岸健二さん@『日本の雇用終了』
労働調査会のサイトのコラム「労働あ・ら・かると」に、岸健二さんが「そろそろ労働需給関連全体の仕組みと法の見直しも必要な時期ではないですか」という文章を寄せておられます。
http://www.chosakai.co.jp/alacarte/a12-11.html
趣旨は、現在の労働者派遣法の在り方に疑義を呈するものですが、そこで引用されているのがわたくしがまとめた『日本の雇用終了』なので、大変うれしく感じました。
・・・労働組合の組織率(推定)が年々低下し、平成15年には2割を切るに至っている現実と、個別労働紛争の増加の状況や労働審判制度の利用状況を併せ見ると、今回の改正派遣法を巡っての論議の中で「派遣で働くことより直接雇用で働くことのほうが良いのでは」と聞こえる主張には、労働者保護を現実的に担保する観点からはとても無条件に肯定することはできないのです。
労働裁判の判例集などを読むと、「この国は解雇規制が厳しいなぁ」という気持ちにもなるのですが、一方で労働政策研究・研修機構(JILPT)による『日本の雇用終了─労働局あっせん事例から』(2012年4月/濱口桂一郎 氏執筆)に目を通すと、この国の多くの中小企業では、極論すれば事実であるかどうか疑わしい「経営不振」と言う理由を挙げるだけで極めて簡単に解雇が行われている事例に驚愕してしまいます。20世紀の後半には、労働組合が一定程度は無体な処遇を受けた労働者の保護に力を発揮してきましたし、今もその努力は続けられているとは思いますが、これまでの派遣法が「常用代替防止(=正社員組合員の職場を守る)」ことに主眼を置いてきた(今回の改正でもその要素は払拭しきれてはいませんが)ことを見ると、連合をはじめとする労働組合が、正社員組合員だけでなく雇用形態の別なく個々の労働者を守ることができるよう変身しきらないと(一部その努力は始められていますが)、その社会的機能には限界があると思わざるをえません。
今回の派遣法改正では「日雇い派遣の禁止」が盛り込まれたわけですが、単純に「日雇い派遣は悪くて、日雇い紹介の直接雇用なら良い。」とはとても思えません。上述の労働局あっせん事例に垣間見られるような雇用コンプライアンスのない企業の直接雇用に「日雇労働の労務管理」をまかせることと、「適正な許可制度で管理され、業界自主規制も充分な人材派遣会社や人材ビジネス会社(が実現できれば)」の雇用により就業管理をさせることと、どちらが日本の社会にとって有益なのか、充分に考察することが重要だと思います。
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