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« 鈴木和雄『接客サービスの労働過程論』 | トップページ | 労働者自主管理は究極のメンバーシップ型 »

2012年7月 1日 (日)

「志」のある業務請負

A山内栄人『図解 人材派遣会社向け「業務請負」の基本とカラクリ』(秀和システム)をお送りいただきました。

http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/3386.html

この本、タイトルを見ても、表紙を見ても、典型的なハウツー本という感じですが、読んでいくとなかなかそれを超えたところがあります。

人材派遣会社向けに「業務請負」事業を実際に立ち上げ、進めていくうえで必須のノウハウを解説した実務・実践マニュアルです。人を連れて行くだけで成立していた人材ビジネスの時代から脱却し、これからの時代に生き残るには業務請負事業をすすめていかなければなりません。本書は、人材ビジネス全般の話題から、業務請負の起源、業務請負会社の仕組み、収益を高めていくための実践例、リーダーの育成、請負単価の考え方や算出方法、営業戦略、求人戦略、将来展望まで、業務請負事業の進め方を事例や帳票サンプルなどをまじえつつ解説しています。

「人を連れていくだけの派遣」から脱却し、まっとうな業務請負はどういう風にやるのかを、請負単価の設定の仕方まで懇切丁寧に説明していきます。リンク先に細かい目次が載っています。

第1章 業務請負業界の過去と現在
1-1 人材ビジネスの全体像について
1-2 派遣と業務請負の違い
1-3 業務請負の起源
1-4 業務請負の法律
1-5 業務請負のこれまでの推移
1-6 個人請負という課題
1-7 業務請負の存在意義とは

コラム 筆者は請負現場出身!?

第2章 業務請負会社経営の仕組み
2-1 派遣と業務請負の利益構造の違い
2-2 業務請負会社の構造とは
2-3 営業部門のお仕事
2-4 管理部門のお仕事
2-5 総務・経理部門のお仕事
2-6 人材採用部門のお仕事
2-7 法務部のお仕事
2-8 請負の契約とは

コラム 業務請負は大変か!?

第3章 業務請負と認められる要件とは
3-1 請負法は存在しない
3-2 請負と認められるためには
3-3 請負の要件
3-4 請負と委託
3-5 適正な請負と完全な偽装請負
3-6 出向ほど曖昧なものは無い
3-7 今日の天気は指揮命令?
3-8 エリアの混在は作業の混在か?
3-9 発注者の応援は即アウトか?
3-10 偽装請負となりやすい単価とは
3-11 一番厄介な緩急の調整とは
3-12 請負とは小さい会社である

コラム 派遣と請負は根本的に違うモデル

第4章 業務請負で収益を高めるために
4-1 粗利益の変動はリスクではなくチャンス
4-2 単価設定が間違いでは利益は出ない
4-3 徹底的な5Sが利益をもたらす
4-4 請負会社=コンサルティング会社である
4-5 見える化であらゆるものを数値化せよ
4-6 トラブルこそ成長のチャンス
4-7 作業者特性を利用せよ
4-8 末端まで数値を浸透させよ
4-9 儲かれば、従業員や発注者への還元も
4-10 上げて下げての単価で購買納得

コラム 5Sは万能の改善方法!

第5章 指揮命令者育成マニュアル
5-1 派遣のリーダーと請負のリーダー
5-2 請負リーダーが成長しない理由
5-3 請負リーダー育成方法・ 現場作業者から
5-4 請負リーダー育成方法・ 営業マンから
5-5 請負リーダー育成方法・ 中途採用から
5-6 請負リーダー育成方法・ 転籍を活用して
5-7 請負新規立上げ時は営業マンから
5-8 請負リーダーが営業マンになると…
5-9 キャリアパスの重要性
5-10 請負の品質は指揮命令者で決まる

コラム 請負リーダーは何でも屋!?

第6章 請負単価の概念
6-1 儲けを出したいなら1件、1個単価
6-2 受託領域が曖昧では単価を出すことは出来ない
6-3 年間の変動を知らなければ確実に泣くことに
6-4 購買から出てくるサイクルタイムは疑え
6-5 通常作業時間以外が鍵に
6-6 上限と下限は保険となる
6-7 募集時を想定した設定を
6-8 必要となる経費はすべて書き出す
6-9 真剣にやるからこそ、PL保険は重要
6-10 すべての経費を固定費と変動費へ
6-11 指値でも検証は同じ
6-12 可能な限りシミュレーションを

コラム 単価設定で天国・地獄!?

第7章 業務請負業界の営業戦略とは
7-1 営業力=提案力の時代へ
7-2 付加価値の見せ方を考えよ
7-3 過去の功績や事例をハンドブックに
7-4 何かで一番になる
7-5 サービスを一言で言える商品へ
7-6 プッシュ型からプル型へ
7-7 価格競争から抜け出せ
7-8 社員はすべて営業

コラム 連れて行くだけのビジネスモデルの崩壊

第8章 業務請負業界の求人戦略とは
8-1 なんだかんだ言っても人を集めないと始まらない
8-2 派遣と請負では集め方も違う
8-3 欲しい人材像を明確に
8-4 求人戦略こそPDCAが必要
8-5 請負だからこその口コミで求人
8-6 ハローワークを使い倒せ
8-7 新卒採用こそ安定供給のスキーム
8-8 WEBをトコトン活用する
8-9 定着・育成こそ重要な課題である

コラム 派遣よりも請負の方がイメージが良い!?

第9章 業務請負業界の今後のあり方とは
9-1 請負は単なる抵触日対応ではない
9-2 ニート・フリーターの再生工場へ
9-3 請負だからこそ育つ人達がいる
9-4 日本のモノづくりを底から支援
9-5 請負で働く人達の未来を
9-6 黒・グレーからの脱却が前提条件
9-7 CSRが突破口となる
9-8 NPOとの連携により露出を上げろ
9-9 良い取り組みはFacebookで拡散を
9-10 社員の披露宴で堂々と言える業界へ

コラム 社会的必要性の高いビジネスモデルへ

本書に迫力を与えているのは、著者の山内さんの経歴でしょう。本書にも繰り返し出てきますが、営業職として入社したが務まらず、製造現場作業員としてラインで働き、そのラインリーダーや責任者を経験したことから、上の目次にも出てきますが、営業マンから請負リーダーを育成したり、請負リーダーを営業マンにするといった提言が出てくるのでしょうね。

タイトルの「志」というのは、第9章に表れていますが、特に「請負だからこそ育つ人達がいる」の文章はなかなかインパクトがあります。

・・・今の日本の労働市場はレールから一度はみ出すと正規ルートには戻りにくい状況があります。例えば、何かを理由に短期間に会社を辞めてしまった人や、大学を中退した人、就職活動で内定をもらえなかった人など、一度レールを外れると正社員として雇ってもらうことが困難になり、そのつなぎで入ったバイトや派遣が長期化し、その状況が固定化してしまうような現象です。

では、請負の世界に足を踏み入れることはと言えば、決してハードルが高いとは言えません。もちろん、幹部候補で入るとなれば、ハードルも上がりますが、作業者としてや、リーダー候補として入るくらいであれば、やる気さえあれば難しい話ではありません。

あとは学歴でもなく、経歴でもなく、やる気次第で上に上がれる仕組みがあるわけです。ある種平等な社会とも言えます。過去にとらわれずに結果のみで正当に評価されるのです。

また、請負で結果を出そうとすれば、多くのことを学ぶ必要が出てきますが、それもゼロベースでもよいわけです。筆者は製造請負の世界で育ちましたが、製造の経験は全くなく、むしろ何も知らないくらいでした。しかし、今ではコンサルタントです。

そんな私の経験から、再スタートを希望する方々を請負現場でサポートしてきました。正社員の経験もなく、どこからもビジネスマナーも学んでいない人であっても、ゼロベースで教育していきました。能力がないとかやる気がないわけではなく、単純にレールから外れているだけなのです。

悪い部分にのみフォーカスされ、相手にされないような人材であっても、良い部分を伸ばして再出発のチャンスを与えることができる業界は案外少ないように思います。

この「志」は、若者向けの自立支援などを行うNPOとの連続性を感じさせるものがありますが、それを営利企業という制約条件下でやり抜こうというところが、この本の意義深いところなのでしょう。

そういえば、かつて私も、もう6年近く前になりますが、こういうことを書いたことがあります。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/koyounokakusa.html(「雇用の格差と人生の格差」(『世界の労働』2006年11月号))

近年注目を集めている就労形態にいわゆる請負労務がある。マスコミのキャンペーンや行政の偽装請負摘発などもあり、請負の要件を充たしていない偽装請負を合法的な労働者派遣に切り替えていくべきというのが大きな流れであるようである。もとより、労働法制の遵守は重要であり、偽装請負をそのままにしてよいわけではないが、それでは適法な派遣形態にすることによって上述のようなフリーター問題が解決していくのかには疑問が残る。派遣労働者として派遣先が一定の使用者責任を負うことはもちろん望ましいことではあるが、逆にそれによって派遣就労が一定期間経過することで断絶し、技能形成されないまま中年になっていくとしたら、結局将来の所得格差の原因となることに変わりはない。

 日本では、戦後下請の系列化が行われ、企業の生産ラインの一部を外部化するような形で協力会社の請負が整理されたという経緯がある。この方向性がこれからも可能であるならば、現在単なる労働力供給元に過ぎない請負企業を協力会社として系列化し、いわば企業グループとしての一定のキャリアパスを提供していくという道があり得るのではなかろうか。親企業の正規労働者として雇い入れることには躊躇するにしても、会社別人事管理の下で親企業の労働者とは一定の賃金格差を維持しつつ、協力会社の労働者として教育訓練を行い、それなりのキャリアを提供していくというやり方で、相当部分を掬い上げることができるように思われる。

 これは何も現在構内請負形態で就労しているフリーターに限られない。現在直用の非正規労働者として就労しているフリーター層を社会的にメインストリームに乗せていくために、あえて別会社の正規労働者として採用して、一定の労務コスト削減を可能にしつつ、将来的な社会的排除のリスクを少なくしていくというのは、現実的な政策として考慮に値するように思われる。


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コメント

濱口先生

早速の書評ありがとうございました!
本人の山内でございます。

正直、どこをどのように切られるかドキドキでしたが、
正に、私が伝えたいことを取り上げて頂けたことに
感謝しております。

先日のシエットにて名刺交換させて頂きましたが、
また、機会があればお話でもさせて頂ければ
幸いです。

船井総合研究所 山内 栄人

ようこそ、拙BLOGへ。

御本の特に第9章の文章は、、もう少し世に伝わっていいことが多く書かれていると思います。一部は上に引用させていただきましたが、こうして少しずつでも広がっていくといいですね。

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