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とってもれりばんす

去る5月24日の第3回雇用政策研究会の議事録がアップされているので、ちょっと覗いてみたら、なかなか興味深いお話がてんこ盛りでした。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002dpu8.html

前半は三菱商事株式会社の人事部長さんがグローバル人材について語っていますが、とりわけどういう学生を求めているかというと、

本日は、大学の関係者の皆さんがいらっしゃるので、7頁を少し詳しく説明したいと思います。MC人材とヘッダーに書いてありますが、これは三菱コーポレーションの略です。要は、三菱商事の人材に求められる基本的な資質で、6年ぐらい前に定義をし直したものです。漢字で信・知・力と書いてあります。いちばん上の矢印に「世界に通用する人間としての高い倫理観」、その横に「入社前から、人物としての素地が必須」と書いてあります。「更に、ビジネス経験を経て深めていく」と。ここに小さい字で品性、誠実さ、哲学、謙虚さ、知的好奇心、フィジカル・タフネス、メンタル・タフネスという辺りが、まさに信の部分の要素を構成する表現かと思っています。一方、知の部分は、ビジネスをやっていますので、単に売り買いではなく、いろいろな専門的な知見並びに企画あるいはマネジメントを勉強してもらえるポテンシャルがあるかです。その中に、語学も入ってくるという整理です。必須科目と書いてある右下ですが、三菱商事では実はこの信と力を結構重視しています。忍耐力、相手への共感、ビジョン、巻き込み、変化への適応力、最後はエグゼキューションと英語では言いますが、最後までやり抜き結果を出すといった部分の要素を持っている人間が、基本的な資質として必要だと言っているものです。

 実は、右上に信・知・力に応じて採用・教育・実践経験ということで、◎、○、△を付けています。つまり、入社前からどうしてもこの要素は素養として持っていてほしいという意味で、信と力に◎が書いてあります。一方知は、教育を経て◎ということで、あとからでも修得が可能であると。したがって、新卒で求めている部分はこのような信と力のポテンシャルの高い人間ということを、採用の面接員に対してこういうところをよく見てくださいというようなことを言って、ガイダンスをしているのが実情です。この辺りが関係するかなと思い、少し説明をしました。

で、これをめぐる委員との会話が、

○佐藤委員 7頁の右上の採用の「知」のところで、先ほど大学の教育をどう考えるかで、クラブ活動の話や、大学時代の挫折などの経験をどういうように乗り越えてきたかというお話がありました。地頭のところで、1つは大学では極端にいえば勉強しなくていいよと、いろいろ経験積めばというのか、もう1つ、勉強しなさいといったときに2つあって、1つはどういう専門をではなくて、例えば哲学でもいいですが、自分の頭で考えられるというようなことをやってくれば、哲学であろうが経済学であろうがというのと、もう1つは経営学をきちんと勉強してとか、勉強もやはりうちの事業に結びついた勉強を大学でしろと。たぶん、もっとあるのかもしれませんが、地頭で言ったときにどれが近いのですか。

○藤田人事部長 実態は、例えば経済学部、法学部、早稲田でいえば政経、商、この学部の学生さんたちでも9割ぐらいでしょうね。ですので、正直言えば成績は良いに越したことはないです。ただ、ここに少し書いてありますが、基本的には専門知識は会社に入って学ぶという整理にしていますので、そういうものに耐えられる地頭という意味ですから、ある程度知的訓練を経ているという意味で言うと、きちんと勉強してもらっていたほうがいいに越したことはありません。

○佐藤委員 きちんと勉強しているというのは、大学なので、Aがいくつというのではなく、やはり自分の頭になれるような人材を採りたいということがあるのかどうかでね。

○藤田人事部長 それは、例えば課題がどこにあるかというWhatを構築できる能力で、Howがその次にくると言われますが、問題・課題の論点を整理したり、いろいろな多角的な方向から解決策を考えていく知力が、正直言えば私どもにとってはすごく欲しい部分です。それから、ベースの知見としては、マクロの経済や世の中の動向については、ある程度知っておいて欲しいと思います。

○樋口座長 私も体育会の部長をやっていまして、毎年お世話になっているのですが、スター選手だから行くということよりは、むしろそういったものを育てる縁の下の力持ち、あるいはそれを戦略としてチーム全体を動かすような、ただ本人は必ずしもプレーするとは限らないというのが、どうも入っているのかなという印象を持っていますが、いかがでしょうか。

○藤田人事部長 全部が全部そうではありませんが、よくクラブでいう主務という人ですよね。折衝、渉外、先輩、OB、後輩、いろいろな面倒をみて、ある種の仕事を進めていくのが、学生時代の経験として、我々から見ると会社に入っての仕事のやり方に非常に近い部分があります。その中で、本人もいろいろな所で叩かれて磨かれていますから、スタープレーヤーよりはそちらのほうがチャーミングに見えるというのは、現実だと思います。必ずしも、全部が全部そうだということではありません。正直に言うと、そういう人間が多いです。ゼミでいうと、ゼミ幹、クラブでいうと主務とか多いです。

と。

これはもちろん、ずっと上の方のクラスの大学を想定しているのでしょうけど、このあとずっと後の方で、森永卓郎さんが、大学で教えてもいる立場から、なかなか深い発言をされています。

○森永委員 直接の話ではないかもしれませんが、私の経験をお話すると、私は大学で7年前から正教員として教えるようになったのですが、すごく大きなショックを受けたのは、ゼミ生でものすごく勉強のできる学生がいて、成績もAばかりで、学内でベスト10に入るぐらいの子だったのですが、就職が全くできないのです。あちこち行って落ちてくるのです。

 その一方で、チャラチャラしていてあまり勉強していないのだけれども、要領のいい子が次々に内定を取ってくる事実を見て、これは何かと思って、それ以降ゼミのあり方をガラッと変えて、2年生から4年生の春学期まで半期5回、2年半脳みその筋肉トレーニングだけをやっているのです。学問をすべて捨てました。それこそKJ法から、発想のトレーニングから始まって、ディベートをやったりディスカッションをやったり、最近ではモノボケとか謎かけとか川柳とか、そういうものまでやって、どんなに難しいことを言われても1秒以内に100%対応できるという、脳みその瞬発力を養成するように変えたのです。数年前からこれが一通り一巡した学生が採用面接に行くと、面白いように通るのです。記念受験だと言った超が付く一流企業も、ポンポン内定を取ってきてしまうのです。私は良いことをしているとは思わなくて、必要悪としてやっているのですが、ただはっきりしていることは、少なくとも文系の大学生にとっては学問をきっちりやっても、少なくとも就職のときには全く役に立たないというのはたぶん間違いない事実で、逆にこれが効果があるというのは、ほかではほとんどやっていないのだろうと思うのです。これが総需要を拡大するかどうかという問題はあるのかもしれませんが、あまり遠回しなことをやるよりも、要領のいい学生を作ったほうがうまくいくし、もしかすると企業がほしがっている、三菱商事のコア人材みたいな人を除けば、9割の普通の人材にとって企業が求めているのは、要領のいい人材なのではないかという気がしています。

森永流「要領」術の極意「だけ」教えていればいいと・・・いうわけではもちろんないのでしょうけど。

(追記)

このエントリのタイトルは、「いやあ、これこそ今の企業が求める大学教育の職業レリバンスなんだよね」という若干の皮肉のつもりでつけたわけですが、それをストレートに言われました。

http://www5.big.or.jp/~seraph/zero/

森永卓郎先生の授業が要領の良さを鍛えるものなのかどうかは分かりませんが、企業が、コア人材以外の大多数で、要領の良い学生を求めているのは確かでしょう。法に触れない範囲で、要領良く受注を取ってこれるもの勝ちなので。人脈を活用して過去問を入手し楽々試験をクリア。サークルやバイトでリーダーシップを発揮した経験()を積み、恋愛を謳歌し、学生生活を楽しんでいる学生が求められているのは、それこそがまさに日本企業における業務遂行に直結する能力だからであって、皮肉でも何でもなく大学の「職業的レリバンス」なのでは。

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コメント

だとしたらますます大学って何?って事になりますよね。
地頭+大卒資格+折衝経験+バカ高い学費=内定ですか。

投稿: nick | 2012年6月25日 (月) 23時11分

果たして、企業が欲しいという人材を企業の人事は現状でちゃんと選べているのでしょうか?

会社にとっては地頭の良さや努力家であることよりは実は要領がよい事の方が役に立つ資質なのか。
あるいは、ちょっとした要領の良さにだまされてる底の浅い採用活動しかできてないのか。

気になるところです。

投稿: 齊藤明紀 | 2012年6月26日 (火) 12時22分

「経済産業省 新しい事業を構想・創造する人材を輩出する仕組みを考える研究会報告書 エグゼクティブ・サマリー」http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/frontier-jinzai/chosa/innovation22.pdf に興味深い発言がありました。問題を認識している企業もあるのでしょう。

7ページ 大久保委員
○ 最近二つの会社の人事部の人から同じこと言われた。それぞれの社長から、「新卒採用の一次面接で一番いい人材を落としていないか」と指摘されたとのことである。これは日本の新卒採用の実態を表している。つまり、面接官は、多様性を排除し、自分の範疇に収まる人材しか採用しないため、ある意味当たり前の現象である。

投稿: 500drachmas | 2012年6月26日 (火) 20時44分

そんなに鬼の首を取ったような話じゃない、要は大学の成績評価が信用できないという話でしょ。

同一大学だって文系なら経済学、理系なら微分積分という教科があっても複数の教官が違った日にちに持ったりする、つまり同一科目ですら成績のつき方の差が出てしまう(なので学生間に楽勝科目とか単位を出さない科目の情報が出回る)

つまり同じ大学で同じ卒業単位数で同じ成績でもそれはまったく定量的な評価でなく、それが日本国内中の大学で起こっているのに就職活動でそんなものが信用されるわけがない。
だからサークル活動、コミュニケーション力とか地頭で学歴、公的色のあるテストでTOEICなんかに帰着する。

新卒の就活を論じている論者てhamachan含め大卒以上だと思うけど、自身の体験を含めこのことを認識してるのかな?

投稿: 技術系派遣社員 | 2012年6月26日 (火) 22時45分

大学院の修士の学生で、ほとんど研究室には来ないで、来ても携帯電話を見つめてばかりというのが居ました。最低限ギリギリの日数研究室に来て、ほとんど(生物系)実験もしませんでした。おそらく全く勉強はしていないようです。しかしあっという間に修士号をもらい、博報堂に就職して行きました。こんな人が博報堂等でうまくやって行くのだなあとビックリしました。あのギリギリの線で最小努力で最大効果を出すのはまさに神業です。

投稿: 川頭信之 | 2012年7月 9日 (月) 10時09分

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