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2012年12月29日 (土)

連合総研『政策決定プロセスを検証する~政権交代から3年』

Rials連合総研『政策決定プロセスを検証する~政権交代から3年』は、、2012年8月31日、お茶の水・連合会館で開催したワークショップ「政策決定プロセスを検証する~政権交代から3年」の記録集です。

http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1356595400_a.pdf

■報告1 民主党政権の政策決定プロセス
-民主党政権は「失敗」の経路から離脱できなかったか? 伊藤光利(関西大学教授)
■報告2 予算編成・税制改正:民主党の「与党化」と「自民党化」 上川龍之進(大阪大学准教授)
■報告3 民主党政権の雇用・社会保障政策Ⅰ 宮本太郎(北海道大学教授)
■報告4 民主党政権の雇用・社会保障政策Ⅱ 三浦まり(上智大学教授)
■報告5 民主党内閣の下での「地域主権」改革-2006年以降の地方分権改革における持続性と変化- 北村 亘(大阪大学准教授)
■コメント1 労働運動の政策参加のあり方 篠田 徹(早稲田大学教授)
■コメント2 政権交代の意義と政党政治の今後 山口二郎(北海道大学教授)
■討論

このうち、民主党政権の雇用・社会保障政策を検証している宮本太郎さんの報告から興味深いところを。

民主党の場合は、冒頭に伊藤先生がおっしゃったように、寄り合い所帯的なところですから、自由主義と社会民主主義と保守主義とで一致できる点は現金を給付するということになってしまう。

自由主義勢力も、サービス供給の自治体や国の官僚機構は増大させないということで、現金給付なら満足する。保守主義の小沢さんも、そもそも子ども手当と並んで、老親を介護しているかいがいしい息子・娘に同居手当を出す、同居手当と子ども手当を一体として出すんだということを言っていました。そういう形で諸勢力が、諸イデオロギーが一体化したところが現金給付だったわけです。そういう形でサービス給付があいまいになった。

それから、負担感をめぐる動揺については、そもそもアクティベーションの考え方では、何のための増税かというと、それは還元をしていくためです。それも現金でばらまくのではなくて、みんなが社会参加できる条件をつくっていくというところで還元をする。まずそのファーストステップとして増税があったわけなんですけれども、これがやはり言ってみれば増税のための増税ということで、民主党自身がその先何をやっていくかということについて見通しが持てなかった。

思想の異なる三者が共通してやれる施策は、そのどの三者にとっても最善策ではない現金給付しかなかった・・・というあたりが、意思決定のパラドックスを露わに示しているように思われますね。

次の三浦まりさんは、民主党の自由主義(リベラリズム)の3つの異なる顔を次のようにかなり的確に摘出しています。

ただ、多義的であるがゆえに、さまざまな自由主義があり得て、民主党自体が、そのさまざまな自由主義を取り込んできて大きくなってきた政党であるいうことを見ていく必要があります。

「オリジナル民主党」という言い方が先ほど出ましたけれども、最初の、90年代の半ばから出てきた勢力というのは、より新自由主義的な側面を確かに持っていました。無駄を省くとか、身を切る改革といった言葉に象徴的にあらわれています。また、市場の活用に関しても積極的だったといえます。

その一方で、これは自民党には決定的に欠落している民主党らしさだと思いますが、政治的自由主義ということに関して、かなり愚直なまでにこだわっていました。最もふわふわした形で持っていたのが鳩山さんだと思います。公共という言葉が象徴的です。自民党の保守的な公共の定義ですと、それは国家が定義をする、国家エリートが公共というものを定義することになります。それに対して民主党は、多義的にあるいは多元主義的に、さまざまな人が、市民社会が、自分たちで公共とは何かを定義していくと捉えています。同じ公共という言葉でも定義する主体が自民党と民主党では全く異なるわけです。民主党のは政治的な自由主義のあらわれだと思います。また地域主権、それが団体自治であれ住民自治であれ、地域の人たちが自分のことを決めていく地域主権というのも、政治的自由主義のあらわれだと考えられます。

新自由主義的なオリジナル民主党路線は90年代半ば以降ずっと続いてきましたが、2000年代の経済状況の悪化に伴う形で、第三の自由主義が加わっていくことになります。それがリベラリズムです。リベラリズムという英語は、アメリカ英語とイギリス英語で意味が違いますが、これはアメリカ英語のリベラリズムです。貧困や格差問題に対して、より積極的に対策を講じるという意味でのリベラリズムが2000年代前半から加わっていきます。

なるほど、「仕分け大好き」平成維新の会風の新自由主義派、鳩山的ふわふわ型「市民」自由主義派、そしてアメリカ語のリベラリズム(=ヨーロッパでは社民主義)型の自由主義派、と、まったく精神構造の異なる3つの「自由主義」派が雑居していたのでは、出てくる政策が統合不調気味になるのも宜なるかなというところです。

ちなみに、山口二郎さんはコメントで、

連合は、例えば自民党も応援しますよとか言い出すと、そっちに行く危険性もあるのかなということを、私は今まじめに心配しています。だから民主党は、それに対して二極的システムを守るという選択肢をちゃんと追求してほしいと私は思います。

・・・そんな状況でありまして、今日おいでになっている連合の皆さんは、やはり民主党は働く市民の政党だと言い続けてほしいということを最後に申し上げて終わります。

といわれているのですが、いやまさにそういうことで、政策の中身は一切抜きにしてただただ政権交代が必要だ、ということで、上の全然違う考え方をごっちゃにしたままで突き進んでしまったために、「やはり民主党は働く市民の政党だ」とは到底言えないような事態を引き起こし、その挙げ句がこうなったわけでしょう。

むしろ、労働者のためになる政策をやるのなら「自民党も応援しますよとか言い出す」という選択肢を封印してきたことを再検討する必要もあるのではないでしょうか。

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コメント

「出てくる政策が『やや統合失調気味』」という文章の「統合失調気味」という箇所は訂正願いないでしょうか?病名や症状を政治において活用するのは不適当であると考えるからです。不愉快に感じました。ご検討のほどよろしくお願いします。
その上で、最後の山口二郎氏に対する批判は流石と思いました。
労働組合も政策や理念に応じて柔軟に支持政党を変化させることになれば、政党の方も政策をより切磋琢磨させるモチベーションになりますし、それが実際に支持率に反映されるならば、政党にとっては非常に有効なインセンティブになると思います。
『良い行い』が正当に評価されないのは、問題ですし、特に政治においてはそれが多いような気がしますので。
我が社会民主党も政策を一層磨かなければ、と、それどころじゃないかもしれませんが。。
失礼しました。

民主党は、幹部に弁護士が多いから、立憲主義や法治主義ということを理解しているものと思っていたが、観察していると人治主義そのものというように思えた。

考えてみると、弁護士さんは、依頼主のために、どんな理屈でもつくりだしていく仕事。従来の法解釈など、目的のためならどうでも変更してよいということだったのだろう。

最悪だったのが、菅総理の国会での施政方針演説や国会答弁。

菅元総理は、所信表明演説(平成22年6月11日)で、「原点は、政治学者である松下圭一先生に学んだ「市民自治の思想」です」と言いきった。

また、菅元総理はその著書『大臣』で、「私の憲法解釈の基本となっているのは、松下圭一先生の『市民自治の憲法理論』(岩波新書、一九七五年)である。「松下理論を現実の政治の場で実践する」ことが、私の基本スタンスだった」とまで述べている。

政府の伝統的な憲法解釈は、政治学者の松下氏の特殊な解釈ではなく、憲法学者の佐藤功氏(宮沢俊儀氏の弟子筋)のものが基本になっていると思う。

法解釈について、いくら個人的に私淑していても、一政治学者の憲法解釈が堂々と、国会の場で内閣総理大臣の所信表明で正当化して言ったのには驚いた。

菅元総理は、同じ平成22年3月16日の参議院内閣委員会(当時、財務大臣)で、「議会制民主主義は期限を区切ったあるレベルの独裁を認めることだと思う」と言った。

また、きわめつけの暴言が、平成去年の十一月十九日の同委員会(当時、副総理兼国家戦略相)では「憲法には三権分立という言葉はない」と三権分立を否定したこと。
どこの憲法に三権分立などとストレートに書いてあるのだろうか。それぞれの固有の権能が書き分けてあるということで、それを学問的に「三権分立」といっているのだろう。

そのような認識だから、「内閣の方針は多数党がイニシアチブをとるのは当然。行政の中立性はない」とまで明言していた。

これが菅流松下圭一理論の「国会内閣制」というわけだ。

大統領などの行政権の独裁を認めた、ナチスの理論的支柱、
カールシュミットばりの議論だ。昔から、「左翼」でいわれていた議論(国会独裁による社会主義革命)のようにも思うが。
  
先進国ではあたりまえの法治主義、もっといえば、立憲主義を軽視して、フランス革命ばりの、人治主義に走る、民主党の性質が、混迷を招いたのではないだろうか?
イギリスは成文法はないが、コモンローの国である。制定法ですべてを決めている国ではない。それを一生懸命勉強してうわべだけマネしてもどうなのか。
人治主義で有名な現代中国共産党も真っ青というか、あきれていることだろう。

連合のレポートも、今後は、維新の会方面の方々、あるいは片山さつき氏のような確信犯的方々が、民主党をしっかり前例としてその愚行を活用して同じようなことをやる可能性を考えたら、このような観点をしっかり検証してほしかった。

善意は地獄へ至る道というような言葉があるが、民主党に送りたい言葉の1つだ。民主党の場合、善意というより、無知あるいは放漫ということかもしれないが。

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