遠藤公嗣,筒井美紀,山崎憲『仕事と暮らしを取りもどす ― 社会正義のアメリカ ― 』
遠藤公嗣,筒井美紀,山崎憲『仕事と暮らしを取りもどす ― 社会正義のアメリカ ― 』(岩波書店)をお送りいただきました。
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/1/0258620.html
どのようにすれば私たちの生活に公正さを取り戻せるのか.そのヒントは,新自由主義国家アメリカにこそ存在した.深刻化する貧困にあらがって,弱い立場の人々の権利をまもり,助け合いを支える――社会正義を追い求める新たな労働運動・ネットワークを紹介し,その背景を分析する.
この本、本ブログで紹介したJILPTの研究報告書
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-0914.html(『アメリカの新しい労働組織とそのネットワーク』)
の市販版です。もっとも、報告書が
序論 目的と方法
第1章 労働組織の法的・制度的環境とその通史的概観(830KB)
第2章 新しい労働組織とニューディール型労使関係(1.0MB)
第3章 職業訓練と職業斡旋―労働力媒介機関の多様性と葛藤(818KB)
第4章 「相互扶助」を軸とする労働組織の活動とネットワーク化(869KB)
第5章 ワーカーセンターと権利擁護団体(776KB)
第6章 本調査結果に対する米国社会政治史的考察
まとめと政策的インプリケーション(767KB)
という構成であるのに対して、本書は
日本の読者へ トーマス・A・コーハン
はじめに 〈遠藤公嗣〉
第1章 権利をまもる
――労働組合でない権利擁護組織の発展 〈遠藤公嗣〉
1 ワーカーセンター
2 全国ネットワーク・労働組合との関係第2章 雇われずに働く
――助け合う組織づくりとワーク・ルール立法運動 〈筒井美紀〉
1 生活保障のために団結を――フリーランサーズ・ユニオン
2 ホームヘルパーたちが所有する会社――CHCA第3章 スキルを身につけ仕事を探す
――地域密着型の職業訓練と斡旋 〈筒井美紀〉
1 地域と中小零細企業の支援組織――WIRE-Net
2 職業の相談・斡旋・訓練をワンストップで――ミシガン・ワークス!第4章 支え合う社会を復活させる
――ソーシャルネットワーク化する組織 〈山崎憲〉
1 労働運動とコミュニティ・オーガナイジング・モデル
2 新しい労働組織の概要
3 10年先を見据えてあとがき 〈山崎憲〉
と、再編されています。
本書の編集担当の中山永基さんは、
格差と貧困に覆われた日本社会.その現実は,どのようにしたら変えることができるのでしょうか.そのヒントが,「貧困大国」「新自由主義国家」といわれるアメリカにこそ存在します.
既存の労働組合とは異なる新しい労働組織とそのネットワークが,いかに社会のニーズをくみ取り,非正規雇用などこれまでの労働運動から排除されてきた人たちを包摂し,若い人たちをも巻き込みながら,現実を変えつつあるのか――.全米を席巻したオキュパイ運動にもつながりうる,アメリカにおける社会変革の「今」を詳細にレポートします.
と紹介しています。
ここでは、一番冒頭に置かれているコーハンさんの「日本の読者へ」から、メッセージのコアの部分を
・・・伝統的な労働組合が労働者を組織するモデルはもはや壊れていて取り替えられる必要があるのです。
・・・労働組合はこれまで交渉力の源泉をストライキに置いていました。これももはや有効ではなくなりつつあります。使用者が労働組合に突きつけるさまざまな譲歩の規模を縮小させるという程度の役割でしかありません。本書が取り上げる「次世代労働組合」は、知識と技術を労働者に授けることで雇用主との競争力を獲得することを試みるとともに、雇用に関連した政策の推進に関してたよりになる運動やネットワークを作ろうとしています。・・・
本書は先駆的なコミュニティ組織も取り上げています。これらの組織は労働者の権利を守るさまざまな組織と提携するパートナーとなっています。・・・
社会的な運動としての「労働」は、そこに関連のあるあらゆる組織に拡大して労働者の権利を守るために結集させる必要に迫られています。・・・それは、労働者を教育し、職業資格を与え、転職のための手助けをする組織であったり、労働者の社会的かつ政治的な必要に応えるコミュニティや民族、移民、宗教に根ざしたグループであったり、労働条件を改善するために雇用主に圧力をかけるNGOであったりといううようにさまざまです。
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