「途中からノンエリート型雇用」のアキレス腱
5月23日のHRmicsパネルディスカッション実録の後編がリクルートエージェントのサイトにアップされています。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/hrmics-2574.html(HRmicsパネルディスカッション実録(前))
http://www.r-agent.co.jp/kyujin/knowhow/tatsujin/( 定年制をめぐる諸問題についての、識者・現場担当者のパネルディスカッション(後篇))
パネリスト:
濱口桂一郎氏(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 労使関係・労使コミュニケーション部門 統括研究員)
水町勇一郎氏(東京大学社会科学研究所 教授)
中澤二朗氏(新日鉄ソリューションズ株式会社 人事部 部長)
田中宏昌氏(日本電気株式会社 人事部 主任)司会:
海老原嗣生(HRmics編集長)
例によって、わたくしの発言部分だけをこちらに引用しますが、水町さんも「日本とヨーロッパを比較する意味は十分にある」と強調していますし、是非リンク先をご覧下さい。
濱口 これは誤解されがちだが、日本型雇用は平等主義でぬるま湯的、というのは正しくない。日本企業ほど、ホワイトカラー、ブルーカラー問わずに厳密な査定を行い、少しずつでも社員の処遇差をつける企業は世界にない。差をつけることでやる気を涵養し、しかも、差を大きくつけ過ぎないことで、あきらめる人を出さない。その絶妙な匙加減でやってきた。このやり方がうまく行くのは、繰り返しになるが、若い人が多い、人口ピラミッドがきれいな三角形の時だけである。その形が大きくいびつになった。これからさらにいびつさを増すのはご承知のとおりだ。今までのよさを維持しながら、何を、どう調整していくのか、熟練した外科医のような手さばきが必要になっている。
濱口 海老原さんが提示された「途中からノンエリート型雇用」にはアキレス腱が存在する。若い頃は日本型でバリバリ働いてもらい、中年になったら欧米型となり、大多数がノンエリートに移行、ということになると、田中さんが危惧される「できなくなってしまった人」が大量に発生する事態となり兼ねない。システムは全体がつながっているから一つのシステムなのであって、二つのシステムのいいとこどりではかえってうまく行かない場合もある。かといって別の妙案が私にあるわけでもない。人事の皆さんの努力を待つほかない。
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