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2012年10月31日 (水)

労働者派遣法を根本から考え直す@『人材ビジネス』11月号

201211明日発行の『人材ビジネス』11月号に掲載されるわたくしの「労働者派遣法を根本から考え直す」をホームページにアップしました。

http://www.jinzai-business.net/gjb_details201211.html

http://homepage3.nifty.com/hamachan/jinzai1211.html

製造業派遣や登録型派遣の原則禁止が国会修正で削除され、日雇派遣の原則禁止と違法派遣の場合の労働契約申込みみなしなどが残った今回の労働者派遣法改正については、各論点ごとにいろいろと論評がされている。しかしながら、今必要なのは各論の議論とともに、それらを包括する総論の議論ではなかろうか。今こそ、労働者派遣法を根本から考え直すべき時期ではなかろうか。
 労働者派遣法を根本から考え直すというと、そもそも派遣という働き方は良いのか悪いのかという議論をすると心得る向きもある。実際、2007年頃からの労政審における議論の転換は、そういう派遣是非論が先導してきた。しかし今考え直すべきは、そういう派遣労働だけを取りだして、他の労働法分野の常識とは隔絶した特別扱いをしたがる発想そのものなのではなかろうか。
 労働法研究者の多くがうすうす気がついているにもかかわらず、敢えて言挙げしてこなかったことは、日本の労働者派遣法制が世界的に見て極めて異例な仕組みになっているということだ。先進諸国の派遣法制は労働法制の一環である。すなわち派遣労働者を保護するための労働法である。当たり前ではないかと思うかも知れないが、日本の派遣法はそうではない。派遣という本質的に望ましくない働き方を抑制するために派遣事業を規制することが目的の事業立法である。問題は、派遣という働き方が誰にとって望ましくないのか、だ。派遣法制定時の政策文書を見れば分かるように、「望ましくない」のは日本的雇用慣行の中にいる常用労働者にとってであって、派遣という働き方をしている労働者にとってではない。それを象徴する言葉が派遣法の最大の法目的とされる「常用代替の防止」だ。派遣という「望ましくない」連中が侵入してきて、われわれ常用労働者の雇用が代替されては困る、という発想だ。
 ではどうしたら常用代替しないように仕組めるか。最初に派遣法が制定された時のロジックは、新規学卒から定年退職までの終身雇用慣行の中にいないような労働者だけに派遣という働き方を認めるというものだった。それを法律上の理屈としては、専門的業務だから常用代替しない、特別な雇用管理だから常用代替しない、と言ったわけである。しかし、その「専門的業務」の中身は、結婚退職したOLたちの「事務的書記的労働」であった。「ファイリング」という職業分類表にも登場しない「業務」が最大の派遣専門業務となったのは、その間の論理的隙間を埋めるものであった。後には事務職なら最低限のスキルである「事務用機器操作」が専門業務としてその隙間を埋めた。このごまかしが世間で通用したのは、OLは新規学卒から結婚退職までの短期雇用という暗黙の了解の下に、OLの代替は常用代替ではないと認識されていたからであろう。この暗黙の了解が通じなくなると、もともと事務処理こそが派遣の太宗であったにもかかわらず、それが法律の建前の専門業務ではないというそれ自体は正しい理屈が暴走することになる。
 このごまかしに満ちた特殊日本的労働者派遣法を抜本的に作り替えるチャンスが実は一度だけあった。ILO181号条約の制定を受けて行われた1999年の派遣法改正だ。筆者は1997年のILO総会で同条約の採択過程に立ち会い、世界の政労使が交わす議論をつぶさに見てきただけに、この改正が新条約の思想に立脚して行われると考えていたが、残念ながらそうはならなかった。「常用代替の防止」という日本独自の派遣法思想は何の修正もなく維持された。専門業務だから常用代替しないというフィクションも維持された。付け加えられたのは、専門業務ではなく、それゆえ常用代替する危険性のある一般業務について、派遣期間を限定するから常用代替の危険性が少なくなるという新たなロジックである。
 誤解している人もいるのだが、これは欧州の派遣規制の一つである雇用期間限定とは異なる発想である。フランスが代表的だが、雇用契約は無期契約が原則であるから、有期契約をできるだけ限定しようという発想だ。そこで直用有期であれ派遣であれ、有期契約は限定し、長く使うのであれば無期雇用にせよという法政策がとられる。大事なのは、これは有期や派遣で働く労働者の保護を主眼においた労働者保護政策だということだ。賛成反対以前に、誰のための政策かをきちんと認識することが必要である。これに対し、1999年改正で導入されたのは、派遣労働者本人とはほとんど関係のない派遣会社による派遣先に対する派遣サービスの上限である。派遣労働者の保護など眼中になく、もっぱら派遣先の常用代替をしないことのみを目的としてつくられた日本的派遣法の、極めてグロテスクな論理的帰結であった。
 そのグロテスクさが露呈したのが、有名ないよぎん事件である。派遣法以外ではまともな日本の労働法では、有期契約を何回も反復更新すれば雇止めが制限される可能性が出てくる。今回の労働契約法改正で盛り込まれた雇止め法理だ。ところが裁判所は、派遣法は常用代替防止が目的だからといって、それを認めなかった。日本的派遣法は、派遣労働者を差別することを要求しているのである。
 今回の改正で「派遣労働者の保護」がタイトルに入ったにもかかわらず、以上のような「常用代替防止」思想には何の修正もされていない。派遣労働者に着目しない派遣期間限定の上に期間を過ぎた派遣先の労働契約申込みみなしを載っけた改正など、その論理的破綻を象徴していると言える。ずっと就労して3年に達する直前に入れ替えられた労働者は何の権利もなく、入れ替わりに入った労働者が申し込まれたとみなされるのだ。
 その他にも、特殊日本的派遣法の矛盾はあちこちに噴出している。今こそ、労働者派遣法を根本から考え直すべき時期ではなかろうか。
 

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コメント

読みました。
労働者派遣法は改正前も改正後も、労働者差別法だと思っている私としては、これは殆ど無意識的にそうなってしまったというか、日本型雇用(在りし日の正規な終身雇用体系という)の前提で、派遣労働者があたかもアンドロイドのように扱われている現状は何とか変えなければならないことは確かだと思います。
そういえば、何方か「“正社員は非正規社員を出しに使っている”」といったこともありました。
それから、業務委託も同様で、偽装請負だからと派遣に切り替えとか、臨時や期間従業員も、無意識的には正規社員のアンドロイドで、表層に浮かび上がっているのは形式的な契約の違いです。

自由な生き方、自由な選択などではなくて、集合の区分をそのように仕切って、一方だけ囲って少し利益を多くするわけですね(利益が多い集団はその政治的裁量も多く持つ結果になる)。もう一方はその分だけ利益を奪われるということだと思います。
これだと、階層が違ってくるので労働者間の競争でもないわけです。

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