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2012年5月11日 (金)

市庁舎退去問題から浮かび上がる日本の労働組合の二重性

2012_05『情報労連REPORT』5月号は、「日本復帰40年 翻弄される沖縄」が特集ですが、わたくしの連載「労働ニュースここがツボ!」は、「市庁舎退去問題から浮かび上がる日本の労働組合の二重性」を取り上げています。本ブログで書いたネタではあるのですが・・・、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1205.html

大阪市の橋下市長が労働組合を敵視してさまざまな行動に出ていることが報じられています。その中には市長選に絡むリストの捏造など、社会的に許されないようなこともある一方、ものごとの筋道からしてなかなか反論しにくい性質のものもあります。組合事務所に市庁舎からの退去を求めたことなどは、後者の典型的な事例です。今回はこの問題を、労働法の筋道から腑分けすればどうなるのかを説明します。

 
そもそもからいえば、企業の外側の存在であるはずの労働組合の事務所が企業の中にあること自体がおかしな話であり、その便宜を図ることは許されないことです。現に日本国の労働組合法も、「団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの」は労働組合ではない(第2条)とか、「労働組合の運営のための経費の支払いにつき経理上の援助を与えること」は不当労働行為である(第7条)と明記しています。労働組合とは企業とは関係なく、労働者が企業の外側で勝手に団結して作る団体であるのですから、これは当然です。賃上げ要求などの組合活動は企業の外側で、従業員がやるなら勤務時間外に、というのは当然です。

 
一方で西欧諸国にはいずれも労働組合とは別に企業別の従業員代表機関というのがあって(ドイツの経営協議会、フランスの企業委員会など)、こちらは企業内部の問題を解決するために企業内部に、企業の負担で作られるものです。企業のリストラの際の労働者間の調整や、いろいろな苦情処理などは、本来企業内部の問題ですから、職場選挙で選ばれた企業の従業員代表が、勤務時間内に、企業の費用負担でやるのが当然です。ですから、従業員代表機関には団体交渉権もスト権もありません。

 
日本では、法律上は企業外部の存在と位置づけられている労働組合が、単に賃上げ闘争などをやるだけではなく、それよりむしろ主として、西欧であれば従業員代表機関がやるような仕事をやっているところに最大の特徴があります。法律上は「団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの」は労働組合ではないと言っていて、それはまったくその通りではあるのですが、しかしその労働組合が現実にこなしている大部分の仕事に着目すれば、その経費の支出につき使用者が援助するのが当然、というまことに逆説的な状況にあるわけです。

 
これが逆説的であるのは、日本の企業別組合が事実上従業員代表機関の仕事をしているから経費援助が当然だというと、それ自体はまことにもっともなのですが、では春闘で団体交渉やストライキやるのも企業が賄わなければならないのか、という変な話になるからです。本来異なる機能を一つの組織が両方兼ねていることから来る逆説なのです。この複雑な逆説を、どれだけの人々が理解しているのでしょうか。

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