テリー・マーチン『アファーマティヴ・アクションの帝国』
すごい分厚い本ですが、内容もそれだけの充実しています。ソ連をこういう視点から見るとこうなるのか、という意味でも貴重な本。
http://www.akashi.co.jp/book/b88830.html
アファーマティヴ・アクションてのはアメリカの言い方で、ヨーロッパ系だとポジティブアクションといいますが、要するに、黒人とか女性とか、より不利益を受けてきた集団を優遇しようという政策なんですが、それを最初に体系的にやったのはソ連なんですね。それも複雑怪奇な民族問題でもって。かつて「民族の牢獄」といわれたロシア帝国の跡でそれを大々的にやった。各民族に、民族の共和国、自治共和国、自治州等々。
ところが、それはナショナリズムを掻き立てて分離志向に走るのと紙一重というか、なかなか危うい技なんですね。それで、(このあたりとても微に入り細をうがつ記述を超単純化しているので注意)ある時期以降は、一方でアファーマティヴアクションを進めながら、他方では民族共産主義者を大々的に弾圧粛清していく。
これで思い出したのが、ものすごく昔(中学生頃かな)に読んだ小松左京の紀行エッセイで、宇宙飛行士一つ見ても、アメリカは白人男性ばかりだが、ソ連は男女いろんな民族をまんべんなく取り混ぜている云々という記述があって、なるほどそういう見方もあるのかと感じたことでした。確か、『歴史と文明の旅』だったと思う。
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