「国民の敵」ビジネス
湯浅誠氏をめぐって本ブログで述べていることを、裏側から述べたような記事です。「あごら」なので、そういう方向性がぎらついているようですが、素直に読めば解るとおり、まことにまっとうなことを言っているというべきでしょう。
http://agora-web.jp/archives/1444589.html
・・・こうした負担の分配をせざるを得ない状況では、政治家が国民の人気を得ようとすれば、ばら撒きに代わる方法が必要です。 それが、古典的な方法ではありますが、 「国民の敵」をでっちあげる方法なのです。 この方法は、かつてのいくつもの戦争の原因(国民の不満を海外に向けさせる)でもあり、ナチスのユダヤ人虐殺にも繋がったものです。
江田憲司氏は、最近の著書、「財務省のマインドコントロール」では、財務省を「国民の敵」に仕立て上げているわけです。 これは、多く出版されている、リフレ派の日銀批判本、例えば田中秀臣氏の「デフレ不況、日銀の大罪」のような不況の原因は日銀のせいだ、といった主張の本に通じるものがあります。
つまり、実際には、問題は非常に複雑なのに、どこか一点に原因を帰着させてしまい、問題を oversimplify してしまうことで、一般人に分かり易い反面、問題の本質とは無関係になってしまっているのです。・・・最近、注目されている、橋下大阪市長の政治手法も、私の見る限り、「公務員、教員、労組」を「国民の敵」に仕立て上げることで、支持を広げる手法ではないかと思いますし、小沢一郎一派も野田首相を「国民の敵」にすることで、自らの生き残りを図ろうという手法でしょう。
国民は、こういった「国民の敵」ビジネスに惑わされることなく、単なる見世物として冷静に観察することが肝要ではないでしょうか。
これが、湯浅氏のいう
「橋下さんが出てくる前、小泉純一郎政権のころから、複雑さは複雑であること自体が悪であり、シンプルで分かりやすいことは善であるという判断基準の強まりを感じます。複雑さの中身は問題とはされない。その結果の一つとして橋下さん人気がある。気を付けなければならないのは、多様な利害関係を無視しシンプルにイエス・ノーの答えを出すことは、一を取って他を捨てるということです。つまり、世の中の9割の人は切り捨てられる側にいる」
「けれど、自分たちが切り捨てられる側にいるという自覚はない。なぜなら複雑さは悪で、シンプルさが善だという視点では、シンプルかどうかの問題だけが肥大化し、自分が切り捨てられるかどうかは見えてこないからです。それが見えてくるのは、何年後かに『こんなはずじゃなかった』と感じた時。本当はそうなる前に複雑さに向き合うべきですが、複雑さを引き受ける余力が時間的にも精神的にも社会から失われている。生活と仕事に追われ、みんなへとへとになっているんです」
「民主主義って民が主(あるじ)ということで、私たちは主権者を辞めることができません。しかし、余力がないために頭の中だけで降りちゃうのが、最近よく言われる『お任せ民主主義』。そのときに一番派手にやってくれる人に流れる。橋下さんはプロレスのリングで戦っているように見えますが、野田さんはそうは見えない。要するに、橋下さんの方が圧倒的に観客をわかせるわけです。でも残念ながら、私たちは観客じゃないんです」
と響き合っていることは、まっとうな感覚を持つ人には自ずからわかるところです。
もっとも、湯浅氏が「私たちは観客じゃないんです」と呼びかけるところで、こちらは「単なる見世物」と冷ややかにつぶやくところが、両者の姿勢の違いを示していて、興味深くもありますが。
ま、何にせよ、「あごら」な方々も、こういう人様のやらかすことについてはそれなりにまっとうなことを指摘しておられるのですね。
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アゴラは玉石混淆(石の方が多い?)ですがこの記事の辻氏は、なるほどと思うことが多く私もよくチェックしています。アゴラうんぬんというより、単に辻氏が信頼できるというだけの気がします。
ただ、この辻氏を含めリフレ政策に否定的なのがアゴラに共通しています。私もリフレ派の個々の面々や議論にはちょっとどうかと感ずることも多く、例えば、リフレ政策で増税しなくてもOKのようなバラ色の未来を描く議論には否定的です。リフレ政策だけで増税なしに財政赤字がどうにかなるというのは、非現実的すぎます。
しかし、バラ色でなくてもリフレ政策にそれなりの効果は見込めるでょう。橋下が人気を得ている、いうなれば石橋湛山のいう根本病が蔓延しているこの現下の状況は、デフレ不況に大きな原因があるわけで、リフレ政策自体は必要だと認識しています。
経済状況がひどければ橋下のような政治家が人気を得る状況は、いつまでも続くでしょう。
願わくは、共産や社民など左派が金融緩和にもう少し理解を示してくれればと思います。
投稿: spec | 2012年4月 2日 (月) 00時15分