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2012年5月23日 (水)

だから、日本の労働組合はギルドじゃないので・・・

finalventさんが極東ブログで、

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2012/05/post-145a.html(職業別労働組合が奨学生を支援するといいんじゃないの)

以前、米国の職業別組合みたいなのものに所属していて、それなりに面白い体験でもあった。・・・日本でも、いろいろ就職が問われていて、いろいろな模索をする時代になったので、そういう職業別の労働組合が主体になって、学生にその分野の仕事を伝えようとしたり、奨学金を出すようにしたらいいんじゃないか。

日本だと、よくわからないのだが、労組というかユニオンというのは、職業別というより、業界とかあるいは大手一社の結束という印象があるけど、もっと自分たちのやっているプロフェッションを自覚して、その仕事に就いてくれるように学生にアピールするとよいのではないか。すでにそういう試みがあるのか、知らないので、とんちんかんなことを書いているのかもしれないが。

いや、だから、そういうのはほとんどないのが日本なわけで・・・。

そこのところが、かつて日本の労働組合をギルドだと罵った池田信夫氏に対して、いやギルドだったらよかったんだけど、そうじゃないから難しいんだよ、と軽く批判したところ、膨大なイナゴさんともども逆上した挙げ句の誹謗中傷を受けたという昔の思い出につながる話なわけですが。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_a4ee.html(半分だけ正しい知識でものを言うと・・・)

池田信夫氏がブログで「労働組合というギルド」という小文を書いているが、

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/9edbf325d17cc62254dcf71ecc6395f1

典型的な半可通、というかなまじ半分だけ正しい知識でものを云うとどういうへんちくりんな結論になるかという実例。

いや、専門家にはいろいろと説があっていちがいに断定はできないものの、労働組合の源流が中世のギルドであるという認識はおおむね正しい。ただし、それはいかなる意味でも

つまり労組は「正社員」による独占を守る組織なのだ。

ではありえない。逆であって、「組合員による独占を守る組織」なのである。

組合へのメンバーシップがキモなのであって、企業へのメンバーシップとはまるで方向が正反対。

これに対して日本の企業別組合というのは、企業へのメンバーシップ(これを「正社員」という商法上奇妙な言葉で称する)に立脚したものであって、まさに「正社員による独占を守る組織」なのである。この性格は先日のエントリーでも書いたように、戦間期から生じていたわけだが。

池田氏の見解そのものも

若年層に非正規労働者が増えていること・・・を解決するには、労働組合の既得権を解体し、正社員を解雇自由にするしかない。

解雇自由にする代わり、職業紹介業も自由化して中途採用の道を広げれば、みんな喜んで会社をやめるだろう。

と、まことに乱暴だが、賛成反対以前に、「労働組合の既得権」を標題に掲げるギルドとしての既得権とは全く正反対の企業メンバーとしての既得権という意味で使っている論理矛盾への意識がまるでないという点で既にしてアウト。

ギルド的労働組合は解雇規制などではなく、入職規制がキモであって、その点において「職業紹介業の自由化」と対立する。

とにかくこういうなまじ半分だけよく分かったような議論が一番始末に負えない。

いや「ギルド」などと知ったかぶりをせず、初めから現代の企業別組合の話だけしているんですといえば、賛成反対は別としてこういう苦情を言う必要はないのだが。

(追記)

ギルド的組合と正社員組合は違うんだよと云っているのにそれが判らないひとだな。企業別組合以外の組合を想像したこともないのだろうが。

これも2007年9月というと、もう5年近くも前のことになりますね。

finalventさんのブログからおもわず回想にふけってしまいましたが、finalventさんはこういうことも言われています。

もしかすると絵空事のような響きを持つのかもしれないけど、学生さんたちが、なんのために勉強をするかというとき、もちろん、自分の教養を高めるためというのもあるけど、職業技能の基礎を得るというのもあるわけなので、そういう志向に対して、社会の側で、現役のプロフェッショナルから、その集団の意志として、支援する仕組みがもっとあるとよいように思う。

まあ、労働組合が主体に、というのはかなりの程度絵空事ではありますが、学生の職業技能向上に現役のプロフェッショナルが支援する仕組みというのは、もう少しまじめに考えてみてもいいかもしれませんね。

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コメント

個人加盟の土建の労働組合は、建築大学作って後継者育成をやってますねぇ。
あそこは、基本、職能別組合。

全建総連は、日本で数少ない本当の職業別労働組合です・・・

といいたいところですが、いやそれに間違いはないのですが、実はかなりの程度、建設業の一人親方、つまり自営業者の「組合」でもあります。両者にまたがっている存在というのが正しいのでしょう。

そして、日本の中でこれまた数少ない、昔から職業訓練に大きな関心を持ち、自ら実行してきた組合でもあります。

拙著『労働法政策』の中に、ごく短くですが、こういう記述があります。1958年の職業訓練法の制定時のことですが、

・・・なお、自ら技能者養成所を持つ数少ない労働組合であった土建総連の運動により衆議院で修正が行われ、市町村、公益法人及び労働組合その他の非営利法人が認可を受けて行う職業訓練も公共職業訓練と見なすこととされた。(p175)


わたくしがギルドを学生に説明するときは、医者や看護師、弁護士を例に出しています。大学は変なもので、そうなってゆくベクトル(博士号)と、反対のベクトル(別の業界からの受け入れ)がいま同時に発生しておりますが。

まさにギルドで、親方と職人と徒弟が一緒に入っているので、特に医師なんかの場合、労働者としての権利を主張することが、えらい親方衆に睨まれてなかなか難しいという傾向があるような・・・。

そこで、「コルポラシオンからコンパニョナージュですよ」というのはいささか軽はずみでしょうけど。

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