専業主婦世帯の収入二極化と貧困問題
JILPTのディスカッションペーパーとして、周燕飛さんの「専業主婦世帯の収入二極化と貧困問題」がアップされています。
http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2012/12-08.htm
古典的なダグラス有沢法則以来、専業主婦というのは豊かな家計というイメージがありますが、実は結構貧困家庭なのに専業主婦というのもあって、それを経済学の見地から分析した論文です。
本文の最後の「終わりに」から
裕福の象徴と思われている日本の専業主婦のイメージを一変させるような調査結果を、JILPT が2012 年3月に発表した。JILPT の調査結果によると、専業主婦世帯の12.4%もが、貧困ライン以下の収入で暮らしている。その結果を直近の国勢調査と照らし合わせると、貧困層の専業主婦世帯の総数が、55.6 万世帯に上ると推計される。こうした世帯のほとんどは、食料や衣料等生活必需品の不足がそれほど深刻ではないものの、「子どもの学習塾」など教育投資の負担感が非常に強く、経済的な理由で子どもを通塾させられない家庭が非常に多いことが分かった。
計量分析の結果、専業主婦でいるケースの大半は、本人が直面している市場賃金が低く、家事・育児活動の市場価値が相対的に高いことに起因する合理的選択であることが分かった。ただし、貧困専業主婦の中にも、5人に1人は今すぐに働きたいのに、不本意ながら専業主婦でいる。働きたいのに、働けない社会環境的要素として、認可保育所不足が一因だと考えられる。推定結果では、200 人以上の規模の待機児童を抱える都市部では、貧困なのに専業主婦となるリスクが高くなっている。また、多くの主婦が望む時間の融通の利く仕事の求人が少ないという労働需要側の要因もある。
専業主婦世帯の貧困を解消する手段として、主婦の就労が有効だと考えられる。調査では、8割強の貧困専業主婦は早かれ遅かれ働きたいと考えているようである。そこで、仮に彼女たちが全員パート就業(JILPT 調査ベースで年収94 万円と想定)できていれば、専業主婦世帯全体の貧困率が、最大で7.3 ポイント(12.4%→5.1%)下がるとみられる。
貧困層の専業主婦が働くための環境整備として、保育所不足が深刻な都市部を中心に認可保育所を拡充させること17や、働く時間に融通の利く仕事の求人を増やすよう企業や公共団体等に働きかけることが必要不可欠である。また、貧困層の専業主婦が直面している市場賃金を高めることも、彼女らの職場進出につながるであろう。具体的には、無料職業訓練の提供、専門資格取得への支援等の手段が有効だと考えられる。
とのことです。
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