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2012年5月28日 (月)

三度目のバックラッシュにしてはいけない@上西充子

本日夕刻、雇用戦略会議の若者雇用ワーキンググループの最終回ということで、その資料もアップされていますが、

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koyoutaiwa/wakamono/dai5/gijisidai.html

委員の上西充子さんが原案に対する批判的意見をいかに述べたかを詳細にツイートしておられますので、再録。ある意味で、政策決定プロセスをその当事者がリアルタイムで解説している実例です。

http://twitter.com/#!/mu0283

雇用戦略対話WG(若者雇用)第5回(最終回)、今日は若者雇用戦略(原案)の紹介、後藤和智氏の報告、原案の検討。私にとって一番の焦点は、若者雇用問題が「若者をどうにかしよう」問題としてだけ捉えられず、働かせ方の問題があることが適切に盛り込まれるか、だった。

そのことは第1回から指摘してきたことであり、第4回の私の提出資料にも盛り込んだ。しかし原案(本日の資料1)には盛り込まれておらず、すっぽり抜け落ちていた。

原案の基本方針には、【就職できた場合も非正規雇用の割合が大幅に増え、正規雇用の場合も長時間労働等によって早期離職する場合も少なくない等、適切なキャリアを積み、自らの将来を展望することが難しくなっている】という指摘がある。

かなりの割合の若者が安定的な移行ができていない、という当初からのWGの問題意識の背景としては概ね適切な現状理解だろう(しかし「就職できた場合も非正規雇用」って変だな、契約社員のことだろうか)。

問題はその次。【このような厳しい環境の中にあって、若者が我が国の将来の中間層に育っていくためには、・・・自ら職業人生を切り拓いていくことができる力・・・を持った骨太な若者に育って行けるよう、・・社会全体で支援していくことが最も本質的かつ重要な政策である。】

非正規雇用や長時間労働の問題を指摘しながら、その「厳しい環境」をどう改善していくか、という発想ではなく、その「厳しい環境」に耐えていける「骨太な若者」を育てることが「最も本質的かつ重要な政策」だ、と。事前送付資料を見て、頭を抱えた。

そのあとの文章を見ても、労働法規違反が社会問題化している現状をどう改善していくか、サービス残業を伴う長時間労働をどう是正していくか、といった言及は全くなし。

かろうじて、【若者が働き続けられる職場環境を実現し、在職者の早期離職を防止するため、法違反やトラブルに対応する労働局の総合労働相談コーナーの体制を充実すると共に、労働法制の基礎知識の普及を促進する】が「中小企業就職者の確保・定着支援等」に盛り込まれたことと、

【就職支援等の仕組みやワークルール等について教えるなど、キャリア教育の充実を図る必要がある】【ワークルール、就職支援の仕組み等について、学生生徒の発達段階に適した教材を整備する】、

【若者の採用・育成に積極的な一定の基準を満たした企業が「若者応援企業」宣言を行う仕組みを構築】【雇用保険データを用いて、産業別・規模別の離職率を公表】などが盛り込まれたのみ。

どうしたものかと考えていたのだが、後藤さんが発表の中で若年就労言説の推移として2度のバックラッシュ(「ニート」言説の誕生→心の問題/「雇用のミスマッチ」言説の発生→学生の「選り好み」「大手志向」「未熟さ」)に触れられた。

さらに若年雇用政策が「人間力」「社会人基礎力」「キャリア教育」など、若者をなんとかしよう、という方向で推移してきたことを指摘された

そして、提言として、短期的に大幅な財政出動を伴うデフレ・不景気の脱却、非正規雇用でも生計を立てられる賃金制度・社会保障の充実、教育の投資価値を高める大学教育の在り方、を述べられた。

これで話がしやすくなり、私は、この若者雇用戦略を三度目のバックラッシュにしてはいけないと話をつなげた。

これは「若者育成戦略」を検討する場ではなく「若者雇用戦略」を検討する場であること、若者の育成・マッチング・若者が働く職場の問題の改善の3つが論じられなければならないのに、職場の問題の改善にはまったく触れられていないことを指摘した。

「厳しい」現状に対しては、労働法規の遵守や長時間労働の是正等による労働環境の整備、公正な採用募集の推進という第1の方策と、若者の育成という第2の方策の双方が必要であり、第2の方策だけが「最も本質的かつ重要な政策」と捉えられるのには同意できないと指摘した。

「働き続けられる職場環境の実現」が基本方針に盛り込まれるべき、という点については、吉田委員、村上委員、堀委員からも後押しの意見表明が行われ、内閣官房審議官(経済財政運営担当)からも、盛り込む方向での同意が得られた。

さらに「ワークルール」という言葉が2か所、「労働法制の基礎知識」という言葉が1か所あるが、いずれも「労働法制の基礎知識とその活用」で良いのではないかと指摘した。

津田厚生労働大臣政務官からは、「ワークルール」とは「労働法制の基礎知識」よりは幅広い概念であり、「遅刻をしない」といったマナー教育も含む、という回答が! それならなおさら、「ワークルール」という言葉を使わず「労働法制の基礎知識とその活用」で、と主張した。

その点は吉田委員からも後押しあり。労働法制の基礎知識とその活用というエンパワメントではなく、遅刻をしないといった規律教育だけがワークルール教育としてなされたのではたまらない。

今日は各委員から若者雇用戦略(原案)に対する意見が出て、どれを取り入れ、どれを取り入れないかまでは決まらずに終了。内閣府が今日の意見を踏まえて最終的な若者雇用戦略をとりまとめ、来月中旬に親会議の雇用戦略対話で提案する、とのこと。

会議の後、原案作成サイドの方から、社会を変えずに若者だけ骨太にしてなんとかしよう、というつもりで書いたわけじゃないんですよ、といったコメントを個人的にいただいた。けれども資料1はそうとしか読めない。そういうつもりじゃなくてこういう表現になるなら、問題は根深い。

具体的施策のところでは、ハローワークの機能の充実とか、法違反やトラブルに対する相談体制の充実、労働法教育の実施、雇用保険データを活用した産業別・規模別離職率の公表、所得連動返済型の無利子奨学金制度の着実な実施など、かなり要望は盛り込んでいただけたとは思う。

まあそういう次第で終了です。ちなみに私は「政策インサイダー」ではないと思う。たまたま今回は(どこかの推薦で)WGに呼ばれたけれど、その他には以前に労働法教育の研究会に呼ばれたぐらい。

「三度目のバックラッシュにしてはいけない」という言葉は、心からの叫びだったのでしょう。

上西さんとしては、こいつらなかなか話が通じないという思いをもたれたのだと思いますが、別の見方をすれば、官邸の会議で、こういうメンツで

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koyoutaiwa/wakamono/dai5/sankou01.pdf

議論できるだけ遥かにマシという面すらあります。

比べるか?と言われるでしょうが、文部科学省主導でやってると、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-d8f1.html(キャリア教育で学ぶべき「世の中の実態や厳しさ」とは何か?)

一方、こうした知識の習得や意欲・態度の涵養と同時に、誤解を恐れずに分かりやすい言葉で言えば、“世の中の実態や厳しさ”を子どもたちに学ばせることも重要である。

と、もろに「社会を変えずに若者だけ骨太にして何とかしよう」というメッセージがそのまま出ちゃうわけで。

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