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2012年9月26日 (水)

シルバー労災問題の根っこ

大変素早い反応ですが、

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120923/t10015222841000.html保険不適用は不当 初の裁判へ

シルバー人材センターの会員のお年寄りが、作業中にけがをしても保険が適用されず、全額自己負担になるのは、不当だと訴えて国に対し、初めての裁判を起こすことになりました。
健康保険も労災保険も適用されないこうした会員は、全国に15万人以上いると推計され、専門家は、「行政の縦割りが背景にあり、早急に対策を検討すべきだ」と指摘しています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r9852000002ki6s.html(小宮山大臣閣議後記者会見概要)

もう1つは、先日、シルバー人材センターの会員の就業中の怪我に対し、健康保険も労災保険も適用されていないということが報道をされました。シルバー人材センターの会員が、作業中に怪我をし、健康保険も労災保険も適用されなかったケースです。シルバー人材センターで会員として仕事をされていて、こういう怪我をされた方には、まず心からお見舞い申し上げたいと思います。この件につきましても、ご承知のように、労災保険は労働者の業務上の事故について支給されますが、シルバー会員を含めて請負というのは、雇用関係がないため適用されないと。一方、健康保険は被扶養者を含めて、業務上の事故は給付していないと。それで、国民健康保険は業務上の事故も支給されるという、現行の制度の縦割りの隙間に落ちてしまっていると。今まではこういう働き方がそんなになかったので、問題にあまりならなかったと思いますが、これからはこういうシルバー人材もありますし、シルバー人材だけじゃなくて請負の就業中の事故にどう対応するのか、またインターンシップの学生さんの就業中の負傷ということもありますし、障害をお持ちの方が福祉就業中に負傷されるというケースもありますので、これは今回ぜひこういう谷間に落ちてはいけないということの指摘だと思いますので、この件につきましても、関係部局で横断的に対応するため、プロジェクトチームを設置しまして、問題点の整理、対応策の検討を行うように私から指示をしました。政務が誰か入りますが、官房長を主査にしまして、総括審議官、労働基準局長、職業安定局長、保険局長、こういう形でそれぞれが押し付け合っていては結局怪我をした方にとって対応が出来なくなりますので、これも横断的に対応をしっかりしていきたいと思います。

実を言うと、労働者じゃない人が健康保険に入っているために労災が全額自己負担になってしまう事態というのは、会社役員などについて存在していて、それが問題になって、部分的に解決していたことがあるのです。

わたくしの講義用資料からその部分を引用しますと、

・・・なお、戦後労働者災害補償保険法の制定とともに、健康保険は業務外の傷病に限ることとされた。もっとも、国民健康保険は引き続き業務上も対象に含めていたので、給付水準が低いことを別にすれば特に問題はないとも言えた。ところが、1949年7月、厚生省から法人の代表者又は業務執行者であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として健康保険の被保険者とする旨の運用通知(同月28日付厚生省保険局長通知)が発せられた。このため法人代表者は医療保険上は労働者として業務外の傷病について高い給付水準を享受できることとなったが、労災保険上は労働者ではないためその給付を受けられず、かといって国民健康保険には加入していないのでその業務外傷病給付を受けることもできないという、いわば制度の谷間にこぼれ落ちてしまった。これまで労災保険の特別加入という形で対応されてきたが、2003年7月になって、5人未満事業所の代表者には業務上の傷病に対しても健康保険から給付を行うこととなった。・・・

少し説明を付け加えますと、戦前は使用者の労災補償責任は工場法で規定していましたが、それを担保する公的保険制度は、私傷病と一緒に健康保険で面倒を見ていたのです。健康保険も国民健康保険も業務上外両方やってたのです。

戦後、労働基準法とともに労災保険法が作られ、「労働者」の「業務上」傷病はそっちで面倒見ることになり、「労働者」の「業務外」は健康保険、「労働者以外」の「業務上外両方」は国民健康保険という分担になりました。

ところが、「労働者以外」でも「健康保険」という人がいて、その人が「業務上」傷病になることはありうるわけです。

対応策は、制度の基本構造を変えない限り、「労働者じゃないけど特例で労災保険で」とするか、「業務上だけど特例で健康保険で」とするしかないわけですが、より根本的に考えるならば、そもそも労働者であろうがなかろうが業務上災害というのは起こるんだから、労災保険のカテゴリーを思い切ってあらゆる業務に拡大してしまうというやり方もあり得るかも知れません。現在は特別加入というやり方で任意にやっているのを、義務化するという発想です。

まあ、今回はそういうでかい話にはならないでしょうが。

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コメント

このお話し、他人事ではありません。私もこのなかに含まれております。
個人請負(舞台・コンサート等のフリー音響技術者)ですが、労働者を使用する個人事業主でもなく建設業でもなく特定事業者でもないので、所謂特別加入(所謂一人親方労災保険)に入れないのです。同業者も、「加入が認められれば、保険料を自分で支払ってもよい」と言っています。
何で入れないのか?、何で制度に穴が開いているのか?理解できません。
とにかく特別加入枠を広げるべきでしょう。
なお現行の特別加入枠は下記の通りです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/kanyu.html

「怪我と弁当は自分持ち」ってやつですね。

先例として、すでに国・西脇労基署長(加西市シルバー人材センター)事件(神戸地判平22.9.17労判1015号34頁)が出ているのではありませんか。

健保・厚年における「法人に使用される者」という取扱いについては、「労働保険と同等であるべきであって、課長通知は違法」という訴訟が提起されたことがある位で、昔から「知る人ぞ知る問題」だったのかも知れません。

もっとも、そのときの裁判所の判断は、「法人に使用される者」という課長通知の概念は適法とされた為、現状のまま現在に至る訳ですた。
ワタクシとしては、当該判決をうけて、当時に「健保・厚年と労災・雇保の被用者の範囲の違い」を是正する法改正がなされていればなぁ・・・。と久しく思っていました。

今回、こうして大きく取り上げられた事を契機として、どうなっていくのか注目しています。

 元々「個人請負」と「労働者性」の区分に関しては、各労働局(需給調整)でも「派遣と請負の区分(所謂37号告示)と同じ内容で説明されており(実際、そういう説明を私は受けたことがある…)、形式的に請負(=個人事業主)であっても、個別実態を調査して判断されるというのですから、本件神戸の事案についても、NHK報道のような『~厚生労働省は、「会員はセンターと雇用関係にない」として、労災保険の適用も認めていないため、男性と同じ立場の会員は、作業中にけがをしても保険が適用されない状態~』という形式的判断では済まされないはずだったのではと思います。
 つまり、実際の使用従属性の有無とその程度が少なくとも加味されなければならない、と。尤も、この判断について行政裁量に任せてよいか?…という問題はありますね。しかし、契約書に委託・請負と書いてあったからといって、労働者ではないと言うことにはなってはいない。

 この判決が稀であることは事実としても、寧ろ、私は、現行の制度に基く判断としては、機材・原材料の調達関係や本人の使用従属性からいって当然だとおもいます。
 但し、保険適用と労基法の労働者がまったく別もので判断されると言うのなら、法安定性がまったくなっていない。というか法の自己矛盾ですし。

 あと、おまけに、きちんとした労働者供給手続きを経ないで、委託に偽装された労働者供給事業(供給元にも雇用関係が無いから労働者派遣ではない)を行ったシルバー人材センターは、職業安定法44条違反の構成要件にも該当する(“罪”となるか否かは不明…)のではないかと。なんて…。

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シルバー人材センターに関しては、このブログでも何度も取り上げさせていただいている。ここでのトラブルは数多いが、不思議に法的に改善されたとの具体的な報告がない。確かにトラブルを避けるために最低賃金ぐらいは守られているとの話も聞くが、それすら具体的な指導がされているわけではないようだ。全国で78万人の会員がいるというが、65歳までの雇用継続が法制化された場合に、どうなるのだろうか。また、退職後、国保では保険料が高額になってしまうために、自分も含め協会けんぽ等の「継続」で対応している方も数多い。...... [続きを読む]

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