労働組合の必要のないワタミの「労使一体」
昨日の東京新聞から、「過労社会 防げなかった死」というシリーズの一回目で、基本的にはそっちの問題意識が中心なのですが、この部分は、やはり特筆する値打ちがあるでしょう。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012052602000099.html(過労社会 防げなかった死<上> 急成長ワタミ「労使一体」)
ワタミフードサービス(東京)に入社して二カ月で自殺した森美菜さん=当時(26)=の同僚だった元男性社員(26)は、入社時の本社研修を忘れない。
同期の一人が会場で「労働組合はあるんですか」と尋ねると、人材開発部の社員が即座に答えた。「うちにそんなものはないし、必要ありません。問題が起これば迷わず相談してください」。会場がざわめいた。
四年たった今も、ワタミグループに労働組合はない。「創業者の渡辺美樹氏は社員を家族と言ってはばからない。その思想が背景にある」と元幹部は説明する。だが、“娘”だった森さんの葬儀に渡辺氏の姿はなかった。
ワタミの法令順守担当の塚田武グループ長は「わが社は労使対等というより労使一体。問題があれば内部通報制度もあり、従業員の意見を集約する機能を十分果たしている」と話す。
労働組合の存在を認めない「労使一体」というのは、つまり「使」と一体であるような「労」しか存在を許されないということでもあるわけで。
だがワタミフードサービスでは今も、従業員の意思が反映されないやり方で三六協定が結ばれ、労働基準法に抵触する状態が続く。従業員は、経営側の言うがままの労働条件を受け入れるしかない。
そもそも「労使一体」なのだから、「使」と異なる意思を「労」が持つはずがない。だから「使」が勝手に決めても、それは「一体」の「労」の意思であるはずである、と。
もとより、前々世紀のドイツの「ヘル・イム・ハウゼ」はじめ、そういう思想は歴史上いっぱいあるわけで、別に不思議ではありません。ただ、そういう思想の経営者が、リベサヨな人々からつい最近まで(あるいは未だに)持て囃されてきた/いるという点が、見る人が見ればいささか不思議な感想を持つかも知れません。
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うは、こりゃすごいや。 同期の一人が会場で「労働組合はあるんですか」と尋ねると、人材開発部の社員が即座に答えた。「うちにそんなものはないし、必要ありません。問題が起これば迷わず相談してください」。会場がざわめいた。 四年たった今も、ワタミグループに労働組... [続きを読む]
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運動的には3.8国際女性デー、3.10東京大空襲、3.11と連続している中で、今日3月9日は「感謝の日」だそうだ。単なる「サンキュー」の語呂合わせで面白くもなんともないが、昨日、実に面白い記事に遭遇(?)した。この種のネタは新聞レベルではなく、ネットの世界に限られるので、読んだ方も多いと思うが、ブラック企業経営者という実態を明確に示している。詳細は以下の記事を参照されたい。いや「感謝」という感覚と対極に渡辺美貴という存在はある。... [続きを読む]
>「わが社は労使対等というより労使一体。問題があれば内部通報制度もあり、従業員の意見を集約する機能を十分果たしている」
これって、ちょっと言葉を置き換えれば、
「わが国家は政府人民対等というより政府人民一体。問題があれば内部通報制度もあり、人民の意見を集約する機能を十分果たしている」
となって、社会主義国家の恐怖政治が行われているさなかの発言みたいになるよね~♪
投稿: 原口 | 2012年5月27日 (日) 22時53分
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/491462613671239680">
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/491462613671239680
東洋経済7月26日号にワタミの桑原社長のインタビュー。「ワタミの社員は家族であり、同志だ。そこに労使関係は存在しないので、労働組合が必要だとは考えていない」と。ブラック企業体質は相変わらず。
投稿: ワタミ | 2014年7月18日 (金) 16時13分