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2012年6月 9日 (土)

ワークフェアなき入口規制が破綻しただけなんだが・・・

一知半解を絵に描いたような・・・という言葉がふさわしい記事が、J-CASTに載っています。ていうか、鈴木亘氏の議論をそのまま(制度の中身を理解しないままに)書いているだけなんですが。

http://www.j-cast.com/2012/06/08135063.html?p=all(生活保護急増の背景に 厚生労働省の二度にわたる「決定通達」?)

生活保護受給者が急増している背景の一つに、厚生労働省が2009年に2度にわたって出した「通達」があるのでは、との見方が強まっている。

生活保護の急増のきっかけは、麻生内閣のときの09年3月、厚生労働省が働くことが可能な若い失業者にも、生活保護費を支給するよう都道府県に求める通知を出したことが引き金となったとされる。厚労省は「失業による救済であり、生活に困窮して生活保護を必要とする人が受けられないことのないよう、徹底しただけ。適用要件などを緩和したわけではない」と説明している。

   さらに、民主党に政権交代した後の鳩山由紀夫内閣のときの09年12月に、厚労省は「速やかな生活保護の決定」を改めて通知した。「経済、社会情勢が引き続き安定せず、政府としても緊急雇用対策を進めていたなかで、低所得者対策として再度通知した」(厚労省)と話す。このときも「適用要件の緩和ではない」と、生活保護が受けやすくなったわけではないとしている。

   もちろん、経済情勢の悪化は影響しているが、スピード優先もあって、生活保護の増加はこれ以降、歯止めがかからなくなっていった。

そもそも、生活保護法は就労可能な人だから入口で追い出してよいとは書いていません。それは世界中共通で、だからこそそれが福祉漬けにならないよう、ワークフェアやアクティベーション対策が最大の課題として採られてきているわけです。

ところが、日本では、政治家とか弁護士とかいうセンセイが一緒に付いてきたら、制度の趣旨からして追い出せないので、生活保護に入れてましたが、そうでなければ入口で入れないようにするというやり方で、ずっとやってきていたわけです。

鈴木亘氏やこのJ-CASTの記事筆者は、その時期の暗黙の運用を正しいものであって、それを通達で変えたからケシカラン、というが如きことを言っているわけですが、いうまでもなく法の趣旨に反する運用は、出るところに出たら負けるわけで、だからセンセイが付いてきたら出していたわけで、それが、例の派遣村騒ぎで働ける現役世代であっても受給できるんだということがあからさまに報道されてしまったわけで、そうなったら、法本来の趣旨に従って適正にやってね、というしかないわけです。

まさか、出るところに出たら負けるに決まっている扱いを、堂々とやれなどと、通達で書けるわけもないわけで。

しかしながら、これが引き起こしたのは、いったん入れたらなかなか出すことができない、というか生活保護受給者を就労につなげて受給者から出すためのテクニックを半世紀以上にも渉ってまったく蓄えてこなかった福祉行政が、あれよあれよというまに現役世代の受給者がどんどん増えていくという事態であったわけです。

そこに問題があるのは確かだし、だからこそ、地方自治体でも国レベルでも「福祉から就労へ」をどうやって道をつけるかで頭を悩ましているわけですが、そういう議論にとって一番有害なのは、上の記事のような一知半解の議論なんですね。

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