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2012年8月 2日 (木)

『「大量失業社会」の労働と家族生活 筑豊・大牟田150人のオーラルヒストリー』

101902 大月書店の角田三佳さんより、その編集担当された都留民子編著『「大量失業社会」の労働と家族生活 筑豊・大牟田150人のオーラルヒストリー』をお送りいただきました。ありがとうございます。これは結構読む値打ちのある本です。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b101902.html

構造改革、そして3.11以後、不安定雇用と失業が増大する日本。とりわけ地方では、就労と生活の厳しさがより激化している。その実像を大量失業地域150人の切実な語りから描き出し、貧困を根絶する社会保障制度の構築を訴える。

筑豊、大牟田、といえば、かつての産炭地であり、その後は各種失業対策事業の中心だった地域ですが、そこに働き、失業し、生活する老若男女たちのオーラルヒストリーは迫力があります。

やや似た企画としては、連合総研が行ったワーキングプアのケースレポートがありますが、

http://rengo-soken.or.jp/report_db/pub/detail.php?uid=208

こちらは筑豊、大牟田という地域に特化して、この地域の特性も浮かび上がらせています。

序章 社会的貧困の再発見のために(都留民子)

第1章 田川・大牟田地域の特徴(高林秀明・都留民子)
 第1節 地理的位置など
 第2節 産業・就業の推移
  1.炭鉱産業のスクラップ化と労働者の流動化
  2.炭鉱合理化・閉山後の産業政策――企業誘致策の失敗
  3.失業対策事業による地域開発
 第3節 地域住民の労働と生活
  1.人口の減少・高齢化,および世帯の縮小
  2.労働の状況――中心は第三次産業の中小零細企業の労働者
  3.大量の失業者――雇用では解決できない失業問題
 第4節 住民生活を支える社会制度
  1.雇用保険制度の現状――2割を切る失業給付受給者
  2.生活保護の現状――失業世帯には対処できていない
  3.社会保障としての失業対策事業――田川を中心に
  4.公共財としての公営住宅――ヨーロッパ「福祉国家」なみの田川

第2章 「労働」と「家族」のアイデンティティの研究方法(高林秀明・都留民子)
 第1節 調査の方法
 第2節 オーラルヒストリー分析の方法――状況・リアクション・アイデンティティ
 第3節 労働・家族生活からの類型

第3章 14人のオーラルヒストリー――人々はどのように生きているか(都留民子・堀木晶子・高林秀明・増淵千保美)
 第1節 男性たちのオーラルヒストリー
  1. つらい仕事も家族のために――「安定」グループの40代の運輸労働者
  2.朝8時半から翌朝4時まで,休みなしで2か月――「不安定」グループの30代の生活保護受給者性
  3.50歳になろうかっていうおじさんがですよ,親に頼る……――「不安定」グループの40代の求職者
  4.どうしよう……サラ金に手を出したら負けになる――「不安定」グループの50代の求職者
  5. 母ちゃんとの付き合いが一番楽しい……「不安定」グループの40代の求職者
  6.やはり,自分の努力不足……――「不安定」グループの40代の障害者
  7.知人の家に世話になって……――「不安定」グループの50代の元自営業
  8.仕事か労働運動か,今岐路に立っている――「不安定」グループの40代の労働組合活動家
 第2節 女性たちのオーラルヒストリー
  1.私が正規で働きつづけなければ生活はできない――「安定」グループの30代の正規職の母親
  2.自分の人生だから,自分で生きる!――「安定」グループの60代の元失業対策労働者
  3.今が一番幸せ!――「不安定」グループの30代の生活保護受給の母親
  4.まだ働けるから,生活保護はいや――「不安定」グループの母子世帯の母親
  5.同じ肝炎なのに,補償がないんです――「不安定」グループの50代の母親
  6.生活保護があって,よかった!――「不安定」グループのひとり暮らしの高齢者

第4章 「労働」と「家族」のアイデンティティ――8グループの特徴  (都留民子・堀木晶子・高林秀明・増淵千保美)
 第1節 アイデンティティのカテゴリー,そしてシェーマ
  1.「労働」のアイデンティティのカテゴリー
  2.「家族」のアイデンティティのカテゴリー
 第2節 現状はまぁ,満足……――男性の「安定」グループ
  1.「やりがい」と「家族のため」――60歳未満の男性
  2.「充足」と「生きがい」――60歳以上の男性
 第3節 生きのびる手段――男性の「不安定」グループ
  1.「個人的抵抗」と「失意」への傾斜,そして「家族の協力」――60歳未満の男性
  2.余儀なくされた「労働」と「引退」――60歳以上の男性
 第4節 落ち着いた生活―女性の「安定」グループ
  1.家族への「満足」,そして「働きたい」――60歳未満の女性
  2.労働者の集団的アイデンティティの保持――60歳以上の女性
 第5節 生活は苦しい―――女性の「不安定」グループ
  1.働くことは当たり前――60歳未満の女性
  2.集団的アイデンティティの持続,あるいは「とにかく働きたい」――60歳以上の女性

第5章 「労働」の限界・「家族」の限界,「社会化」されないニーズ(都留民子)
 第1節 「個人化」,そして中途半端な「社会化」のなかのアイデンティティ
  1.男性の「労働」と「家族」のアイデンティティ
  2.女性の「労働」と「家族」のアイデンティティ
 第2節 収奪を強める日本の社会保障制度――「医療」への憤慨
 第3節 社会保障制度による生活の「社会化」にむけて

補論 日本における稼働世帯の貧困と社会保障(唐鎌直義)
 第1節 貧困・格差の広がりとその深刻化 
  1.就業形態から見た貧困の実相――世帯業態別に見た稼動世帯の貧困 
  2.地域別に見た貧困の実相――地域別貧困率と保護率 
 第2節 社会保障の貧困除却機能の再構築を 
  1.雇用の劣化と社会保障の危機の本質 
  2.失業者の増大と劣化した雇用保険制度 
  3.社会保障財源をめぐる問題 

付表(唐鎌直義)
あとがき

なんといっても、個々のケースに迫力があります。どれも凄いのですが、たとえば、「朝8時半から翌朝4時まで,休みなしで2か月――「不安定」グループの30代の生活保護受給者」の野原さん。

・・・定時制高校を卒業したが、同期34人中卒業したのは、彼を含めて11人しかいなかった。・・・

卒業後の就職先は、高校時代からアルバイトで働いていたラーメン屋であった。最初は慣れた仕事なので不満はなかったが、経営者が代わると頻繁に朝8時から翌朝の午前4時まで働かされ、2か月間休みは全くなかった。給料は手取りで11万円だけだった。加えて、管理職は自分たちよりも10倍もボーナスが支給されるなど、不平等にも嫌気がさし、3年で辞職した。辞職前には、同僚たちと一緒に、「労働基準法を完全に無視」した勤務・残業代の不払いなどを労働基準監督署に訴えたが、タイムカードでの証拠がないとして、門前払いされた。

・・・ラーメン店を辞めてからは、2度の失業を経験したが、・・・ハローワークの求人に応えて就労し続けた。中小零細事業所の物流運搬・コンクリート工場・菓子製造・コンテナバッグ洗浄など職種は多種多様であるが、雇用形態は、試用の正社員・パート・派遣であり、時給で700~750円、月では額面15万~16万円程度である。

1事業所での就労期間は長くて9か月であったが、どの職場でも自分は長く続いた方だとの原さんは強調する。離職を繰り返したのは、同僚の間でいじめやケンカ・・・が絶えない職場に嫌気がさしたり、粉塵作業で自分で防具を用意せざるを得なかったり、事業主の自宅の左官仕事や飼い犬の散歩までさせられたりしたからである。また辞職だけではなく、仕事中に怪我をしたにもかかわらず、解雇されたときもある。・・・

体力と器用さをもって続けていた就労は、通勤途中の事故をきっかけに中断せざるを得なくなる。雪道をバイクで派遣先に向かう途中で、転倒して首を痛めたのである。この時は昼夜のダブル就業であった。派遣会社は、事故の報告も聞き流すだけだったので、野原さんは事故後は、新しい派遣会社に登録して工場で働き始めた。この就労が野原さんを働けない身体にしてしまった。派遣先の作業は、15~20キロのゴム袋=コンテナバッグの洗浄であった。袋内に付着している化学薬品など有害な粉末が目に入らないように、マスクや眼鏡を自分で用意するなど細心の注意をした。しかし1日600~900袋を手で持ち上げ、機械を操作して洗浄しなければならなかった。7か月後には、腕・右半身が動かなくなった。事故に起因する頸椎版ヘルニアと診断され、3か月間は自宅で寝たきり状態であった。

ちなみに、コンテナバッグ洗浄会社では、10数人の従業員中半分は派遣労働者だが、作業のきつさから。初めての人は作業中に放心状態になり、即退社したり、突然出社してこなくなったりしたらしい。

野原さんは一人暮らしだが、母親と兄弟は近所に住んでいる。兄弟は、ヘルニアで寝ている野原さんに、生活保護を勧め、生活保護の受給を助けてくれた運動団体を紹介している。今民間事業所でフォークリフトの職業訓練を受けているが、この職業訓練も兄が教えてくれた。

このケースに対する著者のコメント:

青年の雇用・失業問題を、学校生活での挫折・学校から労働市場への「移行期」の問題とみる主張もあるが、この論では、学卒から正規職に順調に移行・就職できた野原さんのケースは説明できない。移行期の問題ではなく、労働市場・求人の問題であり、放置されているブラック企業と劣悪な労働現場・労働環境こそを問題視しなければならない。個人への励ましや就労支援がいかに的外れな策であるかが分かる。・・・

全体的には、この言い方もやや行き過ぎと思いますが、少なくともこういう実態にも即して議論をする必要があることは確かでしょう。

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コメント

一箇所
洗浄と千条が間違っていると思われます

必要なのは、『労働法教育』なのでしょう

ちゃんと雇用契約ということを教わらない限り、奴隷契約を自ら結ぶ人達が後を絶ちません

事後的救済では、この手の人達は救い難い

この時代、それこそ「ブラック」っていう言葉も一般化してきていて
みんなそれなりに労働法についてに知識はありますよ。

見合わないんです。労基がきちんと動かないから。
手が足りないという点では同情しますが、
法はあっても担い手が動けないのでは無いのも同じです。

なら、その会社から抜けて新しい職を探すという対処法もありますが、
このご時世、なかなか職も見つからない。

またブラックにいて口をつぐんで働いたほうがマシ。

と考えるのもむべなるかなと思います。

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