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2012年9月29日 (土)

生活保護の就労支援策

ちょうど、一昨日の法政大学院の講義で労働市場のセーフティネットを取り上げ、熱心な議論をしてもらったところですが、昨日厚労省の社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会に提示された論点案が興味深いです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002kvtw-att/2r9852000002kvvd.pdf

ただ、その前にひと言。確かに例の河本事件で世間の(レベルの低い)関心は不正受給がらみに集まっているのかも知れませんが、昨日の論点案を1面トップで「生活保護 扶養できぬ理由、説明義務 厚労省が見直し案」てのは、あまりにもレベルが低くて悲しくなります。それは最後の方にちょびっと出てくる話に過ぎないのに、それが全てであるかのような・・・。

http://www.asahi.com/national/intro/TKY201209280697.html(生活保護 扶養できぬ理由、説明義務 厚労省が見直し案)

この点に関しては、読売の方が冷静。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120929-OYT1T00242.htm?from=ylist(生活保護受給者の就活支援…厚労省が対策案)

さて、このペーパーの全体像は、

Ⅰ 新たな生活困窮者支援体系に関する論点
1.総合的な相談と「包括的」かつ「伴走型」の支援
2.就労支援の強化
3.家計再建に向けた支援の強化
4.居住の確保
5.「貧困の連鎖」防止のための取組
6.地
Ⅱ 生活保護制度の見直しに関する論点
1.切れ目のない就労・自立支援とインセンティブの強化
2.健康・生活面等ライフスタイルの改善支援
3.医療扶助の適正化
4.不正・不適正受給対策の強化等
5.地方自治体の負担軽減

さまざまな論点を網羅しており、どれも論ずべきことはいっぱいあるのでしょうが、ここではなによりもまず就労支援関係について。

ここで出てくるコンセプトとして注目すべきは「中間的就労」でしょう。一昨日の講義でも意見が出ていたように、生活保護受給者をいきなり一般就労の場に出しても、生活習慣などの問題があってうまく行かない。そこで、「直ちに一般就労を目指すことが困難な人に対して、社会的な自立に向けたサポートをする仕組みを組み込んだ「中間的就労」などを提供」するという発想です。既に地域でそういう取り組みはされているわけですが、それを生活保護制度の中にきちんと組み込んでいくという方向性です。

この関係で、若者支援など別の流れで注目されているいわゆる若者統合型社会的企業ともつながってくる可能性もあります。

もう一つはその次の段階の一般就労に向けた「自治体とハローワークとが一体となった就労支援」です。ここで、

今後、ワンストップ型の支援体制をハローワークと全国の福祉事務所の間で整備することにより、就労支援の必要な対象者を確実に把握し、早期に支援を開始することができる体制を構築してはどうか

具体的には、全国の福祉事務所ごとの就労支援の対象となる生活保護受給者数の規模に応じ、①常設のワンストップ窓口の設置、②ハローワークから福祉事務所への定期的な巡回相談によるワンストップ支援体制の整備、③予約相談制の導入等その他の連携体制の構築の3類型に分けて対応してはどうか。

といったことが提起されています。

次の「家計再建に向けた支援」として、「「多様な就労機会」と「家計再建+居住の確保」等の新たなセーフティネットの導入の検討」が提起されています。とりわけ重要なのは住宅問題でしょう。

①就労支援情報と居住支援情報のワンストップ化(総合的な相談支援センター等へ公営住宅等の情報を提供)
②公的賃貸住宅を活用した離職者等の居住安定化
③離職者を含めた低額所得者に対する民間賃貸住宅の供給支援

「「貧困の連鎖」防止」も重要な論点で、先日本ブログで紹介した埼玉県の事例も載っています。

これらを踏まえた生活保護制度の見直しとして、

保護開始直後から脱却後まで、稼働可能な者については、切れ目なく、また、どの段階でも就労・自立支援とインセンティブを強化することとし、以下の観点からの取組が必要と考えられるがどうか。

として、まず保護開始当初から、

○ 保護開始直後から早期で集中的な就労支援
・就労可能な者については、就労による保護からの早期脱却を図るため、保護開始時点で例えば6か月間を目途に、受給者主体の自立に向けた取組についての計画の策定を求め、本人の納得を得て集中的な就労支援を行う。
・なお、一般就労が可能と判断される者であって、自らの希望を尊重した就労活動を行っても3ヶ月(場合によっては6ヶ月)経過後も就職の目途が立たない場合等には、職種・就労場所を広げて就職活動を行うことを基本的考え方とすることを明確にする。

開始後3~6か月段階では、

○ 「低額・短時間であってもまず就労すること」への就労支援方針の明確化(月額5万円程度の収入をイメージ)
・それまでの求職活動を通じて直ちに保護脱却が可能となる程度の就労が困難と見込まれる稼働可能者については、低額であっても一旦就労することを基本的考え方とすることを明確にする。(収入は低いとしても、生活のリズムの安定や就労実績を積み重ねることで、その後の就労につながりやすくなる。)

就労開始した段階では就労インセンティブとして、勤労控除を見直し、

このため、全額控除となる水準や控除率の見直しを検討する。
・上記と併せ、特別控除(※)については、その活用の程度にばらつきがあることから廃止も含めた見直しを検討する。

最後の保護脱却段階では、

○ 「就労収入積立制度(仮称)」の創設
・現在、生活保護受給中の就労インセンティブ策として勤労控除制度が存在するが、保護受給中には原則預貯金が出来ない一方、保護脱却後には新たに各種税・社会保険料負担が生じるため、保護脱却によりかえって手取り収入が減ってしまうことが脱却をためらわせるとの指摘もあることから、脱却インセンティブの強化につながる取組みが必要。このため、保護受給中の就労収入に応じて一定額を仮想的に積み立て、安定就労の機会を得たことにより保護廃止に至った時に支給する「就労収入積立制度」を創設する(詳細は以下参照)。

さらにいくつか論点が書かれていますがそれは省略します。こういったいわゆるワークフェア的政策については、もちろん福祉重視派からはいろいろな批判がされるところでしょうが、社会全体の連帯を維持するという観点からは避けて通れないところであり、これからどういう風に肉付けし、具体化していくかが問われることになると思われます。

こういうところが弱かったないし欠落していたことが、いったん入ったらなかなか出て行かない、だからなかなか入れたがらない、という悪循環を生んでいたことは間違いないわけで、「入りにくく出にくい」制度から「入りやすく出やすい」制度にしていくためには不可欠な取り組みであることは間違いありません。

最後の項目に不正・不適正受給の問題が取り上げられているのは、もちろん当然ではありますが、ややもすると世間の感情論が行きすぎる危険性もある分野であり、政治家の方々もそれぞれに一家言お持ちだったりする中でなかなか難しいところではありますが、うまくハンドリングしていただきたいところです。

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