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『経営法曹』174号は盛りだくさん

経営法曹会議より、機関誌『経営法曹』174号をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

今号は中身が実に盛りだくさんです。第107回経団連労働法フォーラムの記録では、1日目のテーマが「職場のいじめ・嫌がらせ・ハラスメントに関するトラブル」、2日目が「高齢法と労働契約法改正法案への対応策」となっていて、どちらも山のような設例と解答が載っていて、大変参考になりますし、面白いです。

あまり本筋ではないのですが、その中で、大阪の別所弁護士が述べた次の一節が興味深いです。

・・・正規の社員の複数のものが派遣社員に対して、その派遣社員の頭が禿げているということで、「ピカリン」という発言を繰り返した。それでその派遣社員がその発言等を理由として会社に対して損害賠償請求を起こしてきたという事件です。

和解の席で裁判官からこういわれました。「これが正規同士の間での発言であったら裁判所は損害賠償の理由とはならないのではないかと考える。ただし、正規の者が非正規に対して、かつ複数回にわたって執拗に発言しているということで、これは損害賠償の対象となるのではないか。」そういう趣旨の話をした上で、和解を勧められたという経験があります。

ですから、ご質問の中にあるように、違法性を判断するメルクマールとして「職場内の優位性」という観点がありますが、それは、例えば上司と部下の関係だけではなく、正規と非正規の関係も今の時代には重要なポイントになってくるのです。今日お集まりの方は、社内研修などの際に、そういう観点からも違法性は判断されるということを注意喚起していただければと思います。

あと、巻頭言は種村泰一さんが「橋下改革をめぐる一考察」を書かれていて、その最後の一節が、まさに正しい意味での経営法曹の言葉として熟読玩味するに値します。

・・・橋下市長の市長就任以降、「労働組合が職員人事に介入している」などとして労働組合批判が繰り広げられた。しかしながら、そもそも労働組合は労働組合員の権利を擁護するための存在であり、人事に介入を試みようとするのはむしろ当然のことであって、そのことは特段の非難に値しない。実際に職員人事に労働組合の介入がありそのことで人事が「歪んだ」ものとなっているとすれば、それは、むしろ、人事権を有する経営側の問題と受け止めるべきではないだろうか。

労働問題は使用者と労働者との関係で生じるものであり、常に相手方が存在するものである。そういった中で、使用者は企業の存立維持発展のためにさまざまな施策等を打ち出すのであるが、理念や思いつきのみで突っ走ると、いたずらに相手方を刺激することにもなりかねないばかりか、訴訟等が「多発」することにもなりかねず、決して合理的に解決を図ることなどできない。さりとて、相手方に「遠慮」してなすべき事をなさない(なせない)というのでは、あまりにもお粗末である。あくまでも、法的検討に基づいて「地道」に、しかし「毅然」と対処することこそ肝要であると思われる。

ここにおいて、労働問題に法曹が関わる意義を見いだすことができるのである。・・・

民間企業の人事労務をこれっぽっちも知らないくせに何かといえば「民間ガー」と喚きたがる無能な人々ではなく、民間企業で労働組合相手の喧嘩にきちんと裁判所で通用する知恵をつけてきた経営法曹だからこそ言える台詞でしょう。

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