派遣問題フォーラムのリポート@アドバンスニュース
去る10月16日に開かれた派遣問題フォーラムの概要が、アドバンスニュースで報じられています。
http://www.advance-news.co.jp/interview/2012/11/post-162.html(派遣問題フォーラム、多面的角度から論者が率直な意見 正規・非正規全体の議論が不可欠)
NPO法人、人材派遣・請負会社のためのサポートセンター(高見修理事長)が10月16日、東京・両国で開いた派遣問題フォーラム「改正労働者派遣法の課題と今後の雇用問題を考える!」は、労働者派遣法(以下、派遣法)の専門家5人による議論が派遣法の抱える本質的な問題をえぐり出し、政府が10月17日から開始した「派遣制度の見直し論議」を先取りする形の深みあるフォーラムとなった=写真。(報道局)
この日の講演・意見発表とテーマは、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員「労働者派遣法を根本から考え直す」、▽静岡大学人文社会科学部の本庄淳志准教授「改正労働者派遣法の問題点からみた今後の論議のあり方」、▽ニッセイ基礎研究所生活研究部門の松浦民恵主任研究員「派遣社員のキャリア形成の課題と今後の展望」、▽慶応大学大学院商学研究科の鶴光太郎教授「非正規雇用改革~近年の政策対応の評価と残された課題」。
基調講演で濱口氏は、戦後日本の労働政策を概観し、派遣法が生まれた歴史的背景を説明。当初は派遣労働者の保護が主要目的だったはずが、途中から終身雇用慣行を守る「常用代替防止」に視点が移ってしまい、就労期間や職種が制限されるなど、派遣労働者の保護は後回しにされたと説明。その後の改正を通じても基本的な発想に変化はなく、「派遣だけに限定しない労働政策全体にまで踏み込んで考えないと、問題の解決は困難」と強調した。
(※濱口氏の講演内容骨子は、自身のブログに当日の資料としてオープンにしております) hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
本庄氏も労働法学の立場から、「常用代替防止」という目的を維持するかしないかという根本的な部分を議論しないままの法改正に疑問を呈し、「派遣法は根幹の部分がおかしい。これでは派遣労働者の保護に特化した規制が必要になる」と指摘した。
松浦氏は派遣労働者のキャリア形成について、派遣会社や労働者へのヒアリング結果を紹介しながら、同じ派遣労働者でも無期雇用と現状の有期雇用に希望が二極化している点に着目。「派遣元、派遣先のそれぞれが労働者の能力やキャリアを評価できるシステムの構築が必要だ」と述べた。
鶴氏は、現在の無期雇用と有期雇用の極端な二極化の間を埋め、有期から無期への連続性を確保する雇用改革の必要性を指摘、問題の解決に向けて、世界標準になっている「解雇補償金」制度の導入など、正規、非正規の一体的な改革を提案した。
今も変わらぬ「常用代替防止」
この後のパネルディスカッションでは、東大大学院情報学環の佐藤博樹教授がコーディネーターとなり、5人による意見交換があった。改正派遣法については、「派遣の役割は大きいにもかかわらず、負のインパクトが先に出てしまった」(鶴氏)、「間接雇用がさらに抑制されるだろう」(本庄氏)、「看板の掛け替え作業に終始したに過ぎない」(濱口氏)、「常用という働き方を良いとする考えが色濃く残っている」(松浦氏)など、総じて評価は低かった。
論者たちの視点に共通していたのは、改正派遣法が派遣労働者の真の保護につながるかどうか疑問が多いこと。非正規問題の解決には派遣法だけでなく、正規・非正規全体に関わる議論が不可欠なことの2点。現在、厚労省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」で研究者らによる見直しが議論されているが、同フォーラムは感情論抜きの討議で一足先に問題点の本質を浮き彫りにした。
同フォーラムは「正規・非正規雇用をめぐる新たな動きと今後の人材ビジネスを考える」をテーマに、同サポートセンターが今年度、4回にわたって開いた派遣・請負問題勉強会のしめくくり。今回は、10月から改正派遣法が施行されたのに合わせ、改正の目的である「派遣労働者の保護」につながるかどうか、今後の雇用政策に示唆を与える場となった。 (おわり)
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