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2012年6月23日 (土)

人事院年次報告書に諸外国の公務労使関係の概要

人事院が先日公表した年次報告書に、第2部として公務員給与の決定過程 ~諸外国の実態と我が国の課題~が載っています。諸外国の公務労使関係の概要が分かりやすくまとめられています。

この分野、とかく思いこみばかりで語られがちな領域であるだけに、頭を冷やして冷静に議論する素材として、あらかじめ頭の向きが決まっている人以外の方に、一読をおすすめしておきます。

これは別に誰かを当てこすっているわけではありませんので念のため。

http://ssl.jinji.go.jp/hakusho/hakusho23/23_1-2.pdf

以下、各国の各節ごとの要約の部分をコピペ。

第1節 アメリカ

● 団結権は認められているが、連邦法規で定められる給与等は労使交渉の対象から除外されている。
● 争議行為は禁止されている。

(2)給与決定の仕組み及び基本原則
● 給与のうち、基本的な部分は、俸給と地域均衡給から成る。
● 給与改定について労使交渉は行われない。
● 俸給については改定率が法定されている。地域均衡給については大統領給与エージェントが大統領に勧告する。実際にはほとんどの場合、大統領が代替案を提出している。
● 過去数十年間、給与が引き下げられたことはない

2 連邦公務員の労使交渉の実態
● 勤務条件の内容はほとんど労使交渉の対象にならず、休暇の申請手続など手続的な事項が対象。予算・定員も対象外。
● 労使交渉は、各省の交渉単位ごとに行われる。投票により多数労働者の支持を得た労働組合が排他的な団体交渉権を得て交渉の席に着く。
● 給与等については労使交渉をしていない連邦政府でも、労使交渉や労働組合との関係の維持には相当の時間と労力をかけている。
● 労使交渉には高い専門性が必要であることから、各省では交渉担当者の人材育成に取り組んでいる。

参考 州政府における労使交渉の実態(ニューヨーク州の例)

● 給与、勤務時間など、主な勤務条件は全て交渉対象(年金を除く。)。予算、定員については交渉対象外。
● 全ての交渉単位について、担当の知事部局が労使交渉を行う。
● 使用者側にとって勤務条件の引下げを行うのは難しいが、レイオフの可能性を交渉材料にして給与凍結の合意を引き出したことがある。これまで給与の引下げ改定が行われたことはない。
● 合意に至った後、組合員の投票で承認が得られなければ再度交渉が必要。

第2節 イギリス

● 軍人及び警察官等を除いた国家公務員は、慣行として、団結権、協約締結権を含む団体交渉権及び争議権は認められている。刑務官については、個別法により争議権が否定されている。
● 国家公務員の給与決定過程は、上級公務員と一般職員とで異なっている。

(2)上級公務員の給与決定の仕組み及び基本原則
● 上級公務員については、労使交渉による給与決定は行われておらず、上級公務員給与審議会の勧告を経て決定している。
● 上級公務員給与審議会が上級公務員の給与について首相に勧告を行うに当たり、労働組合から意見や資料の提出を受けるほか、財務省は労働組合と意見交換を行う。
● 上級公務員の給与は、法律に定めはない。勧告を受けて、首相が決定。議会が関与することはない。
● 予算面においては、政府が人件費の枠を4か年の支出計画で決定している。
● 過去数十年間、給与の引下げが勧告されたことはない。

(3)一般職員の給与決定の仕組み及び基本原則
● 一般職員については、給与に関する権限が大幅に各省等に委譲され、各省等が独自にそれぞれの人件費予算に応じて給与制度を決定している。
● 一般職員の給与は、財務省の指示した方法に従って承認された給与歳出枠の範囲内で、各省等は、労働組合と等級ごとの俸給額の改定などの配分について交渉する。
● 合意した時には労働協約が締結され、その内容を各省等が通知・実施する。
● 労働組合と合意に至らない場合は、使用者側(各省等)が自らの案で決定し通知・実施する。
● 決定された事項は、同意に至らない労働組合の組合員及び非組合員にも同様に適用される。
● 一般職員の給与について、議会が関与することはない。
● 過去数十年間、給与が引き下げられたことはない。

2 一般職員の給与をめぐる労使交渉の実態
● 総人件費(予算)及び定員枠は交渉の対象ではない。
● 給与制度が各省等別に全国単位で決められているため、交渉も各省等別に中央で行われる。
● 給与交渉において、使用者側では部長~副部長クラスが、労働組合側では交渉担当役員を代表とする交渉担当者が交渉に当たる。大臣級が交渉に当たることはほとんどない。
● 各省等には複数の労働組合があるのが一般的である。交渉に当たっては、複数の労働組合が、同時に交渉の席に着く。
● 使用者側が、労働組合との合意なしに自ら給与改定を決定・実施する場合、労働組合側はストライキで対抗することもある。

第3節 ドイツ

● ドイツの公務員は、主として公権力の行使に携わる「官吏」と私法上の雇用関係にある「公務被用者」とに分けられる。
● 「官吏」は、団結権は保障されているものの、給与等は法定されるため協約締結権はなく、争議権も認められていない。
● 団体交渉を通じて賃金等を決定する「公務被用者」は、民間労働者と同様に、三権ともに保障されている。
● 職員代表制により、官吏・公務被用者共同で、法令及び賃金協約の定める勤務条件の官署における具体的な適用や、個別の人事処遇に関する使用者の意思決定過程に参画する。

(2)官吏の給与決定の仕組み及び基本原則
● 憲法の規定に基づき、忠誠義務を負う官吏の勤務条件は、官吏に対し扶養義務を負う使用者の責務として法令により一方的に定めるものとされており、官吏には協約締結権も争議権も認められていない。
● 連邦給与法改正に当たっては、労働組合がその法案作成段階で関与することが法定されている(連邦官吏法)。

(3)公務被用者の給与決定の仕組み及び基本原則
● 公務被用者は、団結権、協約締結権を含む団体交渉権、争議権を全て有しており、その賃金は、労使交渉を経て締結される労働協約により決定される。
● 連邦の公務被用者については、市町村の公務被用者と共同で、連邦内務大臣及び市町村代表(連邦財務大臣が同席)と労働組合との間で賃金交渉が行われる。

2 公務被用者の給与をめぐる労使交渉の実態
● 連邦公務被用者の賃金交渉は、市町村のそれと共同で、労働組合側代表:統一サービス産業労働組合委員長及びドイツ官吏同盟協約部門代表、使用者側代表:連邦内務大臣及び市町村使用者団体連合会議長が、当事者として出席して行われる。
● 労働協約は、給与のほか、勤務時間、休暇、雇用期間の設定・解雇等の勤務条件の枠組みについて定めているが、毎回の労使交渉の主たる対象事項は、手当を含む賃金の引上げ率である。
● 予算、定員は、労使交渉の対象ではない。
● 労働協約の効力は予算措置の有無に左右されないが、トップ会談の場を含め、財源に関する権限を持つ連邦財務大臣又は次官が労使交渉に同席することで、労働協約と予算との調整が図られている。
● 交渉不調の場合には、調停の手続に移行する。実際に調停手続に進む場合が多く、拘束力のない調停案を基に更なる交渉が重ねられることとなる。
● 少なくとも1990年代以降、賃金交渉の結果、連邦公務被用者の賃金水準が引き下げられたことはない。
● 近年、公務被用者の賃金交渉に際しては、大規模な警告ストライキが行われることが多くなっており、特に市町村公務被用者によるストライキのために、病院、ゴミ収集等の行
政サービスに関して、国民生活に直接的な影響が及んでいる。

3 職員代表制
● 職員代表制は、各官署における官吏・公務被用者共同の仕組み。
● 勤務条件の枠組みの中で各官署における具体的な勤務条件や人事処遇に関する事項を決定する際に勤務者の利益を代表する仕組みとして職員代表制が法定されている。
● 職員代表制における協議会の参画態様として、協議会の同意を必要とする「共同決定」と協議会の理解を求める手続を経るべき「協力」とが定められている。

第4節 フランス

● 団結権及び争議権が認められている。実際の争議は、抵抗権や表現の自由に関わる権利として、労使交渉と無関係に行われることも多い。
● 給与改定など一定の事項に係る労使交渉は認められているが、当局側に応諾義務はなく、協約締結権は認められていない。
● 労使交渉とは別に、個別の昇進や手当配分等に関する管理当局との協議に職員が参加する仕組みとして、職場協議会制度が設けられている。

(2)給与決定の仕組み及び基本原則
● 公務員給与は政令等により定められている。議会の関与はない。
● 予算面では、人件費は予算に計上され、給与に係る労使交渉には予算局の幹部が同席し、予算の枠内で労使交渉が行われている。

2 給与をめぐる労使交渉の実態
● 政府が給与改定を決定し、政令等の改正により実施する。
● 改定に先立つ労使交渉は認められているが、交渉で取り上げる事項や開始するか否かを決定する権限は当局が有する。数年にわたり給与改定の交渉自体が開始されず、政府の責任において改定決定が行われたこともある。
● 合意に達した場合は政府が作成した議定書に労働組合が署名する。ここ10年以上、給与水準について労使が合意に至った例はない。
● 労使交渉への参加及び合意(議定書署名)においては、2010年の法律改正により、各労働組合が職場を実質的にどれだけ代表しているかが問われる形に変更され、職場協議会とのつながりが制度上も一層強められた。
● 非組合員も含んだ職場協議会における投票で、多数の職員から支持を得た複数の労働組合が代表性を獲得し、同時に交渉の席に着く。
● 過去数十年間、給与の引下げは行われていない。

4 職場協議会制度
● 職場協議会制度を通じ、労働組合は、昇進や手当配分にまで関与する。
● 実際の運用において、「労使交渉」と「労使協議」の線引きは曖昧である。

で、以上をさらにこう要約しています。

● 4か国では、国家公務員の給与決定過程を国家公務員全体で一律に扱う国(アメリカ及びフランス)と国家公務員を二つに区分して扱う国(イギリス及びドイツ)がある。したがって、アメリカ、フランス、イギリスの上級公務員、イギリスの一般職員、ドイツの官吏及びドイツの公務被用者の6ケースに類型化できる。
● これらの国家公務員を給与決定過程の中で労使交渉が行われているか否かによって整理すると、①労使交渉によらず国が給与を決定しているアメリカ、イギリスの上級公務員及びドイツの官吏と、②給与決定に当たり争議権を前提に労使交渉を行っているイギリスの一般職員、ドイツの公務被用者及びフランスとに整理できる。
● ①の中でアメリカ及びドイツの官吏については、給与決定に関する事項を法定しており、協約締結権及び争議権が否定されている。他方、②の3ケースでは全てに争議権が付与されている。
● ドイツの公務被用者については、労使の合意がなければ給与改定を行うことできず、かつ、労働協約によりその水準も決定している。労使が交渉で合意することにより、労働協約は議会の同意を要することなく効力を持つ。
● イギリスの一般職員については、給与水準について政府が責任を持って決めるため労使交渉が行われず、その配分についても労使が交渉で合意しない場合には使用者側が自らの案で決定し、実施する。なお、合意した場合に締結する労働協約に法的拘束力はないのが一般的である。
● フランスについては、協約締結権が認められていない。労使が交渉で合意しない場合には使用者側が自らの案で決定し、実施する(合意した場合には法的拘束力のない議定書を結ぶが、合意に至ることはまれである。)。
● 各国ごとに労使交渉を行う勤務条件の内容、協約締結の範囲等が異なる。なお、4か国とも予算や定員は労使交渉の対象としていない。
● アメリカ及びフランスでは、労使交渉の当事者となる労働組合を職員の投票により決定している。
● 上記②の3ケースでは、複数の労働組合と交渉を行う際には、同一の場で行っている。
● ドイツ(官吏、公務被用者)及びフランスにおいては、使用者側と職員側が職場ごとに人事施策等について話し合う協議会が設けられ、労使交渉以外の方法によっても職員の関与が認められている。
● 4か国において過去数十年間、国家公務員の給与水準が引き下げられた例はない(注)。

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