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2012年12月18日 (火)

前の戦さの成功体験が・・・

RIETIから慶應に移られた鶴光太郎さんが、RIETIのコラムでこう書いているんですが、

http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0360.html(デフレ経済と労働市場の関係を考える)

筆者がデフレの問題を考える時にどうしても気になるのは、労働市場、特に、賃金を巡る環境変化である。今とは逆に日本経済が70年代インフレの問題と格闘して得られた教訓はインフレ期待を抑制するためにインフレと賃金のスパイラルをいかに断ち切るかであった。第一次石油危機では急激なインフレに対応して賃金も大幅に上昇し、それが更にインフレに火を注ぐ結果となった。この時の経験を反省し、第二次石油危機の際には交易条件の悪化による実質所得の海外流出と割り切り、労使が実質賃金の低下を受け入れ石油危機を乗り切った。この経験は筆者がかつて80年代に官庁エコノミストとして勉強し始めた時、認識しておくべき日本経済の最も重要な教訓の1つであったように覚えている。

いやあ、その前の戦さの成功体験が、つまり雇用だけは何が何でも維持する代わりに、よそからやってきたショックによる実質賃金切り下げはみんなで我慢して乗り切る、という70年代に世界で一番成功してしまったやり方が、いついかなる時でも状況がどんなに変わっても大事な「教訓」になってしまったがゆえに、却って90年代以降の、とりわけ近年のデフレに対しても、「みんなで我慢して乗り切る」型の対応を無意識的に取らせているのではないか、そういう意味でみんな70年代体験の精神的奴隷なんじゃないか、というのが、今日の問題状況なんじゃないか、と思うわけなんですが。

ここはちゃんと経済系の人が突っ込むと思うので簡単にしておきますが、

それでは、インフレ期待を形成するために、賃金を無理やり引き上げるような政策をとればいいのであろうか。このような政策は最低賃金の引き上げに対する分析で明らかにされてきた通り(注3)、最低賃金近くの水準で雇われていた人の雇用が失われたり、そうでなくても企業の収益悪化、労働コストが価格上昇に転嫁されることによる消費者の不利益など経済にとっては多くの副作用を生む可能性がある。

ってのは、インフレにするために名目賃金を引き上げる話と、実質賃金が(限界企業の支払能力以上に)引き上げられることによる雇用喪失とがいささかごっちゃになっている気がします。

ま、それより何より、この台詞はあまりにも日本型雇用システムの正統的建前論を真正面から並べている感じで、それってどこまでほんとだったの?という問いなしにこうさらりといわれると、戸惑ってしまいます。

それではどうするべきか。年功型賃金の理論的バックボーンになっていた職能資格制度は今では評判が悪くなってしまったが、能力が勤続年数とともに高まっていくべきであるという「建前」が企業への定着を前提に長期的に従業員の能力を高めるインセンティブを労使双方に埋め込んでいたことを忘れてはなるまい。能力を基準にし、それは下がらないと考えれば賃金は一旦上がれば下がらず、年功制のようにみえるだろう。これが職務給であれば職務が同じである限り賃金は変わらないし、役割給であれば役割が変われば賃金が低下する場合も出てくる。「給料は頑張り続ければ確実に上がっていく世界」から「給料は必ずしも上がらない、下がることもある世界」へ変化しているのは、労使ともに長期的に能力を高めていくことから逃げてしまっている結果かもしれない。正規、非正規に限らず、長い人生の中で個々の能力、人的資本をいかに高めていくか、そして将来に向けて頑張れば必ず報われる雇用システムをいかに再構築するか、これが長期的な日本経済の命運を握るとともに、案外、デフレ経済の脱却ともつながっているといえそうだ。

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コメント

都合が悪くなると「建前」に逃げる的な(日本人ならずとも)悪い癖なんでしょーか
都合の良く理屈を使い分けるのが「賢い」と思ってるふうなのは古今東西問わないと思いますが

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