芸人バッシングから読み解く生活保護の一番大事な問題
『情報労連REPORT』7月号が届きました。私の連載「hamachanの労働ニュースここがツボ!」は「芸人バッシングから読み解く生活保護の一番大事な問題」です。
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去る5月から6月にかけて、日本社会を時ならぬ騒ぎが襲いました。お笑いタレントの河本準一さんの母親が生活保護を受給していたことを女性週刊誌が報じたところ、何人かの政治家が大問題として取りあげ、連日の糾弾報道の挙げ句、涙ながらに謝罪するという結末に至ったのです。
この事態を見る限り、現代日本人は、生活保護の一番大事な問題は親族が扶養義務を果たさないことだと考えているようです。しかしながら、それは世界的に見て極めて異常な姿です。扶養義務の問題については既に福祉関係者からさまざまな指摘がされていますので、ここでは連載タイトルに沿って、労働問題という観点からこの生活保護の問題を見ておきましょう。
生活保護と労働問題とは全然別の領域で、何の繋がりもないというのが、いままでの普通の感覚でした。それを支えていたのは、母子家庭でもない限り、働ける現役世代の者が受給しようとしてもなかなかそうさせないような運用、いわゆる「水際作戦」でした。しかし、2008年のリーマンショック以後、雇用保険の対象とならない現役世代の失業者たちが続々と生活保護を受給する映像がマスコミで流されたため、全国で(それまで自分が受給できるとは思っていなかった人々も含め)生活保護の受給者が急増していったのです。
受給者の急増がもっとも顕著だったのが大阪市です。そして、平松前大阪市長は現役世代の生活保護への流入を防ぐための制度見直しを国に求め、それを受けて厚生労働省の審議会で見直しが進められてきています。この点では橋下現市長も、より過激にマスコミ受けする表現をとっているだけで、本質的には同じ政策方向なのです。
この論点は、実は世界共通の問題です。特にもともと福祉が寛大だった西欧諸国では、生活保護から脱却して就労に結びつけるためにさまざまな政策を講じてきました。厳格なものから誘導的なものまで、それら政策はワークフェアとかアクティベーションと呼ばれています。重要なのは、それらは働ける現役世代を福祉から就労に持っていこうとしているのであって、もはや働けない高齢者の生活を遠く離れた親族に保障させようというような発想とはまったく異なるということです。
ところが、日本では枝葉末節のはずの河本事件ばかりが異常にフレームアップされ、世界共通の生活保護の一番大事な問題がどこかへ飛んでいってしまいそうな雰囲気です。これが生活保護だけの問題ならばよいのですが・・・。
別に示し合わせたわけではないのですが、同じ号の「WATCHING 経済」で、小林良暢さんも「生活保護は「公的扶養の優先」への転換を」を書かれていますね。まっとうにものごとを考える人の結論は大体同じ方向になるのですが、政治家とマスコミとヒョーロンカの皆さまは必ずしもそうではないので・・・。
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10000親等内に扶養義務を強制すべきだと思います。
投稿: マルコミ | 2012年7月13日 (金) 17時49分