大内伸哉さんの『日本の雇用終了』評
ということで、去る17日に海老原さんのニッチモのHRmicsレビューで大内伸哉さんとご一緒したわけですが、その際に(稀覯本の(笑))『日本の雇用終了』をお渡ししたところ、早速今日、「アモーレと労働法」でたいへん丁寧に突っ込んだ書評をいただきました。
http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-dad3.html(日本の雇用終了)
労働局のあっせん事例を詳しく紹介した資料的な部分が大半を占めますが,それはそれで面白いのですが,さらに重要なのは濱口さんの分析です。要するに,あっせん事例からわかることは,職場における生ける法(「フォーク・レイバー・ロー」と呼ばれています)が,裁判規範とは別に存在しているということです。「フォーク・レイバー・ロー」のなかには,裁判となると否定されるものの,現実には妥当していて,あっせんの場では通用するようなルールがあるのです。そして,こうした,「フォーク・レイバー・ロー」の一つとして濱口さんが指摘するのは,「態度」が悪ければ雇用終了となるというルールです。
これは、その座談会でも議論になりまして、
私が定年制の機能として,雇用終了機能と雇用保障機能とがあり,近年では,この雇用終了機能が問題視されるようになったのだが,定年延長や継続雇用の強制をする以上は,もう一つの雇用保障機能を弱める必要になり,能力不足を理由とする解雇のような考え方を取り入れる必要があるのではないか,という趣旨のことを述べたところ,濱口さんは,そもそも雇用保障機能といったって,そんなものは大企業でしかなく,中小企業の労働者にはほとんどないのではないか,裁判になったら勝てるとしても,莫大な時間や金をかけて労働組合の後ろ盾もなく戦う人はいないだろう,という点,また企業はそもそも能力不足を理由とする解雇なんてしていなくて,態度の悪さによる解雇のほうが多い,という指摘をされ,労働法学者は雇用社会の一部しか見ていないのだという批判をしてくださいました。
聴衆は,私たちが喧嘩を始めたのではないかと思ったようですが,そんなことはないのであり,私は雇用社会の実態がそんなものであろうということは,十分に承知しているのです。・・・
17日のパネルは、聴衆の皆さんにとっても大変面白いものだったのではないかと思います。
実は、17日の相方に大内さんを、というのは、私が海老原さんにお願いしたのです。それは、リアルな現実感覚と、筋の通った理論性を両方兼ね備えている方というのはあんまりいないからなんですね。一方だけだと話がアンバランスになってしまいます。
そのバランスの取り方が、しかしながら、大内さんとわたくしではかなり対照的な方向性を示しているところがまた面白いところで、それが同じ方向では面白い話にならないんですね。
来週の水町さんもそうで、やはりリアルな現実感覚と筋の通った理論性のある方です。そして(一部共通するところはあるんですが)やはりかなり方向感覚が違う。
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