若森みどり「劣化する新自由主義と民主主義の危機」@『生活経済政策』
生活経済政策研究所から『生活経済政策』8月号をお送りいただきました。
http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/index.html
特集は「資本主義に未来はあるか」です。
ニーズ指向の経済への転換/八木紀一郎
非自発的雇用という日本経済の危機/高橋伸彰
金融危機と新自由主義経済学の危機/服部茂幸
資本主義の未来、あるいは脱資本主義への指向/田中史郎
劣化する新自由主義と民主主義の危機/若森みどり
このうち、ここでは若森みどりさんの「劣化する新自由主義と民主主義の危機」を紹介しておきたいと思います。
というのは、文中でわたくしがこの雑誌の今年4月号に書いた「『失敗した理念』の勝利の中で」のフレーズを絶妙に使っていただいているから、ということもあるのですが・・・。
・・・新自由主義以外の経済改革を思いつかない「政官財学報」(政界、官界、財界、学界、報道界の複合体)はいま、急進的な競争的市場経済の創出を容易にする「決断できる政治」を支持しているように見える。雇用や生活の不安の声に政治が応えるための「民主主義的手続き」が、市場経済の円滑な進行を阻害する「決断できない政治」として揶揄されている。
・・・リーマンショックに端を発する金融危機の嵐が吹き荒れた2008-2009年に世を覆っていたのは、強欲資本主義に対する批判であり、危機をもたらした新自由主義的改革に対する批判だったのに、「金融危機がソブリン危機に転化」したとたんに、「それまでの金融資本主義批判の雰囲気が一気に緊縮財政、公共サービス削減に転換」したのである。金融危機のもたらした市場の混乱に対応する過程で、多額の公的支出を行ったことが新自由主義の復活の最大の理由であるとすれば、それは奇妙な「逆転劇」である(濱口2012)。
・・・不安定化する金融市場、企業の競争力の低下、産業の空洞化、長引く不況、人的資本の劣化、そして何よりも若者の希望と雇用を提供できない資本主義の諸問題。これらを自らが作り出した「社会的危機」としていかに自己了解するかが、新自由主義に問われている。試練に晒されているのは新自由主義であり、現在進行しているのは新自由主義の危機なのである。
もう一つ興味深い記事は、吉田徹さんの「2012年フランス大統領選挙を振り返る—「否定形の政治」の行方」ですが、これについては、『労働調査』の松村文人さんの記事と併せて、改めて。
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