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2012年5月 4日 (金)

身分論的公務員法制の憲法化

自由民主党の日本国憲法改正草案があちこちで話題になっているようですが、もっぱらイデオロギー的側面のみを有するような話題は(ブログの安全保障上)避けておいて、本ブログのテーマに沿って労働基本権に関わる28条について見ておきましょう。

現在の条文を1項として、第2項として、

2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部または一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するために、必要な措置が講じられなければならない。

という規定を新設することにしています。

そのそも労働基本権は!という議論を別にして言えば、これは現行公務員法の考え方を憲法上に書いたものに過ぎないとも言えます。労働基本権の制限とその代償措置としての人事院勧告制度はまさにこの考え方に立っているので、その仕組みを憲法上に明記することによって人事院勧告制度を断固守るぞ!と言っているわけです。

それをどう考えるか、言い換えれば現在国会に提出されている国家公務員法改正案をどう考えるか、については、もちろんさまざまな考え方があるところでしょうが、ここでは一般の議論ではあまり注目されていない、それゆえ自民党の憲法改正案でも考慮されていないある側面について注意を喚起しておきたいと思います。

それは、現行法もそうですし、この自民党の改正案もそうですが、問題を「公務を行う者」という機能論的にではなく、「公務員」という身分論的に捉え、公務員という身分を有する者についてのみ、労働基本権を制限する代わりに「勤労条件を改善するため」の「必要な措置」を補償するという仕組みになっている点です。

その両者にどういう違いがあるのか?と思われるかも知れませんが、ありますよ。官公署に派遣や請負で働いている労働者は、「公務」を行っていますが「公務員」ではありません。

この問題が裁判所に持ち出されたのは、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-d973.html(派遣先たる国の団交応諾義務)

公務員法によって労働組合法の適用が排除されているのは公務員という身分にある労働者なので、公務員じゃない派遣労働者が労働組合法の適用を受ける=部分的に派遣先たる国・地方自治体に団交を要求できるというのも、理論的に当然です。

ですが、わたくしは既に以前からこの問題について注意を喚起してきました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/chihoukoumuin.html(地方公務員と労働法)

これよりもさらに深刻であり得る問題は、地方公共団体に派遣された派遣労働者の労働基本権である。派遣労働者は地方公務員ではないので団体交渉権も争議権も有している。法律上派遣労働者の団交応諾義務について規定した条文は存在しないが、最高裁の判例*11によれば、「雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて右事業主は同条の「使用者」に当たる」。従って、労働者派遣法に基づき派遣先に責任が分配されている事項については、地方公共団体は派遣労働者の加入する労働組合からの団体交渉に応じなければならず、拒否すれば不当労働行為になりうる。また、派遣労働者を大量に使用している職場で彼らが争議行為を行う可能性も考えておく必要がある。

上記神戸刑務所事件では、何とも皮肉なことに、国家公務員たる刑務所職員は団結権すらもなく、全ての労働基本権を否定されているのに、そこに派遣されている身分論的には民間労働者たる刑務所業務従事者はスト権も含め全ての労働基本権が認められているのです。

こういう事態になるのは、そもそも現行公務員法制が機能論的ではなく身分論的に制度を構成してきたからなのですが、そういう問題意識は、この憲法改正案を見る限り、少なくとも自由民主党の皆さまにはないように見受けられます。

この改正案では、そういう身分論的公務員法制度が硬性憲法規定として固定化してしまうのではないでしょうか。

しかし、本当に考えるべきは、一定の労働条件保証と引き替えに労働基本権を制約すべきはいかなる「公務」なのか、という機能論的発想ではないかと思われます。

(さらに参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-58f5.html(公務員の任用は今でも労働契約である)

・・・要するに、終戦直後にできた労働分野の基本立法は、公法私法峻別論などという変な考え方には全然立っていなくて、まことに素直に公務員関係はみんな労働契約だと考えていたのです。

法政策としては、職務の特殊性から労働法の中のある部分を適用除外するというのは、まったく当然なことです。例えば本来の官公署にスト権を与えるべきではないでしょう。そのことと、その法律関係が労働契約であるかどうかというのはまったく別次元のことです。

日本国の立法府は公務員は労働契約だという法律を作って以来、一度たりともそれを否定するような法改正をしていないにもかかわらず、行政法学説やら裁判所やらが勝手に法律をねじ曲げて、本来日本の法体系が立脚していない公法私法二元論で説明してきてしまい、それを真に受けた労働行政当局も、もともと大先輩が作った法律は全然そんなことはいっていないのに、新しい法律を作る際には勝手に公務員は適用除外にしてしまってきたというだけなのですね。

こういうことを言うとびっくりされてしまうのですが、びっくりする方がおかしいのです。素直に労働基準法を読めば。

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コメント

いつも楽しく拝見しております。
職場では書き込みが出来ないので、かなりの亀コメントなのですが、私が留学(先生のTUPE本を愛読しておりました。)していたときは、少なくとも英国の刑務所の労働基本権はこんな感じでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Although the legislative provisions remained for public sector staff in Northern Ireland and private sector staff across the whole of the country.
(UK内の民間部門の職員については、労働基本権を制約する規定が残された。)

http://www.poauk.org.uk/index.php?poa-history-in-prisons
(POA(刑務官協会)のサイトから抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今の状況はウオッチしておりませんので分かりません。が、公務における労働基本権って難しい問題なんだなと思います。(当時は民間刑務所経営企業のロビー活動があったのかなあ??と勝手に推測していました。。)

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