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國學院大學労組労供シンポジウムから

Rojyun1772『労働法律旬報』2012年7月下旬号に掲載された「國學院大学経済学部・國學院大学労供研究会 共催シンポジウム 「労働組合による労働者供給事業の可能性―非正規労働問題の解決に向けて―」 」から、わたくしの発言部分の一部をHPの方にアップしました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roujun1207.html

そのうち、一般読者にとっても興味深いのではないかと思われるいくつかの部分をこちらにもアップしておきます。

【濱口桂一郎】 基調報告だけではなくて、広く本日のテーマである労供事業の可能性へのコメントをしたいと思います。確かにここ十数年来、非正規労働問題というのが大きな問題であり、それを解決しなければならないとの議論が形づくられてきたわけですが、労組労供を論じることは、そうした議論の立て方がほんとうに正しいのかという問題提起になっているのではないかなと思います。
 とりわけここ数年来の政府や労使の非正規労働問題への対応の仕方は、ややもすると正社員がよいモデルで、非正規問題の解決策は彼らを正社員にすることであるという観点で議論されてきた嫌いがあるのではないか。それは全く間違いではないと思いますが、そこには落とし穴があることが見落とされがちになってしまう。
 歴史的に言えば、そもそも労働法では正社員というのが頭からよいモデルであるわけではなくて、雇用形態にかかわらず労働者は使用者に比べると弱い立場であって、単独では非常にひどい目に遭うこともあるから、国家の保護もあるし、労働組合という仕組みもあるわけです。
 しかし、とりわけ日本では高度成長期以降、労働組合がそれなりに下支えをしている大企業の正社員をモデルにして、企業に任せていれば悪いようにはならないというイメージが強固に形成されてしまい、それを前提にして政府もあまりそこには介入しないという考え方が一般的になりました。言い換えれば、非正規問題も彼らを正社員にしてさえくれればそれでいいんだという形で来ました。
 近年問題になっているブラック企業は、そのほころびがかいま見えているという面があります。正社員といいながら、労働法を無視した働かされ方をし、しかも雇用保障もほとんどない労働者が現実には多いのです。これは、正社員にすれば非正規問題が解決するわけではないことをあらわしていまする。
 私は労働政策研究・研修機構において、ここ3年間、労働局の個別労働紛争のあっせんの中身の研究をやっております。その最終的な報告書がまとまりますのでごらんいただきたいと思うんですが、確かに派遣の人たちもひどい目に遭っていますが、直用非正規の人たちもひどい目に遭っています。正社員だってひどい目に遭っています。
 ある種の経済学者は、日本では正社員はクビにできないなどと言いますが、現実の労働社会ではそんなことは全然ありません。そういうことは、うわさ話的にはだれでも知っていることですが、表舞台の議論にはなかなか出てきません。そのため、どうしても非正規問題を議論すると正社員にすればよいという議論に傾きがちなのです。
 現実は必ずしもそうではありません。ですから問題を正規と非正規という形で論ずるより、あるいは間接雇用・直接雇用で善悪を判断するのではなく、どんな雇用形態であってもその働き方が真っ当で、労働者にとって望ましいものであるべきだという発想が必要だと思うのです。
 ILOの言い方ではディーセントワークになりますが、労働のディーセントさをいかに担保するかということが、非正規問題に限らず、今いろんな形で噴出している労働問題を解決する上で、あるいは議論する上での基本的な枠組みにならなければいけません。
 今日、労組労供を提起することは、そういう問題意識を提示しているのではないかと思います。

 世の中にはブラックな派遣もあるし、ブラックな直用非正規もあります。そしてブラックな正社員もいっぱいあるのです。そうしたブラックな働き方をまっとうなホワイトな働き方にしていくにはどうしたらいいか。その議論に対する答は、実は100年以上前からあります。集団的労使関係の構築、つまり労働者の集団的な意思をきちんと反映させるメカニズムをどうつくっていくかです。

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