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2012年6月25日 (月)

労働審判の解決金は低すぎるのか?

『労基旬報』6月25日号に掲載した「労働審判の解決金は低すぎるのか?」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo120625.html

去る5月20日に関西学院大学において、日本労働法学会第123回大会が開かれた。さまざまな報告が行われたが、その中で筆者にも関わりがあったのがミニシンポジウムの一つ「労働審判制度の実態と課題」であった。これは、東京大学社会科学研究所の佐藤岩夫、水町勇一郎、高橋陽子らによる研究成果の報告であり、基本報告書自体はすでに昨年10月に公表されている。

当日の報告においては、雇用終了事案に関して、労働審判における解決金額や問題発生から解決までの期間について、裁判上の和解、労働局におけるあっせんと比較して分析がされた。裁判上の和解では解決金額は約300万円だが解決までの期間は15.6か月、労働審判では解決金額が約100万円で解決までの期間は6.4か月、労働局あっせんでは解決金額が17.5万円で、解決までの期間は2.4か月であった。このあっせんについてのデータは、筆者らによる労働政策研究・研修機構の研究によるものである。

さてこの報告に対して、労使各側の弁護士(宮里邦雄、中山慈夫)と研究者(野田進)からコメントがされたが、その中で宮里弁護士が労働審判の解決金の水準に対して低すぎると述べていたことが印象的であった。これは、労働側弁護士として裁判において解雇等の事案を扱っている立場としては当然の感想であろう。日本の判例法理では解雇について金銭解決は認められず、解雇が無効で雇用関係が継続していることを前提としてその間の未払賃金を支払わなくてはならないからである。場合によっては数年分に達するバックペイからすれば、労働審判の100万円というのが低すぎるように見えるのはよく理解できる。

しかし、世の中には膨大な費用と機会費用をかけて裁判闘争を敢行できる労働者ばかりいるわけではない。原則的に弁護士を要する労働審判すらコスト的に困難な労働者にとっては、労働局あっせんの10万円台が手の届く水準であって、労働審判の100万円は仰ぎ見るようなレベルであろう。そして、あっせん事案の分析を行ってきた立場からすると、そのような低水準の解決金すら確実なものではなく(合意に達するのは事案の3割)、むしろ使用者側の不参加率が4割に上る現状では、ゼロ円となる確率の方が高いということも強調しておきたい。

当欄でも何回か労働局あっせん制度について述べてきたが、裁判は言わずもがな、労働審判と比べても著しく低い解決金水準ではあるが、それなるがゆえに低コストで迅速な解決が可能となっているという面を意識しつつ、それが無駄に終わらないような仕組みを考えていくことが必要なのであろう。いろいろなことを考えさせられた学会であった。

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