合成の誤謬@『労働経済白書』
本日、『労働経済白書』が公表されました。
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/12/
第1章 労働経済の推移と特徴
第2章 貧困・格差の現状と分厚い中間層の復活に向けた課題
第3章 就労促進に向けた労働市場の需給面及び質面の課題
という内容でさまざまな分析がされていますが、やはり今回の白書のキーワードはこれでしょう。最後の「まとめ」から、その部分を引用しておきますと。
● 合成の誤謬からの脱却が日本の課題
バブル崩壊後低成長が続く日本経済においては、企業経営を守るための人件費の削減が、結果としてマクロの所得の減少を通じた消費の伸び悩みにつながり、現在、コストを削減した結果、モノが売れなくなったといういわゆる「合成の誤謬」の状態が続いていると考えられる。
経済は需要面、供給面の両面から捉える必要があるが、同様に、労働者についても、労働力の供給主体であるとともに、消費主体でもあり、両面から捉える必要がある。また、人件費をコストとしてのみ捉えるのではなく、人的資源、あるいは内需の源泉として捉えることも重要である。
社会制度・社会システムは相互が密接につながっている「補完的な」関係にあり、全体として考えていく必要がある。社会の構造変化に対応して、日本において最も重要な資源である人的資源を持続的に有効活用でき、社会の活性化につながるような制度・システムを構築していくべきであり、それが雇用・労働面における全員参加型社会の構築と「ディーセント・ワーク」の実現である。● 分厚い中間層の復活に向けて
労働者の所得の増加が消費の増加を通じて日本経済の活性化につながるという日本経済のマクロの好循環を取り戻すことが必要であり、そのためには「分厚い中間層」の復活が必要である。
そのためにも、①誰もが持続的に働ける全員参加型社会の構築により、人口減少、高齢化の下でも日本の経済社会の活力を維持・向上させること、②企業だけでなく社会全体で非正規雇用者も含めた能力開発を行い、人的資本を蓄積していくこと、③労働者が安心して安全に働き続けられる環境整備を行い、「ディーセント・ワーク」を実現していくことが不可欠である。
ということで、本日のキーワードは「合成の誤謬」です。
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厚生労働省は9月14日、2012年版「労働経済白書」を公表した。時事通信は「分厚い中間層復活を=非正規の処遇改善求める」とのタイトルをつけ、「非正規労働者の拡大を受け、非正規の雇用安定や処遇改善への取り組みが必要だ」と強調した上で、「これまで国内消費を支えてきた『分厚い中間層』の復活が重要だと訴えた」と報じた。白書は、非正規労働者の割合が雇用者全体の35%まで高まり、10年前に比べて8ポイント上昇していると指摘。「非正規の増加が、低所得者層の増加につながっている」と分析し、正社員への切り替...... [続きを読む]
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