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2012年5月31日 (木)

国・地方公共団体で働く派遣・請負労働者の労働基本権

『労基旬報』5月25日号に掲載された「国・地方公共団体で働く派遣・請負労働者の労働基本権」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo120525.html

刑務所で働く人に労働基本権はあるか?素直に考えれば、答はノーであろう。非現業の国家公務員や地方公務員には(団体交渉権や争議権といった)労働基本権が制約されているというだけではなく、警察、消防、刑務所の職員には団結権自体も否定されており、刑務所で働く人には労働基本権はまったくないというのが唯一の答のはずである。

しかしながら、集団的労使関係法制におけるこれら例外は、あくまでもヒトに着目している。国家公務員法108条の2第5項は「警察職員及び海上保安庁または刑事施設において勤務する職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない」と規定しているが、その名宛人は「職員」であって、「職員」ではない人にはこの禁止は及ばない。団体交渉権や争議権の禁止も同様である。

一方、労働者派遣や、請負と称していながらその実態が労働者派遣であるような状況下においては使用者機能が派遣元と派遣先に分かれ、それゆえ集団的労使関係法上の使用者性も(原則的には派遣元にあるが)一部は派遣先に配分される。この点は、有名な朝日放送事件最高裁判決(平成7.2.28民集49-2-559)において、「雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の『使用者』に当たるものと解するのが相当である」と明言されている。

この二つの定理を組み合わせると、論理必然的に、刑務所で働く派遣・請負労働者には、団結権も団体交渉権も争議権もあるという結論が導き出されざるを得ない。他の結論の可能性は全くない。

これが現実のものとなったのは、神戸刑務所事件(神戸地判平成24.1.18労旬1766-65)である。刑務所と受託会社との業務委託契約で管理栄養士として刑務所で働いていた原告について、団体交渉拒否が不当労働行為に該当するとして、国家賠償法上の損害賠償を認めた。これに対して国は控訴していない。

刑務所職員には団結権すらないのに、同じ刑務所で働く派遣・請負労働者には団体交渉権や争議権まであるというのは、一見奇妙に見えるかも知れないが、現行法を素直に読む限り他の解釈はあり得ない。問題は、国や地方公共団体の当局がどこまでこの理路を認識しているかであろう。おそらく全く欠落していると思われる。

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コメント

hamachanさま

エントリに関連して、自治体の偽装請負の際、労働局による是正指導がはたして可能かどうかということを考えたことがあります。お時間があれば下記ご覧ください。間違っているかも知れませんが。
http://blog.goo.ne.jp/gooendou_1958/e/34458cecc261ec31cf46e3c5fb02fc64
「自治体による労働者派遣法違反は是正指導が可能か?・・・(地方自治法234条の射程)」

自治体の偽装請負の際、労働局による是正指導がはたして可能かどうか

上記神戸刑務所事件の判決によれば、兵庫労働局は神戸刑務所長に対して是正指導をしていますね。

コメントありがとうございます。

ご案内した私の知る事例でも、確かに是正指導は行われました(自治体ゆえ情報公開を利用し労働局作成の是正指導書も手に入れました)。内容は、委託先からの指揮命令、従事者数の受発注など典型的な偽装請負で、しかも派遣期間に抵触しているのですが、是正指導書を見る限り、雇用の申し込みをすべきとする趣旨の記載はありませんでした。
つまり、ここは総務省回答の通り・・「雇用と任用は違うのだから、公務員の任用は能力の実証が必要で且つ門戸を開いた公開の試験等によって行われるもの」・・と解しているからではないかと思える節があります。
だとすると、自治体による派遣労働者の活用は、派遣期間の上限というルールに違反した際、少なくとも安全装置の一部(派遣先からの直接雇用の申し込み義務)のない労働者派遣であって、派遣労働者・偽装請負労働者は、最初から自治体にこのハシゴを外されていると言うことになるような気がします。

先に成立した労働者派遣法の改正においては、この点について、まさにその「雇用と任用は違うのだから」論に基づいて、

第四十条の七 労働者派遣の役務の提供を受ける者が国又は地方公共団体の機関である場合であつて、前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた場合(同項ただし書に規定する場合を除く。)においては、当該行為が終了した日から一年を経過する日までの間に、当該労働者派遣に係る派遣労働者が、当該国又は地方公共団体の機関において当該労働者派遣に係る業務と同一の業務に従事することを求めるときは、当該国又は地方公共団体の機関は、同項の規定の趣旨を踏まえ、当該派遣労働者の雇用の安定を図る観点から、国家公務員法・・・又は地方公務員法・・・その他関係法令の規定に基づく採用その他の適切な措置を講じなければならない。
2 前項に規定する求めを行つた派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣に係る国又は地方公共団体の機関から求めがあつた場合においては、当該国又は地方公共団体の機関に対し、速やかに、当該国又は地方公共団体の機関が前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた時点における当該派遣労働者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。

という規定が新設されています。

再コメント深謝いたします(実は、当方のこの疑問、専門家の方には相手にされなかったもので・・)。

なるほど“今後は、労働者派遣法に縛られますよ”ということでしょう。

そうすると・・
これまで(少なくとも従来の国の考え方だと)自治体・国による偽装請負労働者の活用では、当該派遣労働者は、最初から自治体にこのハシゴを外されていた・・(あ!犯人しか知り得ない事実)ことを自白しちゃっている法改正ということになる、とな!。
失礼しました。

法制局的に解説しますと、今までの派遣法では、

第四十条の四  派遣先は、第三十五条の二第二項の規定による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第四十条の二第一項の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第三十五条の二第二項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であつて当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならない。

という申込義務だったので、まあ申し込まなければ何も起こらなかったわけですが、今次改正により、

第四十条の六 労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。
一 第四条第三項の規定に違反して派遣労働者を同条第一項各号のいずれかに該当する業務に従事させること。
二 第二十四条の二の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
三 第四十条の二第一項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
四 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。
2  前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。

と、ほっておくと自動的に労働契約を申し込んだことになってしまい、そのまま「承諾」されて労働契約が成立してしまうことになるので、(おそらく公務員制度官庁が慌てて)カッコ書きで適用除外した上で、上述のような特例規定を盛り込んだものと思われます。

なるほど、公務員事業場に“ハケン”というスーパーエコノミーシートを増設しておきながら、やっぱり民間事業上と違い、安全装置はハシゴでなく、わらで編んだ縄みたいなのを垂らして「これで我慢せよ!」と。
さらに、労働行政による監視体制も、警ら型でなく火災報知器型(自ら押さない限り助けに来てくれない)といったところでしょうか。

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