、それも遠い過去の記憶かしらん。

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ホワイトなノンエリートを作ろう@『中央公論』12月号対談より

2229_issue_img『中央公論』2012年12月号の海老原さんとわたくしの対談、「管理職を目指さない自由を 「四十歳定年制」より大事なこと」については、本ブログでも紹介してきましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-955b.html(あなたの雇用、明日はあるか@『中央公論』)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-1ced.html(中央公論対談記事の一部が)

対談のうち私の発言部分だけをHPにアップしておきました。対談なので、やりとり形式でないと話がいささか見えない面もありますが、何を言おうとしているかは分かると思います。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/chuko1212.html

ここではその末尾の部分から。

階段型とフラット型
 
濱口
 四十歳定年制という提言は、政府が進めている六十歳定年後六十五歳までの再雇用、子会社や関連会社への転籍という政策と正反対に位置するものに見えて、実は同じことをより低い年齢でやろうとしているだけではないでしょうか。提言した側は、これまでの日本の在り方を変えるつもりかも知れませんが、むしろ本質的には何も変わらないことを前提にした議論のような気がします。
 
 
濱口 日本は正社員であればエリートがデフォルト(初期設定)という特異な国です。欧米はノンエリートがデフォルト。そこを認識しておかないと、おかしなことになります。四十歳定年制に限らずそうですが、ここ数年の諸々の議論の基本的なイメージは、日本のサラリーマンはもっと欧米のエリートを見習って頑張れ、というものです。最近はそこにアジア諸国、特に中国のエリートが加わった。そんな階級社会の上澄みだけ取ってきて、同世代の半分以上を占める日本の大卒がすべてエリートであるかのように比較する。日本の正社員はノンエリートがエリートまがいの期待を背負わされて無茶苦茶に働かされているのです。でも、係員島耕作がみんな課長島耕作になって、社長島耕作になれるわけではない。
 
濱口 これは、日本は全て駄目なんだという話ではありません。正社員をみんなエリートと見なして尻を叩き続けることで、少なくとも高度経済成長期から八〇年代までは発展を続けてきたのです。ただ、もうそのままでは維持できない。
 
ホワイトなノンエリートを作ろう
 
濱口
 人間の職業人生を、ある時期までは一種の育成期と捉え、それ以降をフラットなノンエリートとして粛々と七十五歳ぐらいまで働けるよう生きていくというイメージで考えるのであれば、それはこれからの働き方を考える上で非常に意味があると思う。みんなが管理職にならなくてもいいのです。
 
濱口 私なら、最初からエリートがデフォルトではなくて、ノンエリートが途中でエリートになりうる社会の方がいい。つまり、特に何もなければノンエリートの道だけれど、本人が思い立ってがんばればエリートになる道も開かれているもっとも、本当に世界レベルのグローバルエリートは入り口から分けた方がいいかも知れませんが。係員島耕作は大体係長島耕作止まりだが、中には課長島耕作、部長島耕作と階段を駆け上っていく者もいるというイメージです。そこが今までと違う。要は人事管理の多様化であり、それが年とともに明確化されるのです。
 
濱口 日本の正社員はワーク・ライフ・バランスを捨てて会社に尽くすことでエリート並みの処遇を得てきましたが、最近は尽くしてもそれに見合った見返りのないブラック企業が増えてきています。
 
濱口 日本はこれまでみんなをエリートにすることでホワイト化してきました。これからはホワイトなノンエリートを作っていくことを考えた方がみんなが幸せになるのではないでしょうか。

Hyoshi17ついでに、こちらも昨年末に出た『POSSE』17号の今野晴貴さんとの対談「ブラック企業を正しく批判せよ! ――契約の限定とノンエリート論」から、これと関わる部分を:

課長になれない7割はどこに着地するか

濱口 若者の味方と称する人たちの議論に共通なものがあって、典型的には城繁幸さんのような議論になります。彼はたとえば『7割は課長にさえなれません』という本を出しています。まったくその通りだし、もっと言うと、なる必要もない。みんなが課長になれるのだという人参を目の前にぶら下げて、本来だったらあり得ないような働き方をさせるというやり方が、ある時期まではそれなりに通用していました。それがもはや持続可能ではないと指摘するのは、確かに正しい議論なんです。

正しいにも関わらず、彼に根本的に欠落しているのは、課長になれない7割の人たちはどこに着地するのかという点です。本来はそれこそがまさにジョブ型正社員であり、普通のレギュラーワーカーの働き方であり、要するに契約に書かれたことだけきちんとやれば、それ以上の要求をされないという働き方のはずです。それ以上会社が面倒を見るわけではないけれども、その限りでは一定の雇用と生活の安定はある。それ以上のことは国がちゃんと面倒をみますというのが抜けています。
そうすると、そこで7割は課長になれませんという言説はどういう機能をもつかというと、「お前はその3割になれないぞ。さあその3割に潜り込むためにもっと頑張れ」という脅しになってしまいます。そこで持ち出されるのは、欧米のサラリーマンはこんなにすごい働き方をしているという話です。
その手の議論でイメージされているのは欧米のエリート労働者層です。確かに彼らは猛烈な働き方を自発的にしているだろうし、極めて裁量的に働いているでしょう。でも、それに対応した極めて高い処遇を受けているわけだし、当然のことながら、みんなにそんなものを要求するなんてことはしていません。その限りで、それは釣り合いが取れています。エリートというのはまさにそういうものなんですね。
釣り合いが取れている一部のエリートのあり方を、あたかも全体の姿であるかのごとく、欧米のサラリーマンはこうなんだと持ち出すと、課長になれる3割にどうやって入るんだという脅しのロジックになります。結局、いままでの日本型システムはダメなんだという議論が、一見日本型システムを否定するように見えて、実は日本型システムの根幹の部分を維持することによって、かえってブラック企業現象を増幅している。そこのところをきちんと批判しないといけないと思いますね。

濱口 だから、ブラックではなく、かと言って真っ白なバージンパルプでもなく、ざら半紙のホワイトをつくろうよということです。

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労基署と税務署の職員はなぜ少ないのか

http://twitter.com/hidekatsu_izuno/status/287590312589799425

増員するなら労基署と税務署の職員だと思うんだよなぁ。真面目な話。

http://twitter.com/hidekatsu_izuno/status/287590761841717249

以前調べた限りだと、他国に比べ国民一人あたりの人数が圧倒的に少なかったし>労基署と税務署の職員

よく言われるのが、外国では税務署職員がやるべき仕事が、源泉徴収という形で、日本では企業の人事部に大幅にアウトソースされているので、その分税務署の職員は少なくていいという話。

たしかに、労働者の所得から税金を徴収するというやるべきこと自体は同じなので、それをどの段階でやるかだけなので、聞くとなるほどと思う。

そうすると、労基署の職員が少ないのは、その機能がやっぱり企業の人事部にアウトソースされているから少なくていいと、国民の皆様方は思っているということなのかしら。労基署の仕事を企業の人事部に委ねていいと思っているということかしら。

まあ、地方公務員非現業では、確かに労基署の仕事を人事委員会に委ねているけれど(と、話をそらす)。

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hamachanブログ2012年ランキング

アクセス解析では4か月ごとの数値しか出ないので、手作業で2012年のhamachanブログアクセス数ランキングを出しました。

1位:日本の伝統的子育てが息づいていた時代の若干の実例 23,940

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-2418.html

1950年代、三丁目の夕日がまだ明るかった頃の、日本社会の実相を、当時の政府資料から改めて確認してみるのも、一興ではありますまいか、ということで、

おそらく今では役所の中でも誰も知らないであろうこの報告書を、ちょっと紹介してみましょう。今ではみんながうるわしく描き出す「三丁目の夕日」のちょっと前の時期の、日本社会の凄絶な実態をちょっとの間だけでも思い出すために。

2位:学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD 21,056

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/oecd-af93.html

これを見ると、世界の国は4つの象限に分けられます。

右上のアメリカなどが入っている第1象限は、学費は高いけれども奨学金が充実している国。

右下の北欧諸国が入っている第4象限は、学費は低い上に奨学金が充実している国。

左下のふつうのヨーロッパ諸国が入っている第3象限は、学費が低いので奨学金が充実していない国。

そしてただ一国左上の第2象限に燦然と輝く我が日本国は、学費が高い上に奨学金が充実していないという素晴らしい教育環境を世界に誇っています。

3位:解雇するスキル・・・なんかなくてもスパスパ解雇してますけど 19,713

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-a1c3.html

現実の世の中のことが本当はよく分かっていないくせに分かっているような顔をしていろいろ語るたぐいの人々が後を絶ちませんが、現実の世の中のことを理解するには、現実に紛争として起こってきている物事を観察するのが一番です。

・・・

まだまだ続きますが、まあこんな感じです。こういう事案にご立派な「解雇のスキル」があるとも思われませんが、でもスキルがあろうがなかろうがクビはクビ。

ちなみに、この報告書ではこうして1行ずつしか紹介できなかった各個別事例を、来月刊行される予定の『日本の雇用終了』では、一件一件労使双方の言い分も含めてその発端から結末までを詳しく紹介しています。乞うご期待。

4位:誰の賃金が下がったのか?または国際競争ガーの誤解 18,569

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-0c56.html

経済産業研究所が公表した「サービス産業における賃金低下の要因~誰の賃金が下がったのか~」というディスカッションペーパーは、最後に述べるように一点だけ注文がありますが、今日の賃金低迷現象の原因がどこにあるかについて、世間で蔓延する「国際競争ガー」という誤解を見事に解消し、問題の本質(の一歩手前)まで接近しています。

・・・国際競争に一番晒されている製造業ではなく、一番ドメスティックなサービス産業、とりわけ小売業や飲食店で一番賃金が下落しているということは、この間日本で起こったことを大変雄弁に物語っていますね。

・・・ただ、付加価値生産性とは何であるかということをちゃんと分かっている人にはいうまでもないことですが、世の多くの人々は、こういう字面を見ると、パブロフの犬の如く条件反射的に、

なにい?労働生産性が低いい?なんということだ、もっとビシバシ低賃金で死ぬ寸前まで働かせて、生産性を無理にでも引き上げろ!!!

いや、付加価値生産性の定義上、そういう風にすればする程、生産性は下がるわけですよ。

そして、国際競争と関係の一番薄い分野でもっとも付加価値生産性が下落したのは、まさにそういう条件反射的「根本的に間違った生産性向上イデオロギー」が世を風靡したからじゃないのですかね。

5位:マジで「希望は、戦争」という時代 16,527

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-6d1a.html

実際、今から70年前、中学校以上を出たエリートないし準エリートのホワイトカラー「社員」との差別待遇に怒りを燃やしていた彼の大先輩たるブルーカラー「工員」たちを、天皇の赤子として平等な同じ「従業員」という身分に投げ込んでくれたのは、東大法学部で天皇機関説を説いていた美濃部教授でもなければ、経済学部でマルクスを講じていた大内教授でもなく、国民を戦争に動員するために無理やりに平等化していった軍部だったのだから。もちろん、それを完成させたのは戦後の占領軍とそのもとで猛威を振るった労働組合であったわけだが、戦時体制がなければそれらもなかったわけで。

6位:低価格・低賃金なのに過剰サービス 13,358

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-5668.html

むしろ、かつて低劣な労働条件に対する怒りとして燃え上がった労働運動が、他の先進諸国とはひと味違って、正社員型後払い方式ディーセントワーク(終身雇用で精算)という形で決着し、落ち着いたことが、「社長島耕作を夢見る係員島耕作」が特定の時点ではブラックに見えるけれども長期的にはディーセント(でありうる)な働き方を自発的に受容するという精神構造を生み出したと見るべきで、その意味では極めて近代的な所産だと思います。

そしてそれがさらに、そういう「近代的」日本型システムを批判する形で登場した「現代的」ベンチャー礼賛論が、ミクロの現場ではむしろそのガンバリズムを増幅昂進させる方向で機能するという一件パラドクシカルな現象が相俟って、こういう事態を引き起こしていると考えるべきでしょう。

7位:40歳定年制の法律的意味 10,957

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-e1d7.html

まあ、言いたいことは分からないではないですが、定年という言葉の意味を素人レベルでのみ考えているため、厳密な議論には耐えられない文章に仕上がっているようです。

従って、このフロンティア部会の方々がどういう曖昧な理解で使っていたとしても、いったん文字になった以上、「40歳定年」とは、40歳に達したことを、それのみを理由にして一方的に雇用契約を終了することを、「50歳定年」とは、50歳に達したことを、それのみを理由にして一方的に雇用契約を終了することを指します。それ以外の意味にとってくれというのは無理です。

従って、その次に「もちろん、それは、何歳でもその適性に応じて雇用が確保され、健康状態に応じて、70 歳を超えても活躍の場が与えられるというのが前提である」という文章が続くとすると、それは書いた本人の主観はともかくとして、客観的には精神の統合性を疑わせるに足る意味不明な文章とならざるを得ません。

こういうことになるのは、このフロンティアな方々にとっては、定年というのは絶対的な雇用保障年齢であって、いかなる理由があっても定年までは解雇できないなどという日本国の法体系に反する想定をしているからなのでしょう。

8位:古市くんの「ずれ」 10,787

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-43c1.html

いやまあ、古市くんの言うてることも、まったく間違っているというわけでもないのだけれど、あの言い方と、何よりNHKのあの脳天気な映像化で、ほとんど空中ふわふわの「のまど万歳」論になってしまっておるわいな。

その横に並ぶ面々もなんでああいう高ぴー目線になるのか、世の中あんたらみたいなエリートばかりじゃねえぞ、という反感が画面に吹き上がってくるのがわからんのかねえ。

9位:ワタミ叩きのネタでは済まない問題 10,575

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-a6be.html

日本の職場、とりわけ36協定の本則である過半数組合の存在しない職場における「過半数を代表する者」なるものの実態は、多かれ少なかれこれに似たようなものであるということは、ある程度労働問題に通じた人にとっては常識に類するものであるわけですが、それがこうやって問題だという記事になるには、人一人くらい死なないといけないという実態もあまり変わらないようです。

なんにせよ、これはワタミ叩きのネタにしておくにはもったいない、労働法制のあり方を考え直す重要な論点であるはずなので、そういう風に扱って欲しいな、という希望だけ申し添えておきます。

10位:週末を犠牲にしてでも取り組みたい仕事 9,384

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-5790.html

問題は、そういうベンチャー企業家が、自分たちにのみ適用可能であるはずの倫理規範を、本来適用してはいけない自分が指揮命令して働かせているところの労働者にそのまま要求してしまったり、場合によってはその指揮命令を受けて労務に服している労働者ご本人が、あたかも自分をベンチャー企業家か何かであるかのように思いなして、当該労働者には向かない倫理規範を自分だけではなく他の労働者たちにも押しつけたりしようとし出すときに発生します。

(追記)

ということがまったく分かっていない「人事コンサル」氏がいるから困るんだけどな。

・・・

まったく逆であってね。

次点:各論なき総論哲学者の末路 8,750

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-5697.html

問題をポピュリズムに流されるか、エリート主義に行くかという二者択一でしか考えられないところが、(総論政治学者や総論政治評論家や総論政治部記者と同断の)総論しか頭の中にない哲学者という種族の宿痾なのだろう。

いうまでもなく、圧倒的に多くのことについては横町のご隠居程度の見識しかない大衆食堂の皆さんにも、程度の差はあれ、これはという専門分野はある。

ほかのことについては軽薄なマスコミの掻き立てることにコロリと逝っちゃう一般大衆でも、この問題については新聞のいうことは間違ってるぞ、とひとしきり人に説教できるような分野がある。

きょろきょろするなよ、大学のセンセたち、そういう専門を持ってる大衆って、あんたらのことでもあるんだよ。そしてまた、世間で実務やってる人々のことでもあるし、趣味の世界の場合もある。要はみんな、なにがしか(というより相当程度に)大衆なんだが、なにがしか(どんなに少なくとも)専門家であり、その面においてはポピュリズムに逝かれる(周りの)大衆たちを哀れみのまなざしで見る局面てものもあるのだ。

誰にもこだわりの「各論」てのがある。「総論」に巻き取られると不愉快になる「各論」が。

大事なのは、そういう「おおむね大衆ときどき専門家」な人々の「民意」をどこでもってつかまえるべきなのか、ってこと。

ポピュリズムがだめなのは、その人々の「おおむね大衆」の低次元の「総論」だけをすくい取って「これが民意」だ、ってやるところ。

決して馬鹿なだけじゃない大衆の馬鹿なところだけをすくい取るのがポピュリズムだ。

レベルの低い「民意」をすくい取られた大衆が、しかし自分の専門分野について「とはいえ、こいつはおかしいんじゃないか」と感じるその違和感をきちんと言語化するのが、言葉を商売道具にして生計を立てている連中の最低限の義務だろうに。

それすらも放棄するというのは、つまるところ、そういう専門分野、つまり「各論」を持たない哀れな哲学者という種族の末路と言うべきか。

ポピュリズムの反対はエリート主義ではない。大衆の中の「各論」を語れる専門家的部分をうまく組織して、俗情溢れる低劣な「総論」を抑えるようにすることこそが、今日の高度大衆社会に唯一可能な道筋のはずだ。

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若者を食い潰すブラック企業@朝日新聞be

本日の朝日新聞の別刷り「be」に、「若者を食い潰すブラック企業」という記事が載っています。

例によって、POSSEの相談事例の紹介から始まり、今野晴貴さん、笹山尚人さんも登場していますが、その中に私もコメントしています。

・・・なぜブラック企業は存在するのか。労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は、「もともと日本の大企業には、ある一時点で見れば、ブラック企業的に見える要素があった」という。戦後、大企業は終身雇用制、年功賃金を守る代わりに社員を猛烈に働かせた。経済が成長する時代は、それでも「ウィン・ウィン」の関係が成り立っていた。

それが徐々に変化していくのはバブル崩壊以降、企業は社員の雇用と生活を守れなくなったのに相変わらずサービス残業もいとわず働かせる労働状況が残った。「見返りのある滅私奉公が、見返りのない滅私奉公に変わっていった」という。

社員を徹底的に働かせて保障はしないブラック企業は、ほころびかけた日本型雇用の「おいしいとこ取り」をしているようにも見える。しかも、不景気が続く中、新卒対象の労働市場は買い手側有利の状況が続く。社員がやめても、いくらでも簡単に補充できる。・・・

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労務屋さんの「今年の十冊」

労務屋さんが「今年の十冊」を挙げておられます。この「今年」というのは昨年2013年のことで、実際日付スタンプは12月31日付になっていますが、実際に書かれたのは今日1月4日とのことです。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20121231#p1

労務屋さんの10冊は、

池田新介『自滅する選択』

大内伸哉・川口大司『法と経済で読みとく雇用の世界』

大竹文雄ほか『脳の中の経済学』

小池和男『高品質日本の起源』

佐藤博樹『人材活用進化論』

武石恵美子『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』

田中直毅ほか『政権交代はなぜダメだったのか』

濱口桂一郎『日本の雇用終了』

藤本真ほか『中小企業における人材育成・能力開発』

松浦民恵『営業職の人材マネジメント』

大内伸哉『労働の正義を考えよう』

で、私の『日本の雇用終了』も挙げていただいておりますが、その次に挙げていただいた藤本さんらの『中小企業における人材育成・能力開発』が、いかにも労務屋さんらしい渋い選択で、うれしく思います。

私の『日本の雇用終了』について、

わが国労働市場の相当を占める中小企業の現場における解雇や契約打ち切り、その補償などの実態を紹介して話題になりました。神は細部に宿るといいますが、まさにそうした印象の本です。

とコメントされたすぐ後に、この本について

藤本先生のたいへんな労作。課題とともに中小企業の人材育成力、それを支える業界団体の役割といったものが確認できます。これまた神は細部にという本で、ブラック企業云々も結構ですが中小企業のこうした側面にも注目が必要でしょう。

と述べていただいているのも、本日紹介した呉学殊さんの「日本の誇れるもの、本物の中小企業家」と併せて、日本の中小企業の姿を複眼的に捉える上で重要なことだと思います。

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リフレ派は間違っても社会政策に意見するな@甲山太郎&熊沢透

岩手で津波に被災されたhahnela03さんについては本ブログでもかなり紹介してきましたが、その新年の挨拶エントリに、甲山太郎さんと熊沢透さんの掛け合い漫才風のおもしろいツイートが引用されていましたので、一部をこちらにも引用。

http://d.hatena.ne.jp/hahnela03/20130104/1357267269(あけましておめでとうございます)

甲山太郎@kabutoyama_taro
そもそもリフレ派なんてのは日銀と財務省だけ批判してればいいのであって、もしリフレ派がそれ以外に対して何か一言でも批判的言辞を吐いたらそれは直ちに逸脱にして越権行為なんだよね。リフレ派は仮に叩かれようと黙って成長率にだけ専心すればいいのであって、間違っても社会政策に意見するな。
11:51 1月1日(火)

熊沢 透 @kumat1968
うははははは! QT @kabutoyama_taro リフレ派は仮に叩かれようと黙って成長率にだけ専心すればいいのであって、間違っても社会政策に意見するな。

甲山太郎 @kabutoyama_taro
@kumat1968 いやほんと、経済成長が再分配の前提だというのは当然ですが、だからといって「経済成長してるから働かなくてもいいぞーw」と言う人はおらんでしょう。リフレと社会政策とは「レイヤー」が異なるのだと彼らが言うのなら余計、社会政策に口を挟むのはカテゴリーミステイクです。

熊沢 透 @kumat1968
@kabutoyama_taro リフレの前提条件として社会保障給付の仕方と人の雇い方・賃金の払い方に言及すると、残念ながらたいていとんちんかんな議論になっていますね。

・・・・・・

うははははは!

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りふれはの本音

http://twitter.com/Murakami_Naoki/status/287106606313914368

日経「厚生労働省、正社員と同じような仕事をするパート労働者の待遇の差別を禁じるパート労働法改正案を通常国会に提出し今年度中に施行する予定。非正規そのものを否定するのではなく新たに10万人の待遇改善で格差解消を狙う」 こういうおバカな規制強化は逆に状況悪化させる。脱デフレしろ早く。

もちろん、全てのリフレ派がこういう発想だと思っているわけではありませんが、少なくともこういう風に、「脱デフレしろ早く」という言葉が、「正社員と同じような仕事をするパート労働者の待遇を差別しろ」というたぐいの言葉とともに語られることが多いということが、そして、まっとうなリフレ派と自称する人々が、「リフレ政策以外はさまざまだから」という万能の言葉を振りかざしてこういうリフレとある種の思想との結合に対して何にもいわないことが、労働社会政策についてもトッププライオリティだと考える人々の心の中に、リフレ派に対するぬぐいがたい不信感を、少しずつ少しずつ、しかし確実に培養しているということを、もう少し真剣に考えた方がいいと思いますよ。

この手の思想結合が世の中にばらまかれればばらまかれるほど、そしてそれに対してそういう結合に賛成しないリフレ派の声がまったく聞こえなければ聞こえないほど、あなた方はリフレ派の敵を作っているのです。

ま、それでいいとお考えならなにをかいわんやですがね。

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正社員はどうなっていくのか?

『愛知経協』1月号に載せた「正社員はどうなっていくのか?」の原稿です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/aichi.html

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スウェーデンは解雇自由だって!?@『情報労連REPORT』2010年10月号

原田(Kana_1024n)さんが、ツイッター上で、

http://twitter.com/Kana_1024n/status/286800865170436096

解雇規制緩和で労働市場が流動化されて問題解決!という花畑な方は、濱口桂一郎氏の記事を読んだ方が良いですよ。特に日経の論調に煽られちゃった方は ⇒ スウェーデンは解雇自由だって!?

と、改めて推奨していただいているので、もう2年以上前の文章ですが、改めて。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1010.html

労働問題は単純にスパッと切れるようなものではない。専門家ほど発言に慎重になり、いろいろと条件をつけた上でないとなかなか断定的な言い方ができない。そこにつけこんで、一知半解で断定的な言説を振りまき、世論をあらぬ方向に誘導しようとする連中が湧いてくる。明らかな虚偽の宣伝に対してはきちんと批判を加えていかなければならない。本コラムではこれから毎月、ネットを含むメディアに流通するトンデモ労働論や一知半解の議論を取り上げ、批判を加えていく。

第1回目は意外に多くの人が受け入れている「スウェーデンは解雇自由」という言説である。たとえば上武大学教授の池田信夫氏は、2009年に桜プロジェクト「派遣切りという弱者を生んだもの」というテレビ番組の中で、「僕の言っているのに一番似ているのはスウェーデンなんですよ。スウェーデンてのは基本的に解雇自由なんです。いつでも首切れるんです、正社員が。その代わりスウェーデンはやめた労働者に対しては再訓練のシステムは非常に行き届いている訳ですよ。だからスウェーデンの労働者は全然、失業を恐れない訳ですよ。」と語っている*1。後半は正しい認識である。連合が支持する政権でありながら、「仕分け」の名の下にただでさえ乏しい職業訓練施設を削減することをばかりを追求している民主党政権は噛みしめる必要があろう。しかしながら、前半は明らかなウソである。

その証拠はスウェーデンの労働法規を読めばわかる。幸いスウェーデン政府は法律をすべて英訳してくれているので、誰でもアクセスできる。解雇法制は1982年の雇用保護法に規定されている*2。客観的な理由のある場合には1~6か月の解雇予告で解雇できるが、労働者が訴えて客観的な理由がないとされれば解雇は無効となり、雇用は維持される。ただし、使用者の申し出により金銭補償で雇用を終了することができる。また整理解雇に際しては厳格なセニョリティルールが適用される。さらに、解雇規制の潜脱を防ぐため有期契約の締結にも客観的理由が必要で、3年を超えると自動的に無期契約になる。解雇自由などといえるところはどこにもない。

このように法律上は極めて厳格な解雇規制を持つスウェーデンが、同時に極めて流動的な労働市場を持っていることは何ら矛盾ではない。手厚い職業教育訓練を受けながら新たな仕事を探すことが権利として保障されているがゆえに、解雇されることがそれほど痛くない社会が実現している。しかしそのことと、不当な解雇に対しても泣き寝入りせざるをえない解雇自由とはまったく別のことである。むしろ判例法理で解雇権の濫用が制限されているはずの日本でこそ、不当な解雇に泣き寝入りしている人々ははるかに多いのではなかろうか。日本が学ぶべきは手厚い職業訓練だけでない。

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*1スクリプトは:http://teinengurashi.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/2-ea0e.html
*2:http://www.regeringen.se/content/1/c6/07/65/36/9b9ee182.pdf

なお、文中の肩書きは発表当時のものです。

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日本の誇れるもの、本物の中小企業家@呉学殊

JILPT新年早々のコラムは、労使関係部門の呉学殊さんです。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum0214.htm(日本の誇れるもの、本物の中小企業家)

1991年バブル崩壊以降、低い経済成長、少子高齢化、財政赤字の膨張、社会保障システムの危機、非正規労働者問題、政治のリーダーシップの欠如、若者のビジョンのなさなど、深刻な問題がこの国を覆っている。

私のところには韓国から多くの人が訪れてくる。バブル崩壊の年に韓国から留学に来た私は、来日後の数年間は、韓国の人に誇らしげにこの社会のよさを語った覚えがある。親切さ、豊かさ、平等な社会、相手を尊重する姿勢、秩序正しい、綺麗な町・道等である。当時は、上記の深刻な問題が顕在化していなかった。しかし、1990年代後半から上記の問題が深刻度を増すにつれて、以前、誇れたことにも影が落ち、私の口から出なくなった。この社会の一員として忸怩たる思いがする。

しかし、最近、誇れるものができた。本物の中小企業家が日本には多いことである。私は、2011年から、労使コミュニケーションの経営資源性と課題を探るために、多くの中小企業を訪ね、社長と従業員代表からお話を伺っている。中小企業家同友会という素晴らしい業界団体に入っている企業の社長がいたからこそ、深刻な問題のあるこの社会であるが、今の社会がかろうじて維持できていると確信している。3つの事例を紹介したい。

これは、東京と大阪でやった労働政策フォーラムで呉さんが繰り返し語っていたことですね。

事例のうち最初の山田製作所はフォーラムに登場していますが、次のHSAは先日刊行のJIL雑誌1月号に載っており、最後の拓新工業は初公開ですね。

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ノンキャリ正社員@常見陽平

NEWSポストセブンで、常見陽平さんが、「ノンキャリ正社員」という言葉でノンエリート論を打ち出していますね。

http://www.news-postseven.com/archives/20130103_163424.html(今年は「ノンキャリ正社員」という働き方が話題集めると識者)

・・・さて、2013年ですが、今年話題になるのは「サラリーマンの前途」でしょう。サラリーマンの働き方の再構築が始まる予感です。特に話題となるのは、「ノンキャリ(ノンエリート)正社員」です。職務を限定した正社員という働き方が出てくるかなと期待しております。ノンキャリ、ノンエリートというと、いかにもダメ社員の印象を抱くかもしれませんが、違います。上のポジションを目指すのではなく、自分の職務に責任を持って働く、と。そういえば、昨年、『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)という書籍を発表し、おかげ様で話題になったのですが、「ノンエリート論」としてご評価頂きました。別にジムを揶揄しているわけではありません。むしろ、戦争はジム対ザクで動いていったわけで。

昨年末、「来年はノンエリート論だぁ!」と叫んでいた常見さんが、さっそく正月の明けぬうちからバンバン打ち出しています。

引用部分の前では、今野さんの『ブラック企業』が早くも4刷になっていると紹介してますし、引用部分のすぐ後では島耕作もでてきますよ。

最後はこう締めています。

・・・雇用・労働をめぐる報道や議論はいつも、エリートか、とてもかわいそうな人を前提とした話になりがちですが、今年こそ、普通の労働者の普通の働く幸せを議論したいところです。今年もよろしくお願いします。

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