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« 現代社会の常識 | トップページ | 『経営法曹』174号は盛りだくさん »

2012年9月23日 (日)

言霊のさきはう国または客観的分析言説を主観的倫理言説で叩き潰して気持ちよがる社会の行く末

結局、丹羽大使の言ったとおりになった。その客観的分析は正しかった。中国は何もできないのだなどと得意げに主観的「分析」をしていたもと全共闘氏は間違っていた。

ゾルレンではなく、ザインの次元で、こちらがこういう手を打てば、相手はどういう手を打ってくるか、という分析を冷ややかに客観的にできるか、それともぬとぬとの主観まみれにしかできないか、という話だ。

この間、売国奴だの何だの、さんざん罵倒を繰り広げてきたただの一人も、責任を取ろうとしないし、もちろんとれるはずもない。

この一連の騒ぎが教えてくれるのは、かつての進歩的な人々が示していた「言霊信仰」というか、「かくあってほしい、かくあるべきだ」という主観的思いこみで喚き散らしてあとの責任を取ろうとしない無責任な態度に対して、かつての『諸君』や『正論』あたりで、かつての冷静な保守派が冷徹でリアリスティックな客観的分析で冷ややかに批判していたときに示していたような「責任感のある実務家」のセンスというものが、その出来の悪い後輩たちにはもはやカケラも残っていなさそうだという、まことに痛切なまでに悲劇的な現実なのだろう。

要は、全共闘感覚がかつて保守派であったはずの人々にまで瀰漫したということかもしれない。

美しい言葉でいえば、「言霊のさきはう国」ということか。

しかし、客観的分析言説を主観的倫理言説で叩き潰して気持ちよがる社会の行く末に期待がもてるはずはない。

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コメント

歳を経る度に肥大していく万能感に振り回される側の不幸を哀しまずにはいられないという感じです。

これって、東京都の某副知事のことですか?

マスコミ受けするヒカリモノばかり好きで、東京都の外郭団体の改革などはお留守。そのせいで、都立公園の売店のサービスのひどいこと。パスポートの取得も外郭団体にさやをとらせて、平気。

国と戦う姿勢もよいが、東京都のサービス向上にも力をそそいでほしい。しょせん、評論家であって、実務をこなす洞察力はなかったということだろうが。
名著「昭和16年夏の敗戦」も、著者の実際の副知事としてのこの仕事ぶりからすると、評価も落ちてしまう気がする。

東京都の中では、小金井市のごみ問題も深刻だがこのような地道なこともやってほしいものだ。尖閣のお遊びは、まさに醜悪。ひどいことになったものだ。相手がどのように動くか、自分以外がどう動くか、それは予想がつかないのに、自信満々で、パンドラの箱を開ける手伝いをして、まったく恥じず、人のせいにしているのは、その無神経ぶりは、たしかに大したものだが。

 丹羽前大使は「”東京都が”島を購入すれば日中関係は危機に陥る」と主張したのであって、現実に実現した”国有化”については何ら意見していないのが”客観的分析言説”です(だから丹羽前大使の警告どおりに事態は進展しているというのは端的に間違いです。)。

 ”国有化”してしまったからこそ、石原息子の「”国有化”したのは悪手。都に(を隠れ蓑にして)購入させて開発させておけばよかった。」(自民党総裁選討論での発言)との”主観的倫理言説”が生き残る余地ができてしまいましたね。
 石原知事が主張するように都に開発させていたら、中国の特段の反応はなかったのかそれともより激烈なものになっていたのか、反実仮想については”主観”で想像するしかありませんから。

 島の開発に成功するにせよ中国の激しい反発を呼ぶにせよ、前者なら国権の強化になりますし後者なら日本国内で中国脅威論が高まるので、反中国論者の”主観的決算”は損をすることにならないのです。


追記
 丹羽前大使がいかに優れた情勢分析を持っていたとしても、外国の新聞に「”東京都による”尖閣諸島の購入計画が実行されれば日中関係に重大な危機をもたらす」などど意見表明するのは「尖閣諸島は領土問題でない」という日本政府の立場に反する重大な違背であり、外交官の職業上の”客観的倫理”に反する行為であることは明白です(このことは「尖閣諸島は領土問題でない」という日本政府の立場の是非に関係がない)。日中外交関係に危機感があるのなら知事に直談判でもして中止させるのが筋でしょう。
 また習近平次期主席に対し「(都の購入計画を支持する)日本の国民感情はおかしい。日本は変わった国なんですよ」と言明する行為は、それがいかに”客観的分析言説”であったとしても、「そうした言動は外国に向かって自国と自国民を誹謗するものであるから外交官として決してしてはならない」と考えるのが私の”主観的倫理言説”です。
 そもそも国家を代理して外国に権利を主張(”主観的主張”)することが職務である外交官が”客観的分析言説”を外国に向かってすることの意味を理解しない丹羽宇一郎という人物は国の代表である大使に最も不適格な人物でした。

>あいうえお

「都による購入」提案の先には遅かれ早かれ必然的に何らかの国有化措置が果たされねばならないわけで、丹羽氏および外務省のチャイナスクールの方々も当然ながらそこは予想していたはずです。それを踏まえた提言に対して、
>丹羽前大使は「”東京都が”島を購入すれば日中関係は危機に陥る」と主張したのであって、現実に実現した”国有化”については何ら意見していない

などと強弁するのは、「藁人形叩き」と言っても差し支えないかと存じます。

>「尖閣諸島は領土問題でない」という日本政府の立場に反する重大な違背

日本政府の公式見解としては「領土問題は存在しない」となっていますが、実際のところ「『棚上げ』による解決先送りで日中両政府とも合意していた」とする指摘は出ていますし、例えば2000年の日中漁業協定も、恐らく「棚上げ論」を踏まえて締結されたものと解釈できます。
公的見解では「問題は存在しない」ことになっているからといって、現実に発生している紛争・衝突が消えて無くなるわけではありません。その点で、丹羽氏の指摘は、外交官としてごく真っ当な発言でした。

>そもそも国家を代理して外国に権利を主張(”主観的主張”)することが職務である外交官が”客観的分析言説”を外国に向かってすることの意味

趣旨の不明確な文章ですが、一般論として、交渉の場に就く人物にとっては「こちらの立場を相手に伝えること」のみならず「相手の立場をこちらに伝えること」も重要な任務として含まれます。
「尖閣諸島の買い上げを実際に行うと、こういう事態が起こり得ますよ」というのは適切な指摘でしたし、実際に丹羽氏の危惧した通りに事態が推移していることを考えると、そもそもこの時期に丹羽氏を更迭すべきではなかった、という結論になるでしょう。

>習近平次期主席に対し「(都の購入計画を支持する)日本の国民感情はおかしい。日本は変わった国なんですよ」と言明する行為

それ、どこの新聞に載ってました?
そんなざっくりした言葉遣いを外交交渉で行った(しかもそれが公にされた)例というのは寡聞にして存じませんので、URLなどご教示頂ければ幸いです。

質問1に対して

 ”都による”島の購入開発は外交的な抑制が効かないので日中関係が壊れてしまう、というのが外交筋の見解です。島の”国有化”自体は「島の開発、上陸、調査の禁止」という三条件が順守される(つまり現状の継続)限り容認というのが日本の外交筋だけでなく中国外交筋の共通認識です。
 つまり日中両国の外交筋では、”国有化”は都の購入開発によって日中関係をこじらせないための最小限度の措置として容認されていた。
 島の現状維持と引換の”国有化”容認の外交をひっくり返したのは軍部(とそれに伴う勢力)の可能性が高い。
 ”国有化”の否認に転じたのが中国の誰であれ、いずれにしても”国有化”と”都による購入開発”は全く異なるものです ”国有化”(現実)と”都による購入開発”(反実仮想)、外交関係者の「中国の反発は後者が前者を大きく上回る」(丹羽前大使の見解は後者への警告)との見解と東京都知事・副知事の「後者へは中国は反発のしようがない」との見解の違いはありますが両者は”国有化”と”都の購入開発”では質が異なると考える点でだけは共通しています。
 現在の展開は前大使の警告とは全くなんの関係もありません。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120919/chn12091911090003-n1.htm

質問2、3に対して
 外交官の”客観分析言説”は自分たち内部で検討すればいいだけの話。
 例えば「北方四島のうち国後択捉の二島は国際法上ロシアに帰属する可能性が高い」という”客観分析”は政府や外務省内部でするのは大いに結構だしそうするべきですが、ロシアの高官に言明したり外国の新聞に発言したりすれば端的に外交官の職業”客観倫理”に違背します。

>「尖閣諸島の買い上げを実際に行うと、こういう事態が起こり得ますよ」というのは適切な指摘

 政府・外務省内部で指摘すれば適切な指摘だし是非そうするべきだが、外国の新聞紙上(Financial Times)で言明すれば不適切以外の何物でもない。
 指摘内容の正しさ(=”客観分析言説”)と指摘行為の適切さ(=外交官の”客観倫理”)は全く別の問題。
 外交官は”内部”向けとは違い”外部”向けには真実を語る(=”客観分析言説”)のではなく国家の権利を擁護する(=外交官の”客観倫理”)のでなければいけない。丁度弁護人が「この主張を続けていると有罪になりますよ」と被告人に対して語るのは構わないしそうするべきだが検察官・裁判官や報道機関などに対しては決して語ってはならないのと同じ。

質問4に対して
 習近平次期主席に対し「(都の購入計画を支持する)日本の国民感情はおかしい。日本は変わった国なんですよ」との前大使の言明については
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120608/plc12060801300001-n1.htm

すでに漁船の体当たり事件は起きていたわけであり、中国自身が尖閣を取る気が満々なのですから、こちらがおとなしくしていたら、向こうもおとなしくしてくれるとは考えにくいでしょう。なあなあで済ましていたら実効支配されちゃった竹島の例もあるわけで、むしろ、この問題を国際社会の目の当たるところに持ちだした点では良かったのではないかと思われます。

>あいうえお
>現在の展開は前大使の警告とは全くなんの関係もありません。

その産経の記事では「外交筋」の見解は何ら示されていませんし、まして「中国外交筋の共通認識」とやらに触れている箇所は見当たりません。根拠薄弱、というか、「単なる希望的観測」に過ぎないのではないでしょうか。

対して、「日中関係に重大な危機を招く」との丹羽氏の指摘が現実の展開と「全くなんの関係も」あるか否かはともかく、その懸念通りに事態が推移している点だけでも、絶対に排除すべきではなかったことは間違いありません。

>外交官の”客観分析言説”は自分たち内部で検討すればいいだけの話。

ああ、「民は由らしむべし、知らしむべからず」というやつですね。でも今は21世紀ですし、日本は民主主義国家ですしね。
そもそも官僚による分析を踏まえて国策が決まるわけですから、どこかの段階で公的な説明が必要となるのは当然の話ですし、それん、そうした分析が表に出るから、あなたごときが上から目線で外交における勇ましさを語ることができてるんじゃありませんか。

>政府・外務省内部で指摘すれば適切な指摘だし是非そうするべきだが、外国の新聞紙上で言明すれば不適切以外の何物でもない。

外交官が、自国以外のメディアに向けて「落とし所」を含ませてメッセージを発するのは、珍しいことではありません。今回の場合、フレームアップしたきっかけが産経新聞の記事だったという点も含め、丹羽氏のコメント自体は適切な内容だったにもかかわらず、日本側の「対中強硬派」が敢えて曲解した節がありますね。

>外交官は”内部”向けとは違い”外部”向けには真実を語るのではなく国家の権利を擁護するのでなければいけない。

そうして松岡洋右は国際連盟を脱退した、と。いやはや勇ましいことで。

>質問4に対して
はあ、産経新聞ですか。道理で他の新聞では見かけなかったわけです。

今日も、某東京都副知事は、日本テレビ系のウェークアップで、東京都が所有して、施設など作る分には問題は生じなかったはずといったら、宮本元中国大使に、国がやっても、都がやっても、中国側の受け止めは同じといわれ、ぐうの音もでなかった。

相手がどういう反応するかわからないから、外交交渉を粘り強くしながら反応をみて柔軟に対応していく、というのは、政治でも同じだ。利害調整ということが一番難しい。まさに、東京都版「言うだけ番長」だ。

東京都の官僚が某副知事をうまくまつりあげて、気持ちよくさせているせいで、実は、敏感な作家としての感覚が衰え、まったくだめになっていることが推察された。

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