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2012年7月15日 (日)

高福祉、低命令、低処遇

雑誌『サイゾー』で、POSSEの今野晴貴さんがブラック企業について語っています。

http://biz-journal.jp/2012/07/post_366.html

さらに、若者の労働問題などに取り組むNPO法人「POSSE」代表の今野晴貴氏は、ブラック企業をこう定義する。

「サービス残業や過労死といったものは、『ブラック企業』という言葉が出てくる以前から、日本社会で問題になっていました。しかし、その代わりに生涯を通じて生活の面倒を見るという企業が多かったことも事実です。一方、現在のブラック企業には、まったくそんな心づもりはなく、使えなくなったら容赦なく社員を切り捨てようとする。つまり、労働者が『働き続けられる環境があるかどうか』で判断したほうが、現在のブラック企業の定義を考える上で有効です」

 すなわち、「労働基準法違反」や「違法な行為を行なっている」という観点だけでは、ブラック企業を見分けることができないという。今野氏はこう続ける。

「90年頃のバブル崩壊までは、過酷な労働をしなければいけないのは若い時期だけで、年齢を重ねるごとに過酷さはだんだんと緩和され、給料も上がっていくという認識が労使間で共有されていました。いわゆる日本型雇用といわれる終身雇用や年功序列といった制度がその典型です。その代わり、社員は企業の命令を絶対的に遵守するという、ある種の『契約』があったわけです。つまり、賃金が支払われないサービス残業など、違法なことを我慢する代わりに、得るものも大きかったといえます。しかし、そうした日本型雇用を維持できたのは、70年代以降も続いた日本の右肩上がりの経済成長があったからこそ。バブル崩壊以降は低成長時代に突入し、企業が社員の生活を守る力がなくなっているのにもかかわらず、企業の強い命令権だけが残ってしまっている状態です。そのため、ブラック企業が現在、社会的な問題になってきているのです」

 社員を育て、生活を守っていくつもりのない企業にとって、社員はまさに捨て駒。人件費の安い若い時期に猛烈に働かせ、ある程度の年齢になったら切り捨てるという手法も横行しているという。それに加え、ブラック企業は社員のスキルを伸ばそうとせず、OJT(企業内教育)が皆無に等しいことも特徴として挙げられる。結果、「転職しても、ほかの会社でやっていけるのか」と社員が不安を募らせ、退職を妨げることになってしまう、と今野氏は語る。

ブラック企業を生み出す日本社会の構造的欠陥

 このように労働者が圧倒的弱者となってしまう背景には、日本の社会制度の不備が指摘される。

「もともと日本では、手厚い企業福祉を前提として社会設計がなされていた側面があります。住宅手当や家族手当など、本来では国家が税金を通じた再配分で保障する部分を、企業福祉が代替していました。しかし、長引く不況で企業は手厚い福利厚生を維持できなくなってしまったことから、労働者には相当きつい社会になっていると言えます」(同)

今野氏いわく、現状を打開するためには「高福祉、低命令、低処遇」の社会を目指すしかないという。要点をまとめると、「国が社会福祉を充実させ、企業の命令権を法規制で弱める。その代わり、労働者は給料などの処遇を低い水準で我慢するという方策を取る」という主張だ。

「社会福祉をしっかりやれば、中小企業は関連の仕事が増え、国内産業を育てることができます。そして、子どもを育てられるような状態ができ、少子化にも歯止めがかかって内需の拡大が期待できます。つまり、高所得で海外旅行に行きまくるなどといった生活は我慢しましょうということです」(同)

おおむね、わたくしが主張してきたこととほぼ同じですが、最後あたりの「高福祉、低命令、低処遇」というリアルな提言は、人によってはいやがる可能性はありますね。

ここはもう一歩進んで本音レベルで言うと、労働者の中でエリート層とノンエリート層をどう構成するのか、という、戦後日本社会が見ようとしてこなかった問題があるわけですが。

(追記)

その今野さんが、「川村事務局長の指示に従って、突貫で」書いたブログ記事がこちら。

http://blogs.yahoo.co.jp/perspective0301/6222782.html(ブラック企業問題の本当の論点 )

基本的には「まとめ」ですが、「低処遇」という言葉の一人歩きに若干困惑されているようです。

実はこの「低処遇」というところには、間違いがあって、本当は修正したいのだが、すでにいくつかの雑誌に出てしまって困っている。本当は、「年功とは違う論理で賃金を決定せよ」ということが言いたいのだ。大企業の正社員=エリートとは違っても、低処遇には低処遇の決定の論理と安定がある、という状態を作り出す必要がある。それは本来的は仕事の内容=「ジョブ」による決定である。

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コメント

https://twitter.com/keikomaa/status/224011318498299904

”同一労働、同一賃金の名のもとに、年功序列賃金は無くなっていきます。子育て時期に給料が多くなることは期待できません。利益にしっかり税金をかけて、子育て家庭にお金として還元されるようにしていくしかないのではと思います。”

あ、増税論議の方に付けるべきコメントでしたか

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