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2012年12月27日 (木)

労働基準法の「労働者」はどっちなんだよ

ネットバトルを炎上させる営業政策と思われてもなんなので、まじめに答えておきましょう。

http://twitter.com/yoniumuhibi/status/283365747839889409

日本の労働者の権利は労働基準法が保障している。労働基準法は1本なのに、正規労働者と非正規労働者の権利の中身は全く違う。それがおかしいことだ。労働基準法の「労働者」はどっちなんだよということ。濱口桂一郎らは権利も賃金も非正規を標準にしようとしていて、本田由紀らはそれに合わせている。

まず前半の問題意識は正しい。

日本の労働者の権利は労働基準法が保障している。労働基準法は1本なのに、正規労働者と非正規労働者の権利の中身は全く違う。それがおかしいことだ。

だからこそ、すべての者がこの問いにきちんと答える必要がある。

労働基準法の「労働者」はどっちなんだよということ。

答えははっきりしている。

職務も労働時間も勤務場所も無限定に従う義務を負う代わりに生涯を通じて子供の教育費や住宅費まで含めて生活費を面倒見てもらう約束のメンバーシップ型正社員などではない。労働基準法は、そんな労働者のあり方を全く前提にしていない。

そしていうまでもなく、そういう義務を負わない代わりに低賃金と不安定を押しつけられている日本型非正規労働者でもない。

終戦直後に労働基準法が世界標準を見倣って作られたときに前提とされていた「労働者」-すなわちジョブ型正社員-が、そのどちらにも受け継がれていない、そのことが諸々の問題の原因であるということが、毎日「世に膿」んでばかりいると見えなくなってしまうのかもしれません。

112483_2拙著『日本の雇用と労働法』より

・・・以上のような枠組みは、工場法に始まる古典的労働法においても何ら変わりません。多くの労働法の教科書の冒頭に書いてあるように、古典的労働法は民法の雇用契約の原則を大きく変えましたが、労働者が会社のメンバーではなく労務供給という取引関係にある者であるという基本的な枠組みは何ら変えていないのです。

古典的労働法が持ち込んだ原則の一つは、雇用契約の内容に最低限の公的規制を加え、それを下回る労働条件の契約条項を無効にすることです。19世紀にイギリスの工場法から始まり、日本でも戦前に工場法が、戦後は労働基準法が制定され、現在では関係の立法と併せて膨大な労働法体系を作り上げています。労働基準法では「労働契約」という言葉が用いられていますが、上記枠組みに関する限り、民法の雇用契約と何ら変わりはありません。

もう一つの原則は、労働者一人ひとりと企業のような強大な力を持つ使用者とでは取引関係が著しく不均衡になるので、労働者の団結を認め、労働者の集団と使用者の間で「集団的な取引(collective bargaining)」(=団体交渉)を行わせることです。これも19世紀のイギリスから始まり、日本でも戦後労働組合法が制定されてこの仕組みが法的には確立しました。

ここで重要なことは、団体交渉とは同じ団体のメンバーの間で行われるものではなく、債権契約関係にある労務供給者と労務受領者の間で行われる取引を集団的に行うものとして、法律上は位置づけられているということです。ということは、別の面から見れば労働組合とは企業と取引関係にある労働者のカルテル(事業者間で価格や数量を協定すること)です。実際、アメリカの独占禁止法制では労働組合が適用除外と明記されています。つまり、法的にはカルテル行為に該当するが、労働組合だけ特別に認めるということです。日本型雇用システムに慣れた人にとっては意外に見えるかも知れませんが、日本の労働組合法が想定している労働者とは、いかなる意味でも企業のメンバーではありません。

今日においても、日本国の労働法制の基本枠組みは労働基準法と労働組合法であり、それらが想定している労働者とは企業のメンバーシップに基づいて働いているのではなく、指揮命令を受けながら個々の労務を供給するという取引関係に基づいて働いている人々です。つまり、現行労働法制は基本的にはジョブ型であり、日本以外の社会と何ら変わりはありません。

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コメント

人生という時間を金で売り払っているのが「労働者」だよ。
法律が定義しているのは、管理者以外は全て労働者ってことだろ。
ただし「法律」で守られる「労働者」には種類があるってこった。

本日給料支給なのですがまだ振り込みされていません。
こういう場合どうすればよいですか?

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