「一体改革」はなぜ支持を広げないか@宮本太郎
『生活経済政策』7月号が届きました。
http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/index.html
明日への視角
•不信と怒り/坂本義和
連載 地域から日本の国際化を考える[2]
•もう1人の青年モンテイ/木村陽子
特集 政治はどう向き合っているのか
—新しい社会的リスクへの対応
•新しい社会的リスクに対する日本の政治的動向/住澤博紀
•最低所得保障制度の構築の必要性/駒村康平
•家族という「危険な(リスキー)」ビジネス—ヨーロッパにおける「家族リスク」をめぐる議論/武田宏子
•「望ましい働き方(非正規雇用)ビジョン」の課題と労働組合の役割—非正規労働と社会保険適用の課題をめぐって/小島 茂
論文
•「原発」国民投票に道理あり/今井 一
報告
•「一体改革」はなぜ支持を広げないか—課題と展望/宮本太郎
書評
•宮本みち子『若者が無縁化する—仕事・福祉・コミュニティでつなぐ』/鈴木奈穂美
特集の論文も興味深いのですが、ここでは時期的にトピカルな宮本太郎さんの報告を。
宮本さんの言いたいことは、つまるところ「霞ヶ関型分断」に問題があるということなのですが・・・。
1つめは、税制改革と社会保障改革-財務省と厚労省の分断です。2つめに、社会保障改革と雇用政策、成長戦略の分断です。・・・3つめは、社会保障改革は自治体が舞台になるため、地域主権とも一体にならなければならないところで、総務省vs財務省・厚労省という分断が起きているということです。
この「分断」を、しかしながら世のおつむの柔い人々のように陰謀説で説明しないところが宮本さんの真骨頂で、
・・・財務省は相変わらず「金庫番」に徹しています。「一体改革」において、社会保障の機能強化が進まないことを含めて、全て悪玉財務省のシナリオなのだという議論はよく聞きます。しかし「霞ヶ関型分断」が起きる背景は、財務官僚個々が全て悪玉だからそうなるというのとは少し違う。財務省がなぜお金を出さないかというと、要するに彼らは信じていない。つまり、現役世代向けの支援にお金が回り、皆が働き、社会とつながる力を高め、税金保険料として戻ってくるという循環を信じていないのです。他方で確かに、社会保障改革が成長戦略や雇用政策と連動していないという事実がある。・・・
このような意味での分断に対して、やはりここに「政治主導」がなければならないと思います。政治が個々の官庁に成り代わる必要はまったくありません。しかし、個々の官庁もこの分断ゆえに政策目標を効率的に達成できないというジレンマを抱えていることを見ておく必要があると思います。
これは実感としてもまったくその通り。「個々の官庁に成り代わ」ろうとしてその劣化バージョンを演じるなどという道化芝居よりも、個々の官庁の役人には到底なしえない「政治主導」こそが必要なのに、それこそが欠落しているという悲劇。
地域主権についても、東京、大阪、名古屋という大都市の論理だけが表に立つ状況に、こう冷静に論じています。
・・・しかし「地方の利益」と言っても、大阪、東京、名古屋という大都市の利益と、北海道や沖縄の利益が、果たしてどこまで「地方の利益」としてくくれるのでしょうか。北海道や沖縄が自律的な発展を遂げるためには、例えば皆がそこで働けるようにする-地域が自立するためには、住民が自立しなければなりません。そのための社会保障改革なのです。現役世代向けの支援を強める社会保障改革-「翼の保障」や「参加保障」を、地域でやらなければならないのです。これは、公共サービスとして提供されなければならないのです。・・・
財務省については、こう語ります。
・・・財務省は「金庫番」をやめて「社会的投資家」になるべきです。国民から預かっているお金を有効に使う。それが地域に入り、雇用を作り、地域を活性化させ、戻ってくる。それが「社会的投資」です。怪しいからカネを出さないということを言うのではなく、ちゃんと最後までお金の行く末を見届けて、それが本当に役に立っているか、そこまで見届けて欲しいということです。
ほんとうはそれこそ「政治主導」な政治家の務めのはずなのですが。
« OECD『図表でみるメンタルへルスと仕事 疾病、障害、仕事の障壁を打ち破る』 | トップページ | 若年者雇用対策担当者研修「関係する労働法令について」 »
コメント
« OECD『図表でみるメンタルへルスと仕事 疾病、障害、仕事の障壁を打ち破る』 | トップページ | 若年者雇用対策担当者研修「関係する労働法令について」 »
太郎先生と二郎先生が北大を離れられるそうですね
投稿: ななし | 2013年2月12日 (火) 12時46分