OECD『男女賃金格差解消へ-今こそ行動』
昨日、経済協力開発機構(OECD)が「Closing the Gender Gap: Act Now」(男女格差解消へ-今こそ行動)を公表しました。
http://www.oecd.org/gender/closingthegap.htm
いろいろと興味深いデータが載っていますが、ここでは日本に関する日本語版のプレスリリースを。
http://www.oecd.org/gender/Closing%20the%20Gender%20Gap%20-%20Japan%20FINAL.pdf
日本女性は教育では大きな進歩をとげました。今日では、女性の方が男性より高学歴になり、25-34歳では、52%の男性に対して59%の女性が大学を卒業しています。45-54歳では32%の男性に対して23%しか女性の学士保持者はいないことからも、時代を経た変化が窺えるでしょう。しかし、学科選択という点では依然として明確な男女差が見られます。保健・教育等の専攻は、60%が女性である一方、コンピューターやエンジニアリングを専攻する女性は10%に満たないのです。さらに、若い女性は、短大や有名でない大学に入学するケースが多く、結果企業での早い昇進の流にのる確率も低くなっています。
男女間の給与格差は、40歳以上では40%もあり、若い世代でも15%程見られます。日本女性にとっては昇進も難しく、日本の上場企業の役員の内女性はわずか5%で、OECD加盟国間で最も低いレベルに入ります。
日本女性が労働市場で困難に直面している原因としてあげられるのが、ワークライフバランスの難しさです。育児休暇や子育て支援等の社会政策があるにもかかわらず、日本女性の多くは出産後に退職することが多く、たとえ常勤として復帰を望んでも困難なことが多いのが現状です。その結果、日本の労働市場では、女性が低賃金で非常勤の職に追いやられてしまうことが多いのです。さらに、日本の税及び福利厚生の制度が被扶養者である妻から仕事へのモチベーションを削ぎ、所得税免除の範囲内での収入にとどめようと思わせてしまうことも原因です。日本の男性も、育児休暇をとることには消極的で、さらに長時間勤務という日本の文化もあり、夫が(無給の)家事を分担することは依然希です。今日、夫が家事に費やす時間は、1日平均で59分です。
職場の環境も日本におけるワークライフバランスを困難にさせる一因です。その結果、役員クラスの女性の割合が少ないだけでなく、彼女らの出産率も低くなっています。このまま、2011年現在の労働市場参加率の男女格差(女性の63%、男性の84%)が継続されれば、今後20年で日本の労働人口は10%以上減少すると予測されます。日本は、教育においても経済活動においても、一人一人の能力をより効率的に活用することが必要です。経済成長には男女平等が鍵となります。労働市場における男女平等が実現すれば、今後20年で日本のGDPは20%近く増加することが予測されます。
最近、国際機関からのこういう忠告というか叱咤も繰り返されすぎて、いい加減飽きが来ているかも知れませんが、いや言われていることがなんら解決していないから言われ続けているわけで。
あと一つ、「長時間勤務という日本の文化もあり」というもう数十年言われている話も、確かに「ある社会の成員によって共通して持たれている思考と行動のパターン」という文化人類学的意味では「文化」なんだけど、「文化」といってしまうことでどうしようもないというインプリケーションが言われている日本人の側にもたらされてしまうという問題点もあり、やはりなぜ長時間労働になってしまうのかというそのメカニズムをきちんと分析して、解決策を探っていくのでないと、百年河清を待つ話になってしまうわけです。
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