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2012年8月 4日 (土)

『Economist』誌のいささか低水準な記述

イギリスの定評ある週刊誌『Economist』誌に、「Politics in Japan Eyes right An unusual militancy is creeping into mainstream politics」(日本の政治 右傾化する主要政党 日本では珍しい好戦性が政治の主流に忍び込んでいる。)という記事が載っています。

http://www.economist.com/node/21559656

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35802(邦訳)

全体としては、

On the country’s populist fringe, firebrands such as the governor of Tokyo, Shintaro Ishihara, and the mayor of Osaka, Toru Hashimoto, are also stirring up the political agenda, engaging in China-baiting and union-bashing respectively. It is not clear, though, that they have the clout to go far on the national stage.

日本のポピュリストの一角では、石原慎太郎・東京都知事や橋下徹・大阪市長のような扇動的な政治家も政策問題を巻き起こし、前者は中国批判、後者は労働組合叩きを展開している。しかし、両氏が国政の舞台で大きな成果を上げるだけの影響力を持っているかどうかは不透明だ。

といった穏当な論調なのですが、次の一節はさすがにミスリーディングも甚だしいと言うべきでしょう。

Mr Noda, meanwhile, has also sought to move his beleaguered party firmly to the right. In June his fiscal conservatism prompted more than 50 left-leaning lawmakers to leave the DPJ. The government has jettisoned many of the pledges the DPJ made to the public in 2009, such as strengthening the social safety net.

一方で、野田首相も窮地に立つ民主党を大きく右寄りに移行させようとしてきた。この6月、首相が抱く財政保守の思想は、50人以上に上る左派議員の民主党離党を招いた。政府は社会的セーフティネット(安全網)の強化など、2009年に民主党が国民に約束した公約の多くを放棄した。

財務省サイドと社会保障サイドの綱引きなど一連の事態を細かく見ればいろいろとありますが、少なくとも、「税と社会保障の一体改革」を掲げて増税をしようとする側が「右派」で、増税を批判して飛び出したポピュリストたちが「左派」というのは、増税賛成が経済左派、増税反対が経済右派という、エコノミスト誌の本拠であるヨーロッパの常識感覚からいっても矛盾しているとは思わないのでしょうか。

日本のレベルの低いマスコミ報道の色づけをそのまま無批判に取り入れたからなのか、あるいは、もはやグローバル雑誌になったので、ヨーロッパの感覚は薄れたのか。いずれにしても、在欧中は必ず毎週読んでいた『Economist』誌とは思えないB級日本マスコミ的な記述でした。

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コメント

そもそもこの記事には
>野田首相が法案可決後の退陣を約束するのであれば、自民党が参議院で消費税増税支持に回る
といった信じ難い間違いが見受けられます(自民党が要求しているのは退陣でなく解散)。

これは日本の政治状況についての事実誤認レベルでなく
日本政治について知識がほとんどなくても欧米の教養人ならば絶対にありえない間違い。
どう考えても”まともな”記者が書いた記事とは思えません。

現在日本政治の大きな対立は、
反ポピュリズム:民主党主流、自民党主流、公明党
ポピュリズム:民主党鳩山派、小沢新党、社民党、共産党、自民党小泉派、みんなの党、維新の会
にあります。

もちろん各陣営も立場は分かれていて、
反ポピュリズム陣営は、福祉の民主党(左派)と国土狂人化の自民党(右派)、
ポピュリズム陣営は、反構造改革の鳩山小沢・社民共産(左派)と構造改革の小泉派・みんなの党・維新(右派)、
と分かれているが現在の政治状況では大きな違いになっていません。

ポピュリズムと反ポピュリズムの現在進行形の具体的なメルクマールは消費増税と原発再稼働。
「増税しなくても福祉は可能、原発再稼働しなくても電気は足りている」というポピュリズムに身をゆだねるかが問われているわけです。
現在の表面化している政治対立は右派左派以前の問題だと思います。

もっとも『反ポピュリズム』という新書を出された渡辺恒雄さんが大連立派であることからわかるように、現在の反ポピュリズムは”右派”主導であることは間違いないでしょう。
原発・消費税賛成はいずれも反ポピュリズムからの当然の帰結にすぎないのですが、ある種の人々にとっては”右翼”のごり押し政策なのでしょうから。

空からお金が降って来ない限り、そして万が一空からお金が降ってきてもインフレになるという常識を尊重する限り、そして万が一労働価値説を未だに支持する限り、高福祉を掲げるならば高負担が必須であることを主張することは、左派であれば「常識」なはずです。「もっと増税を!そして労働者の権利を!」これ全然矛盾しないのですがね。。

思えば日本においては、左派においても、社会保障は婉曲的な階級闘争である、という認識が足りないのではないないでしょうか?しかも、社会保障における労働者の権利こそは、総資本VS総労働の様相を呈するのにです。結果的に企業福祉社会村と大多数の村八分を産み出すつつあるようです。確かに左派の責任は重いと思います。原理原則がずれていることが、やはり負の影響を増大させているのだと思います。

社会保障政策を労働者の権利の底上げの武器とすること、そしてその上で柔軟な雇用形態を形成すること、それこそ左派が批判して止まない企業中心社会を融解させることになるのに、なぜそれをしないのか。問われているのは左派の側なのですね。いや、まったく、革命が必要なのは左派の側のようです。いやはやまったく。。

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