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誰の賃金が下がったのか?または国際競争ガーの誤解

経済産業研究所が公表した「サービス産業における賃金低下の要因~誰の賃金が下がったのか~」というディスカッションペーパーは、最後に述べるように一点だけ注文がありますが、今日の賃金低迷現象の原因がどこにあるかについて、世間で蔓延する「国際競争ガー」という誤解を見事に解消し、問題の本質(の一歩手前)まで接近しています。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/12j031.pdf

賃金構造基本統計調査を使用して、1990 年代及び2000 年代における日本の常用雇用労働者の賃金変化の要因分析を行った。その結果、既存の研究結果と異なり、国際的な価格競争に巻き込まれている製造業よりむしろ、サービス産業の賃金が下がっていたことが判明した。

途中の数理分析は飛ばして、結論のところの文章を追っていくと、

製造業の賃金は、1993-1998 年の期間には上昇、1998-2003 年の期間、2003-2008 年の期間については大きな変化が観察されなかった。一方、サービス産業は、1993 年以降一貫して賃金は下がり、1993-1998 年は-3.0%低下、1998-2003 年は-7.8%低下、2005-2009 年は-7.9%の低下とその下落率も次第に大きくなってきた。
バブル崩壊後の時期に当たる1993-1998 年の期間では、製造業では賃金は上昇、サービス産業では下落、最大の下落要因はサービス産業におけるパート労働者の増加である。
この時期、業種計では賃金が上昇しており、業種別で見ても、製造業、建設業、卸売業、情報通信業、金融・保険業、医療・福祉業など多くの業種で賃金が上昇したが、小売業、宿泊業では10%以上も賃金が減少した。
1998-2003 年というアジア通貨危機からIT バブル崩壊の時期にかけては、ほぼ全ての業種で、全ての属性の労働者の賃金水準が平均的に下がっている。この時期は、業種計で賃金が減少、製造業でも、製造業以外でも、ほぼ全ての業種で賃金が減少している。
賃金から見たデフレ現象、つまり、同じ属性の労働者の賃金が下がるという減少は、この1998-2003 年の時期に起こっている。
2003-2008 年の日本経済が比較的堅調であった時期は、製造業の賃金は下がらない中で、サービス産業では大きく下落している。この時期のサービス産業の賃金下落の最大の要因は、労働時間の変化、次いで、パート労働者の増加である。この時期には、業種計の賃金は減少、製造業、卸売業など一部業種では賃金は増加したものの、それ以外の業種では減少している。特に、飲食サービス業、不動産業、医療・福祉業、小売業、宿泊業では大きく賃金が減少している。

1993-2009 年の期間において、サービス産業の中でも賃金下落が著しいのは、小売業、飲食サービス業である。小売業では、パート労働者の増加、労働時間短縮によって、飲食サービス業では年功カーブが緩やかになることに伴って賃金が下落した。一方、サービス産業の中で、賃金が比較的下落していないのは、卸売業、金融業である。卸売業、金融業では、労働者の年齢構成の高齢化、高学歴化によって賃金の下落が抑えられている。
1990 年代から2000 年代にかけて、女性労働者と男性労働者、パート労働者と一般労働者の賃金格差は縮小した。賃金カーブの傾きは、20 歳代、30 歳代のサービス産業で以前に比べると緩やかになっているものの、製造業についてはほとんど変わっていない。

国際競争に一番晒されている製造業ではなく、一番ドメスティックなサービス産業、とりわけ小売業や飲食店で一番賃金が下落しているということは、この間日本で起こったことを大変雄弁に物語っていますね。

「誰の賃金が下がったのか?」という疑問に対して一言で回答すると、国際的な価格競争に巻き込まれている製造業よりむしろ、サービス産業の賃金が下がった。また、サービス産業の中でも賃金が大きく下がっているのは、小売業、飲食サービス業、運輸業という国際競争に直接的にはさらされていない産業であり、サービス産業の中でも、金融保険業、卸売業、情報通信業といたサービスの提供範囲が地理的制約を受けにくいサービス産業では賃金の下落幅が小さい。

そう、そういうことなんですが、それをこのディスカッションペーパーみたいに、こういう表現をしてしまうと、一番肝心な真実から一歩足を引っ込めてしまうことになってしまいます。

本分析により、2000 年代に急速に進展した日本経済の特に製造業におけるグローバル化が賃金下落の要因ではなく労働生産性が低迷するサービス産業において非正規労働者の増加及び全体の労働時間の抑制という形で平均賃金が下落したことが判明した。

念のため、この表現は、それ自体としては間違っていません。

確かにドメスティックなサービス産業で「労働生産性が低迷した」のが原因です。

ただ、付加価値生産性とは何であるかということをちゃんと分かっている人にはいうまでもないことですが、世の多くの人々は、こういう字面を見ると、パブロフの犬の如く条件反射的に、

なにい?労働生産性が低いい?なんということだ、もっとビシバシ低賃金で死ぬ寸前まで働かせて、生産性を無理にでも引き上げろ!!!

いや、付加価値生産性の定義上、そういう風にすればする程、生産性は下がるわけですよ。

そして、国際競争と関係の一番薄い分野でもっとも付加価値生産性が下落したのは、まさにそういう条件反射的「根本的に間違った生産性向上イデオロギー」が世を風靡したからじゃないのですかね。

以上は、経済産業研究所のDPそれ自体にケチをつけているわけではありません。でも、現在の日本人の平均的知的水準を考えると、上記引用の文章を、それだけ読んだ読者が、脳内でどういう奇怪な化学反応を起こすかというところまで思いが至っていないという点において、若干の留保をつけざるを得ません。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-2546.html(サービスの生産性ってなあに?)

(追記)

上記「スマイル0円が諸悪の根源」のコメント欄で、かつて経済産業研究所に研究員として在籍していたことのある人の、「なんもわかっとらん」丸出しのツイートを紹介していますので、ご参考まで。

3法則氏の面目躍如:

http://twitter.com/ikedanob/status/17944582452944896

>日本の会社の問題は、正社員の人件費が高いことにつきる。サービス業の低生産性もこれが原因。

・・・なんにせよ、このケーザイ学者というふれこみの御仁が、「おりゃぁ、てめえら、ろくに仕事もせずに高い給料とりやがって。だから生産性が低いんだよぉ」という、生産性概念の基本が分かっていないそこらのオッサン並みの認識で偉そうにつぶやいているというのは、大変に示唆的な現象ではありますな。

(おまけ)

なんだかやたらにブコメが付いているのですが、その中にこんなのが・・・。

http://b.hatena.ne.jp/entry/eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-0c56.html

napsucks国際競争力のある企業は真っ先に取引先に値下げを迫るだろうし、そいつらから金をもらって生きるしかないドメスティックな産業が先にダメージを食らうのは当然だろ。2012/09/10

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コメント

まさにTHEデフレって感じですね

>1993-1998 年は-3.0%低下
>1998-2003 年は-7.8%低下
>2005-2009 年は-7.9%の低下

ちょうどCPIが+1%を割り始めたのが1993年頃、マイナス域に突入したのが1998年頃ですから、見事に合致しますね。1.5~1.6%/年という低下率を見ても、雇用への悪影響を出さないためには、日銀のいう1%でなく、2%のインフレの必要性が表れているように見えます。

先日もコメントさせて頂きましたが、『こんなに失業があるのに中銀はなぜ利率を引き上げるんだと文句をつける側』の不在が切実な問題ですね・・・

投稿: charleyMan | 2012年9月10日 (月) 16時03分

飲食サービス業の賃金はそれこそ政治的問題であって、金融政策でどうにかなるものではないように思いますがどうなのでしょうか。

投稿: みんど | 2012年9月10日 (月) 18時58分

たしかに”製造業”の賃金は下がってないですけど、国際競争にさらされている工場部門(途上国でも組み立てられる)と
国際競争にさらされてない研究開発部門(途上国では研究できない)はわけて見てみないとわからない。

製造業の雇用者数は右肩下がりですよね?工場の海外移転
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/wagakuni/2006/pdf/3.pdf

製造業の工場部分が海外に移転し、研究開発部門だけが本国に残ればむしろ平均賃金は上がる。

投稿: ちょこたん | 2012年9月10日 (月) 21時43分

>まさにそういう条件反射的「根本的に間違った生産性向上イデオロギー」が世を風靡したからじゃないのですかね。

>現在の日本人の平均的知的水準を考えると、上記引用の文章を、それだけ読んだ読者が、脳内でどういう奇怪な化学反応を起こすかというところまで思いが至っていない

「売り上げが上がらない限り、賃金が上がらないのも、
(法的要件満たしているのに)社会保険に入れないのも、
健康を脅かすほどにタダ働きするのも、しょうがない」
という意識を持つ人は決して珍しくないように思えますものね・・・。

「売り上げ」は、経営する側(法律的な意味での“社員”)の能力次第、という風には、悲しいかな、ならないのよね・・・(“取締役”とかの肩書きで、その経営能力はすでに公認済みであるかのように…)。

(まあ、買い手の問題もあるけれど。)

投稿: 原口 | 2012年9月10日 (月) 22時21分

製造業の雇用が減ってサービス業が増えるけどブラックだからデフレになるってことですねcat

投稿: 熟女 | 2012年9月10日 (月) 22時50分

他の誰かと代替可能性の高い単純労働であればあるほど、供給過剰になり賃金が下がるのは当然ですね。飲食業のウェイター、ウェイトレス、小売業の店員などは、まさに学生のアルバイトで十分対応可能なので、賃金は下がらざるを得ません。それが市場原理というものです。他の人より高い賃金がほしいのであれば、他の人にはできない特殊な技能を身につけるしか方法はありません。それは、社会情勢がどう変化しようとも普遍的な現実です。

投稿: こうじ | 2012年9月11日 (火) 08時58分

輸出産業が競争力を高める過程で国内サービス産業の付加価値生産性が高まっていったように(バラッサ・サミュエルソン効果)、シャープに象徴される輸出企業の国際競争力の低下は国内サービス産業の付加価値生産性にマイナスに働きますので、

>グローバル化が賃金下落の要因ではなく

すでにグローバル化している時代において、輸出産業の競争力低下は国内サービス産業の賃金下落の要因になっている、と言うべきでしょうか。
おかげで、いまや誰も口にしなくなった「内外価格差」は大きく「是正」されました。

投稿: yatsu | 2012年9月11日 (火) 10時24分

つまり、国際的にみると、この3年で日本の生産性は5割ほど向上した、とみればよいでしょうか。
(おもに円高によって)

投稿: mohno | 2012年9月11日 (火) 15時22分

>まさに学生のアルバイトで十分対応可能なので、賃金は下がらざるを得ません。それが市場原理というものです。

いや、あのですね、

学生アルバイトだろうがなんだろうが、産業を成り立たせる労働力資源であることに違いはなくて、
市場原理も大事だけどそれだけだと、魚の乱獲よろしく、まさにあなたのような人に、この労働力資源を買いたたかれ使い捨てられちゃうから、最低賃金や社会的共通了解(規範や連帯意識)でもって、歯止めや公正さを担保しなきゃ、
というわけなのであって、

えーと、言ってる意味わかります?

>他の人にはできない特殊な技能を身につけるしか方法はありません。

とか言って、個人処世に問題を移してしまっていて、教養に相当乏しい(「典型的な経済学」しか知らない?)のに、コメントしちゃっているとしか思えないもので…。
(ちなみに“労働力資源”という表現は、経済学的な発想(ケインズ)からなんですけれどもね・・・)

投稿: 原口 | 2012年9月12日 (水) 00時28分

原口さん

あなたは、日本国内の範囲でしか物事をとらえられていないのでしょうね。もうすでに世界経済は繋がっていて、例えば中国の農民の人権費と日本の労働者の人件費が同一条件上で比較される時代になっていることが理解できていないようですね。

最低賃金を決めたところで、その賃金以下の雇用が減るだけであって、かえって弊害がでます。労働賃金は需給によって自由に決められるべきものです。でなければ、いずれ日本の企業は国際競争に敗れて雇用はますます減っていくことになるでしょう。

投稿: こうじ | 2012年9月12日 (水) 12時44分

経営者が従業員の首を絞めて喜んでるだけなのか、
自分の首を絞めたら意外にも気持ちよくなっちゃっているのか、
いずれにせよいつかはどちらも昇天するのも覚悟の上なのでしょうか。

投稿: フレディ | 2012年9月12日 (水) 13時00分

>こうじ様
>最低賃金を決めたところで、その賃金以下の雇用が減るだけであって、かえって弊害がでます。

つまり、日本人なのに低賃金に甘んじなければならない水準の労働者をバングラデシュとかカンボジアに叩き出せば万事解決、ってことですね。よくわかります。

投稿: どうなのか | 2012年9月12日 (水) 13時04分

こうじさん

>でも、現在の日本人の平均的知的水準を考えると、上記引用の文章を、それだけ読んだ読者が、脳内でどういう奇怪な化学反応を起こすかというところまで思いが至っていないという点において、若干の留保をつけざるを得ません。

なるほど。
こうじさん、あなたのことですよ。
(まあ、平均を下回っている可能性もありますけれど…)

>例えば中国の農民の人権費と日本の労働者の人件費が同一条件上で比較される時代になっていることが理解できていないようですね。

え、「同一条件上」ということは、中国の農民たちがどしどし日本国内に移住・移民してくるのですか!?そりゃ大変だ!!

>いずれ日本の企業は国際競争に敗れて雇用はますます減っていくことになるでしょう。

そっか~、日本はスラム国になるのか~。
じゃあそのときは、中国に頼んで、植民地にさせていただきましょう。

投稿: 原口 | 2012年9月12日 (水) 22時55分

>こうじさん

ご自分の「あるべき」論と現実を混同しない方がよろしいかと思います。

現実に、中国の農民と日本の労働者の人件費が、今同一条件で比較されていますか?
百歩譲って、中国の農民と全く同一の生産物を生産している農家を比較したところで、生産物価格の決定要因は多岐にわたるのですから、賃金だけの単純比較は大した意味を持ちません。

そもそも、通貨の異なる国の賃金を、どういう基準で比較するおつもりですか?人民元と日本円の為替レートですか?
言っておきますが、人民元の為替レートは「需給によって自由に決められ」てはいませんよ。

当たり前のことですが、現実の世の中では市場原理は不完全にしか機能しません。
その現実を無視して、「需給によって自由に決められるべき」なんて理屈をふりかざしても、あまり意味がないと思いますが。

投稿: 一中年 | 2012年9月12日 (水) 23時00分

労働生産性の計算の仕方が間違っているような・・・・労働生産性とは付加価値、つまり一人あたりの粗利益のことです。

粗利益とは売上-仕入れです。人件費は関係ありません。学者も含め労働生産性を間違って議論しています。一人あたりの労働生産性を上げるには、人を減らすか、利益額を増やすかなんです。

サービス業の労働生産性が下がってるということは粗利が落ちているのです。薄利多売しすぎなんですよ。

日本の労働生産性を上げるのには融資している銀行が薄利多売な業種にM&Aを提案することです。牛丼屋なんて過当競争しないで、統合し値上げすれば労働生産性は上がります。

投稿: ネリネリ | 2012年10月 7日 (日) 16時16分

ですから、人件費を無理に下げてその売上単価を下げようとしているわけです。
その「粗利」の中に人件費が入っていますから、「関係ない」とは言えません。
その「薄利多売」の「薄利」は「薄い粗利」ということですから、つまり人件費を減らして「多売」しようとしているってことですね。
「人を減らして」というのが、「投入労働時間量を減らして」という意味であれば、いいのですが、「人数を減らして、その分一人あたりの労働時間を増やして、しかしながら一人あたりの人件費を変えずに、すなわち時間当たりの賃金を減らして」という意味であれば、それすなわち「人件費を減らして」というだけのことですね。これもよくありがちですが。

もう一度、概念をご確認下さい。

投稿: hamachan | 2012年10月 7日 (日) 17時55分

私も「労働コスト」は「労働生産性」に含まれていないものだと思ってたのですが、ググっても定義がズバリな資料にヒットしませんねえ。

投稿: くまさん | 2012年10月 8日 (月) 07時38分

相変わらず適切な資料にヒットしなかったので残念ですが、以下を挙げます。

http://money.infobank.co.jp/contents/R500029.htm

>1単位の労働が生み出す付加価値の大きさを「労働生産性」といい、付加価値のうち労働に分配される割合を「労働分配率」といいます。

つまり、労働生産性というのは労働への分配(労働コスト)を引いた後の値ではなく、労働コストを引く前の値です。労働生産性は労働分配率に依存しません。ネリネリ さんの例でいうと、粗利は人件費を引く前の値なのです。

1人の単位時間あたりの労働生産性が正の定数と仮定し、労働者にサービス残業させます。この場合は、人を増やさずに生産が増加するので、労働生産性(1人あたりの生産性)は増加します。賃金総額は不変なので、労働コストは不変です。以上より、労働分配率は減少し、単位労働コスト(単位時間あたりの労働コスト)は減少します。

もっと教科書的な、説得力のあるリファレンスになり得るリンクがあればよかったのですが。

投稿: くまさん | 2012年10月 8日 (月) 12時20分

hamachanさん。労働生産性と人件費は関係ないです。人件費が関係あるのは、営業利益、経常利益、純利益などの計算の時です。

>「薄利多売」の「薄利」は「薄い粗利」ということですから、つまり人件費を減らして「多売」しようとしているってことですね。

それは営業利益、経常利益、純利益などの計算です。

繰り返しになりますが、労働生産性を高めるとは、一人あたりの付加価値(粗利益)を高めるということなのです。

>「人数を減らして、その分一人あたりの労働時間を増やして、しかしながら一人あたりの人件費を変えずに、すなわち時間当たりの賃金を減らして」という意味であれば、それすなわち「人件費を減らして」

それは労働基準監督署の問題ですね。日本は同一労働同一賃金じゃないですし、労働省はやる気がない。

人件費は関係ないです。労働生産性とは一人あたりの付加価値であって、一人あたりの利益額では無いからです。

くまさん の説明はその通りです。

投稿: ネリネリ | 2012年10月 9日 (火) 10時43分

hamachanさん。労働生産性と人件費は関係ないです。


困りましたね。

もう一度、概念をご確認下さい。


と申し上げたのに、その手間をとろうとせずに、思い込みだけで書き込まれるのは。

これは事実認識の問題でもなければ価値判断の問題でもなく、単純にある概念を理解するかどうかというだけのことなんです。

世の中の研究者や実務家によって共通に使われているある概念を、その共通の理解が俺はいやだ!といってみても意味がないのですよ。

労働生産性とは別の概念で俺は考えたいというのであれば、それはそれで結構なのですけどね。

概念であるというのは、つまり、この財務省の資料にあるとおり、恒等式で表される概念相互の関係を定義する式で示されるということです。

http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/keyword/keyword_04.pdf

              付加価値額*

労働生産性   = ---------

              従業員数

*付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益

投稿: hamachan | 2012年10月 9日 (火) 17時05分

素晴らしい資料ですね。しかし、この資料はネリネリさんの主張を補強するものです。

>付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益

因果関係を考えるとこの式は、「原資 - 支出 = 余剰」の関係を意識して以下のように書かれるべきでした。左辺が原因であり、右辺が結果です。

付加価値額 - ( 人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課 ) = 営業純益

つまり、この式の言わんとすることは「付加価値額から人件費、支払利息等、動産・不動産賃借料、租税公課が捻出され、それらを引いた余りが営業利益になります。」であり、ネリネリさんの主張とは何ら矛盾しておりません。ついでに言いますと、労働生産性というのは労働コストを引く前の値であるという私の主張とも矛盾しておりません。

逆算で「付加価値額 」を算出するために、負の項が移項されて、「付加価値額 = 」という形式になったのだと思われますが、このために因果関係がわかりにくくなったのではないかと思われます。

したがって、「人件費を減らすとどうなるか?」という問ですが、因果関係より、「その分、営業利益が増えます。」が、答えになります。労働生産性は、増えることも減ることもありません。

投稿: くまさん | 2012年10月 9日 (火) 22時35分

いや、だから、それは付加価値額を所与の前提にして、その内訳を議論しているだけでしょう。

定義式からして、付加価値額が一定であれば、従業員数を減らす以外に労働生産性を上げる方法はありません。

そんな経済縮小の方向性を「生産性向上」を唱える人々が言っているわけではないのでしょう。

そのそもこの議論の出発点は、付加価値額を上げることで労働生産性を上げようという話なのですが、それはどこかに逝ってしまっているようです。

定義式は定義式であって、そこにどういう因果関係を読み込むかは、その人の関心によります。

ここにコメントしている方の関心は、付加価値を一定とした上での内訳なのでしょう。

投稿: hamachan | 2012年10月10日 (水) 00時07分

労働生産性に人件費が関係あるのかないのか難しいですね
>付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益

付加価値=人件費+動産・不動産賃貸料+支払利息・割引料+租税公課+営業純益
人件費=役員報酬+従業員給与手当+福利費
営業純益=営業利益-支払利息・割引料
営業利益 = 粗利益 - 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費に属する費用とは、例えば販売手数料、荷造費、運搬費、広告宣伝費、見本費、保管費、納入試験費、販売及び一般管理業務に従事する役員、従業員の給料、賃金、手当、賞与、福利厚生費並びに販売及び一般管理部門関係の交際費、旅費、交通費、通信費、光熱費及び消耗品費、租税公課、 減価償却費、修繕費、保険料及び不動産賃貸料をいう。


この式だと時給を下げて時間あたりの人件費が減るとと、その分、時間あたりの営業純益が増えるので
人件費が変動しても付加価値の値は変化しない
つまり労働生産性に影響しないように見えます。

人件費は労働生産性の数式に影響しないって意味なら関係ないのかな

投稿: ちょこたん | 2012年10月10日 (水) 00時17分

hamachanさん。その財務省の定義をよく見て下さい。

付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益

人件費を削ったら、付加価値額が下がるじゃないですか。人件費500万円だったのを200万円に削ったら、付加価値額も300万円下がります。

ということは労働生産性は付加価値額÷従業員数ですから、人件費下げると労働生産性が下がることになりますよ。人件費を削ったら、労働生産性が上がるとの主張ですよね?

もう一度言います。付加価値額とは粗利(売上-売上原価)のことです。粗利から人件費などの費用を引いたら、営業利益になります。

労働生産性を高めるには人件費は関係ないのです。付加価値額(粗利)を高める事なんです。

それなのに定義の勘違いが起きているから人件費を下げて労働生産性を高めようという間違いが起きます。人件費を下げて影響があるのは営業利益です。労働生産性ではありません。

何度も返信して申し訳ないですが、勘違いされてるようなので書きました。

投稿: ネリネリ | 2012年10月10日 (水) 00時38分

続き
付加価値を上げるには粗利を増やせばいいから
より高く売れば、労働生産性は上がります。

そしてサービス業においては、人件費が価格に直結してるわけです。
サービス業においては関係あると言える。

投稿: ちょこたん | 2012年10月10日 (水) 00時39分

くまさんと、ちょこたんさんの言うとおり、人件費を下げても、その分営業利益が上がるので、労働生産性には影響ないですね。訂正します。

投稿: ネリネリ | 2012年10月10日 (水) 00時44分

確かに上記の算出ですと人件費は生産性に影響はないと考えられます。

しかしせんせのおっしゃることも理解は出来まして。はい。

購買意欲減少からの売上総額の減少

価格下降による、売上額の確保施策採用

価格下降施策において人件費下降戦術の採用

粗利の減少

労働生産性の減少

実際起こっているのはこういうことかと思われ。

実際の製品だと価格は同じでも内容量が少なくなったり
材料を変更して品質を落としたりというのは、まま行われるのですが、
サービス業ですと殆ど行われないというのも影響しているかと思います。

つまり上記議論はちょっとしたボタンの掛け違いかと。

投稿: Dursan | 2012年10月10日 (水) 05時51分

まず訂正です。「営業利益」→「営業純益」です。

>付加価値額を所与の前提

おっしゃるとおりです。前提としております。そうしないとナンセンスだからです。

子供がお年玉でおもちゃを買って余りを貯金するということを数式で表すと、 「お年玉 = おもちゃ代 + 貯金」 となります。しかし、お年玉を所与の前提とすると、「おもちゃ代を減らせば、その分貯金が増えます。」となります。お年玉を所与の前提としないならば、「おもちゃ代を減らすと、お年玉もへります。」という奇妙な(=因果関係が逆な)言説も可能です。確かに、お年玉を出す側がおもちゃ代をから逆算してお年玉の額を決めているならばそういったこともあるかもしれませんが、一般の商売ではありえない話です。我々は企業の財務指標を考えてスーパーで買物をしているわけではありません。ちなみに、「お年玉が減るとおもちゃ代も減ります。」という言説は因果関係的にも問題ありません。

数式では因果関係が表現できないだけのことで、実際は因果関係は存在する場合もあります。

投稿: くまさん | 2012年10月10日 (水) 06時35分

みなさん、そもそも何が問題となっていたのかをまったく忘れていますね。

そもそも、ネリネリさんの言っている

人件費を削ったら、付加価値額が下がるじゃないですか。

はじめから、それを言ってるわけですよ。

だれが

人件費を削ったら、労働生産性が上がるとの主張ですよね?

なんて言ってるんですか?

日本のサービス業の労働生産性が低いのは、つまり付加価値額が低いのは、人件費を削っているからなんじゃないの?
といっているわけですよ。

なんで、はじめからそういっているのに、その当のことをあたかもそういっていないかのように言われるのか、それも3人も揃って、不思議でなりません。

そもそも、この議論は、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-2546.html(サービスの生産性ってなあに?)

及びそこにリンクされている記事に書かれているような問題意識から発しています。

それをまったく逆の方に読み違えて、

人件費を削ったら、付加価値額が下がるじゃないですか。 

とか、

人件費を削ったら、労働生産性が上がるとの主張ですよね?

とか言われてると、どっと徒労感が吹き出すんですが・・・。

あらためて上の記事本体を読んでみてください。

「ネリネリ」さんや「くまさん」さんには、どうも私のことが、上で私が揶揄的に皮肉っている

ただ、付加価値生産性とは何であるかということをちゃんと分かっている人にはいうまでもないことですが、世の多くの人々は、こういう字面を見ると、パブロフの犬の如く条件反射的に、
なにい?労働生産性が低いい?なんということだ、もっとビシバシ低賃金で死ぬ寸前まで働かせて、生産性を無理にでも引き上げろ!!!

いや、付加価値生産性の定義上、そういう風にすればする程、生産性は下がるわけですよ。

そして、国際競争と関係の一番薄い分野でもっとも付加価値生産性が下落したのは、まさにそういう条件反射的「根本的に間違った生産性向上イデオロギー」が世を風靡したからじゃないのですかね。

のパブロフの犬に見えているようなんですね。

そして、何にも知らない愚か者に諭すような「ドヤ顔」でお説教されるわけです。

いやはや、どう反応申し上げたらいいのか、なかなか言葉を思いつきません。

投稿: hamachan | 2012年10月10日 (水) 07時11分

一点だけ

サービス業の売り上げをハナから固定のお年玉と同視していたのでは、そもそもの問題意識が理解されないのは当然でしょうね。

基本的には、Dursanさんの言われる動態的なメカニズムが働いているのだと思われます。

人件費を削って(自社の)売り上げを伸ばそうとしたが、全てのアクターがそのやり方を採ると、映画でみんなが立ち上がったのと同じで、全体の人件費が、そして付加価値額が下がったという効果だけが残る、というメカニズムです。

投稿: hamachan | 2012年10月10日 (水) 07時18分

理解力の欠けている人に限って、ドヤ顔で知ったかぶりと勝手読みを繰り返しているように見えるのは、私の気のせいでしょうか。
独自研究はWikipediaで十分です。

投稿: 鬼木 | 2012年10月10日 (水) 11時10分

>日本のサービス業の労働生産性が低いのは、つまり付加価値額が低いのは、人件費を削っているからなんじゃないの?
その主張をするために
人件費を減らしても、営業純益が増えるだけで、付加価値が変動しない
財務省の恒等式を持ち出すから混乱するんですよ。

主張自体には反対じゃないです。

投稿: ちょこたん | 2012年10月10日 (水) 13時16分

定義式は定義式です。財務省であろうが生産性本部であろうが生産性の説明に必ず出てくるこの定義式において、特定の変数をフィックスしなければならない理由はありません。

そもそも人件費に応じて付加価値が変動することを前提に議論しているのに、なんで「人件費を減らしても、営業純益が増えるだけで、付加価値が変動しない」というのが出てくるのか理解しがたいですね。

投稿: hamachan | 2012年10月10日 (水) 20時14分

財務省の恒等式には付加価値を決める変数に人件費がありますが

営業純益=営業利益-支払利息・割引料
営業利益 = 粗利益 - 販売費及び一般管理費
粗利益 = 売価 - 仕入
販売費及び一般管理費には人件費とか租税公課とか含まれるので分解
販売費及び一般管理費= 人件費 + 租税公課 + 不動産賃貸料 + それら以外の販売費及び一般管理費(広告とか研究開発費とか)

代入して式を解くと
付加価値=人件費+動産・不動産賃貸料+支払利息・割引料+租税公課+営業純益

付加価値= 売価 - 仕入 - それら以外の販売費及び一般管理費(広告とか研究開発費とか)

式を解くと付加価値を決める変数に人件費は存在してないです。(人件費が付加価値に影響しないというのは、そう言う意味です。)

問題は売価です
同じ性能の部品を作れば、どこの国生産でも値段はだいたい同じ。工業製品の売価と人件費は関係ない。
サービスは同じサービス内容でも国によって何倍も違う。サービスの売価と人件費は関係あり。

財務省の恒等式からは必然的に人件費が付加価値と関係あると導けないから(売価を通じて、関係あったり、なかったり、業界による)
人件費と付加価値が関係あると主張するために、この式を持ち出すのは適切でないと思ったのです。

投稿: ちょこたん | 2012年10月10日 (水) 23時20分

いい加減、こういう詰まらない話は打ち止めにしたいですが、

販売費及び一般管理費には人件費とか租税公課とか含まれるので。

といって、人件費という文字のある式を人件費という文字のない式に変えているだけですね。

それに何の意味があるのかよく分かりませんが。

そもそも、本エントリやリンク先の元エントリで私が言ってたことは、これだけほとんど無縁なコメントが延々と続くと、完全に忘れ去られてしまっているようです。それが一番残念ですね。

サービスの、つまり人間の労働の安売りが諸悪の根源なんだよという話は、遥か上の方に霞んでしまっているようです。


投稿: hamachan | 2012年10月11日 (木) 00時26分

1.労働生産性の定義について;

世界で標準的な労働生産性(OECD)の定義は、単位労働時間あたりの付加価値で表します。日本生産性本部では労働者あたりの付加価値で表します。一人当たりの労働時間が週35時間労働労働の場合と、週60時間労働の場合を比較します。日本生産性本部の定義では、一人当たりが産出する付加価値が同じならば、両者の生産性は同じです。しかし、OECDの定義では、少ない労働時間で同一の付加価値を産出するほうが、労働生産性は優れているということになります。

実際、日本の労働生産性(OECD定義)は米国やフランスの70%程度に留まります。

日本生産性本部は、OECDが発表する労働生産性の比較データをもって、日本の労働生産性は低いといいます。一方、労働者(あるいは経営者)に対しては労働生産性を労働者あたりの付加価値と言い換えます。労働生産性が低いからもっと働けとシリをたたきます。

>なにい?労働生産性が低いい?なんということだ、もっとビシバシ低賃金で死ぬ寸前まで働かせて、生産性を無理にでも引き上げろ!!!

日本生産性本部は、2010年までは経済産業省の所管の公益財団法人であり、現在は内閣府行政庁が所管です。

2.労働生産性と賃金について

雇用者報酬(賃金+社会保障企業負担)はGDP(付加価値)の内数です。サービス産業では、一人あたりの付加価値産出も低く、そのうえ一人あたりの労働時間も長いため、労働生産性(単位労働時間あたり付加価値産出)は低いということになります。ブラック企業が問題となる所以です。

サービス産業では労働生産性が低い(一人あたりの付加価値産出で比べたとしても)ため、賃金は低くなります。もともと、労働時間が長く過酷な労働条件にあるサービス産業において、週休2日だの、有給休暇だのと労働時間が短くなると、賃金は下がります。さらに、非正規雇用の割合が多いため、賃金は下がります。

労働生産性を、単位労働時間あたりの付加価値で評価すること!所得を単位労働時間あたりの雇用者報酬(企業の社会保障負担を含む)で評価すること!時間あたりの最低賃金を見直すこと!・・・このあたりを修正しない限り、サービス産業の労働生産性は改善しないし、ブラック企業の駆逐はありません。

3.国際競争力について

国際競争力の低下は、日本と新興国の相対的な技術力の差がなくなってきたという点もありますが、円高デフレが原因です。新興国の通貨は安くなり、円高が進めば、海外市場における日本製品の価格(ドル建て)競争力は失われます。

2007年の7.8ウォン/円から、2011年には13.9ウォン/円になりました。この期間、円はウォンに対して78%も高くなったのです。日本と韓国の技術力に差が縮まっていることに加えて、日本製品の価格が78%も高くなったのだから、競争力を失うのもやむを得ません。この数年の円高で、日韓の電子機器の国際競争力は逆転しました。やがて、自動車など輸送機械においても日本の国際競争力は失われるでしょう。

4.内外価格差

yatsuさんが仰っしゃるように、バラッサ・サミュエルソン効果によって、輸出製品の国際競争力の低下がサービス産業の付加価値生産性に及ぼしている可能性はあります。バラッサ・サミュエルソン効果は労働力の流動性を前提としていますが、輸出製品の国際競争力の低下が貿易財産業の賃金低下に繋がり、それが非貿易財産業(サービス産業)の賃金の低下に繋がるというものです。

しかし、経済産業研究所の論文の主旨は、yatsuさんの仰ることとは違って、貿易財産業の賃金はあまり下がっていないのに、非貿易財産業の賃金低下が大きいということです。

yatsuさんは、「内外価格差」は大きく是正されたと仰っていますが真逆です。「内外価格差」は、同一製品(あるいはサービス)の国内および海外の価格差をいいます。同一製品の米国における価格と日本での価格を比べます。円高になると、日本にきた米国人にとって日本の物価は高いことになります。ヨーロッパに旅行する日本人には、ヨーロッパの物価は安くなります。すなわち、近年の円高で「内外価格差」は広がっているのです。

購買力平価(PPP$)は、同一製品が内外で同一価格になるような円ドル交換レートです。購買力平価は、米国の物価を基準とし、常に1US$=1PPP$です。2007年の購買力平価は1PPP$=120.3円、為替レートは1US$=117.8円でした。従って、2007年には「内外価格差」はほとんどなくなりました。しかし、それ以降円高が進み、2011年の購買力平価は1PPP$=106.8円、為替レートは1US$=79.8円でした。内外価格差(対米)は1.34倍と、日本の物価は高いということです。

一方、2011年における韓国の購買力平価は1PPP$=821.5ウォン、為替レートは1US$=1108.3ウォンでした。内外価格差(対米)は0.74倍と、韓国の物価は安いということです。日韓の相対的な物価を比べると、日本の物価は韓国の1.8倍も高いということです。

5.人件費は労働生産性に影響するのか

労働生産性はマクロの概念です。マクロ的に考えると、人件費は労働分配率に相当します。労働分配率とは、GDP(日本全体の付加価値)の労働に対する分配率です。労働分配率を下げると、消費の収入が減るため需給ギャップがさらに広がり、デフレが進行します。デフレはGDPを縮小させます。従って、労働生産性を低下させます。すなわち、人件費の縮小は労働生産性の低下に繋がります。

6.根本的な問題は

円高デフレにあります。サービス産業の労働生産性を上げるには、穏やかなインフレおよび円安にする必要があります。インフレによって物価が高くなり、労働者の所得はすぐには増えないため、労働者の負担になるということもありますが、穏やかなインフレを持続させることによって、金回りがよくなり、需給ギャップを埋めていくことができます。円安インフレで、貿易産業の利益を改善し、バラッサ・サミュエルソン効果によって、非貿易産業の賃金にも影響が及びます。また、円安で内外価格差が縮小し、海外との相対的な物価も安くなります。

投稿: hiro | 2012年10月11日 (木) 00時57分

>> Dursan さん

世の中因果はめぐるものですし、「大風が吹けば桶屋が儲かる」という例え話もあるわけで、おっしゃるとおり人件費を切り下げると因果が一巡して労働生産性が落ちることも理解できます。
しかし、私が問題視しているのはそのことではなく、たとえば本エントリでは、低賃金で働かせることについてhamachan先生は以下のようにおっしゃってます。

> 付加価値生産性の定義上、そういう風にすればする程、生産性は下がるわけですよ。

また、労働生産性と人件費の関係として以下リンクを挙げられてます。

http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/keyword/keyword_04.pdf

以上より、労働コストが労働生産性に直接影響すると、労働生産性と労働コストと因果関係を逆方向に捉えられているように私は感じたので、その点を指摘しております。お年玉の例を出したりして。

「労働生産性が減少しても営業純益をキープするには人件費を減らす必要性が出てきます。」(=OK)という言説と、「人件費を減らすと労働生産性が減少します。」(=NG)という言説は因果関係が逆なのですが、そのことが伝わっているかが疑問なのです。

我々はサービスの品質に対して対価を払っているのであって、労働者の賃金を見て対価を払っているのではありません。コンビニのレジ打ちがアルバイトか正社員かだなんてどうでもよいのです。そして、その支払った対価が売り上げになり付加価値額になります。つまり、人件費は労働生産性の(直接的な)決定要因ではありません。それで、付加価値額から人件費等々を差し引いて営業純益がでるわけですが、この時点では付加価値額は決まっているので、営業純益を確保するために人件費を切り詰めるという選択も出てくるのです。この因果関係は一方通行なのですが、式だけ見ていたらそのことがわかりにくいです。

コンビニやスーパーのレジ打ちは、レジのシステムの自動化が進んだため、今となったら特殊技能でもなんでもなくなり、アルバイトやパートといった低賃金の熟練していない労働者でもできます。駅の改札なんて無人です。こうすることで、従業員数や単価が減り、労働コストも減りますが、サービスの品質が同じなので、我々客はこれまでと同じ料金を支払います。あくまで、サービスの品質に対して対価を払っているのです。つまり、設備投資により、人件費を減らしつつ、付加価値額を保持しているので、労働生産性は落ちません。コンビニやスーパーはこうやって労働生産性を高めて昔ながらの個人商店を駆逐していったのです。つまり、労働コストを下げても労働生産性が落ちるとは限らないわけで、人件費は労働生産性の決定要因でないことの証左でもあります。労働生産性を高めても労働者は幸せになるとは限りません。労働生産性は経営者側の指標です。労働者にとって、より重要なのは労働分配率ということになるでしょう。

繰り返しますが、私は因果関係の逆転についてのみ問題視しているのであって、hamachan先生の主張(問題意識)そのものに対して異議を唱えたいのではありません。「人件費は労働生産性の(直接的な)決定要因で無い」と申し上げているだけです。

投稿: くまさん | 2012年10月11日 (木) 02時48分

正直、

人件費を削ったら、労働生産性が上がるとの主張ですよね?

という思い込みの上に、

人件費を削ったら、付加価値額が下がるじゃないですか。

とドヤ顔で叱っていた方々に、今さら何をいわれるのやら、という心境ですな。

投稿: hamachan | 2012年10月11日 (木) 09時01分

で、現状起こってるこの良くない現象はどうしましょうか?

もしかしたら、良くない訳ではないのでしょうか。


ここに戻りましょうよ。

投稿: Dursan | 2012年10月11日 (木) 10時25分

hamachanさんは労働生産性という指標を用い飛躍して自説を組み立てるから、突っ込まれているのではないでしょうか?

>日本のサービス業の労働生産性が低いのは、つまり付加価値額が低いのは、人件費を削っているからなんじゃないの?

別に人件費だけでなく、政府支出や設備投資が低迷しても同じ結果になるのではないですか?

投稿: ネリネリ | 2012年10月11日 (木) 11時53分

正直、

人件費を削ったら、労働生産性が上がるとの主張ですよね?

という思い込みの上に、

人件費を削ったら、付加価値額が下がるじゃないですか。

とドヤ顔で叱っていた方々に、今さら何をいわれるのやら、という心境ですな。


繰り返しますが、そもそもこの議論は、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-2546.html(サービスの生産性ってなあに?)

及びそこにリンクされている記事に書かれているような問題意識から発しています。

それをまったく逆の方に読み違えて、

人件費を削ったら、付加価値額が下がるじゃないですか。 

とか、

人件費を削ったら、労働生産性が上がるとの主張ですよね?

とか言われてると、どっと徒労感が吹き出すんですが・・・。

あらためて上の記事本体を読んでみてください。

「ネリネリ」さんや「くまさん」さんには、どうも私のことが、上で私が揶揄的に皮肉っている

ただ、付加価値生産性とは何であるかということをちゃんと分かっている人にはいうまでもないことですが、世の多くの人々は、こういう字面を見ると、パブロフの犬の如く条件反射的に、
なにい?労働生産性が低いい?なんということだ、もっとビシバシ低賃金で死ぬ寸前まで働かせて、生産性を無理にでも引き上げろ!!!

いや、付加価値生産性の定義上、そういう風にすればする程、生産性は下がるわけですよ。

そして、国際競争と関係の一番薄い分野でもっとも付加価値生産性が下落したのは、まさにそういう条件反射的「根本的に間違った生産性向上イデオロギー」が世を風靡したからじゃないのですかね。

のパブロフの犬に見えているようなんですね。

そして、何にも知らない愚か者に諭すような「ドヤ顔」でお説教されるわけです。

いやはや、どう反応申し上げたらいいのか、なかなか言葉を思いつきません。


投稿: hamachan | 2012年10月11日 (木) 12時03分

>>hamachan 先生。

前回のべたことを繰り返しますが、

> 私は因果関係の逆転についてのみ問題視しているのであって、hamachan先生の主張(問題意識)そのものに対して異議を唱えたいのではありません。「人件費は労働生産性の(直接的な)決定要因で無い」と申し上げているだけです。

です。この立場は一貫しておりますので、もう一度、本エントリでの私の発言を読みなおしていただければと思います。

投稿: くまさん | 2012年10月15日 (月) 06時30分

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