退職勧奨とICレコーダー
経営法曹会議から『経営法曹研究会報』72号をお送りいただきました。
特集は「退職の合意をめぐる諸問題」で、「退職勧奨の限界(パワーハラスメントとの境界線」「退職の意思表示の撤回・退職の意思表示の瑕疵をめぐる諸問題」「希望退職募集に関する諸問題」「有期労働契約の更新上限特約・不更新特約をめぐる諸問題」という4つのテーマについて、報告・討議がされています。
このうち、最初の退職勧奨とパワハラの境界についての報告で昨年の日本航空雇い止め事件(労判1041号)が論じられたのに関わって、司会の伊藤昌毅さんがこう述べているのが興味深いです。経営法曹という立場から会社側への注意事項として、
・・・今はICレコーダーが非常に普及していますから、むしろ隠し録りされているのが当たり前と思っていないと、使用者側の対応としてはおそらくミスにつながりかねないだろうと思っています。
それに対して、しばらく前のICレコーダーがこれほど普及する前ですと、当時も小型のマイクロカセットレコーダーはありましたが、オートリバースをしても90分、120分がせいぜい出、録っている間にカチャッという音がするものですから、隠し録りがすぐにばれてしまうので、なかなか隠し録りができなかったという問題があろうかと思います。
今はそういう意味では10数時間、あるいは20数時間、長時間にわたって録れますので、私も経験しているのは、しばしば出社時点からずっとICレコーダーを回しっぱなしで上司に相対峙する。不良社員、もともと会社から目をつけられている社員は、そういう対応を取ることも十分あるというのが今の情況だろうと思います。・・・
電子機器の急激な進化が、こういう労使紛争のありように影響を与えているという指摘は、言われてみないと分からないだけに、大変面白かったです。
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